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2024年5月

2024年5月31日 (金)

おのづから短き運をさとりぬ

ミニ菜園の勧め

 和田義弥「一坪ミニ菜園入門」(山と渓谷社)には、畳2畳分の土地から、年間32品目の野菜を収穫する方法が掲載されています。ミニ菜園は、耕す労力が要らない、除草が楽、生育に適した土が簡単にできるというメリットがあります。著者の手法は、2m四方の土地を16分割して、それぞれで野菜を栽培します。栽培プランの立て方では、春・秋の2作、夏野菜は8月まで、中間では短期でとれる葉物を活用、大型野菜は複数マスを使用、相性の良い野菜を組み合わせる(コンパニオンプランツ)ことが大切です。モデルプランでは、北側から、春・夏には、1列目に、トマト・キュウリ・ジャガイモ・ラディッシュを、2列目に、落花生、生姜、ナス(2マス)を、3列目に、ピーマン・唐辛子・モロヘイヤ・オクラを、4列目に、エダマメ・インゲン・バジル・シソを植えるとされています。9月以降は、1列目に、レタス・春菊・ホウレンソウ・ニンニクを、2列目に、ソラマメ・エンドウ・ニンジン・サンチュを、3列目に、大根・カブ・小松菜・ナバナを、4列目に、キャベツ・ブロッコリー・カリフラワー・白菜を作ります。これだけたくさんの苗を手に入れることは、大変ですが、自分の好きな少数の野菜を複数の区画で栽培することもお勧めです。私は、借りている世田谷区ファミリー農園(15㎡)で、春・夏期に、11品種を栽培しています。著者のアドバイスはありがたく参考にさせていただいています。

 

物質の世界

 高エネルギー加速器研究機構素粒子原子核研究所編「宇宙と物質の起源」(講談社ブルーバックス)では、我が国の物理学者たちが一般の人に対して、最新の物理学の知識を分かりやすく説明しています。そうは言っても、完全に理解できたという人は少ないでしょう。それでも、ヒッグス粒子の発見の意義を感じることくらいはできるでしょう。興味深いと感じたのは、宇宙カレンダーで、宇宙誕生以来の138億年を1年に置き換えれば、原始地球の誕生が9月2日夜で、恐竜絶滅は12月30日です。ホモ・サピエンスの誕生に至っては、12月31日の23時48分です。そんなに遅れてやってきた人類が、宇宙や物質に関する知識をここまで貯えることができたことは、賞賛に値すると思います。宇宙全体のエネルギーの70%を占めるダーク・エネルギーの正体は、未解明ですが、その解説の中で、非常に面白い記述がありました。人間原理です。この宇宙の法則がこうなっているからこそ、人間が必然として生まれてきたという原理と説明されています。宇宙が唯一ではないマルチバースの考え方によれば、我々の宇宙は、その中の一つに過ぎません。ダーク・エネルギーが小さい宇宙であるゆえに、人間が生まれる条件が整ったという逆立ちのようにも見える論理が、ダーク・エネルギーが極めて小さくなっている説明の一つとして紹介されていました。人間の存在が宇宙全体の性質を決めてしまっているというのは、人間中心に過ぎる解説で、俄かには信じられません。しかし、最新の観測技術で科学的な探究を進める中で、人間という生物が生まれてきた不思議に改めて思いを寄せるのは、悪くないかもしれません。

 

キャリア官僚の落日

 日経新聞が、東京大学出身189人で最少という結果を、意識の変化によって10年で半減と表現したのは、重大な事実を覆い隠すものだと感じます。端的に言えば、東大の学生は、仕事にも待遇にも魅力を感じない国家公務員には、とっくに見切りをつけているということです。かりに国家公務員を志望するにしても、よほど体が悪いのでなければ、定年までの勤務を想定するものではないでしょう。踏み台にするくらいなら、ありえます。今後も、このトレンドは変わらないと思います。キャリア官僚というものは、東大の優秀な学生の視野には、もう入っていないのです。東大ではなく、キャリア官僚が、斜陽なのです。だから、年を追うごとに、キャリア官僚の質は下がるだけです。当然すぎることなのに、好い加減、見て見ぬふりをするのはやめたらどうでしょうか?なお、キャリア官僚という職を見捨てているのは、東大の学生だけではないはずです。

 

白波のおそれも騒がし

子どものネット安全対策

 イギリスでは、昨年10月に「オンライン安全法」が制定されています。現在、施行準備中です。基本的に、オンライン上のユーザー間サービス及び検索サービスが、規制対象とされています。イギリス外で運用されていても、イギリスとの関連性を有するサービスには適用されますので、注意が必要です。規制の内容は、違法コンテンツに関するリスク評価の義務、違法コンテンツに関する安全義務、コンテンツ報告及び不服申し立てに関する義務、表現の自由とプライバシー保護に関する義務ですが、これらに加えて、子どもがアクセスする可能性が高いサービスには、子どもに関するリスク評価の義務、子どもの保護に関する安全義務が課されます。こうした立法は、欧州から世界へと広がっていくものと予測されますが、ネット上の年齢確認がどこまで有効性を持ちうるのか、疑問もあります。日本国内においても、今後、議論が進むことが期待されます。ネット上の企業の違法行為を調査・捜査する情報通信庁のような機関の体制・権限を強化することも必要でしょう。広範なステークホルダーからの意見集約には時間もかかりそうです。重要な政策課題として、早く取り組みを始めるべきだと思います。

