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2024年4月

2024年4月30日 (火)

金を軽くし粟を重くす

賃貸市場の動向

 東住協の特別講演会で、SUUMO(物件探しの70%が見ている)のリサーチ部門の方の講演を聴きました。興味深いと感じた点は次の通りです。ようやく世界の常識と同様に、日本でも首都圏の中古マンション価格が上がるようになっている。中古を内装リフォームしてから販売する傾向が増している。注文住宅の建築は、27か月連続で前年割れが続いている。ハウスメーカーの経営は苦しい状態が続いている。23区のマンションの平均賃料は、2017年から上昇傾向。賃貸物件への要望に関しては、コロナ禍で変化がみられる。具体的には、日当たりや住宅性能(遮音性、収納・仕事スペース)へのニーズが高くなっている。宅配ボックスは、単身の社会人女性からの要望が高い。災害時の備蓄庫については、ファミリー層からの要望が高い。ペットに関しては、飼いたい人が57%と非常に多いが、実際には16%しか飼っている人はいない。ニーズが満たされていない。賃貸物件御探している若い人は、実家の住宅性能が良くなっている時代に育ってきたので、断熱性、省エネ性能に関しては、要求水準が高い。2024年4月以降の新築物件には、省エネ表記が義務付けられているので、賃貸についても住宅性能には要注意。

 

止まらない円安

 日銀は、円安による基調的な物価上昇率への影響はないと判断しており、そもそも、金融政策は為替レートを対象にしていないと説明しました。160円台に迫る勢いの円安に対する産業界との認識の差が顕著になっています。日々の買い物における生鮮食料品を含む物価上昇に対する庶民感覚ともズレがあります。円が過剰に弱い状態に陥っており、インバウンドによって潤うビジネスはともかく、輸入品の価格上昇は、生産や生活を苦しめている状況です。当面、日米の金利差という材料が変わらない限り、円安は止まりそうにありません。日銀の説明によって、円が売られて、さらに円安が一段と進みそうです。GWの海外旅行に出かける比較的裕福な家族の中にも、食事代や土産物代を節約するために涙ぐましい工夫をする姿が紹介されていますが、銀座でブランド品を割安に買いまくるインバウンドとは好対照です。私も、1990年代に、ワシントンでの交渉に、朝飯用のカップ麺を持っていった記憶があります。湯沸かしポットも購入して、部屋に出張者が集まって、ラーメンやうどんを作って食べました。金融緩和を続けるうちに、円安が進行して、日本人は貧しさを実感するようになりました。こんな国のままで良いのでしょうか?4月29日の覆面介入で、政府は一時的な時間稼ぎをしましたが、これで潮目が変わるわけではなさそうです。

 

官邸の防災服

 日経新聞の歌壇に、こんな短歌が掲載されていました。「被災地を遠く離れた官邸で 防災服はまるで似合わぬ」。同感です。いつから、形だけ、被災地の最前線にいるような服装で会議をするようになったのでしょうか?この短歌の作者である野上卓さん(東京)に、ずばり、服装だけ被災地に寄り添っているかのような見せかけを作る偽善性を暴かれてしまいました。官邸の大臣たちは、みなが裸の王様のように、国民の目に映っていることがわからなくなっているようです。被災地に入るとき以外に、防災服は無用です。道化のように見える官邸の防災服はやめたらどうでしょうか?

 

2024年4月29日 (月)

財物かたはしより捨つる

ブラックホール型

 人口戦略会議によれば、全国の4割超に当たる744自治体の消滅可能性があるとされています。若年女性人口がポイントです。東北は、秋田県の96%を筆頭に、消滅該当率が77%にも達しています。その反面、出生率が低くても他の市町村からの人口流入によって消滅を免れているブラックホール型が、25自治体あります。世田谷区もその一つです。子育てがしやすい自治体との評判がある流山市など、持続可能性が保たれているのは、65自治体に過ぎません。要は、日本は全国的に消滅の危機にあり、今後、出生率が伸びないと、子育て世代の取り合いになるだけで、それに負けると、自治体には、消滅への道しかないというシナリオなのです。私が2年ほどを過ごしたことがある青森県は、若年女性人口の減少率が大きい自治体(30年間で85%以上減少)として、外ヶ浜町、今別町、佐井村が挙がっていますが、地理や就労機会の環境もあって、やむを得ない面があります。女性だけでなく、男性も流出が避けられません。若年層が去れば、近未来において、自治体として機能しなくなるのではないでしょうか?ブラックホール型の世田谷区にしても、先細りのリスクは否めません。

 

村上隆さん

 京都市京セラ美術館で、「村上隆もののけ京都」展が開催されています。NHK日曜美術館、フロンティアでは、その準備活動の様子などが紹介されていました。8年ぶりの本格的な展覧会なので、大勢のファンが押しかけるものと思います。番組の中で、印象的だったのは、自分自身が展覧会の収入を上げる活動をしなければならないと述べていた点です。「上げ膳、据え膳」の海外の美術展との違いを強調しています。彼が採用したのは、クラウドファンディングによる寄付集めでした。返礼品としては、彼の作品のトレーディングカードを用意していました。プレミアムがつくかもしれません。その他にも、多種多様なグッズを販売するようです。もう一つ、印象に残った言葉は、自分は頼まれて制作する仕事が65%を占めているが、その中から代表作が生まれているというものです。今回は、洛中洛外図屏風をもとにした作品が、それに当たります。300人もの制作助手を雇用しているので、24時間体制で作品を作ることができますが、アイデアは彼自身が生み出さないと始まらないので、その生みの苦しみは大変なものです。軽いうつ病になったとも述べていました。AIを利用して、彼の描いた原案をデフォルメしたような絵を作らせて、さらにアイデアを練っていくループの手法は、ものつくりのビジネスのようでもあります。今日の現代美術は、彼のようなプロデューサー的な芸術家がリードしているのです。芸術家のイメージは、すっかり変容しました。非常に興味深いと感じます。

 

不動産市況の展望

 東住協の特別講演会で、半田昌則さんの講演を聴きました。今日の不動産市況については、金融緩和と相続税制によって生み出された史上最大・最長のバブルだと述べています。今後は、建築コストの急騰、購買力の低下によって、緩やかに下降局面になると予想しています。ただ、1990年代とは異なり、バブルが一挙に破裂することはなく、日銀による金融緩和の継続、富裕層による投資による支えがあるので、じわじわと市況が悪くなっていくということです。不動産価格は、ピークアウトしていきます。都心から地方へ、商業地から住宅地へと、影響が拡大して行きます。金融機関は、貸し出しは減らさないが、融資先を絞り込みます。建設費の上昇によって、デベロッパーが仕入れる土地価格は抑制基調になります。既にマンションの在庫が積み上がっており、資金繰りという言葉が復活しつつあります。今後は、不動産の質が特に重要になり、立地(地下鉄の駅近)、収益性、換金性、担保価値、節税価値(ただし事業採算性があるもの)がポイントになります。大分県の国東半島では、町から不動産屋さん自体が無くなり、固定資産税10年分を付けないと土地を受け取ってもらえないという悲惨なエピソードも紹介されていました。まさに負動産が現実になっています。データを長年見ている専門家の話は、私たちにとって、貴重な助言になりました。この講演の内容は、東住協の大家さん大学でも、近く紹介されるようです。

 

2024年4月28日 (日)

或いは家を忘れて山にすむ

名人戦第2局*

 再び最終盤の逆転で、藤井8冠が2連勝としました。豊島9段の勝ち筋は、きわめて細かったために、決め手を逃したのも仕方がありません。序盤は、藤井8冠が、素晴らしい構想で、かなりリードしていましたが、豊島9段が、2日目に眠っていた角を活用するなどに成功して、互角に持ち込んだという流れでした。結果的に、5二銀ではなく、5二金として、藤井8冠の5一香に対して、6一金と銀を取って攻めて行けば、豊島9段が勝っていたようです。最善手以外は、逆転されてしまう将棋の恐ろしさが現れた一局でした。惜敗が2局続いたので、巧みな戦いを展開している豊島9段には気の毒でした。藤井8冠に勝つのは、全ての棋士にとって大変なことです。名人戦を面白くするためにも、第3局で、何とか悪い流れを止めてほしいと願います。

 

税理士さんが勧める法人化*

 ヒノキヤグループが主催するセミナーで、渡辺浩滋さんの講演を聴きました。法人化とは、収入の受け皿を変えることだと述べていました。個人の所得は、330万を超えると所得税+住民税が30%以上になります。法人化によって、不動産所得から家族への給与を支払うことで、低い税率の適用が可能になるとともに、給与所得控除で経費も認められるというメリットがあります。個人の課税所得が、800万を超えたら、法人化を検討した方が良いとのことでした。法人化では、基本的に、建物所有型を目指します。個人の残債がある場合は、個人所有の物件を法人に売却する、法人は融資を受けて個人に売買代金を支払う。売買代金で残債を返済するという流れになります。土地は、個人所有のままにしますが、相続が終わった段階で次の世代への相続を考えて検討します。なお、建物を法人に売却すれば、個人にキャッシュが増えるので、3年以内に亡くなる場合は、反って相続税が高くなってしまうことに注意が必要です。要は、建物所有型で法人化する場合は、被相続人の方には、3年以上の長生きをお願いしなければなりません。また、簿価が、残債よりも大きくなければ、建物所有型の法人化は売買金額と簿価との差額に譲渡税がかかる恐れがあるので、これも注意が必要です。その場合は、しばらく法人化を待つことになります。最後に、法人化しても相続争いがなくなるわけではないことに注意が必要です。経営に参加しない相続人は、会社に関わらせてはいけないとのことです。

 

GIGAスクールの無駄*

 徳島県の市町村が導入した端末の6割が故障したそうです。端末を夏休みに学校に置きっぱなしにしたために、高温でバッテリーが膨張してしまったことが主たる原因だと指摘されています。それにしても、6割が故障というのは、異常な事態です。安物買いの銭失いの典型ですが、要は、最低価格落札方式という調達の問題でしょう。5年で入れ替えになるようですから、次の調達では、こうした無駄は無くなるはずですが、そもそも端末を使いこなしているのかには、より大きな懸念があります。いきなり国から端末を押し付ける形で始まった施策ですから、果たして2000億円以上の国費を使う教育効果があったのか、甚だ疑問です。次の端末の調達費用として、既に2643億円が基金化されていますが、教員人材の確保も儘ならない状況で、端末だけに国費を重点的に振り向けるのは、実に不思議な方針です。しかも、教育効果については、明確な学力向上があったとするデータは取れていません。恐らく、文科省にとって、この施策全体について不都合な結果になることを恐れているのでしょう。押し付けた施策だけに無駄があっても構わないという開き直りで、非効率を承知で国費をつぎ込むつもりなのでしょうか?会計検査院には、単に調達の無駄ばかりでなく、教育施策としての費用対効果についても、専門家の助力を得て、然るべく検査を行ってほしいと思います。

 

U23サッカー日本代表対カタール戦*

 前半に相手のGKが細谷選手への無用な暴力行為で一発退場になり、日本は、非常に有利になりました。後半に、クロスから頭で押し込まれてリードを許しましたが、基本的に、ボールを支配して、終始押し気味でした。結果的に、CKから木村選手の得点が生まれて、その後は、延長を含めて、圧倒的に攻め続けた試合でした。カタールは、堅守速攻型のチームで、特に身長の高さを生かして、空中戦で得点を狙ってきますが、クロス多用の戦術は、極めて単純です。演技力が高い選手が多く、そういうお芝居の場面を繋ぎ合わせれば、カタール劇場としてコミカルな出し物になるでしょう。年齢制限のない代表チームは、アジアカップで連続優勝しているのですが、U23の方は、日本よりも相当レベルは下でした。延長になってからは、ただゴール前を固めて守るだけで、日本の得点は時間の問題という感じでした。細谷選手が、鮮やかに3点目を決めてくれて、ほぼ勝敗は決しました。辛抱強くやり続けて、相手を追い詰めたZ世代の選手たちを、大いに褒めましょう。アジアのサッカーのレベルを上げるには、審判の技術を相当上げないと厳しいと感じます。カタールは、演技と暴力と狡さだけが目立つチームでした。こういうチームが、オリンピックに出なくて済んだのは、アジアの名誉にとって幸いでした。なお、韓国がインドネシアにPK戦で負けたのには驚きました。人口の多いインドネシアの急成長は侮れません。

 

山崎隆之8段*

 誰にも真似のできない将棋を指す天才棋士、山崎8段が、15年ぶりのタイトル戦挑戦を決めました。40代にして、将棋小僧のようなところがあり、人気者です。佐藤天彦9段との挑戦者決定戦は、長手数の熱戦でした。序盤は、佐藤9段が優勢でしたが、山崎8段が馬を作って自陣に引いた戦術が功を奏しました。金3枚+馬で玉周辺を固めて、形勢は互角に戻りました。4七香からの攻めは、持ち時間がなくなっているにも拘らず、実に正確でした。力戦調の戦いになると無類の勝負術を発揮します。そのまま佐藤9段の粘りを許さず、押し切りました。藤井8冠との棋聖戦は、異色の天才対決になりました。どんな将棋になるか、楽しみです。

 

不法移民の移送*

 イギリスは、不法移民を、ルワンダに移送する立法を行いました。世論調査で劣勢の保守党は、不法移民への強硬策で、選挙民へのアピールにしようという作戦です。最初の移送は、10~12週のうちに行われるとの見込みです。不法移民は、アフガニスタン、イラン、トルコ、ベトナムなどから流入しています。収容コストが嵩むこともあり、ルワンダ(難民受け入れに積極的)へは、受け入れの見返りに460億円を支払います。また、協定で、不当な扱いを禁止し、第三国への出国も不可とすることとされています。労働党が次の国政選挙で勝利すれば、ルワンダへの移送は取りやめになるでしょうが、なかなか大胆な対策を講じるものです。イギリスの黒歴史となっている奴隷貿易の逆バージョンですが、国境警備を強化しても流入が止まらないために、不法入国してもルワンダ行きだと知らしめて、不法入国を諦める効果を狙っているのでしょう。厄介者を他人に押し付けるような汚いやり方は、建前上は正統化するのは難しいと思いますが、もはや背に腹は代えられないという判断でしょう。EU諸国の一部も、世論の動向をじっと見ていると思います。不法移民への強硬策は、選挙で使える可能性があるからです。しかし、毒を持って不法移民を制することができるのかは、結果を見て見ないと分かりません。

