浄名居士の跡をけがせり
大家さんの老後の心得
大家さんに限りませんが、不動産所有・賃貸経営を行っている人間であれば、特に、自分が認知症その他で判断能力が低下する可能性を考慮して、予め備えをしておくべきだという話を、大西統さんという方から、東住協セミナーで伺いました。子どもがいない夫婦の場合は、必ず、相互に全財産を譲る旨の遺言をしておく必要があります。それがないと、兄弟やその子どもたちとの分割協議書の作成が必要になり、手間もかかり、財産分与もすることになります。相続人がない場合は、特に、意思を明確にして、遺贈先を遺言しておくべきでしょう。認知症対策では、財産管理委任契約+任意後見契約を勧めていました。賃貸経営をしている場合は、任意後見では、被後見人の財産を守ることが目的となるために、種々の制約がかかります。そのため、家族信託を利用して、不動産の売却などもできるような余地を作っておく必要があります。お一人様の老後に関しては、身元保証契約(介護施設入所の際に必要)、生活サポート契約、死後事務委任契約(葬儀関係、ペット対応、家財処分、残余財産の遺贈先など)を検討します。死後事務委任契約については、遺言とセットで公正証書を作成するのだそうです。縁の薄い相続人が出てくるというリスクを回避するためです。こうした対処によって、空き家、孤独死、無縁墓などの問題を予防することが可能です。住んでいた自宅を売却してもらって、自分の老後の資金にすることもできます。お一人様は、子どもがフォローしてくれるわけではないので、特に、周到な準備が必要なのです。話を伺ってみれば、なるほどと思う点が多々ありました。元気なうちに手を打っておくことが非常に大切なのです。
AIと著作権に関する考え方
著作権分科会方制度小委員会が3月に取りまとめた標記の文書について、ジュリスト7月号で特集されています。この文書は、著作権法の解釈について一定の考え方を取りまとめたもので、個別事案に対する司法判断の参考になるものと考えられます。開発・学習段階については、法30条の4ただし書に該当する行為の範囲が明確に示されたわけではないので、結局、今後の司法判断や国際的な動向に委ねられているとしか言えないでしょう。生成・利用段階については、依拠性がポイントになります。既存の著作物を認識していた場合は、依拠性があると認められるようですが、類似するものを生成する意図があった場合に限るのかについては、学説も分かれるようです。〇〇風というような程度の創作物は、基本的に、侵害にはならなりません。また、認識がなくても、その著作物が学習素材に含まれていた場合は、依拠性を推認することが可能だとされています。推認は反証で覆る可能性があります。含まれていたかどうか明らかでない場合は、アクセスできた可能性や類似性の程度によって判断するしかないようです。実際の裁判になれば、弁護士さんの腕の見せ所なのでしょうが、立証はかなり骨が折れる作業になりそうです。知財高裁所長を務めた高部さんが、立証の在り方について整理されていますが、知財専門の弁護士さんでなければ、実務を適切の処理するのは難しいと感じます。著作権法の実務に関して最もホットな論点ですが、制度設計や運用に関して、早期に国際的な調整の場が必要だと思います。日本を含むアジアが欧米から取り残されないように注意が必要です。
イギリスの暴動
各地で、極右団体が扇動した暴動が発生しています。きっかけは、ダンス教室での殺傷事件が、ボートでイギリスに来たイスラム教徒によるものだったとのニセ情報が拡散されてことにあります。関東大震災の際に、朝鮮人が井戸に毒を入れているというデマから、襲撃が始まったことを想い起こします。イギリスは、総選挙で、反移民の主張を掲げるポピュリズム政党が14.3%の得票を得ているので、不法移民へ反感を持つ人々がかなり存在するということです。労働党が政権について、前政権が構築した不法移民のルワンダ移送を廃止したこともあり、移民を巡る対立が国民を分断している様子が見て取れます。極右が扇動すれば各地で暴動が起きる状況は極めて危険です。労働党政権は、出だしから、試練に曝されおり、この危機をどう乗り切るのか注目されます。日本国内では、技能実習生の脱走者たちによる犯罪行為が目立つようになりました。これを抑え込めないと、反外国人労働者の気分が国民に共有されかねません。一部の事例を見て、すべてが悪いと決めつける人も少なくないので、要注意だと感じます。
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