 

松井監督(西武)の休養

 確かに成績はパリーグで最下位ですが、監督の責任とは言えないと思います。打撃成績を見れば、打率が214で最低、最高のソフトバンクは261ですから、差は歴然です。得点は、118で最下位、ソフトバンクの197と比べれば、勝負になりません。OPSも、583で最下位、ソフトバンクは730で最高です。投手成績では、防御率が5位で3.29です。楽天が最下位です。ソフトバンクは、2.06ですから、格差は明白です。失点も、西武167に対して、ソフトバンク102です。首位にいるのは、監督が特に優秀ということではなく、個々の選手の力です。基本的に、西武は、打つ方は最下位、投げる方は5位という成績ですから、15勝30敗なのです。個人を見ても、ソフトバンクに流出した山川選手がホームラン12本、打点45と活躍しており、打撃成績18位の源田選手の242が西武では最高という状態では、誰が監督でも互角に戦うことは難しいと思います。投手では、唯一の光明が防御率4位の今井選手ですが、8試合に登板して、勝ち星は3でしかありません。打線の援護が不足しているのでしょう。西武ファンは十分理解しているはずですが、チームの中心選手が抜けて、中堅・若手の力を伸ばすしかない状況ですから、100敗しても、ひたすら柱となる選手を育成するという方針で今シーズンを戦うしかないにも拘らず、途中で監督を休養させるのは、不可思議な話です。残念ながら、これからも選手の流出は止まらないと思います。

 

青酸カリ盗難事件

 大阪公立大学からの盗難事件では、製薬会社勤務の会社員が逮捕されました。大学院生だった当時の犯行だったようです。犯人逮捕で、一応、社会の安全は確保されましたが、盗んだ青酸カリと青酸ソーダの一部は見つからなかったので、完全に不安が払拭されたとは言えません。盗みの目的は、父親の殺害(実際には行われず)ということなので、相当心を病んでいたものと思われます。大学院生として、研究室の危険薬物にも自由にアクセスできたということなので、大学の管理方法が甘すぎたようです。大学の研究室では、外部者による盗難に関しては、厳しく対応しているわけですが、内部については、信頼関係があるとして、まさかこのような事件を起こすとは想定せずに、管理ルールを定めています。しかし、こういう事件が起こった以上、内部であっても、性善説には立てなくなりました。研究遂行の面では、大きな制約になりますが、このような事件を起こした大学の研究室では、危険薬物の保管を禁止するしかないと思います。実験で使用する場合は、持ち出せないような環境を作って管理するしかないでしょう。この件は、事件としては、重大な犯罪とまでは言えませんが、大学にとって、決して軽く扱える問題ではないと思います。

 

2024年5月30日 (木)

竹を柱として車を宿せり

ACLと横浜マリノス

 残念ながら、2戦合計で、アルアイン(UAE)に3-6で敗れて、準優勝に終わりました。敵地の第2戦では、GKが退場処分となって、後半だけで、3点を失って、万事休すという状態でした。決勝にまで勝ち残ったことは、クラブの新たな歴史を切り拓いたわけで、褒められてよいと思います。Jリーグの方に目を転じると、横浜マリノスは、現在、14位と低迷しています。消化試合が3つ少ないので、それを全勝したとしても、やっと5位タイという成績です。JリーグとACLを並行して闘うのは、チームにとっては、大きな試練なのでしょう。そのハンデを考慮するとしても、公平に見て、今年の横浜マリノスは、Jリーグの町田、鹿島、神戸などと比較して、実力で上回っているとは言えません。そんなチームでも決勝まで進めたことは、Jリーグのレベルを証明したことになるでしょう。来年以降も、ACLの制覇を成し遂げるチームが出てきてほしいと願います。Jリーグで、少し気になるのは、得点の少なさで、最も得点力のある町田、鹿島でも、1試合1.7点程度です。仮に、3点以上を上げれば、ボーナス勝ち点+1というようなルールを作れば、リードを守るばかりでなく、次の1点を取るマインドが生まれるでしょう。また、中位のチームに引き分けが多いことも気になります。負け数は最小の2だが、引き分けが8と多い広島は、8位となっています。得失点差では3位なので、チーム力が十分反映されていない順位に甘んじているわけです。引き分けを減らすために、短時間でも延長を設けるなどの工夫が必要ではないでしょうか?延長での勝利は、勝点2として、負けた方にも勝点1を与えればよいと思います。最後まで同点なら、引き分けで勝点1ずつなので、失うものはないため、延長では双方とも攻撃に出るはずです。人数をかけて攻め合う試合が見たいです。

 