 

円満な相続のヒント*

 ヒノキヤグループのセミナーで、昨年に引き続き、平井利明さんの講演を聴きました。相続争いが急増しています。相続税の申告件数が15万件余り、家庭裁判所への相談が18万件余りになっています。家庭裁判所の審判では、法定相続どおりの分割しかしません。これでは、公平な分割は実現しないと私も感じますが、大岡裁きのように紛争をうまく調停するという役割は全く期待できません。争いが長期化すると。心身を病む人も出てきます。事前対策が肝心なのです。とにかく、遺言書(公正証書が好ましい)を作成すべきです。遺言施行者を決め、分割方法や相続分の指定を行います。付言事項に、いかに家業を続けるために公平を図ったかを書くことも勧めています。家業の継続に必要な場合は、どうしても遺留分の侵害が避けられないケースもあります。その場合は、被相続人を含めて、生前遺産分割協議の場を設定することを提案しています。貰える財産が少ない相続人にとって、心情的な納得のプロセスとしての意味があります。もちろん、それでもダメなケースはあるとのことです。人間の欲はなかなか抑えられないものです。認知症対策も重要なポイントです。特に、一人で財産管理をしてきた高齢者は、健康なうちに家族信託を検討しておくべきだとのことです。認知症になってからでは、遅いからです。銀行口座が動かせなくなり、家族が困ってしまいます。

 

怒りの抑え方*

 名古屋大学が、感情を紙に書いて捨てると怒りの抑制効果があるとの研究成果を発表しました。「書く+捨てる」ことに、怒りを鎮める意味があるようです。この話を聴いて、怒りは時間とともに鎮まるものですから、30分ほど時間をかけて紙に書いているうちに、心が落ち着いてくるのではないかとの疑問を持ちました。昔はラグビーで選手が倒れたら、魔法のヤカンが登場していましたが、あれはヤカンの効果ではなく、時間の効果でした。紙に書くほかに、穴を掘って大声で怒りを発散してから穴を埋めるという方法でも、同様の効果があるかもしれません。別の方法としては、好きな楽曲をカラオケで歌う、ペットと触れ合う、格闘技の真似事をすることによって、発散して気分を変えることができるでしょう。感情の鎮め方には、色々ありますが、全ての方法と比較して、同じ時間をかけるなら、「書く+捨てる」が優れているのか、知りたいと思います。この研究成果は、イグノーベル賞候補かもしれません。

 

買い物難民*

 農水省の推計では、65歳以上の4人に1人が、日々の買い物に苦労しているのだそうです。推計方法の詳細が分かりませんが、住所から500メートル以内にスーパーやコンビニがなく、自動車の使用が難しい65歳以上の高齢者を、難民認定したようです。ワースト3は、長崎41%、青森37%、鹿児島34%となっています。都市部にも難民人口が多く、神奈川が60万、東京・大阪・愛知は50万以上の難民が存在しています。ただ、最近は、生協やスーパーの宅配事業が進んでおり、その配達圏内であれば、難民はゼロになるはずです。バス路線の廃止などは、難民を増やします。買い物だけでなく、通院にも支障が出ます。最近、運転手不足の結果、生活が不便になった地域の状況が、しばしば報道されています。移動販売などで、そうした地域の買い物需要が満たされなければ、生活が維持できないでしょう。もう少しきめ細かく買い物の便利さを判定できる基準を設けて、現実に近い推計が行われることを望みたいと思います。

 

2024年4月25日 (木)

あはれみを以って国を治め給ふ

U23サッカー日本代表対UAE戦*

 2-0での勝利でしたが、内容的には、5-0でもおかしくないものでした。PKが取り消され、無関係なオフサイド判定でゴールが取り消されるなど、判定の不運もありました。また、後半終盤には、松木、細谷、佐藤の各選手には、絶好機がありました。3点目を決めきれなかったのが、唯一の課題でしょう。ボール保持率こそ、57:43でしたが、シュートは26:7(枠内は6:1)です。特に、CKは、12:2で、サイドからの攻撃で、ゴールに迫るシーンが非常に多い試合でした。UAEの選手たちは、自分たちが想定した攻撃がほとんどできない状態で、90分を過ごしたと思います。過密日程なので、選手層の厚さの違いが結果に出た試合でした。入れ替わって先発した選手たちは、生き生きと楽しくサッカーができたと感じます。対韓国戦でグループ1位が決まります。勝って準々決勝に進む方に、パリへの道が大きく開けますので、大事な試合です。アジアで勝てないようでは、オリンピックのメダルには手が届かないので、この大会では、全部勝ってもらいたいと思います。

 

日本人の3系統*

 理化学研究所では、3000人以上のゲノム解析から、縄文+弥生+古墳時代の渡来系による3重構造モデル(最新の古人骨のDNA解析に基づく仮説)の正統性を支持する結果を発表しました。さらに面白いのは、ネアンデルタール人やデニソワ人との交雑によって日本人に受け継がれた遺伝子配列が40か所以上見つかったことです。デニソワ人は、2010年に、始めて個体が特定された旧人類で、ネアンデルタール人との近親性があります。メラネシア人などは約5%の遺伝子配列をデニソワ人から受け継いでいるとされています。数万年前に絶滅した旧人類の記憶が、私たちのゲノムの中に生きているというのは、人間という生物を知る上で、実に興味深い発見です。

 

西遊記の結末*

 ようやく岩波文庫の西遊記10巻(中野美代子訳)を読み終わりました。三蔵一行は、宝山で、釈迦牟尼仏と対面して、取教のために到着した旨報告します。そこで、通過した国の印璽が押されている通行手形を検分されるとともに、経典は、35部15144巻から成るので、35部各々から数巻を選択して東土に伝えるようにとの仰せがありました。貰って帰途につこうとすると、一行から差し上げる進物がなかったために、白紙の経典を寄こされたりします。釈迦牟尼仏周辺も、なかなか世知辛いのです。抗議して何とか取り換えてもらいますが、今度は、観音菩薩が、災難簿が80に止まっているのを発見して、9×9=81を満たしていないから、追い風を止めさせて三蔵一行を地上に落としています。何度も妖怪に食われそうになるなど十分に艱難辛苦があったと思うのですが、仏は数字に拘るのです。それでも、帰りの長安への空の旅はあっという間で、約14年ぶりに皇帝に拝謁して、経典をすべて伝えます。その後、一行は再び、空中を飛んで、釈迦牟尼仏(如来)の前に報告に行き、三蔵は栴檀功徳仏、悟空は闘戦勝仏、悟能(八戒)は浄壇使者、悟浄は金身羅漢、白馬は八部天龍馬という名をもらいました。悟空以下は、もともと、悪事を働いたために下界に落とされた妖怪の仲間ですが、仏教に帰依し、三蔵を守った功績を認められ、悟空は仏にまでなったのです。終盤の妖怪との戦いで、悟空は、三蔵の身が危険に晒されると、しばしば天界に助太刀を求めに飛んで行っています。10巻の最後は、仏教賛歌になっており、「十方三世一切仏、諸尊菩薩摩訶薩、摩訶般若波羅蜜。」で終わっています。

 

U23サッカー日本代表対韓国戦*

 グループ1位をかけた試合ですが、前半から優勢に運びながら、後半30分のCKからの失点により、0-1で破れました。韓国は、5バックで守りを固めて、小人数での攻撃に賭けていました。選手の多くに疲労がたまっていたので、賢い戦術でした。決定的なシュートを打たせなかった堅守が、韓国の勝利のポイントでした。日本のシュートは14本でも、枠内には2本しか飛んでいません。韓国の守り勝ちです。やはり、攻撃を牽引する抜群の選手がいないことが、こうした結果を招いたと感じます。確かに、藤尾選手が倒された場面など、PKを取ってもおかしくない場面もありました。運にも見放されました。これで、グループ2位となり、準々決勝はカタールとの試合になりました。負ければ、パリへの道が閉ざされます。U23代表は、正念場を迎えています。難しい試合になるので、出場する選手が、前半から120%の力を出すしかないでしょう。セットプレーからの得点がカギになります。選手たちは、必死にやっているはずですが、この試合は、日本のサッカーにとって、日本海海戦のような天王山です。とにかく勝ってください。

 

伊藤匠7段の初勝利*

 叡王戦第2局は、先手の伊藤7段が、13戦目にして、藤井8冠を初めて破り、タイトル戦を五分に戻しました。後手の藤井8冠が、3三金型の角換わりを選択して、序盤から二転三転する展開でしたが、飛車切りで誤算があったのか、伊藤7段が優勢になりました。終盤は、藤井8冠の勝負手に仕掛けられた罠をうまく回避して、伊藤7段が逆転を許しませんでした。やはり、藤井8冠は、漫然と負けるような棋士ではありません。持ち時間が無くなっても、伊藤7段の指し手は正確で、そのまま押し切りました。これで、対藤井8冠の成績が、1勝12敗となりました。この日が来ることを信じて、精進を重ねた伊藤7段を褒めましょう。藤井8冠のタイトル戦連勝記録も16でストップしました。

 

漫画村の民事裁判*

 東京地裁で、元運営者に17億円の賠償命令が出ました。この人は、既に刑事裁判でも有罪となり、懲役3年の実刑に控訴せずに服役しました。今回、巨額の賠償が認められたのは、世間から見れば当然のことですが、払う気がなく、反省はしていないようです。漫画村事件を契機に国内の海賊版サイトは減りました。第三者がアップロードした画像をサイト内で閲覧可能な状態にするという手段にも違法性が認められたので、この手の海賊版サイトの運営者は言い逃れができなくなっているわけです。なお、著作権法では、2020年改正により、リーチサイトによる海賊版の流布も違法性が明確になりました。他人の著作物で勝手に金儲けをすることは許されるわけはなく、漫画村の元運営者が、そのことを知らなかったはずはありません。取り込んだ儲けは吐き出してもらうのが当たり前です。見せしめだなどという人もいますが、無反省な悪人が得をする世の中にはできないでしょう。当然の報いを受けるのは、まさに自業自得です。同情の余地はありません。

 

背伸び買いのリスク*

 都内のマンション平均価格が、2023年度に1億464万円となり、始めて1億円を超えました。日経新聞によれば、低金利、パワーカップル、資産価値の先高観が、その要因だとのことです。価格高騰で購入を先送りする人もいるため、開発業者は1戸当たりの面積を狭くするなどの対策を講じています。金利上昇が本格化すれば、背伸びして買った世帯へのショックが懸念されます。実需という面では、マンション価格の高騰は限界を超えていると思います。

 

中教審の教員確保策*

 教職調整額を4⇒10%に上げること、残業時間を将来的に月20時間に抑えることなどが、主な改善点です。調整額のアップは、月1~2万円程度ですから、多くの教員からは抜本的な改善にはならないとの指摘があります。また、残業時間の短縮については、業務自体の効率化が必須ですが、具体策は現場に任されているようです。月20時間という目安は、10%の調整額から導き出した数字で、現状を変える方策なしに、つじつまを合わせただけのものです。月20時間に抑えて十分に学校が回るというデータがあるわけではないのです。現場にしてみれば、架空の話をされても、現実的にできませんということになるだけでしょう。また、無理に業務を切り捨てれば、結果として、児童生徒や保護者から苦情が出てもおかしくありません。中教審の委員さんたちにも言い分はあるでしょうが、こうした机上の空論で、教員の人材確保が進むとは到底思えません。学校教員という職に、もう魅力が感じられないからです。特に、小学校では、質も量も足りない状況が続くものと思います。一縷の希望を抱いていた現場の教員たちは、完全に失望したことでしょう。

 

地域の暴走老人*

 75歳の男性が、公園で、女児を殴って怪我をさせ、逮捕された事件がありました。公園に落ちていたゴミを捨てるように指示したところ、ご自分でどうぞと拒絶されたことに腹を立てたようです。会社の上司が部下に指示するような感覚で、地域において、上から目線で指示をするのは、基本的に御法度です。定年後の男性の身の処し方で、一番やってはいけないことを、まだ学習していなかったのです。この場合は、率先垂範ということで、ゴミを自分が拾って捨てるという見本を示すことが、正しい方法でした。また、他人は自分の正しい指示に従うべきだという錯覚を捨てなければ、地域では生きて行けません。女児にバカにされたような気持だったのでしょうが、家庭でも、子どもは、しばしば、なぜ自分がやらなければならないのかと不満を口にします。アニメのサザエさんでも、そういうシーンは、よく出てきます。きちんと理由さえ説明できないならば、他人が動かないのは当たり前なのです。家庭では配偶者が、会社では部下が、黙って理由も聞かずに指示に従ってきたために、自分が偉い指導者だと思い込んでしまったのでしょう。指示通りに動くことを拒否されて女児に暴力を振るうなど、もってのほか、狂気の沙汰です。自分のしたことを、閻魔庁で正当化できますか?こんな人物が、地域の暴走老人になるのです。女児に怪我をさせて、さらに自分は手を出していないなどと嘘を言うようになれば、地域の危険生物の完成です。遅いかも知れませんが、まだ長生きするつもりならば、心を入れ替える必要があると思います。

 

2024年4月22日 (月)

ただひなびたる武士にことならず

日米首脳会議*

 安全保障における同盟関係の強化が大きな成果だとされていますが、具体的に何が約束されたのか、国民にはよく分かりません。岸田総理が国賓待遇で招かれたのですから、アメリカにとって、日本の利用価値という観点から考えれば、対中国封じ込めのネットワークの弟分ということろでしょうか?当面、台湾有事の際に、米軍に対して自衛隊がどういう関係で協力するのかという点が気になります。やはり米軍の後方支援や民間人の安全確保などの間接的な役割になるのでしょうか?米軍の指揮下に入ることはないとのことですから、一緒に戦闘を行うことは想定されていないようです。軍事用の技術開発を共同で行うこともあるでしょうが、最先端の研究において、アメリカが日本の技術を本気で当てにしているとは思えません。ただ、競争的な技術開発に日本からも積極的に参加することは望ましいと考えているかも知れません。日米同盟の未来像を考えれば、アメリカを攻撃した敵と日本も戦う、戦闘において共同作戦を実行するということが考えられます。憲法論がボトルネックになりそうですが、日米同盟が中空の張子の虎のようなものにならないよう、現実的な政策選択が行えるように準備をする必要があると思います。日本だけを一方的に守る役割をアメリカが負うのは不公平だというのは、逆の立場ならよく理解できるのではないでしょうか?一体的に戦うこともできないのでは、どうやって敵を撃退させることができるのか、現実的に考えてみれば、結論は明らかではないでしょうか?結局、安上がりの安全保障は、その時が来てみれば、機能しないと思います。幻想を捨てて、想定されるケースで日米同盟の在り方を深化させるきっかけになれば、今回の訪米の歴史的な成果になるでしょう。レームダック化しつつある岸田総理にそれができますか?

