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2024年12月13日 (金)

改まざるものは心なり

被団協の日本政府批判

 ノーベル平和賞の授賞スピーチで、代表が、原爆による死者への保障が日本政府からないことを批判していました。生存者には医療支援などがあるが、死者は放っておかれているという批判のようです。この主張の根拠は不明です。例えば、東京大空襲や沖縄戦における一般人の死者たちも同様に、補償をもらっていないはずですが、原爆による死者がなぜ特別なのでしょうか?被団協には、原爆による死者が政府から補償をもらうべきだとする根拠を示してほしいと願います。90歳を超える老人が言ったことを咎めるのは、大人げないかもしれませんが、論理的に成立しないと考えられる主張は、誰が言ったとしても、その根拠を正すべきだと思います。この主張は、団体の出発点からのものらしいですが、悪くとれば、被爆者は特別だという歪んだ特権意識のようにも聞こえるからです。団体に対する誤解のもとにもなりえます。被団協への授賞は、ノルウェー議会の選考委員会が、ロシアによる核兵器使用の威嚇に対して、その非を論じる生き証人にスポットライトを当てることで、強力な世論喚起の材料にできると考えたからでしょう。被爆者が日本政府に強く求めるべきことは、唯一かつ最後の被爆国として、核兵器禁止条約を批准することではないでしょうか?なお、同行した高校生たちの存在は、核廃絶に向けて、被爆者から思いを引き継ぐという意味で、未来への希望になります。授与者側も、未来への活動継続に期待しているのだと感じます。

 

高騰するマンション価格

 日経新聞によれば、東京都の新築マンション価格の平均が、年収の17.8倍に達したとのことです。これでは、とても普通の人には手が出ないでしょう。首都圏で見ても、13.1倍ですから、新築マンションの購入が難しくなっている状況が分かります。開発業者も、資金が潤沢な海外を含む富裕層を重視して物件開発を行う傾向にあるとのことです。住むためではなく、投資対象としての性格が強くなってきました。こうした傾向は危険なシグナルではないでしょうか?円安もあり、都内の高級マンションは割安だとして、海外からのマネーが集まることは、一概に悪いことだとは言えませんが、本来の住むための物件としての役割を超えて、価格が過度に高騰すれば、実需層は住宅難民になってしまいます。さらに、いずれは膨らんだバブルがはじけて、その後遺症に日本全体が苦しむことになります。政府として、新築マンションへの投資を基準を設けて抑制策を実行すべきではないでしょうか?

 

女性研究者のロールモデル

 高橋真理子「科学に魅せられて」(日本評論社)は、自然科学分野で初めて文化勲章を受章した女性科学者である太田朋子さんを含む28人の女性科学者へのインタビューを通じて、科学的業績の裏側にあった女性としての種々の赤裸々な体験を伝えようとするものです。著者は、朝日新聞科学部で長年活躍した科学ジャーナリストの草分けの一人です。著者によれば、猿橋勝子さんが1981年に創設した「猿橋賞」(50歳未満の自然科学分野の女性研究者を顕彰)の存在が、女性科学者にとって大きかったとのことです。第1回の受賞者は、太田朋子さんでした。取り上げられた28人のうち、7人が歴代の受賞者です。受賞者には、猿橋効果が実感されており、受賞後は、科学者として活動がしやすくなったようです。ただ、著者は、女性研究者への学術界の差別をなくす動きが一般化したのは、2020年以降に過ぎないとも指摘しています。そう考えると、女性の活躍促進に関して、何と遅れた国なのでしょうか?アメリカでは、1980年代、欧州では、1990年代から、女性科学者を増やす政策が始まっています。未だに我が国で理系に女性が進まない傾向があるのも、人生の選択として無理からぬところがあります。もう一つ、著者による興味深い指摘は、学術界の男女平等は、家事分担における意識革命があって初めて実現したという点です。優れた業績を上げた女性科学者のパートナーの多くは、家事育児をきちんと分担しています。逆に言えば、家事育児を女性の役割だと決めつけるような男性は、パートナーにはできないのです。こうした意識革命を著者は、非常に大きな社会の変化で、女性科学者の未来を明るいものにしていると感じています。この作品は、女性研究者が自らの人生について語っている得難い記録であり、ロールモデルとしての彼女らに続く若い世代に対する、とても為になる助言になると思います。

 

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