名人戦第5局

 藤井聡太8冠が勝って、4勝1敗で、初防衛に成功しました。おめでとうございます。本局では、後手の豊島9段が四間飛車を採用しました。これに対して、藤井8冠は、6五歩という新手を繰り出して、松尾流の穴熊囲いを完成させました。これによって、負けにくいかたちを作ったと思います。その後、藤井8冠が、少ない攻め駒で2筋から攻めたのに対して、豊島9段が6筋に飛車を振り替えたことが、本局の敗着になってしまったようです。藤井8冠が、馬を作って、6四香と打ったところで、はっきりと優劣がつきました。さらに、4六角打ちが決定打になりました。豊島9段も的確に粘りましたが、敵陣への攻め口は見いだせず、投了もやむを得ませんでした。素人目にも、自陣が鉄壁で、攻めだけに専念できる形を作った藤井8冠の勝利は、早い段階で、動かないと感じました。紋別で提供されたメニューブックに載った品々は、いずれも魅力的でした。特に、藤井8冠が注文したカレーと麻婆豆腐の組み合わせがユニークでした。意外な名物になるかも知れません。藤井8冠の次の戦い、伊藤匠7段との叡王戦第4局は、初のカド番の一局ですから、見逃せません。

 

続柄「夫(未届)」

 長崎県大村市で、住民票に、世帯主との続柄を「夫(未届)」と記載した申請を受理して、住民票を交付したというニュースがありました。総務省としては、こうした記載を容認できるか検討が必要と考えているようです。大村市は、パートナー宣誓制度を導入しており、事実上の同性婚に対して、極めて理解がある自治体だと思います。他の自治体で前例はないようですが、画期的な今回の措置で、同性婚の扱いについて、広く議論が行われるきっかけになれば良いと思います。未届という表現は、なかなか皮肉が効いていると感じます。届けたくても、今のところは制度的に届けができない状況なのですから・・・。同性婚を法的には認めないとする合理的な理由は、何でしょうか?認めると何が困るのでしょうか?LGBTQへの理解が進んでいる今日、同性婚を認めない理由は極めて乏しくなっていると思います。私自身は同性婚を必要としてはいませんが、彼らの願いを頑固に不可とすることで、どんな法益を守ろうとしているのか、理解に苦しみます。未届という括弧書きがなくなる日が近いことを祈りたいと思います。

 

2024年5月29日 (水)

わが心と一の庵をむすぶ

認知症予備軍1200万人時代

 日経新聞に、2050年には、認知症と軽度認知症(MCI)の合計が、1200万人に達するという推計に基づく記事がありました。そのころには、スマホからイヤホンに交通案内が行われて道に迷わない、使用上限付きのプリペイドカードで買い過ぎを防げる、ガスコンロに消し忘れ防止機能がつく、生成AIとの対話でコミュニケーション不足を補えるなどで、生活支援が手厚くなることによって、認知症の人の暮らしが改善されると予測されています。それらの市場規模は2000億円にもなるそうですが、希望的には、認知症の治療方法が確立していてほしいところです。認知機能の低下を緩和することができれば、長寿への不安は大きく改善されるはずです。人口減少が続く中で、予備軍を含む認知症の患者さんが増えるのは、社会的費用の負担問題が重くなるでしょう。この分野への中長期の研究投資に国は重点を置く必要があると思います。

 

5月場所から見える大相撲の未来

 小結大の里関の初優勝で幕を閉じました。7場所での幕内優勝は歴史的快挙ですが、彼は入門前から、既に幕内で戦うほどの実力を身に着けていたので、驚くには値しない結果です。中村親方によれば、来年の今頃には、横綱になっていてもおかしくない逸材なのです。怪我をせずに、このまま前に出る相撲を磨いて、2度目は全勝優勝するくらいのことを期待したいと思います。大の里関の対抗馬が誰になるのかが、次の焦点です。年齢的には、豊昇龍関、尊富士関、伯桜鵬関などが候補者ですが、今場所で目についたのは、平戸海関、欧勝馬関です。大相撲が盛り上がる時代は、両雄相まみえる対決が付き物ですから、ぜひ早くそうした形が生まれることを望んでいます。その他、間違いなく力量が上がっていると感じたのは、王鵬関で、彼は年内に初の三役を務めることになると予想します。十両では、13勝を上げた阿武剋関が、今後、番付を駆けあがってくるでしょう。彼も、大の里関の対抗馬になりうる人材だと思います。幕下では、上位にいる木竜皇さん、若碇さん、聖富士さんに加えて、快進撃中の安青錦さん、今場所デビューした草野さんに注目です。大の里関よりも若い力士が、彼の後を追いかけて行きます。幕内に壁になる力士がいないなどと嘆く人もいますが、新旧交代の時期に当たっているので、旧世代の多くの力士が怪我がちで、稽古十分な若手に、実力的にも凌駕されてしまっているだけです。将棋でも、藤井聡太8冠が、年上の棋士を次々と破って、新しい時代を拓きましたが、大の里関は、彼に匹敵する存在になる可能性があります。最後に、大の里関に先を越されてしまった琴櫻関には、来場所での初優勝を、千秋楽で勝ち越しと三役昇進を逃した熱海富士関には、立ち合いの研究とメンタルの強化を願いたいと思います。彼らには、まだまだ伸びしろがあると思います。

 