 

地主さんの相続対策*

 地主と家主5月号は、「不動産購入で伝来の土地を守る」がテーマです。相続で資産を減らさないためには、攻撃が最大の防御だとしています。ポイントは、借り入れをして都市部に資産を増やすことです。不動産に関する相続税額の評価が金融資産に比べて低いことを利用した作戦で、以前から当たり前に行われています。常識的には、都心部の千代田・中央・港・新宿・渋谷の5区への投資が最も有力だとされています。もちろん、資金的に余裕がある人向けのアドバイスです。具体例として、福岡市に不動産を所有していた方が、引き継いだ物件を売却して、港区、中央区に所有物件を集中しているという記事が出ていました。こういう投資戦略が典型的な成功例です。もとになる土地などの資産を有する人が、相続税対策も考えつつ、長期的な戦略で価値が下がらない資産を増やしているわけです。同じ程度の地主さんでも、的確に動いていける人とそうでない人の差は、確実に広がっていきます。もっとも、元手がない場合は、地道に稼ぐしかありません。

 

勧進大相撲*

 4月16日に、国技館で、能登半島地震復興支援勧進大相撲が行われました。初切、横綱土俵入、幕内取組といった普段の出し物以外に、熱唱のど自慢、熱戦五番、相撲甚句などの興味深いコーナーが設けられました。司会は、角界きってのMCである北陣親方(元天鎧鵬)らが務めました。のど自慢のメンバーは、NHK福祉大相撲でもおなじみの高安関、阿武笑関、平戸海関のほか、大栄翔関、輝関(石川県出身)でした。なかなか上手です。思い出の名勝負と銘打った親方同士の取組(熱戦五番)も、好評でした。千代鳳には旭日松、若荒雄には北太樹、高見盛には里山、魁聖には誉富士、鶴竜には栃煌山という具合です。相撲甚句は、呼出し利樹之丞さん作で、この勧進相撲のために制作された甚句です。声が良い元勢の春日山親方が唄いました。力士との写真撮影などの企画もあり、長蛇の列になっていました。先場所優勝した尊富士関、大関貴景勝関らは休場でしたが、大成功の勧進相撲興行でした。チケット代が1人平均5000円とすれば、約7000人が入場したので、3500万円の売り上げがありました。佐ノ山親方(元千代の国)、井筒親方(元明瀬山)たちが募金箱を持って寄付を集めてもいましたので、まとめて能登への支援に充てられるはずです。

 

不倫による社長の辞任*

 ウェルシアの社長さんが、週刊誌報道の直前に、自らの不適切な行動の責任を取って辞任しました。私生活上の問題で、会社の経営から身を引くというのは、不思議な感覚です。会社経営上の不祥事があれば、もちろんダメですが、不倫自体は会社に直接打撃を与えるものではありません。多くの消費者が嫌悪感を抱いて、ウェルシアの不買運動にまでなれば別でしょうが、単なる不倫以上の不適切さが隠れているのかもしれません。考えてみれば、CIAOチュールで有名な「いなば食品」の一般職の新入社員9割の入社拒否騒動の方が、よほど社長の進退に関わる問題です。特に、この会社に、経営に関わるべきではない「女帝」が存在しており、その影響力の行使を許しているのが夫の社長さんだということですから、情けない話です。不倫よりもよほど問題です。

 

高齢者住宅への投資*

 地主と家主5月号に、土地活用の方策として、高齢者住宅の開発というケースが紹介されていました。要介護1~2の高齢者が入居対象です。この程度の要介護度の人を受け入れる施設は比較的少ないのです。高齢者住宅の事業者は、医療・介護サービスの保険料収入を収支計画の重要な柱にしており、要介護度が低いと収益性が見込めないのです。紹介されている施設は、サ高住ではないために、1部屋の面積は約11㎡と狭くでき、サ高住の1.5倍の部屋数が作れるとのことです。入居者負担も低価格(食事を含めて10万以下)で、介護度が低いために少ない介護スタッフで運営が可能です。土地活用の一つの方法としても、入居者確保が見込める地域であれば、確かに有望だと思います。なお、かりに要介護度がさらに上がれば、入居者さんには別の受け皿が必要になることには、そのルートを開拓しておくことが必要でしょう。介護が必要な高齢者にとって、終の棲家にはなりません。

 

コメントしない義務*

 知らないことについては口にしないという当たり前のことが、守られていないのは、SNSやテレビの情報番組での自分勝手な発信です。水原一平さんによる銀行詐欺などの犯罪に絡めて、大谷翔平さんに対して、違法賭博の胴元への送金に関与をしたかのようなコメントをしてきた人間たちが、今、逆に責められています。私は、始めから、大谷さんは全くの被害者で、事実上のマネジャーだった通訳の水原さんが口座から勝手に盗んで送金したものだと考えていましたが、結局、捜査当局も、そういう結論に達しました。そもそも、水原さんが大谷さんの極めて親しい友人だから、苦境に陥った友人を助けるために大谷さんが送金してあげたと、根拠のない話を妄想で作り上げて、事件の全体像を取り違えていたものと思います。今さら、ごめんなさいで済む話ではありませんが、自分が推論で作り上げた架空の「事実」をもとにコメントするのは、非常に危険だと思います。呑む・打つ・買うといった遊びに全く興味のない大谷さんの姿を見ていれば、違法なギャンブルに手を出すような人間かどうかは容易に判断できます。仮定の話だとしても、被害者に共犯者のレッテルを張るような言葉は、一切許されるものではありません。そういう無責任な人間のコメントを、面白がって垂れ流しているマスコミも、同罪でしょう。

 

文科省の情報人材育成*

 DXハイスクール1000校という施策を展開することで、2028年度までに理系進学者を6万人増やすのだそうです。施策の目標が、デジタル人材の育成なのか、理系進学増なのか、曖昧な説明ですが、年間最大1000万円をもらって3Dプリンタを導入したり、情報Ⅱという選択科目を設ければ、定義が曖昧なデジタル人材が増えたり、理系進学者(文理融合とは矛盾)が増えるのでしょうか?専門家からは、高校教員だけでは限界があるとの指摘もあります。スーパーサイエンス・ハイスクールは、トップレベルに絞り込むことで珍しく成功した施策でしたが、必然的に指定校が固定化する傾向にあります。少数のエリート養成のためのピークを高めるという意味が強い施策で、サイエンスの裾野の広がりには繋がっていません。DXの方は、より大衆的で、都道府県ごとに平均すれば、21校強になるので、薄いバラマキによる全体レベルの底上げという側面が強い施策です。こういう施策は、明確な効果が出にくいものです。したがって、理系進学者の増加といった成果を、本気で期待すべきではないと思います。

 

半導体の地政学*

 太田泰彦「半導体の地政学」(日本経済新聞出版)は、2021年の出版ですが、現在の半導体を巡る国際情勢の背景を理解するために役立つ作品です。半導体は、最も熱い戦略物資になりました。1990年ごろの自由貿易体制を前提にしたマルチの協議を想い起こせば、今日の状況は、それ以前の、国内産業育成・保護の競争のステージに戻ったような感があります。国家安全保障の名のもとに、国の補助金で堂々と半導体産業の育成が行われています。中国台頭によって、権威主義的な国家体制を維持しているグループとアメリカを中心とする民主主義国家群との溝が深くなりました。まさに自由貿易の終焉です。こんな未来が来るとは、WTOが誕生した時には、思いもしませんでした。トランプ政権は確かに大きく舵を切ったわけですが、バイデン政権は、それを踏襲しています。日本も、その動きに同調して、九州や北海道に半導体の生産拠点を構築するための、国家規模の投資を行っています。著者が言うように、半導体の質と量を確保することは、安全保障上の至上命題になっているのです。アメリカを中心に、日本、インド、オーストラリアは、半導体同盟によるサプライチェーンを築いています。中国を囲い込む戦略です。半導体産業は、シリコンサイクル、ムーアの法則という2つの壁を抱えています。4年周期での好不況の克服、3D技術による集積度の飛躍的向上(他方で消費電力の抑制)が課題なのです。モノつくり産業において日本が再び競争力を持てるかどうかは、半導体分野での課題解決の成否にかかっています。自由貿易の否定は、大きな戦争が起きる前触れのようにも感じますが、戦略物資の確保が戦争を抑止すると信じて、アメリカとの関係を強化するしかなさそうです。

 

基金10年終了ルール*

 国の168事業の基金が設置から10年以内に原則終了させることが決まりました。達成目標を満たしていれば、存続の余地を残しています。例外として、期限を付さずに存続されて基金は、32に止まっています。2022年度末の段階で、基金の規模は、16.6兆円にまで膨張していたので、ようやく健全化への一歩を踏み出したと評価できます。それにしても、国家財政が苦しいとされる中で、基金というかたちで、よくも毎年度の予算編成の外側で国からの支出に太い抜け道を作ってきたものです。基金の膨張に関する責任を問うべきだと思います。また、基金による施策の費用対効果に関して、外部の専門家による客観的な分析が必要だと思います。

 

2024年4月19日 (金)

新都はいまだならず

目黒川のサクラ*

 今年のサクラ(ソメイヨシノ)は、川や沿道に伸びていた枝が短く切られていたために、例年ほど、見事な景色は見られませんでした。サクラは、枝が伸びている先に花がつくことで、アーチ状の形状が作られて、見る者がサクラに包まれているような感覚を生みます。しなやかな枝ぶりが、サクラの美の重要なポイントなのです。枝を切るのは非常に難しい仕事で、プロが担ったはずですが、今年に関しては、残念な結果になりました。樹木としても、生育環境が良くないので、年々弱ってきているのかも知れません。一部、根元から切られて、切り株だけになっているものもあります。都内では有名なお花見の名所になっているので、課題があるならば、対応するために寄付を集めるなりして、立派な状態で次世代に引き継げるようにしてほしいと思います。

 

伊勢ケ浜部屋の混雑*

 相撲協会の方針で、宮城野部屋の親方・力士が、伊勢ケ浜部屋に編入されたために、気の毒なことに、伊勢ケ浜部屋がオーバーキャパシティ状態になっています。そもそも、北青鵬関の暴力問題で被害者になっていた者を含む力士たちには、何の罪もありません。伊勢ケ浜部屋の力士たちも同じです。急に人口密度が増えたわけで、大勢の難民が急に押し寄せた街のような状態です。稽古も、食事も、寝床も、十分なスペースがあるとは思えません。こうした無理なことを推し進めたのは、宮城野親方(元横綱白鵬)を追い出したい執行部の人たちです。これまでの処分に比して明らかな差別扱いで、宮城野部屋の閉鎖は不当な措置です。しかも、相撲協会は、相撲ファンを含む世間に対して、今回の措置について公式な説明を行っていません。自民党の裏金疑惑への対応は、全く不十分ですが、それでも、世間に対して説明責任を果たそうとする努力はしています。相撲協会の執行部は、そうした努力すらしようとしないのです。周辺にいる相撲ジャーナリストも、見て見ぬふりを続けたり、宮城野親方批判に加担しています。スポーツ庁も、知らん顔して無為で過ごすつもりでしょう。伝統を未来につなげるという意味で、様々な課題を抱えている相撲協会ですが、こんな体質では、入門者の減少を止められないと思います。宮城野親方は、死んだふり作戦をしているように見受けます。弟子の養成に力を注いで、部屋の復活を待つつもりなのでしょう。ただ、相撲協会の闇は、その間にも深くなっていきます。

 

曙太郎さん*

 高見山さんが開いた東関部屋で、外国人力士として初めて横綱にまで上り詰めました。大相撲は、若貴時代でしたが、その強烈なライバルとして、曙関は11回の優勝を達成しました。高見山さんにスカウトされてハワイから来日し、相撲という競技を基礎から学んで、長身を生かした突き押しの取り口を完成させた努力には頭が下がります。故障を抱えながら、横綱としての責務を果たそうとする姿も、立派でした。親方として角界に残らなかった理由は、関取になれずに去って行く若者が大半であるにも拘らず、嘘をついて入門を勧めることに嫌悪感があったからだとのことです。心根が優しい人なのです。プロレスへの転身は、もともと興味があったとのことです。彼の存在が興行を支えていた時期がありました。プロレス界にとっても、恩人なのです。長い闘病の末に、54歳で逝去されました。ご冥福を祈ります。

 

名人戦第1局*

 出だしから、空中戦のような力戦調の展開が続きました。形勢は互角の状態が長く続きます。2日目の20時ころには、豊島9段が7:3で優勢な局面を作りました。豊島9段が5九飛と打ち込んで勝ち筋に入ったと受け止めましたが、実際には、藤井8冠の応手が巧みで、勝ちへの道は非常に細く、一手最善手から離れれば、忽ち逆転の可能性があります。4八龍と金を取っていれば、豊島9段の勝ちになったと思います。豊島9段の一瞬の隙を逃さず、ようやくチャンスが来たことを悟って、藤井8冠は3七桂と指して逆転しました。優位に立った藤井8冠は、4一銀で止めを刺しました。流れるような決め技は、他の追随を許さない華麗な棋譜でした。最高峰の戦いに相応しい内容でした。後手の豊島9段の健闘が光りました。実力ナンバーワンの藤井8冠を追い詰めた将棋は、見事でした。この1局は、勝たせて上げたかったと思います。それにしても、藤井8冠は苦しくなっても負けないですね。これで、タイトル戦16連勝で、大山康晴さんの記録にあと1つと迫りました。

