五月雨のみじかき夜に寝覚をして
竜王戦第5局
先手の藤井7冠が1日目からリードして、1六に打った角を生かして、左右から挟撃する形を作って、佐々木勇気8段にノーミスで完勝しました。序盤での差が勝敗を分けたようです。終盤、勇気8段も飛車と馬の効きを生かして、玉頭から殺到する手順により、勝負をかけて行こうとしましたが、藤井7冠は、隙を全く見せませんでした。感想戦でも藤井7冠があらゆる変化を読み切っていたことが分かりました。両者が1時間以上持ち時間を残していながら、16時ころには、勇気8段が潔く投了しました。Abemaの解説をされていた久保9段や戸辺7段からは、一見意味が分かりにくかった藤井7冠の6六歩が受けの妙手だったと評価されています。プロ棋士でも、こういう手はなかなか指せないようです。竜王戦第5局までは、先手の勝利が続いています。次局、先手になる勇気8段が最終局に持ち込めるのか、注目です。なお、大盤解説会場の和歌山城ホールは1000人以上が収容できますが、満席だったということで、相変わらずの藤井7冠人気の凄まじさを感じます。
地震と虐殺
安田浩一「地震と虐殺1923-2024」(中央公論社)は、関東大震災直後の朝鮮人虐殺事件を掘り起こして、歴史の証言記録として後世に残す(虐殺否定の動きに対抗)とともに、今日も続いている差別行為やヘイトスピーチの問題を多くの人が考える契機とすることを目的としています。全国各地+韓国を取材した結果をまとめた600ページにも及ぶ大著ですが、朝鮮人虐殺に関する警察を始めとする行政の責任を、丁寧に描き出しています。当時は、朝鮮併合が強行された直後で、警察内部には、不逞鮮人を不忠なる敵として討伐すべきという認識が共有されていたようです。暴動や放火などのデマを拡散したのも、警察自身です。また、偏見や憎悪から実際に虐殺を行った日本人への刑は軽く、しかも、執行猶予、恩赦で再び地域に迎えられました。見ず知らずの人間を、単に朝鮮人だというだけで殺すのですから、異常な集団的狂気です。普通の日本人が、ユダヤ人虐殺を行ったナチスと同類の非道な行為に走ったことを、その後継たる私たちは忘れてはいけないはずです。著者は、過去の不都合な真実を暴くためだけにこの作品を書いたのではありません。今の私たちに、「日本人は出直したのか」と問うているのです。自然災害を利用した悪質なヘイトデモなどは、各地で繰り返されています。官民一体で、歪んだ優越感をもとに外国人などを差別する動きは、むしろ盛んになろうとしています。21世紀の国際化が進む日本において、誠に恥ずかしい話ですが、不合理な差別的な排外主義に身を委ねてしまう日本人が、それなりにいることは事実です。そうした極端な思想が、特に若い人たちに拡大しないよう、十分に注意する必要があるでしょう。政府においても、過去の黒歴史と正面から向き合う姿勢を取り戻すことが必要だと思います。朝鮮人虐殺の事実を否定することはできません。
都内の給食無償化
2025年1月から、都内のすべての公立小中学校の学校給食費が無償化されます。東京都が、費用の8分の7を負担するため、町田市なども無償化に加わることになったからです。東京都としては、いずれ国による無償化が実現するのを見越して、先取りして無償化を実施するという考えのようです。給食費の家計負担がなくなることを悦ぶ人もいるでしょうが、所得に無関係に無償化するということは、みなの金で金持ちの子どもにも食事を与えることを意味します。到底、合理的な施策とは思えません。もう一つ、私が懸念するのは、公金による学校給食は、食事の内容に関する予算枠の制約が強くなるという点です。材料費、人件費、運搬費などが上がれば、予算増が必要になり、前年同額では、同じレベルの食事を提供できなくなる恐れがあるのです。そもそも、学校教育関係予算の中で、教材費、教育活動費などを差し置いて、学校給食に要する予算を優先する必要が本当にあるのでしょうか?給食無償化は、公財政支出としての合理性、予算システムの硬直性、学校教育に関する予算における優先順位の観点から、かなり疑問のある施策だと思います。
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