激辛で心臓発作

 アメリカで、YouTubeなどでの配信を行うために、超激辛を食して、心臓発作を起こした死亡したというケースがありました。日本の地上波でも、これでもかと過激な辛さを追求した料理を食べさせる企画がありますが、美味しい辛さを楽しむ料理を見せるというよりも、激辛食材を悶絶しながら我慢して呑み込む表情の面白さを笑うという趣旨になっています。こんなものを体に入れて、消化器官は大丈夫だろうかと心配になりますが、テレビ出演するためには、熱湯風呂にも入るタレントさんもいるので、文字通り体を張っているのだと思います。どちらかと言えば、大食いの方は、カロリー摂取を度外視して思い切り食べるという爽快感もあり、横綱級のギャル曽根さんを始め、挑戦者に共感もできるので、よく見ていますが、激辛の方は、ひたすら耐えるだけで気の毒になるので、ほとんど見ることはありません。地上波では、人間の体に悪いものを食べさせる企画はやめた方が良いのではないでしょうか?大食い企画については、成功したら、同じものを子ども食堂に寄付するというような貢献もしたらどうでしょうか?子ども食堂では、3.5キロもある料理なら、10人以上が食べられるかもしれません。

 

2024年5月28日 (火)

つひに屋とどむる事を得ず

死刑の廃止?

 鮎川潤「腐敗する「法の番人」」(平凡社)は、警察、検察、法務省、裁判所の裏側を描いた上で、司法の再生を考えるという内容です。特に強く主張しているのは、「人質司法」に代表される制度的な歪みを是正して、実質的な平等及び裁判の公正を実現すべきだという点です。また、国際的に尊敬されるためとして、死刑制度の廃止を実現すべきだとしています。著者によれば、死刑の問題性に関して、国民の意識が低いレベルに止まっているのは、外務省などが積極的に広報していないからだとのことです。「人質司法」によって冤罪が発生する恐れがあるというのは、理解できます。犯罪への抑止力が低下しない限りにおいて、積極的に改善したらよいと思います。ただ、死刑の廃止は、どんなに政府が旗を振っても、国民は望まないでしょう。悪逆非道の限りを尽くしても、命は取られないということなら、平気で人殺しも強盗も火付けもやる人間は出てくるでしょう。死刑を廃止することで、どんな悪人でも命だけは助かりますが、被害者や遺族たちには、どんな意味があるのでしょうか?裁判で、被告に死刑判決を望むと発言する遺族の気持ちは分かります。死者は戻りませんが、せめて敵を討ちたいのです。私の好きな「七人の侍」にも、息子を野武士に殺された老婆が、捕虜となった野武士をクワで打ち殺すというエピソードがありました。侍たちは、その行為が、武士の倫理に反しているとは考えましたが、誰も止めることができませんでした。死刑制度がいずれ全世界で廃止されるという見方は、本当に正しいのでしょうか?死刑制度を廃止しないことは、本当に遅れていることになるのでしょうか?

 

老後と経営

 岩尾俊兵「世界は経営でできている」(講談社現代新書)は、「〇〇は経営でできている」と論じる知的なエッセイ集です。〇〇には、貧乏、家庭、恋愛、勉強等が入ります。老後は12番目のテーマです。著者は、老後を巡る悲喜劇は、人生経営の失敗によって生まれると述べています。失敗事例として、介護施設で威張り散らす人、胡散臭い話に乗って老後資金を溶かしてしまう人、図書館の新聞コーナーで小競り合いをする人、場末のスナックで歌を聴かせようとして出禁にされる人、役所や病院でクレームをつける人、権力を手放さない人、退職金を居場所つくりに浪費する人などが、描写されます。要は、「相互尊敬の欠如」、「目的と手段の転倒」が、失敗の本質だと、経営学者らしい総括をしています。では、どうすればよいのでしょうか?著者は、他人に対して思いやりを求めるには、まず自分が思いやりを持って行動するということではないかと示唆しています。「愛は地球を救う」ということでしょうか?老後はなかなか難しい経営課題なのです。

 

アートとマネー

 日経新聞に、現代アートがマネーと共鳴しているという記事がありました。オークション市場は、この20年で、25倍に膨張しています。中国市場は、世界の32.4%を占め、アメリカに迫る勢いです。これほどマネーがアートに向かっているのは、現代アートが、特に収益率の高い資産になっているからです。マネーがマネーを呼ぶという状況です。保有資産3000万ドル以上の超富裕層は、資産の5%程度をアート、時計、ワインなどに投資しているのだそうです。日本人アーティストでは、草間彌生さん、奈良美智さん、村上隆さんなどが、売上高が高い人たちのようです。彼らは世界で有名ですが、現代アートの市場が活性化している今、次世代の日本の若手芸術家にもチャンスがありそうです。それにしても、アートに関して誰が売れるのか、誰の作品が高価格で将来取引されるのか、目利きをするのは至難の業でしょう。どうしても素人には、市場自体がバブルに見えてしまいます。しかし、新興国からの買い手が次々と登場しています。広い自宅を所有している富裕層が、室内を飾るお気に入りの一点物のアートを求める気持ちは、分かる気がします。村上隆さんの作品を複数所有している人も、経済的な投資が目的というよりも、自分に必要な精神的効果を得るための装置と考えているのではないかと感じます。そもそも、カネが余っていないとアートには手を出さないでしょう。将来高く売れるから買うわけではないのです。