 

Abema地域対抗戦決勝*

 戦前の予想通り、中部が5-1で関東Bに勝利して優勝しました。5勝のうち、藤井8冠が4勝を上げて、圧倒的な実力を示しました。残りの1勝は、初戦に出場した服部6段が上げたものです。監督の杉本8段を始め、名人戦に挑戦中の豊島9段や竜王戦に強い八代7段は、温存したままでの勝利です。藤井8冠の4つの勝利は、味のある内容でした。永瀬9段には、9六角打ちで一挙に優位に立ちました。増田8段には、厳しい攻めにも的確に玉をさばいて決め手を与えず攻めを切らせて。直後に鮮やかに寄せ切りました。森内9段には、従来の藤井曲線に近い展開で、一度もリードを許さずに押し切りました。優勝を決めた渡辺9段との対局では、再び受けの強さを発揮して、評価値96-4の圧倒的に不利な状況の中でも決め手を与えず、5五香打ちからの大逆転で勝利をものにしました。渡辺9段を相手に詰みまで首の皮一枚の状態で、こういう芸当ができるのは、藤井8冠しかいないでしょう。Abema地域対抗戦の通算成績は、15勝1敗でした。実力者揃いの大会で、この勝率は驚異的です。まさに戦型に関わらず、オールラウンドに最強を誇っています。これほど負けにくい棋士は、他に存在しません。今や飛んでもない怪物級です。

 

非常勤講師の雇い止め*

 関西の私大で英語科目を、毎期、5~6コマ教えていた非常勤講師が、雇い止めになりました。理由は、学生による評価が低かったからということでした。加えて、単位の履修に関して、不可の比率が最大20%(他の非常勤は1%前後)となっていた点が問題視されました。京都地裁では非常勤講師側が勝訴し、大阪高裁では和解が成立しました。大学が設定している配点基準は、提出課題30%、授業態度20%、筆記試験50%というもので、同じ基準で評価を行っている他の非常勤講師は、独自の裁量で不可を付けることを避けていたようです。成績評価が厳格な講師への不満が、学生による評価の低さに反映してもおかしくありません。だから、学生アンケートを、教員評価に直接結びつける大学は、ほとんどないのです。日本の大学生が一般的に勉強しないのは、大学の成績評価が甘いからです。中堅以下の私学では、授業を全く理解できていない留学生にさえも単位を落とさない(不可はつけない)ことが、学内での暗黙の了解事項になっています。特に、外国語のような必修科目では、不可=留年ということにもなり、学生にとっては、不公平感が残ります。私学経営者の立場からは、建前通りに評価をされては、志願者が減る、休退学者が増えるという不安があり、空気を読んで、穏便に処理してほしいと願うのは、不思議ではありません。お客様扱いで、気分良く卒業してもらうだけの存在に堕した大学は、大学の名にふさわしいものとは言えません。しかし、そんな存在にしてしまったのは、大学の数を増やし過ぎたからです。この非常勤講師による訴訟は、大学の構造的な問題が、根本にあるのです。

 

U23サッカー日本代表対中国戦*

 前半17分の西尾選手の退場で、試合がつまらなくなりました。中国側が退場狙いで仕掛けてくることは、頭に入れておくべきでした。故意に肘打ちをしたわけではないので、一発レッドは厳しすぎますが、要するに不注意でした。中国の側には少なくとも3点取れるチャンスがありました。GKが好セーブで阻止して、事なきを得ましたが、薄氷を踏む勝利でした。後半25分過ぎに、選手交代で、やっと少し攻める展開になりましたが、一時はシュート数が1-9になっていました。10人になったからと言って、このレベルの相手に、守りすぎました。1-0での勝利は、今後のグループリーグの1位突破には、不十分な結果です。3戦目の難敵韓国戦では勝たなければならなくなりました。西尾選手は出場停止でしょうが、怪我人が出なかったことだけが、救いです。

 

芝田山親方*

 元横綱大乃国の芝田山親方は、広報部長から相撲教習所長という閑職に追いやられました。このところバランスを欠いた運営が目立つ八角理事長を諫めたところ、理事長に楯突いたとして執行部を外されたとのことです。宮城野親方への不当な処分と言い、相撲協会の内情は非常に危うい状態です。スイーツに詳しい芝田山親方は、国技館でも、パンの売り場に座っていて、ファンとの接点を大切にしていました。足が悪いのですが、NHKの解説の仕事などがなければ、毎日彼の姿が見られました。ビスケットのつかみ取りなどのサービス企画も実施してくれ、親方の脇に立って一緒に写真を撮らせてもらっている人も大勢いました。こういう懐の深い親方は、意外に少ないのです。八角理事長などは、公式の御挨拶の場くらいしか姿を見せません。審判部、警備、売り子などをやっている人たちは別にして、毎日何をしているのか、さっぱりわからない親方たちが多いのです。宮城野部屋の閉鎖など、相撲協会の最近の運営は、めちゃくちゃに近くなってきました。八角理事長自身に問題があるので、協会の主要な親方たちで、彼の首に鈴をつけるしかありません。長期政権の末期になると、誰にも独裁的な振る舞いが出てきます。傷口が広がらないうちに、自ら次にバトンを渡すことが、賢明だと思います。その意味で、芝田山親方は、義の人だと思います。彼を孤立させるようでは、力士=武士とは、とても言えないでしょう。親方衆、ぜひしっかりしてください。

 

政治家の学歴詐称問題*

 小池百合子さんについては、石井妙子「女帝 小池百合子」(文藝春秋)という本でも、当時の語学力や学習状況などに鑑みれば、カイロ大学の卒業は不可能だったはずとの指摘がなされていました。テレビのニュースキャスターとしてデビューする際の強力な履歴として、最優秀な成績でカイロ大学を卒業されたことが売りになっていましたから、今さら、ご本人としては学歴詐称を認めるわけにはいかないでしょう。しかし、大学の卒業は、比較的簡単に証明できる事柄です。在京エジプト大使館から、(偽装工作と指摘されるような)中途半端な事実確認の文書を公表するまでもなく、卒業証書や成績証明書をきちんと自ら公表すれば、疑惑は直ちに払拭できます。上記の書籍によって名誉棄損されたのなら、訴えても良さそうですが、それもしないのは、主張の裏付けが出せないからではないかと勘繰られます。いずれにせよ、この件については、いい加減、真実を証明する客観的な証拠で、事実関係を明らかにしてほしいものです。これまで小池さんを支持してきた多くの選挙民に対して、きちんと説明する義務があると思います。もしもカイロ大学卒業が嘘だったら、政治家をこの機会に引退されるべきでしょう。

 

2024年4月16日 (火)

家はこぼたれて淀河に浮かぶ

追いつめられる教師たち*

 齋藤浩「追いつめられる教師たち」(草思社)は、教師の我慢も限界に来ているという強いメッセージを発しています。無責任な保護者が持ち込んでくるクレームやリクエストに応える余裕はないのは、当然のことだと思います。あらゆるクレーム処理を現場の教師に委ねるのは、理不尽だということも分かります。教育委員会という行政組織が、住民からの声を的確に判断して、しかるべく対応できていないことが、現場の教師を苦しめています。親はきちんと躾をしてから入学させろというのも、そのとおりです。教師は、親に代わって子どもの躾をする責任者ではないからです。著者の批判の矛先は、文科省や教育委員会にも向かいます。教師不足の根本原因は、残業代が基本給の4%しか出ないことではない(かりに10%に上がっても状況は変わらない)と述べています。現場を知らない役人による意思決定の弊害、「#教師のバトン」プロジェクトの欺瞞、教育委員会は子どもの使いのようなまねをするなというような厳しいフレーズが並びます。覚悟のない人間が校長になるなとも述べています。全体として、教師の立場を代弁して、社会全体に対して、危機的な状況を認識してもらいたいという情熱が迸っている本です。ただ、処方箋などあるはずがないというのは、著者なりに開き直っているのかもしれませんが、現場の教師の環境を良くするという意味では残念なことです。奇跡を待つばかりというのは、教師出身の誰かが改革をやってくれるだろうという意味なのでしょうか?それでは、追いつめられた教師は、諦めて辞めて行くしかないと思います。結局、状況は悪いままで、何も変わりません。

 

2050年の世界*

 マクレイ「2050年の世界」(日本経済新聞出版)は、英国の経済ジャーナリストによる近未来の世界を地域ごとに予測した作品です。アメリカは、国内の分断がありつつ、偉大なグローバルリーダーであり続けるとしています。中国は、世界における然るべき地位を取り戻すとしていますが、環境、先端技術、国内安定がカギになると述べています。香港、台湾には、悩ましい未来があるとのことですが、台湾への中国による軍事侵攻はないと見ています。インドについては、心躍る面があるが、道は険しいと見ています。インフラ、教育、経済格差という課題の解決が容易ではないからです。日本は、高齢化社会のパイオニアであり、経済構造、財政状況、地政学(中国台頭)が課題だとしています。結束力のある安定した社会であり続けるが、世界にあまり関心を持たなくなると見ています。要は内向きになるということなのでしょうが、それで日本が生きて行けるのか疑問です。最後に、10の不安が列挙されています。アメリカの政治体制の崩壊、中国・インド・アメリカの関係悪化、ロシアの暴走、サブサハラの貧困、宗教戦争、環境悪化と気候変動の深刻化、中東の不安定化、情報革命の弊害、民主主義への脅威の10項目です。悲観的な項目が並んでいるので、その後に、前向きな変化への希望を付け加えています。こういう本で、英国から見た大局を学ぶことは、国際社会の動向を見る際の基軸になると感じます。

 

能登の生活再建*

 NHKのクローズアップ現代で、能登の生活再建の困難が取り上げらえていました。住宅が一部損壊と判定された夫婦は、再建費用への補助がなく、しかも復旧工事の見積もりが1000万円と聞かされて、困惑していました。一部損壊の住民は、仮設住宅への申し込みもできません。住宅に隣接する輪島塗の工房も、再建には借り入れを行って、資金を用意した後に、4分の3の補助金が支給される仕組みなので、金融機関からの借り入れを躊躇しています。金沢で復活した輪島出張朝市に出店して、少し明るさを取り戻している姿には、希望の光が見えましたが、復興への支援制度が、総費用に対して、平等に配分されるわけではないので、こうした不運な被災者が取り残されてしまう事態を危惧します。被災地の人口減少は止められそうにありません。老人介護施設も、休業状態の中で、多額の社会保険料の請求が来ており、苦境に立たされています。再び、利用者や従業員が戻ってくるのかさえ、見当がつかない状態です。街の形が崩れてしまえば、サービス業は、成り立たなくなる恐れがあります。被災から丸3か月が過ぎ、先行きの見通しを立てて上げないと、健気に頑張っている人たちがストレスで押しつぶされていくのではないでしょうか?

 

部活の異常な空気*

 関西大学系列高校の強豪ハンドボール部で、監督らによる部員への暴行(丸刈り)が明るみに出て、学校が注意処分で幕引きを図っていることに、批判が巻き起こっています。暴行は、犯罪です。しかも、暴行は継続的に行われてきたようです。指導に不満で転校した生徒もいるとの報道を目にしました。暴行は、教育とは無関係です。要は、監督の命令が絶対だと刷り込むために、部員を支配する方法として行っているのでしょう。カルト教団が使っている手法に似ています。高校の部活動は何のためにやっているのでしょうか?監督らの誤った指導方法は、なぜ野放しにされているのでしょうか?強豪校を率いている部活動の監督らが、しばしば、こうした世間の非常識に当たる行為を、平気でやっている姿を見ると、彼らを育てた前世代の指導者が、最悪のロールモデルだったことを想像させます。いい加減、このあたりで、負の連鎖を断ち切るべきでしょう。暴行を働いた指導者には、指導者失格として、退場してもらうしかありません。

 

タル・エル・ハマム遺跡*

 NHKBSのフロンティアで、旧約聖書のソドムの逸話の原型になったと考えられる隕石衝突による古代都市の滅亡という有力な仮説が紹介されていました。その遺跡が、ヨルダンの死海付近にあるタル・エル・ハマム遺跡です。考古学者のみならず、宇宙物理学者らが参加して、遺物から隕石衝突(空中爆発)の証拠を見出して、論文発表しています。電気技師として定年を迎えたエンジニアが、第2の人生として研究に加わり、博士の学位を取得したというエピソードも紹介されていました。旧約聖書の記述が、史実をもとにしているたしいという発見は、非常に大きなインパクトがあります。日本でも、名古屋大学が、エジプトのピラミッドのスキャンプロジェクトに、ミュー粒子の観測による知られざる内部空間の発見に貢献しています。素粒子物理学と考古学のコラボです。ピラミッドの未知なる空間は、恐らく、非破壊の方法で調査を進めるでしょうが、大きな空間らしいものが見えたことは、エジプト考古学の大きな発展に繋がりそうです。

 

坂本龍一さんの最期*

 NHKで、2023年3月に亡くなった「教授」の最後の日々をまとめた番組の放送がありました。ご本人は、4人の子どもたちに、良い人生だったと述べていましたが、最後まで音楽に取り組んだ美しい人生だったと思います。盟友だった高橋幸宏さんも、1月に亡くなっており、死後の世界があれば合流していることでしょう。闘病で入院している最中は、音楽を聴く体力がなく、ひたすら自然の音をYouTubeで聴いていたという話が印象的でした。その経験を、その後の音楽制作に生かして作品つくりをしている点が非凡です。彼が残した足跡は、新しい音楽への継続的な挑戦でした。根底にあるのは、クラシックですが、特に、傾倒したというドビュッシーを感じます。放送では、愛した女性に関しては、伏せられていましたが、少なくとも、学生時代の結婚、矢野顕子さんとの再婚、ニューヨークの恋人(マネジャーさん)と3人の女性がいます。坂本さんは、世界的な作曲家で芸術が専門ですが、右脳ばかりでなく、左脳も一流で、読書家だったと思います。退院して仮住まいに戻った時には、カント(純粋理性批判)や柳田国男(山の人生)などを読んでいました。芸大大学院時代に、三善晃教授から、作曲した楽曲に対して、理論が勝ちすぎていると批評されたのは、左脳が発達していたためでしょう。高橋幸宏さんに由来する「教授」というニックネームは、坂本さんの本質を突いています。日本の音楽界は、小澤征爾、坂本龍一と、相次いで巨星を失いました。彼らの後継者を名指しすることは、今のところ難しいと思います。

 

TikTok禁止法*

 中国発の動画配信サービスであるTikTokの利用禁止などを定める法案がアメリカ議会下院を通過しました。中国による世論操作への懸念、中国への個人情報の流出の不安が、高まっているためです。若者の間で反ユダヤ主義が拡大しているのは、TikTokにおけるパレスチナ寄りの投稿が圧倒的に多かったためだとの分析もあります。中国の国家情報峰によって、国家の情報活動への協力が義務付けられているため、TikTokが中国政府の意向を忖度していると考えるのは、自然なことです。アメリカ議会の動向は、少なからず、日本にも影響があると思います。利用者は、自分を守るためにも、TikTokの裏側に目を向けるべきでしょう。

 

なでしこの変調*

 サッカー女子日本代表は、アメリカでの国際親善試合で、アメリカとブラジルと対戦して、1-2、1-1(PK戦で0-3)と2連敗しました。試合の中継もないので、内容の詳細は不明ですが、パリ五輪を前に、不安を残す結果となりました。アメリカとは、点差以上の差があるようです。アメリカ代表への期待の大きさは、観客数の5万という数字を見れば、よくわかります。五輪でも優勝候補ナンバーワンでしょう。ブラジルには、シュート数を見る限り、押し気味だったと思われますが、後半26分に追いつかれています。PK戦は相手のGKが素晴らしかったようですが、完敗です。パリ五輪では、メダルを目指しているはずですが、そのためには、少なくともブラジルクラスには勝たないと、道は開けません。この2試合に出場した選手の中から、代表が選ばれるでしょうから、セットプレーの精度を上げるなりして、本番に備えてほしいと思います。今回は、ベスト8ではダメで、何が何でもメダルを取らないと、女子サッカーが国内ではマイナーな存在に転落してしまうと思います。国際親善試合の報道も無味乾燥なベタ記事でした。

 

マンションの建て替え*

 NHKスペシャル取材班「老いる日本の住まい」(マガジンハウス)には、建て替え済マンションが300棟に留まる原因として、建築可能な容積率に余剰分があるケースが少ないということがあります。余剰分を使って増築できなければ、負担がすべて所有者に掛かってきます。近年建て替えたマンションでは、平均で2000万円近い費用が発生しており、この負担に耐えらなければ、建て替えに反対する、建て替え計画が決まれば売却するしかないということになります。また、建て替え中は、引っ越さなければなりません。それにもお金がかかります。所有者(入居者)それぞれに事情が違うので、簡単に合意が取れるはずもなく、建て替えという選択肢のハードルは非常に高いのです。管理組合が長年の先送りに陥れば、最終的には廃墟化しかなくなります。アメリカでは、空き家が目立つ地区の住宅建設を制限して、緑地や農地に転用するという大胆な都市再開発計画で成功している例があります。住民参加による街づくりで、空き家問題を克服しています。人口減少が避けられない街を残すための方策です。そうしなければ、自分たちの街が、機能的に維持できなくなるという危機感があるのです。若者が流出する一方で、街全体が高齢化するということも避けなければなりません。限界集落のようになってからでは、手遅れなのです。危機意識を共有して、街づくりの観点で行動を起こしている人たちは、空き家問題を考える際、見習うべき存在だと思います。

 

2024年4月13日 (土)

さるべきもののさとし

新プロジェクトX*

 平成から令和にかけてのテーマを取り上げる新シリーズが始まりました。第1回は、東京スカイツリーでした。工法設計と工事総括、とび職、鉄板のプレス加工に焦点が当たっていました。以前のシリーズでは、東京タワーが取り上げられていたので、テーマの選択も、基本的には、同じ路線のようです。私たちの世代には、違和感はありませんが、Z世代と言われる若い人たちに、未知の領域に挑むプロジェクトの一端を担って、知恵と経験を生かして心血を注ぐという人間たちの姿がどう映るのか、興味深いところです。単に、会社の歯車と見られてしまえば、ロールモデルにはならないかもしれません。3つの企業体から集められたとび職の人たちに、昔ながらの花見の宴会を契機に、一大プロジェクトを必ず成し遂げるという仲間意識が芽生えるという話は、ノミニケーションを嫌う若い人たちにどれほど共感が得られたでしょうか?エンジニアリングの仕事は、地味で、できて当たり前だと勘違いされていますが、実際の現場では、安全と工期を守ることが、どれほど大変かを理解しないと、仕事の本当の価値は実感できないと思います。歴史のある組織には、大なり小なり、プロジェクトXが眠っているはずなのです。新シリーズでは、ものつくりに捉われず、日本が世界に誇る成果を上げたプロジェクトを取り上げてほしいと思います。

 

叡王戦第1局*

 先手の藤井聡太8冠が、角換わりで、伊藤匠7段に先勝しました。途中で、千日手模様になりましたが、5筋の位を取ってからの伊藤7段にも、有利になるチャンスがありました。藤井8冠が敵陣に角を据えてから5六銀と打って、厳しい攻めに出ましたが、伊藤7段も、角を打ち返して、一歩も引かない姿勢を示しました。その後、94手目で8七歩成としていれば、後手有利にできたようです。そこが、分岐点となり、藤井8冠に形勢が傾きました。そこからの藤井8冠の指しまわしは、粘りさえ許さない圧倒的なものでした。従来のじわじわ右肩上がり型ではなく、後半一気の急上昇型での勝利でした。藤井8冠は、最近、勝ち方を進化させているようです。中盤までは互角の展開で、伊藤7段も後手ながら勝ち筋を攫みかけていたので、惜しい一局でした。どうしても藤井8冠に勝てない日々が続いていますが、諦めることなく立ち上がって、研究を深めて挑戦し続ける姿は求道者のようです。タイトル戦での臥薪嘗胆が続きますが、次の先手番で、まずは1勝を期待しています。

 

立川晴の輔さん*

 志の輔師匠の一番弟子で、談志師匠の孫弟子になります。その談志師匠が企画して始まった笑点のレギュラーメンバーに、晴の輔(はれのすけ)師匠が選ばれました。ご本人も志の輔師匠も感慨深いことでしょう。立川流からも入ることで、首都圏の落語4団体から出演者が揃ったことになります。若手大喜利のメンバーでしたので、候補者の一人でしたが、視聴者からは、桃花師匠、わさび師匠の名前が先に挙がっていたので、ちょっとしたサプライズになったと思います。晴の輔師匠がどういうキャラを作り上げるのかは、まだ分かりませんが、立川流というスパルタ集団、東京農大出身(農学部)という食の専門、高校時代を過ごした津山市(岡山県)、若見えという特徴(一之輔、宮治の両師匠より年上には見えない)、趣味の音楽(ロック)などを生かすことになるでしょう。これまでのメンバーの守備範囲になかったマンガ・アニメに手を出すという可能性もあると思います。なお、過去の経緯から分裂状態にある首都圏の落語界ですが、4団体の合流という課題も早く実現してほしいと思います。立川流や圓楽党の落語家も、寄席に出演してもらった方が楽しいからです。笑点での4団体揃い踏みが、その一歩になればと考えます。

 

大相撲チケット争奪戦*

 国技館のチケットが取りにくい状態が激しくなっています。大相撲ファンクラブで先行販売がありますが、すべて落選してしまう人が続出しているのです。初日や千秋楽などの土日祝日が、特に競争がひどい状態です。相撲協会が扱っているチケットは、一般販売による早い者勝ちまでゲットの機会が数次にわたって設けられています。やってみればわかりますが、自分が行きたい日のチケットを確保するのは、複数の人の協力を得るなど相当な努力をしなければ難しいのです。鹿児島からの航空チケットを押さえていながら、ファンクラブで国技館の席が確保できずに苦労している人に、我が家が助太刀したこともあります。国技館に行った人は分かると思いますが、幕内の取り組みが始まっても、場内の席は埋まっているわけではありません。そもそも、相撲協会がお茶屋さんや旅行業者さんに扱ってもらっている席がどれほどあるのか、よく分からないのです。私の観察するところでは、多くの升席だけでなく、2階のイス席でも前方のS席の最前列などは、お茶屋さんがかなり占めていると思います。混雑している日を避けてファンクラブで席を確保しても、最前列には当たらないことが殆どだからです。また、修学旅行などで来ている生徒さんたちは、途中から来る、最後まで見ていないことも多いので、2階のB席などの一角が空いているということが良くあります。こういう席は、目ざとい観客が勝手に使っていますが、5時以降入場できて、2階の空いている席に座って良いとする席指定のないチケットを売ることも、相撲協会で考えたらどうかと思います。

 

立ち退き交渉*

 賃貸物件において、老朽化による建て替えなどのために、借主さんに立ち退きをお願いするケースがあります。交渉役を外部にお願いする場合、不動産仲介業者さんは、専門ではないので、注意が必要です。立ち退き交渉は、まず、事情を説明して、立ち退きをお願いしたい旨申し入れる書簡を送ることから始まります。立退料は、一種の協力金なので、金額に標準はありませんが、一般的な目安は、賃料の6~10か月分程度です。立退料は、相手との交渉次第なので、難しい調整になれば、交渉役に支払う謝礼も高くなります。無駄に拗れないことが肝要です。基本的に合意が成立すれば、引越し先を探す手助けをします。借地借家法は、借主保護の色合いが濃い法律なので、貸主の都合で退去をお願いする場合、入居者さんは拒否することができます。あくまで、退去の合意を取り付けることが必要なので、立退料が多少高くなっても、立ち退いてもらう方が、結局、貸主の利益になります。特に、1人だけが拒否することになれば、他の部屋は空室のままになり、収入見込みが大きく下がります。交渉失敗のリスクは、非常に大きいのです。具体的に予定があれば、様々なケースについて情報を持っている東住協さんに、早めに相談に乗ってもらったら良いと思います。

 

三村明夫さんへの冷遇*

 三村さんの「私の履歴書」が日経新聞に連載中ですが、日本製鉄名誉会長まで務めている社員が、ハーバード大学で修士を取得して戻った時に、30代前半で思いがけず窓際族扱いを受けたという苦い思い出を語っています。人材リサーチ会社に転職相談をしていたくらいですから、当時の課長による仕事を与えないという冷遇(今ならパワハラ)がいかに理不尽なものだったか分かります。今なら、破格の待遇で外資系に転職していることでしょう。日本の組織の中にいれば、時に三村さんのように理不尽な冷遇に遭うことがあります。人生の岐路だったと述べていられますが、外資系に転職した三村さんの姿も見てみたかったと思います。三村さんは未だに冷遇の理由が分からないと述べていますが、推測するに、彼の潜在的能力や外国経験への嫉妬ではないでしょうか?マネジメント能力が低く、自分に自信がない人間は、結局、自分以上の器を持つ人材を使うことができないのだと思います。私の人生経験でも、それに類することを目にしたことが幾度かありました。三村さんは、冷遇でも自分が潰れない自信があったからこそ、転職を断ったのだと思います。三村さんほどの人材が冷遇で流出しなかったのは、会社にとって僥倖でした。

 

国民スポーツ大会*

 国民体育大会を衣替えした国民スポーツ大会は廃止するのも選択肢だとの指摘が、宮城県知事(全国知事会の会長)からありました。都道府県にとって財政負担が重くなっていること、有名選手が参加しなくなっていることが主な理由です。かつては、主催する都道府県が総合優勝するということが、既定路線になっていました。そのために、競技力の高い選手を教員などに採用して、天皇杯(皇后杯)を獲得するために得点を稼ぐというやり方が当たり前にさえなっていました。体育館や陸上競技場などスポーツ施設の整備も、国体の開催の重要な意義でした。その昔は、道路整備まで行われて、「国体」道路が各地にあります。何よりも、旧国体には、天皇・皇后両陛下がご行幸になることもあり、主催県にとって一大イベントだったのです。今は、以前のような無理なことは行われなくなり、開催する都道府県にとって、価値と負担のバランスが崩れている状態なのです。マイナーな競技にとっては、全国の主な競技者が一堂に会する大切な場なのかもしれませんが、主催する側が重荷に感じているようでは、まさに辞め時だと思います。持ち回りで行われてきた昭和のイベントは、見直しの時期にきています。

 

カカオ危機*

 大生産地であるコートジボワールやガーナのカカオの不作が切っ掛けで、投機筋に目を付けられて、カカオ価格が高騰しています。カカオの生産増には、3~5年を要するので、供給不足は短期間で解消することはないとのことです。この1年間で実に3倍という価格上昇で、トン当たりの価格は、ついに銅を抜きました。そんな農産物はありません。私は、チョコレートが好きですし、ケーキもチョコレート系を選ぶことが多いので、カカオの高騰は気になります。恐らく、国内でのチョコレートを使ったお菓子の価格も上がっていくでしょう。貴重なカカオですから、心して味わうようにしたいと思います。

 

ワインと気候変動*

 ボルドーの国立農業科学学術院によれば、スペインやイタリアなど伝統的なワイン生産地の約9割が消失する恐れがあります。ワイン用のブドウは、気温10~20度で育ちますが、高温になれば、収量や品質の低下が避けられません。グルナッシュなどの高温にも耐える品種もありますが、シャルドネやピノ・ノワールで作るワインほどの評価は直ぐには期待できません。もちろん、気候変動によって寒冷地で生産が可能になる面もありますが、そういう産地のワインが有益な産業になるには、相当な時間がかかるでしょう。ボルドーやブルゴーニュというワインの産地は、一朝一夕にできたわけではないからです。私も、コスパを考えて、日常的に呑むワインとしては、ボルドーのワインを選ぶことが多いです。せめて自分の寿命が尽きるまでは、ボルドーの産地に大きな変動がないことを祈ります。ぶどうばかりではなく、野菜や果実の生産者にとって、気候変動は死活問題なのです。