 

2024年5月27日 (月)

世にしたがへば身苦し

大卒の売り手市場

 2024年度の就職率は、98.1%と過去最高です。人出不足が深刻なのです。しかも、2025年度卒予定の学生に関しても、既に78.1%が内定を得ているとの調査結果もあります。内定の早期化が進んでいるのです。初任給アップなど、企業側も採用数の確保のために、涙ぐましい努力をしているので、青田買いを全否定することはできないでしょう。しかし、就活の前倒しによって、学生の学業や部活などへの影響は避けられません。これまでも、何度となく、就活の時期を遅らせる試みが行われましたが、結局、状況を変えられませんでした。学生も3年次までで必要な単位の大半を修得し、企業も内定が出せるならば、3月末で大学卒業を可能にして、4月からでも直ぐに働いたらどうでしょうか?あるいは、6月からでも構いません。次の3月末まで、長々と大学に在籍している意味はないでしょう。イギリス式に詰め込みで、始めから学部は3年制にするという方法も良いかもしれません。すべての大学が高等教育機関としての質を持っていないことは明白ですから、98.1%という数字は、もはや猫の手も借りたい状態で、体が丈夫そうなら内定というくらいの企業があるということなのです。そんな採用活動をやるのは、随分と虚しいことです。日本の大卒採用システムは、ステークホルダー各位にとって、とても幸福なものとは言えないと思います。

 

国立劇場の空白

 建て替え計画の入札不調によって、伝統芸能の殿堂の空白期間が長引くことへの懸念の声が大きくなっています。演者にとっては、年齢が重なることで、新劇場のこけら落としまで待てないという気持ちが起きてくるのは当然のことです。芸能関係者にとって、国立という看板は重いものですから、予定に従って閉鎖したのは良いが、次の劇場については宙ぶらりんの状況が続いていることには、不安が募っていることでしょう。そもそも、内装・設備などのリノベーションによって、今の劇場をこの先も使い続けるということで、演者の方々には、大きな不満はないようです。建築業界の人出不足や資材高騰という急激な変化に翻弄されているのは理解できますが、当初計画に拘ることなく、文化庁は、路線変更する勇気を持つべきではないでしょうか?観客の立場からも、半蔵門での公演再開を早くしてほしいと願うばかりです。

 

孤独死の予防法

 菅野久美子「孤独死大国」(双葉文庫)は、結局、自分自身で、縁を探さなければ孤独死の解決にはならないと述べています。要は、姿を見せなかったら心配してくれる人の存在が重要なのです。弱い関係で繋がっている地縁の集団を、著者は、コミュニティと言っています。そういう関係が持てずに、孤立している人が増えれば、本当に大量孤独死時代がやってくるかもしれません。特に、老後1人で生きている人には、まず、セルフネグレクトにならないことが大切です。著者によれば、孤独死の8割がセルフネグレクトだそうです。そして、助けられ上手になることを勧めています。自分や家族のことはオープンにすること、困ったときには助けを求めること、他人に多少の迷惑がかかることは仕方がないと思うことが大切だとしています。孤立している人の多くは、趣味・学習の部分が強く、、友達・ふれあいの部分が弱いという傾向があります。助ける側は、本人が強い部分から関係を築くきっかけにすると良いようです。ひきこもりの人にも、こだわりがあるので、そこに関係構築のヒントが隠されているというのです。孤独な人に寄り添うというのは、実際にはなかなか難しいことですが、孤独死を防ぐには、周囲の人の忍耐と理解が欠かせません。助けを求めることも福祉だという表現は、一見逆立ちしているようですが、孤独死を防ぐという社会的な価値を実現する意味では、正鵠を射ていると思います。含蓄のある言葉です。

 

2024年5月26日 (日)

人をはぐくめば心恩愛につかはる

袴田事件再審公判

 静岡地裁で始まりましたが、検察側から、再び死刑の求刑がなされました。まだやる気なの?という感じです。再審決定自体が、「無罪を言い渡すべき明らかな証拠があった場合」にのみ認められるので、今さら検察が有罪を主張するのは、理解に苦しみます。再審決定がなされた時点で、裁判の勝負は決しているはずです。むしろ、証拠捏造の疑いがある5点の衣類(1年2か月後に発見)に関して、刑事事件の捜査への信頼を取り戻すために、検察として捏造の事実関係をもう一度調べたらどうでしょうか?再審公判は、検察側が新たな証拠を提出できない以上、早く終わらせるべきでしょう。今さら状況証拠だけで有罪立証が可能だとは思えません。先輩たちがやったことを否定できない重苦しい文化があるのでしょうか?そういうマインドで道を誤った組織はたくさんあります。司法におけるゲームに負けて、負けを認めず、ルールに従わないなら、刑事裁判自体を壊すことになりませんか?検察に誇りがあるなら、トランプの弟子にだけは、ならないでほしいと思います。

 