 

2024年4月10日 (水)

一つとして破れざるはなし

津波予測*

 4月3日朝の台湾付近でのM7クラスの地震による、沖縄八重山地方等への最大3メートルとされた津波警報には驚きました。幸いなことに、各地に到達した津波は最大でも30センチ程度で、警報⇒注意報⇒解除と、比較的短時間で避難の呼びかけは解除されました。それでも、那覇空港(海抜ほぼゼロメートル)では、欠航が生じたり、搭乗を待つ人たちが上階に密集したりで、実質的に少なからぬ影響を受けました。離島でも最大3メートルという予報には、島には高地もないので、観光客などは肝を冷やしたのではないでしょうか?3メートルが30センチで済んだのは、良かったということになりますが、無駄な避難が繰り返されれば、気象庁の呼びかけが、オオカミ少年のようになってしまいますので、予測システムの改善が必要ではないかと思います。気象庁による説明では、海底地形の変化により発生するエネルギーの計算では、逆断層型で起きる最大値を想定しているとのことです。恐らく、ここでの計算上の誤差が大きいものと思われます。波の伝搬と海岸付近での高まりの計算に関しては、到達地点までの距離と沿岸の海底地形によるシミュレーションを行っているとのことです。津波からの避難は一刻を争うので、迅速に警報を出して各自に避難を開始させる意味が大きいものと思いますが、今の予測システムでは、誤差が大きすぎます。最大値だけでなく、中位値も発表したらどうでしょうか?併せて、それぞれの確率も提示すれば、各自の避難に有用な情報になると思います。このままでは、気象庁の警報は、人騒がせなだけだと受け取られかねません。ぜひ改善してほしいと思います。

 

裁判官の弾劾*

 SNSでの度重なる投稿が被害者遺族の心情を傷つけたということで、裁判官が法曹資格を失いました。裁判官という立場に照らせば、遺族へ精神的苦痛を与えるという点への配慮が足りず、弾劾もやむを得ないと感じます。民事専門の裁判官として、著書も多数で、専門性には定評のある方だっただけに、惜しいことだと思います。SNSでは、下着姿の自撮りの写真も投稿しており、裁判官という社会的な存在の枠を、意図的に逸脱しようという動機があったのかも知れません。司法という法治国家の砦を守る裁判官として、相応しくないという印象を世間の人たちに持たれてしまったのは、残念なことです。裁判官にも国民として自由があるわけですから、同様に寛容な目で見るべきですが、権限と責任が重い職であるだけに、らしくない行動には、どうしても嫌悪感を抱かれてしまいます。枠をはみ出る自分を抑えて、才能を生かす道があったのではないかと残念に思います。かくなる上は、自重して、5年後に復活する可能性を追求してほしいと思います。

 

リニアと静岡県*

 頑なに県内での工事に反対してきた川勝知事が、6月に辞職すると表明したので、リニア完成への大きな障害が取り除かれたような報道がなされています。これまで静岡県から提起されてきた水資源の減少、南アルプスの生態系への影響、残土の処理などの問題は、解決したのでしょうか?JR東海が2027年の開業を断念したことで、静岡県が満足したということなら、全く理解不能です。急な辞意表明は、これまでの県知事の主張の正統性への疑いを抱かせるものに過ぎません。この知事を選挙で選び続けてきた静岡県民は、記者会見の場で職業差別に繋がる発言を追及されている最中に行われた突然の辞意表明を、どう受け取めているのでしょうか?リニアの「迷走の6年」を演出してきた静岡県が、どんな実利を得られるのか、注視していきたいと思います。冷静になって見れば、扇動されてやり過ぎたということなら、早く軌道修正した方が良いでしょう。そうなることを期待したいところです。単に、難癖をつけて開業を遅らせることが目的だった(知事が2027年開業断念を一区切りの成果だと述べている)とすれば、遅延したことによる損害の一切は、静岡県に負担させてほしいと思います。静岡県民も、遅ればせながら騙されていたことに気が付くでしょう。

 

裏金39人の処分*

 離党勧告が2人以外には出ないというのが、身内をかばう姿勢が色濃く出ていると感じます。裏金の使途についても、きちんと証拠とともに説明しているわけでもなく、裏金が500万未満の議員さんは、お咎めなしというのも、甘さの表われです。ある意味で、離党勧告を受けた2人は、スケープゴートになったと言えるでしょう。この程度で幕引きを図るのは、野党への支持が盛り上がらないためとも考えられます。今後は、裏金事件を踏まえて、政治資金の透明性を確保するための法制化に、この件の焦点が移っていくことになりますが、議論の過程において、裏金システムの運用を決めた人間の責任に関して明らかにすべきだと思います。また、裏金の使途に関しても、きちんと調査し取りまとめるべきです。

 

皇族数の確保方策*

 政府有識者会議の素案では、女性皇族が結婚後も皇族に残る、旧皇族の男系男子を養子として皇族に復帰させるという2案を軸に、皇族数を確保する方向で、与野党の合意形成が行われるようです。保守系の政党には、女性宮家は女系天皇に繋がりかねないという懸念があるようですが、女性の天皇がなぜ悪いのか、理解できません。イギリス王室のような男女平等の皇位継承の考え方で、スッキリできないものでしょうか?ただ、女性皇族が結婚後も皇族に残ってくださるのか、例えば秋篠宮家の状況などを踏まえると、決して楽観はできないと思います。皇族に生まれたとしても、自分が天皇という重い役割を担うのは避けたいというなら、自由を認める余地を残すべきかもしれません。皇族数の確保の議論についても、当事者である皇族の方々のご意向がどこまで汲まれているのか、不安を感じます。今後も基本的に女系天皇は認めるべきではないとの考えが、果たして共有されているのでしょうか?

 

マクドナルド時給20ドル*

 カリフォルニアのマクドナルドの時給が、20ドル(約3000円)になるとのことです。アメリカの雇用統計によれば、予想以上に雇用は伸びており、インフレが収まる気配がありません。アメリカの利下げは遠のくばかりで、日米の金利差によって円安が収まりません。それにしても、日米の賃金格差があまりにも大きいことには驚きます。もちろん、ハンバーガーのランチセットの価格も、これに比例していますので、日本人がアメリカに行けば、物やサービスの割高感に悩まされ、逆に、インバウンドは、何を食べても、何を買ってもお得感が一杯です。結局、円が弱すぎるのが、問題なのではないでしょうか?海外への渡航費も、一昔前に比べて、非常に値上がりしています。学会出張などでは、JALやANAは使えず、中国の航空会社を使うなど、涙ぐましい節約を強いられていると聞きます。着実に金利を上げるなりして、円の対ドルレートを正常化してほしいと願います。就活生も、カリフォルニアのマクドナルド以下の待遇しかできない会社には、馬鹿らしいので就職しない方が良いと思います。

 

ベトナムの技能実習生*

 佐々涼子「夜明けを待つ」(集英社インターナショナル)には、著者がベトナムの技能実習生の実家を訪ねた際に感じたことなどがエッセイに記されています。その家は、まるで昭和の田舎の風景そのものでした。ホーチミンの賑わいと併せて、著者は、ベトナムから実習生は来なくなる日が近いと書いています。経済的繁栄と引き換えに美しい故郷や家族との繋がりを失ったと告げたとき、お茶を注いでもらい、それでも孫娘をよろしくと言われた気がしたとのことです。ハノイでは、魅力的な元実習生の女性と出会い、安い労働力だと思っているなら、ベトナムからの実習生は来なくなると言われています。彼女は、「日本はどうなちゃうんだろう」と心配さえしていました。ルポルタージュの部では、実習生に必要な日本語について考えています。実習生の現場に必要な言葉は、対話を前提としないコミュニケーションの貧しさがあると断じています。日本という国は、実習生を歓迎し、日本語能力と親日感情をつけて帰してやるという気がないと批判しています。目先の利益しか見ていないということは、既に実習生たちに見抜かれています。外国人労働者から都合よく搾取しようという目論見は、決して長続きすることはないのです。多くの実習生が逃亡して、犯罪を含む問題を起こしていることは、周知の事実です。彼らも、根っからの悪人ではなく、技能実習生という制度の犠牲者なのです。

 

外国人の子どもたち*

 佐々涼子「夜明けを待つ」(集英社インターナショナル)には、南米系の外国人学校(各種学校)を浜松市に設立した女性の奮闘に関するルポルタージュが掲載されています。ペルー人の子弟が、日本語も母語も身に着けられない状態に陥っていることに、強い危機感を抱いての行動でした。親も数年で帰国する出稼ぎ労働者なので、子どもの教育が中途半端になってしまうのです。日本の学校に行っても、日本語が分からず、ドロップアウトしてしまいます。問題は、国も自治体も、外国人子弟の教育に、きちんと向き合っていないことです。自前の教育施設を所有しなければ認可が下りない、私塾には公的な施設を貸せない、学校の設立を願ったペルー人たちが子どもを入学させない、市からの助成金が非常に少ないなど、閉校の危機もありましたが、複数の企業から援助を得られてこともあり、学校は、他の南米系の子弟も受け入れて、存続しています。私は、外国人への日本語及び生活知識に関する教育機会を保障するシステムを、文科省がきちんと担うべきだと考えています。ほぼ役割を終えた社会教育というジャンルで、日本に新規に定住する外国人を新たな対象と位置付けて、自治体が地域の民間団体を連携して、受け皿となる教育システムを構築するのです。定住する外国人との共生は日本の大きな課題です。特に、外国人子弟を、中途半端な状態に放置すれば、彼らは、社会のお荷物にしかならないでしょう。地元企業から外国人学校への寄付が集まったという事実は、子弟の教育機会が外国人労働力の確保に必要だからです。文科省が、なぜ、新しい行政ニーズに背を向け続けているのか、私には理解できません。見て見ぬふりをするのが文化なのでしょうか?

 

大吉原展*

 東京芸術大学美術館で開催している展覧会が「炎上」しているのだそうです。日経新聞にも取り上げられていました。炎上した美術展は、意外に、後世からは高く評価されることもあるので、それほど気にする必要もないと思います。芸術作品を、別の物差しで批評することに意味はないからです。吉原の負の歴史を伝えたければ、そういう企画を立ち上げればよいだけです。もちろん、東京芸術大学以外の機関が担えばよろしいでしょう。国立大学が、今どき、女性への差別に加担しているはずもありません。芸大への為にする言いがかりだと思いますので、大学幹部が堂々と反論すれば良いだけです。吉原が舞台になる漫画、アニメ、落語、狂言、文楽、映画、演劇なども、いちいち、負の歴史を説明しなければならないのでしょうか?とてもありえない話です。一世を風靡した花魁は江戸の大スター、彼女らを描けば浮世絵も売れる、当時の吉原の繁栄ぶりを想像して楽しみましょう、それで良いと思います。なお、主催者の方で炎上させたい意図があったのなら、成功を祝いましょう。性差別を正したい人は、今、現に行われている差別や搾取とガンガン闘ってください。その方が頑張り甲斐があると思います。

 

2024年4月 7日 (日)

さしもあやふき京中の家を作る

発達障害*

 岩瀬利郎「発達障害の人が見ている世界」(アスコム)は、世の中に増えている脳の特性(発達障害)を持っている人たちを理解する上で、非常に興味深い作品です。注意散漫と言われるADHDは、多動性・衝動性、不注意、傷つきやすさに特徴があり、自閉スペクトラム症とも言われるASDは、コミュニケーション障害、同一性の保持(固執)、感覚過敏に特徴があります。整理整頓が苦手、忘れ物や遅刻が多い、小言に耐えられない繊細な神経の持ち主などは、ADHDの疑いがあります。空気が読めない、臨機応変な対応が苦手、光や音などの刺激に耐えられない人は、ASDの疑いがあります。例えば、「男はつらいよ」に出てくる寺男の源公(佐藤蛾次郎さん)はADHDで、「とらや」における車寅次郎(渥美清さん)はASDではないかと思います。もっとも、寅さんは、男女の恋愛心理に関しては読みが鋭いですし、面白い口上で客を楽しませて物を売って生計を立てていますから、「とらや」に帰って来なければ、ASDの症状はありません。日本人では、ADHDは20人に1人、ASDは100人に1人と言われていますので、職場や学校には、こうした脳の特性を持った人が必ずいるわけです。また、この2つを併発する人もいるとのことです。著者は、脳の特性を理解した上で支援する方法もケースごとに提起しているので、大いに参考になるでしょう。耳からの情報が抜けてしまいがちな人には、目からの情報で補うとか、やるべき仕事を後回しにしてしまう人には、ADHDは優先順位の意識付けをする、ASDは気が散らない環境を確保するなどの方法です。特性を生かせる役割を与えることにも言及されています。職場や学校には、ぜひ備え付けておきたい本です。こうした知識は、管理職になる人には必須だと思います。

 

ウェッブ広告の倫理ゼロ*

 能町みね子さんも週刊文春に書かれていましたが、池上彰さんが投資を勧めているというような明らかな詐欺広告が、ご本人がテレビ番組で詐欺だと注意を呼び掛けているにも拘らず、削除されることもなく、掲載され続けています。法治国家としては、異様な話です。倫理なきウェッブ広告には、広告主だけでなく、通信事業者に対しても、懲罰的な罰金を含む厳しい法規制を掛けるしかないと思います。消費者保護の観点は重要ですが、広告塔にされたご本人の信用・名誉、肖像権、パブリシティ権などが侵害されていますので、漫然と詐欺広告を閲覧可能にしている責任は重いと思います。消費者庁を中心に、関係府省が連携して法制化を進めるべきでしょう。

 

東京女子医科大学*

 同窓会組織の一般社団法人の元職員らの特別背任容疑で、学校法人の理事長の関係先を含む捜索が行われました。理事長自身も不透明な資金支出の責任を問われて民事訴訟の被告になるとともに、背任容疑で告発を受けています。過去にも不祥事を起こしており、内部対立もあり、厚労省によって特定機能病院の承認を取り消されています。学校法人の運営管理について、文科省も調査に乗り出すことになるでしょう。結果によっては、補助金の減額等を含む措置が講じられることになります。今後、理事長自身が捜査対象になってもおかしくありません。学校法人としては末期症状です。捜査を待たずに、速やかに運営体制を刷新して、迷走気味の大学・病院の経営を立て直すことが賢明だと思います。

 

少子化財源の支援金制度*

 支援金という響きは、負担ではなく、受けるものという印象を与えます。しかし、医療保険料に追加して、健康保険に加入しているすべての人が負担するというものです。政府の説明は、実質的な追加負担がないということでしたが、2028年度には、年収1000万円の会社員の試算で、月1667円になるとのことです。所得をベースにした負担なので、年金暮らしの高齢者には軽く、現役世代には重くなります。子どもがいる世帯ならば、少子化対策の恩恵がありますが、最悪なのは、子どもがいない現役の人たち(特に中小企業に勤務する方)で、実質的に負担増になり、しかも直接的には裨益しないので取られっぱなしになります。本来、租税収入によって賄うべき経費を、医療保険料から捻出しようとするのは、筋違いの間違った政策だと思います。岸田内閣の負の遺産になったので、次の政権では世代間の公平に十分配慮して、より適切な方法に改めてほしいと思います。

 

芸能とハラスメント*

 ジュリスト3月号は、「芸能活動と法」が特集テーマでした。セクハラ、パワハラの事案は、異性間でも同性間でも、しばしば発生しています。弁護士の寺内康介さんが執筆した「エンタテインメント業界とハラスメント」という論文によれば、韓国には、2018年に韓国映画性平等センター(ドゥンドゥン)が設立されています。相談、調査、裁判外の解決等を行う仕組みがあるとのことです。セクハラに対して、鈍感に過ごしてきた日本よりは、数段進んでいます。アメリカには、俳優組合に24時間対応の窓口や通報アプリなどのサービスがあります。韓国もアメリカも、こうした活動ができる財政的基盤があることが強みです。韓国は、チケット税の一部が資金源になっています。また、アメリカは、俳優への報酬の一部が組合に入る仕組みがあります。ハラスメントの相談窓口を財源措置を含めて、議論すべきではないでしょうか?性的なシーンの取り扱いに関して、俳優と監督の間に立って、俳優の人権を守るという役割の調整役(インティマシ―・コーディネーター)が、2018年にアメリカで初めて導入されました。日本でも、Netflix映画で、2021年に導入されています。アメリカでは、ヌード条項といわれるものが契約に明記されます。事前に露出の多いシーンについて、書面で同意をすることが、労使交渉の基本合意書で定められているのです。韓国でも、標準契約書の中に、ハラスメントや長時間労働に関する事項が盛り込まれています。約70%の使用率というデータもあり、事実上の標準になっているようです。こうした点についても、日本は、かなり遅れていると言って差し支えないでしょう。問題事例が発覚すると大騒ぎになりますが、氷山の一角に過ぎないと思われますので、業界として、先進国に学んで財源を含む仕組みを作ることが肝要だと思います。

 

日本経済の行方*

 小林慶一郎「日本の経済政策」(中公新書)は、失われた20年の克服方法として、財政収支の改善が不可欠だとしています。手堅い見積もりとして、GDPの14%程度を目標にすべきだというのが提案です。そのためには、医療制度や年金制度において、高齢者の富裕層が支える側になる仕組みを作ること、給付付き税額控除制度を導入して雇用保険や生活保護の簡素化により支出の削減を行うこと、医療費の膨張を抑制するためにかかりつけ医の制度化を図ること、消費税を欧州並みまで漸進的に引き上げること、財政危機プランを策定することなどが必要だとしています。世代間の不平等という論点は、政治的に解決しづらい問題ですが、フューチャー・デザイン(7世代先の子孫の立場で考える)というアプローチを推奨しています。ただ、現実的には、150~200年も先のことを予測するのは不可能ですから、膨張しきっている財政の緊縮を受け入れさせることは容易ではないと感じます。最近も、長命の高齢者への5000円のお祝い金をやめることにしたために、高齢者たちから抗議の嵐が吹いたという自治体のニュースを見ました。「丁寧に説明」すれば、反対もなく済んだのでしょうか?人間という動物は、実にけち臭く、利己的で、厄介なものです。

 

後期高齢者の医療保険料*

 現役世代と負担の伸び率を合わせることで、世代間公平を図る措置が採られたために、2024年度の後期高齢者の保険料の伸びが、平均で7.7%となりました。伸び率だけを見ると、山梨が27.1%、沖縄が23.5%と突出しています。恐らく、それぞれの地域では、急変に対して不満の声も上がっているでしょう。また、最も金額が高い東京が9180円、低い秋田は4397円となっていますが、平均所得と医療費支出の違いで、こうした格差が生じています。そもそも、後期高齢者の医療費を、公費50%、現役世代40%、後期高齢者10%で負担するという構造を見直す必要があるのではないでしょうか?私自身も、遠くないうちに後期高齢者になるはずなので、自分の首を絞めることになりますが、持続可能なシステムへの制度改正を行うなら、早くしてほしいという気持ちです。

 

イスラエルのイラン大使館攻撃*

 在シリアイラン大使館(隣接する領事部門)の建物が、イスラエルによってミサイル攻撃されました。シリアに派遣されている複数の軍事顧問らが死亡したとのことです。大使館への攻撃なので、国際法違反は明らかです。イランが支援している軍事勢力への攻撃は、これまでもありましたが、イラン自体への攻撃ですから、イスラエルの軍事作戦は新たなフェーズに入ったと思われます。誰が考えても、国際的な孤立を深めるだけの愚策です。イランもイスラエルと戦争をする余力はないと思いますが、何らかの軍事報復はするでしょう。それで収まるのか、予測はできません。イスラエルは、人質全員の解放と引き換えに、これ以上のガザ地区への侵攻をやめて、食糧配布や医療支援への協力に転換したらどうでしょうか?もはや国際法違反にまで踏み込んだイスラエルを支持することは不可能です。

 

リベラリズムへの不満

 フクヤマ「リベラリズムへの不満」(新潮社)は、トランプ氏を支持する保守派などによるリベラリズムへの不満が、民主主義への危機をもたらしている状況を分析するとともに、国家を悪者にしてきたネオリベラリズム(新自由主義)を克服して健全な政治を作り出すために、4つのポイントを示唆しています。第1に、政府の質を維持向上させることです。第2に、権力を低いレベルの統治機構に移譲することです。第3に、規範によって統制しつつ、言論の自由を守ることです。第4に、リベラリズムを存続させるために、中庸を取り戻すことです。議論の詳細は、第10章「自由主義社会の原則」を参照してください。日本の状況に照らして考えてみれば、中央政府の行政組織の劣化は否めませんし、市町村という基礎自治体の機能も弱体化しています。言論に関しても、特にネットにおいては危機的な病理現象が見られます。世の中から、中庸という心のゆとりも失われつつあると感じます。したがって、著者の指摘は、アメリカだけではなく、他の先進国にも当てはまる点が多いと思います。自由主義社会が脅かされている状況を、いかに改善するかという課題は共通であり、この作品は、私たちが考えるためのヒントになると思います。特に若者には、考え方の座標軸を持つために一読を勧めたいと思います。

2024年4月 4日 (木)

其中の人うつし心あらむや

文化庁移転この1年*

 京都への移転で、東京への出張旅費が嵩むこと以外に、何か変化があったようには見えません。わざわざコストをかけて移転したのですから、行政上の成果でプラスがなければ失敗になります。実際には、中央官庁の機能の地方移転で、白羽の矢が立った(貧乏くじを引いた)だけなので、プラスを見せろと言われれば、大変苦しいとは思います。あえて言わせてもらえば、東京でもできることなら、移転の必要はありません。地方移転するならば、幾つかの機能をセットにして、ミニ霞が関のようなものを形成しないと意味がないと思います。それに、千年の古都である京都市が地方だというのも、失礼なのではないでしょうか?

 

国産旅客機の開発*

 三菱重工による開発が、度重なる延期の末に、撤退に追い込まれた記憶が新しい中で、経産省が2035年ごろをめどとする開発の旗振りをしています。国主導での開発は、失敗の反省を踏まえてのものですが、成功するかどうかは、明確な見通しがあるわけではないと思います。航空機の開発に関しては、欧米が圧倒的な産業力を築いており、日本が追い付くのは難しいと誰もが考えているわけですから、空を目指すにしても、もっとニッチな分野への投資戦略を選択すべきではないでしょうか?経産省には、三菱重工につぎ込んだ国費を無駄にしたくない、正統化したいという思いがあるのかもしれません。ただ、成功確率が低いプロジェクトに国費を注ぎ込むのは、感心しません。できるかどうかわからない大風呂敷を広げれば、多額の国費が取れるというような国にはしない方が良いと思います。

 

空きマンションのリスク*

 築40年を超えるマンションが増えています。管理不十分なものは、いずれ廃墟化します。最悪の場合は、自治体が解体を代行することにもなります。空き家の56%は、共同住宅が占めています。マンション管理に関して、今後、規制を強化せざるを得ないと思います。管理組合の運営は、所有者の利害対立がありうるので、合理的な選択が保障されておらず、結果的に管理不十分に陥ってしまうリスクがあります。少数の反対で、課題解決が先送りされないように、法改正も行われていますが、対立が拗れてしまえば、経済力がある人ほど移転して行き、負担能力が低い人ばかりが残るようになり、そうなれば廃墟化への道が避けられなくなります。戸建てとは異なる共同住宅の空き家のリスクに注意が必要です。

 

ABEMA将棋地域対抗戦*

 準決勝に突入しており、いよいよ戦いも佳境です。予想通り、中部が、藤井聡太8冠、豊島将之9段の活躍で、5勝1敗にて、羽生9段が監督を務めた関東Bを破り、決勝へコマを進めています。極めて持ち時間が短いために先手が有利で、後手で勝てるかどうかが勝敗のカギとなります。名人戦を戦う2人を擁する中部は、戦力的には、勝って当たり前の気がします。もう一つの決勝進出の座を争うのは、中・四国(山崎監督)と関東A(渡辺監督)です。戦力的には、関東Aが有利です。何しろ、メンバーが、森内9段、永瀬9段、増田8段、伊藤匠7段と粒ぞろいで、中部に勝つとしたら関東Aでしょう。中・四国が勝つとすれば、菅井8段、藤本5段の大活躍次第です。地域対抗という団体戦は、地元出身の棋士を応援する機会になるので、地縁から推しを決める切っ掛けになって、面白い企画だと思います。相撲でも多くの人は、出身力士を応援します。

 

高校野球とホームラン*

 今年のセンバツ高校野球では、低反発バットの使用によって、ホームランが激減しました。打撃重視で大味になった高校野球を、もとのように守備、機動力を重視するかたちに戻すことには成功したようです。決勝を戦った健大高崎と報徳は、その意味で、傑出した存在でした。投手に関しては、マウンドを最後まで死守する抜群のエースという存在が消えてしまい、継投が当然になっています。トーナメントを勝ち上がるには、少なくとも、完投能力のある投手を2人以上揃える必要があります。全国から有力選手が集まる大阪桐蔭には、5~6人の投手がベンチにいました。低反発バットになっても、投手は負担が大きいので分業制が合理的であることに変わりがありません。150キロを超すような速い球を投げる投手がいたとしても、甲子園にチームを導くのは難しくなっているのでしょう。ベスト8以上の高校の主力投手は、、制球力が良く、変化球の種類が多く、140キロ弱の速球が投げられるタイプが多くなりました。江川卓さん、桑田真澄さん、松坂大輔さん、田中将大さんのようなずば抜けた力量のある投手がいた英雄たちの時代を、懐かしく思い出します。また、箕島・星稜戦のように、2死から奇跡のホームランで2度も追いつくというような神がかったシーンも、これからは見られなくなるでしょう。清原和博選手のホームラン記録13本は、もう破られる可能性がゼロになったと思います。低反発バットでなくても、無理だとは思いますが・・・。

 

オッペンハイマー*

 本年度アカデミー賞7部門受賞作品です。109シネマズ二子玉川で観てきました。原爆の父と呼ばれた男の栄光と挫折を描いています。主人公は、根っからの科学者で、しかも、理論物理学を専門とする人間です。ユダヤ系で、ナチスとの戦争を終わらせるために、原爆の開発リーダーになって、ロスアラモスでの20億ドルをかけた巨大な国家プロジェクトを成功させるのですが、科学技術が生み出す破壊=大量の死という結果に、罪の意識を抱くようになります。物理学の最先端の知識を応用した科学技術の開発という側面では、ニューメキシコでの原爆実験のシーンは、この作品の白眉です。大量破壊兵器であり、広島・長崎に壊滅的な被害をもたらしたもの(=絶対悪)ですが、開発に従事した数多くの科学者にとっては、夢が現実になった瞬間でした。国家の英雄であり政策への影響力さえ持つ自分と、人類を破滅させる兵器を開発した責任に苦悩する自分と、オッペンハイマーには、二面性があります。彼自身は、労働運動への共感がありながらも、共産主義とは一線を画していましたが、共産主義の恐怖に取り憑かれていた当時のアメリカの政治情勢にも翻弄されます。彼は、かつて愛した女性(共産党員)が自殺したことにも、罪の意識を背負っています。人格的に矛盾を背負っている人物なのです。彼に恨みを抱き、評判を落とすことを画策して、暗躍するストロース(ロバート・ダウニーJr)の存在が、この作品の2つ目の見どころです。オッペンハイマー自身は、罪を償いたいという自己処罰の感情とともに、赤狩りの時代に自己弁護のために過去の親しい人間たちを裏切りたくないという気持ちがあって、でっち上げの工作に対して十分戦えなかったようです。観客としてはモヤモヤしますが、最後に、ストロースの陰謀が意外な人物によって暴かれますので、ご安心ください。この作品には、歴史に名を残した物理学者が何人も登場します。科学者と国家の関係で、様々な人間模様が展開されることも、この作品の魅力になっています。時系列が行き来するのは、ノーラン監督の常套手段ですが、頭を切り替えながら、重厚な作品の世界を楽しみましょう。