休場しない力士の育成方法

 幕内・十両で、休場が多いのが、5月場所の特徴です。興味深い取り組みが減るだけでなく、番付が無意味化しているとの批判があります。原因については、諸説あるでしょうが、私は、力士の体重が増え過ぎていること、相撲というスポーツの運動に必要な筋力が不足していること、土俵周辺の安全対策が不十分であること、巡業を含めて力士が怪我を癒す時間が不足していること、怪我に対して相撲界の感覚が時代錯誤であることなどの複合的なものだと考えています。対策としては、まず、身長に対する適正な体重の範囲を逸脱している力士は、土俵に上がらせないくらいの措置が必要だと感じます。幕下以下で200キロを超えているような力士は全員アウトです。筋力に関しては、個人個人に体調管理のアプリを導入して、その力士に合った筋力アップの稽古(筋トレ等を含む)のプログラムを作って、合理的に行う必要があると思います。伝統的な稽古は否定しませんが、稽古で体にどのような効果が出ているのか、きちんと数値で把握すべきだと思います。例えば、四股を毎日何回踏む必要があるのか、真実を探求すべきです。栄養やサプリの取り方なども、専門家の指導を受けるべきでしょう。土俵周辺に関しては、体操競技などで用いられている衝撃を吸収する素材を敷きつめて、力士を守るべきだと思います。国技館では、砂被りの前の2列には観客を入れなくするのが良いと思います。その代わりに、クッション材を厚く設置すれば、力士にかかる衝撃も減らすことができるでしょう。観客をかばって、大怪我をすることもなくなります。力士が怪我を癒す時間が無くなっている問題については、やはり適切な公傷制度の復活が必要です。相撲協会が委託した医療機関で診察を行って、医師の指示に従って治療とリハビリを行うようにすべきです。怪我をおして出場している力士もあり、それはそれで、天晴だとは思いますが、プロスポーツ選手として直すべきものは直して最高のパフォーマンスを見せるのが本筋です。今は、休場すれば、番付が急落するので、一番でも勝ちたいから出てきているのです。見ていて気の毒です。更に怪我を悪化させる恐れもあります。最後に、休場が多いことは稽古不足だと単純化する人もいますが、一種の根性論に過ぎません。野球でも、かつては、不合理な投げ込みなどで、選手生命を縮めていた時期もありました。今は、適切な指導法が確立して、そうした悲劇も減りました。相撲も、スポーツとして、科学的な知識に基づく指導法を構築すべきです。宮城野親方(元白鵬)は、部屋の経営から外れているので、歴代最強横綱だった彼の知識を中心に、大学の研究者たちに加わってもらって、相撲に勝つために必要な心技体のすべて(メンタルヘルス、技術・戦術、栄養・睡眠、筋トレなど)を網羅した、スポーツとしての相撲の総合的な指導書を作ったらどうでしょうか?自己流の指導法しかないスポーツには、子どもたちは、入門してこないと思います。

 

マイナンバー保険証

 現行の保険証は、この12月に終了し、マイナンバー保険証に移行します。既に、人口の5割以上がマイナンバー保険証を使える状態になっていますが、実際に利用した人は、6%に過ぎません。私も、未利用者の一人ですが、そもそもマイナンバーカードを持ち歩くのは危険だと感じています。紛失した場合に、他人に、自分の番号を知られて、悪用される恐れがあります。マイナンバーカードの偽造事件が起こっているので、本物の番号を知られれば、なりすましが可能になるかも知れません。紛失後の再発行も面倒です。保険証をマイナンバーカードに代替することによるメリットも感じている人がいれば、お目にかかりたいものです。私は、確定申告の行列に並ぶことを避ける意味で、以前にカードを作りましたが、そうした必要がなければ、国の費用でポイントを付与されたために、新たにカードを作ったという人が多いでしょう。結局、12月以降、国民がマイナンバーカードを医療機関で使用することで、それまでと、どのような違いがあるのか、誰も説明できていない状況ではないでしょうか?野党の立場からは、与党がごり押ししているマイナンバー保険証の強制は一旦やめることを争点にして、選挙をやるのが賢明だと思います。

 

2024年5月24日 (金)

人を頼めば身他の有なり

五月場所12日目

 今場所3回目の国技館です。親方トークのゲストは、君ヶ浜親方(元隠岐の海)です。MCは、私が陰の営業部長と考えている桐山親方(元旭日松)が務めました。力士の育成に関して、厳しく鍛えることができなくなっている状況への悩みが紹介されました。親方になって、また力士に戻りたい気持ちが強くなったとも述べていました。教えるより、相撲を取りたいということです。売り出し中の大の里関には、自分が人生最高の状態ならば良い勝負ができると思っているようでした。昼食後は、三段目の途中から結びまで、ゆっくりと観戦しました。三段目では、天風さんが、怪我の前に近い勢いのある相撲を見せていたのが目につきました。来場所は、幕下で活躍できると思います。幕下では、聖富士さんが、地力をつけていると感じました。来場所も怪我がなければ、9月場所では、十両に上がれると思います。十両では、1敗の3力士が星を伸ばしましたが、遠藤関が輝関相手に立ち合いに変化したのには驚きました。3人の中では、若隆景関の充実ぶりが一番だと感じました。幕内では、高安関、平戸海関、明生関の3人の相撲が良かったと思います。途中での休場があるので優勝には関係ありませんが、実質的には、高安関が最強です。明生関は、大栄翔関に押し勝ちました。好調です。平戸海関は、豪ノ山関に攻め勝ちました。三役に上がる地力がついています。中卒たたき上げのホープです。彼の履歴とトレーニングを含む稽古を分析すれば、力士の育成方法が見えてくると感じます。若元春関は、琴櫻関を追い詰めましたが、逆転で勝ち星を逃しました。琴櫻関は不利な体勢から、執念で、良く踏みとどまりました。優勝争いは、13日以降、琴櫻関と大の里関の2人に絞られていくでしょうが、二人が3敗で千秋楽に優勝決定戦を戦うというシナリオが最も好ましいと思います。どちらが勝っても初優勝ですから、2人に期待しましょう。なお、幕内の取り組みでは、塩まき時間が長すぎました。番数が少ないための策ですが、とても間延びするので、早い時刻に終わってもいいのではないでしょうか?

 

EUによるAI規制法

 2026年に本格適用されます。それまでも、企業には、自主ルールに従って、自主規制することが求められます。法に違反した企業には、巨額(3500万€又は年間売り上げの7%の高い方)の制裁が科せられます。生成AIによるコンテンツには、明示する義務があります。個人の私的な利用は規制対象外です。脆弱性につけ込むような仕組みのAIは不可となります。また、個人の特徴などに基づく信用格付けも禁じられます。サブリミナル効果のあるAIもダメです。企業の採用活動や教育の分野での利用は、高リスクに分類され、人間による監視や技術文書の作成等が求められます。ECにAIオフィスを設置して、監督・執行を行います。EUが法整備に関しては先行しているので、この規制法が、グローバル企業の活動に対する事実上の標準になるかも知れません。当然、日本企業も含まれます。

 

駐日中国大使の脅し

 駐箚国の国民に対して脅しをかける大使は、極めて珍しい存在ですが、中国の分裂に加担すれば、「日本の民衆が火の中に引きずり込まれる」という発言をしています。まさか親切心で、日本国民の無知による悲劇を正してあげようということではないでしょう。明らかな脅しです。台湾への武力侵攻には、一切関与しない方が身のためだぞというわけです。こういう人物が大使では、日中の友好関係にマイナスにしか作用しないので、母国にお帰りいただいた方が良かろうと思います。発言の詳細は不明ですが、台湾有事の際に、日本が、台湾を支援すれば、日本の領土・国民を攻撃することがありうるとも取れます。もちろん、そうなれば、直ちに米軍も戦争に参加することになるので、中国側も、かなりのリスクを負うことになります。こうした勇ましい発言は、北京の外交部に向けたデモンストレーションなのでしょう。習近平政権の方針に合致した警告を発することで、堂々と日本政府に釘を刺したと評価してほしいのです。その結果、日本の民衆から嫌われようが、痛くも痒くもないのが、今の中国大使なのです。この発言は、日本人の中国嫌い(台湾好き)を一段階進めることになるでしょう。こういう人物が大使でいると、両国関係が本当におかしくなってしまいます。

 

独身なるものは人に軽めらる

研究の数値評価

 日経新聞に、野依良治教授は、数値評価の弊害について、鋭く批判しています。学術の発展にとって有害であるとともに、大学評価や資源配分において利用される問題について、許せない、極めて不健全だというような激しい言葉を使っておられます。野依先生のような碩学泰斗が、ここまで言うのには、学問の中身に関する評価は、真の専門家にしかできないという信念があるからでしょう。数値評価を安易にKPIとして活用している資源配分機関とともに、大学側も「客観的な」数値評価に迎合していると強く批判しているのです。ノーベル賞受賞者でもある傑出した研究者である野依先生からの発言は極めて重いと感じます。私たち素人は、被引用数などを数値で示されれば、すべて意味があるものと受け取ってしまいますが、それが研究者や大学や国家の評価に、当たり前のように使われることには、強烈なダメ出しをしているわけです。確かに、野依先生の指摘は、尤もだと感じます。ただ、公平無私の高度な評価が行える専門家をどのようにして選定するのか、どういう実務の仕組みが構築できるのか、代替の評価システムを実現するには、解決すべき課題が多いと思います。現実的には、高度な専門家による独自評価は、数値評価の補完的な意味合いになるのかもしれません。

 

横浜市教委の傍聴席占拠

 教員の性犯罪事件の4件の公判で、11回に渡り、職員を最大50人を動員して、傍聴席を埋めていたことが明るみに出ました。市教委は、保護者からの要請で、被害者のプライバシーを守る観点から行ったと説明しています。それならば、教員が加害者となった事件以外でも、動員をかけなければ辻褄が合いません。守ろうとしたのは、教員の方ではないかとの疑いを抱かれても仕方がないでしょう。それにしても、動員された職員は、有給休暇を取得したのではなく、上司の指示で裁判所に赴いたものと考えますが、最大50人もの動員ができるとは、市教委という職場はそれほど暇なのでしょうか?仕事に支障がなかったのか、疑問に思います。今後は、行わないという話なので、非適切だったと認めたようなものです。横浜市の方々は、市教委の本性を見た思いでしょう。仮にも公務員ですから、一体どこを向いて仕事をしているのか、極めて情けない劣化の一例だと感じます。