 

社会思想史のテキスト*

 山脇直司「ヨーロッパ社会思想史」(東京大学出版会)は、東大駒場の教養課程で行われている講義のテキストとして作成され、30年以上を経て、新版が出されました。基本的に大きな内容の改訂はなされていませんが、目配りの利いた、しかもバランスの良い内容になっています。専門家というものは、深掘りが命なので、こうした俯瞰的なテキストが書ける学識者は貴重です。プラトンに関する記述は、現代社会で起きている形骸化された民主主義の出現を言い当てています。ロックやアダム・スミスに関する記述も、きちんと思想家の全体像に光を当てています。分かりやすくするために、高校までの教科書のような人物の思想を単純化しないという点が、大学の講義らしく、好感を持てます。目配りという点では、マンデヴィルを取り上げていることが特筆に値します。教養課程の段階で、こうした知恵をつけてくれていれば、先々の人生への財産になります。もう一度、1990年代に18歳で戻れるなら、著者の講義を受けたいと思います。

 

自然への人間の介入*

 コルバート「世界から青空がなくなる日」(白揚社)は、自然をコントロールすることの意味を問う作品です。コントロールには、利点もありますが、弊害もあります。生物に関しては、クリスパーを始めとする遺伝子組み換え技術によって、進化に介入するリスクがあります。気候変動に関しては、ソーラー・ジオエンジニアリング(気候工学)を取り上げています。著者は、コントロールを否定する立場は取りません。コントロールするための技術を開発しようとしている企業や研究者らを取材して、正確な情報を得た上で、近未来に起こることを解説しつつ、社会がより良い選択肢に辿り着くための問題提起をしているのです。単純に、環境破壊につながる行為を告発したり、特定の技術開発を断罪したりするための本ではないのです。社会課題の解決のために、自然に介入することは、一概に悪いとは言えません。しかし、介入すれば、別の問題が浮上してくるリスクもあります。自然への介入は、諸刃の剣です。ただ、重大な弊害が明らかであれば別ですが、介入する行為、そのための技術開発を止めることもできません。こういうスケールの問題提起は、なかなか日本では見られませんので、翻訳で読めるのは貴重なことだと感じます。

 

人類史の再構築*

 グレーバー、ウェングロウ「万物の黎明」(光文社)は、世界史の構成を根本から考え直そうという試みです。未熟から成熟へ向かったという歴史観を否定し、当初より、成熟した社会が形成されているとしています。歴史は、複数の社会組織から、適宜選択して作られてきたのであって、進歩、洗練、上昇というような流れがあるとは言えないという見方です。また、ハラリ、ダイヤモンド、ピンカーら歴史学や考古学の門外漢によるベストセラー(ポップ人類史)における推論に対して、何度も批判が繰り返されています。600ページを超える大著で、歴史学の様々な問いを取り上げていることもあって、第12章の結論で、結局、直線的時間感覚を超えた新しい人類史とはどういうものなのかを読み取ることは、容易ではありません。あなたが持っている既存の概念(例えば、戦争、農耕、テクノロジー、国家、身分制度、都市など)に関する思い込みを解体しなければならないかもしれません。その意味で、衝撃的な作品です。願わくは、新書くらいのコンパクトなバージョンも出版してほしいと思います。私などは、著者たちが批判しているホッブスやルソーのように、バラバラになっている歴史的な事実を捨象して、都合よく分かりやすい筋にまとめてしまう方法に毒されているので、著者たちにもそれを求めてしまいがちです。そういう頭をガーンとやるのが、この作品の真の意味なのでしょう。直ちについていけない人も、多いかもしれません。だから、「結論を短くまとめればどうなるの?」と、つい聞きたくなってしまうのです。

 

2024年4月 1日 (月)

一夜のうちに塵灰となりにき

宮城野部屋の閉鎖*

 宮城野部屋の親方と力士が、伊勢ケ浜部屋に移籍する措置が取られました。相撲協会理事会の正式な決定です。伊勢ケ浜一門の親方たちが、宮城野親方に、師匠としての再教育を施すそうです。前代未聞の措置ですが、こうした決定に至った経緯や理由に関しては、公式の説明がありません。閉鎖は一時的な措置だと言いますが、その期限や解除の条件については、極めて曖昧で不明確です。特に、無関係の力士が気の毒です。折角、加害者の北青鵬関が追放になったにも拘わらず、この移籍騒動に嫌気がさしたのか、辞めて行った力士もいます。弟子による暴力行為の報告を親方が怠った例は、これまでもありましたが、宮城野部屋だけが閉鎖になるのは、明らかな差別です。恐らく、相撲協会以外の場では、法治国家である以上、ありえない話だと思います。理事長は、この件について、公の場で、言及すらもしていません。何もなかったように振舞っています。相撲ファンとしては、恥の感覚を覚えています。大相撲は、ルールもない、理屈の通らないことが横行する世界だと批判されても仕方がないでしょう。相撲協会への批判の声は大きくなっていくと思います。宮城野親方(元横綱白鵬)を追い出したい理事長一派が、世の中に説明ができないような不当な嫌がらせを行っているようにしか見えません。5月場所は、この件で「荒れる」と思います。

 

宝塚歌劇団事件の顛末*

 3月末になって、親会社の阪急がパワハラの事実を認めて、遺族に謝罪しました。好い加減な第三者調査を行って、多数のパワハラという重大な事実を隠蔽しようとした罪は重いと思います。阪急という会社自身に、大きな傷がつきました。危機管理の失敗事例として、長く教材として使用されることになりそうです。阪急が方針転換して、遺族と合意に至った経緯については、藪の中です。パワハラを行ったとされる張本人たちが、どう処分されるのかも分かりません。謝罪をお手紙で行ったというのは、茶番に等しいと思います。ご本人たちが、本当に謝罪する気があるのかさえ分かりません。宝塚ファンの中には、遺族らへの誹謗中傷に走っている過激な人も少なくないので、きちんと経緯を説明して、これ以上暴走しないように教育すべきでしょう。再発防止を図るにしても、複合的な要因がパワハラの背景にあるようなので、多様な専門家からなる第三者委員会を作って、忌憚のない提言をもらうべきでしょう。阪急の危機管理のお粗末さは拭いようがありませんが、再発防止に関しては、これからが正念場だと思います。これまでの経営陣の体たらくに鑑みれば、こちらの方も失敗するかも知れません。

 

海への黙礼の意味*

 天皇・皇后両陛下が、被災地を励ますために日帰りで訪問されました。珠洲の海に向かって黙礼されていましたが、意味が理解できずに戸惑いました。地震や津波や火災で命を落とした方々の御霊を慰める意味があったのかもしれません。それらの人々は、津波に呑まれて海で亡くなったのではないので、御霊が海に漂っているという感覚にはなりません。あるいは、北陸の海や大地に対して、これ以上猛威を振るわぬよう、鎮まってほしいと祈られていたのかもしれません。犠牲になった方々の鎮魂、荒ぶる国土の鎮静化に向けた祈祷のいずれにせよ、天皇・皇后両陛下が被災地や日本の安寧のために、真摯に祈る姿を見せてくださったことで、今も苦しむ被災者たちを安心させ勇気づける意味があったと思います。本来、天皇・皇后両陛下を、特定の宗教と結びつけて考えるのはおかしいのでしょうが、国家権力とは一線を画して、専ら日本という共同体のために「畏きもの」との交渉の役割を担っておられるようです。21世紀に、神話の世界から、降りてこられたような印象を受けます。天皇陛下は、政治権力を握る国王とは、歴史的に性格が違った存在であるということなのでしょう。個人的な望みとしては、遠くない将来に、国技館での相撲観戦にお出ましいただくことを願っております。ただし、相撲協会のゴタゴタが片付かないとどうにもなりません。

 

韓国を知る*

 石坂、福島編著「現代韓国を知るための61章」(明石書店)は、韓国での徴用工訴訟判決を正統化する議論が展開されており、この部分を是認することは不可能だと思います。日本側が正しい歴史認識に立てば、日韓の根本的な和解ができるという幻想にも、組することはできないと思います。韓国側が外交の常識ではありえない「ゴールポストを動かした」ことから、韓国という国家を代表する時の政権と合意すること自体に意味がないことが明白になっています。2002年日韓ワールドカップの際には、友好ムードが共有されましたし、その後も、K-Popや韓流ドラマの人気などで、日韓の市井の人の間は縮まったと感じています。ただ、韓国における長年の教育が、韓国の世論形成に大きな影響を与えています。国と国との関係は多分に建前に支配されるので、真の友好国となるのは簡単ではないと感じます。韓国社会は、所得格差の構造があり、ソウルに一極集中している不動産開発の問題などに苦しんでいます。若い世代の韓国社会に対する理解を深めることが、両国関係の将来のために重要な意味を持つと感じます。この本の著者のような学者も相当いるはずですので、大学の講義などで若者に誤った影響を与えることが懸念されます。隣国に関しては、お互いに、あらゆる意味で偏見を持つことがないように注意したいものです。

 

マウリツィオ・ポリーニさん*

 1970年代後半、学生時代に、ショパンやベートーベンのCDを買って、よく聴いていました。当時、ポリーニさんは、日本で最も売れていた若手のピアニストの一人でした。演奏の正確さが精密機械のようでした。1960年のショパンコンクールで優勝しましたが、審査委員長のルービンシュタインさんは、審査委員の誰も彼ほどうまくは弾けないだろうと最大の賛辞を送っています。2000年ころに、一度、パリで、ブラームスの室内楽をメンバーの一人として演奏していたのをライブで聴いたことがあります。東京では、単独あるいは管弦楽団との共演では聴けるチャンスはありましたが、珍しい機会でした。彼が大切にしていた欧州の音楽文化の豊かさを感じました。82歳で、故郷でもあるミラノで、亡くなりましたが、私たちの記憶とともに、歴史に残るピアニストでした。ご冥福をお祈りします。

 

日本の建築*

 隈研吾「日本の建築」(岩波新書)は、日本建築史への再構築を狙った批判の書だと思います。自分に向けられた「和の大家」という評価も拒否しています。コンパクトな新書の中で、隈さん流の複線的で偶像破壊の建築史論が展開されています。隈さんの転機は、バブル崩壊後に仕事が途切れた際に訪れた、高知県と愛媛県の県境にある檮原町芝居小屋での経験でした。その後、檮原町から、トイレと宿泊施設の設計を依頼され、建築の過程で、職人さんたちとの対話の中から、隈さんは、新しい設計の方法論を見出したということです。要は、隈さんの日本建築との出会いになったのです。檮原町の隈さんの作品は、出川哲郎さんのテレ東の充電旅の番組でも紹介されていた記憶があります。四国の辺境の地である檮原町との出会いがなければ、今の隈研吾もなく、新国立競技場もないということになります。一つの偶然の出会いが一人の建築家を再生させ、辺境に残された有形無形の遺産によって、我が国の建築史に新しいページを開かれたという興味深いエピソードです。建築学という世界は、科学技術と芸術文化の両面があるので、何が最先端なのか、今の主流がどこにあるのか、判断しにくいところがあります。この本には、隈史観が記されていると捉えておけばよいと思います。

 

不登校に関する認識*

 文科省が、子ども発達科学研究所に委託した調査の結果が、公表されました。不登校の要因に関して、ヒヤリングを行って、児童生徒・保護者と教員の認識の違いを比較する内容です。認識の乖離が最も大きいのは、児童生徒側の6~7割が、不安・抑うつ、体調不良などの心身の不調を挙げていたのに対して、教員側の2割弱にしか、そうした認識がなかったという点です。また、いじめ被害、教職員への反発、教職員からの叱責を、児童生徒側の4人に1人ほどが挙げているのに対して、教員側は、数%程度しか認識していません。要は、教員が不登校に繋がる子どもの異変や教員発の原因に気が付いていない、ないし気が付いていないふりをしているということです。教育委員会も学校も、不登校を減らしたいと考えているはずですが、最前線に位置している教員が、子どもの状況を正確に認識していないのは致命的です。これでは、文科省がどんなに旗を振っても成果には繋がりません。教員が忙しすぎるのでしょうが、いじめや不登校への予兆があっても、事なかれ主義で、目を背けてしまっているのではないでしょうか?この調査結果は、予想通りのものですが、生かすも殺すも現場次第だと思います。果たして教員自身が変われるのでしょうか?

 

博士人材育成プラン*

 文科省は、2040年に、人口に占める博士の割合を2020年比で3倍にするという計画を発表しました。人口100万人当たり300人超にするということです。これは、世界的にも高い水準です。達成のためには、博士課程への進学率を、現在の3倍にしなければなりませんが、産業界が博士人材を採用する気がなければ、絵に描いた餅です。博士課程への進学がむしろ敬遠されているのは、日本の産業界は、理工系の修士を採用することで十分だと考えているからです。博士のニーズが3倍にならなければ、博士課程への進学が3倍にはなりません。子どもでもわかる理屈です。2040年の社会が、本当に3倍の博士を必要としているのか、博士の市場をマーケティングしたわけでもないでしょう。いきなり3倍だなどと数字合わせのようなプランを作っても、実現するための予算の獲得も覚束ないと思います。3倍の博士の養成には、3倍のお金がかかります。誰が出すんでしょうか?

 

最高裁と同性カップル*

 犯罪被害者給付金の支給に関して、最高裁は、具体的な生活状況によっては、同性のパートナーも支給対象となりうるという判断を示しました。そもそも給付金は、婚姻していなくても、内縁関係があれば、対象となるという仕組みなので、同性パートナーも、異性パートナーと同様に取り扱うべきという判断です。妥当だと思いますし、我が国でも、同性婚を制度的に認める日が、また少し近づいた印象を受けます。この判決を踏まえて、国会において、立法的な解決を速やかに図るべきだと思います。この件については、世界の孤児になってしまっている状況で、いつまでも日本の常識を世界の非常識にしないためにも、立法府の覚醒が求められます。

 

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