 

観光公害の遮断

 山梨県河口湖町で、富士山の撮影スポットに、黒い幕を張ることで、観光公害を防ぐ試みが行われました。警備員の配置などでは効果が上がらなかったために、最終手段を講じたものです。インバウンドの来訪で潤っている店舗もあったので、町当局としては苦肉の策です。それほどひどい状態になってしまったのでしょう。同じように、撮影スポットとなることで、観光公害に悩んでいる場所は、全国にあります。最も知られているのが、江ノ電の踏切ですが、そうした場所でも、撮影ができなくなるような措置が講じられてもおかしくありません。大勢が集まることが想定されていない場所に、インバウンドが集中するなら、住民の生活を守るために早く効果的な規制をした方が良いと思います。河口湖町による遮断は、野放図な状況に対するターニングポイントになってほしいと感じます。

 

2024年5月23日 (木)

盗賊の難はなはだし

政権交代の現実味

 世論調査で、次の衆議員選挙で、政権交代を期待するという声が多数となっています。実際に、その場になって見ないと、結果の予想はできませんが、裏金問題以降の自民・公明政権への幻滅が、世論の変化の背景にあると感じます。通常国会のメインテーマが政治資金改革だとされていたにも拘わらず、自民党内の調整が進まなかったために、非常に消極的な案を自民党単独で提出するという事態を招きました。パートナーである公明党の支持も得られない案を国会に出しても、主導権を握ることはできません。それは十分に分かっているが、大局を睨んで世間が評価する案を出すために粉骨砕身尽力するまとめ役がいないというお粗末さを露呈してしまいました。岸田総理やその周辺が泥をかぶるわけでもなく、政権の命運をかけて勝負に出るという背水の陣といった勢いも感じられません。もう何でもいいから国会でお決めくださいという他人事のような不思議な態度です。要は、安倍派が空中分解で、自民党が真空状態に陥っているようです。政権交代の受け皿が碌にない中で、自民党がガタガタでは日本の危機です。派閥がなくなって、大丈夫なのでしょうか?

 

日銀の独立性

 官邸との対話の後に、日銀総裁が、円安を注視するとの軌道修正を行ったので、何らかの圧力が働いたものと受け止めていましたが、日経新聞の底流というコラムに、円急落で距離感が変わったとの解説が載っていました。円安の是正は、消費者や経済界からの要請でもありますが、構造的には日米の金利差が縮小しないと実現しないでしょう。日銀による利上げを回避すれば、円安が固定化することになります。確かに、金利が上がれば、住宅ローンの負担から、政府の国債利払いまで、経済全体に大きな影響があるので、景気の冷え込みが怖いという感覚は理解できます。しかし、円高と金融緩和の二兎を追うことは、不可能です。官邸が望む金融政策の方向性が良く分かりません。要は、円安の是正に任務まで日銀に負わせるのは、無理な話だと思います。日銀総裁は、不意打ちを避ける意味で、前出しで国民に情報提供していると思います。手を縛るようなことは、結局、国にとってマイナスにしかならないでしょう。

 

エレキソルト

 キリンは、塩味を5割増幅するスプーンを販売します。明治大学との共同研究の成果です。ガイアの夜明けで、開発過程を取り上げていたので、ついに発売に漕ぎ着けたのかと感慨深く、ニュースを拝見しました。食事で減塩している方々には、魅力的な商品です。必要な方には、19800円も高くはないでしょう。特殊波形の電流によって、ナトリウムイオンを舌の受容体に集める仕組みだそうです。5年後には、100万人に使用してもらおうというのですから、キリンとしても、感覚を制御する技術を、一つのビジネスの柱にしたいと考えているのでしょう。成功してほしいエレキソルト・スプーンです。

 

2024年5月22日 (水)

福家の人のないがしろなるけしき

大相撲の紳士

 国技館には、力士専用の入り口があり、そこから国技館の建物の脇を抜けて、力士の支度部屋への通路に入っていきます。横綱・大関は、車で直接場所入りするので、対象は、関脇以下序の口までの力士です。国技館の相撲ファンは、この通路で入と出の力士を待って、プレゼントを渡したり、声をかけたり、写真を撮らせてもらったり、サインをねだったりします。ファンサービスをしてくれるのは、勝って帰るときが大半ですが、この通路を歩く際の力士の態度で、一人一人の紳士度が測定できそうです。生成AIに、紳士的な力士を尋ねると、横綱・大関の名前が出てきますが、彼らが関脇以下のときに示した態度を想い起こすと、必ずしも、素晴らしかったとは思いません。貴景勝関あたりは、地元から国技館に来てくれたファンには、一度乗り込んだ車から降りて、サービスしてくれていましたので、大いに褒めて良いと思います。人気力士の中には、付け人を先頭にして通路を真っすぐに出口に向かい、ファンの列を見ないようにしている力士もいます。国技館で目撃している人たちには、知られていますが、例えば、御嶽海関、若隆景関、朝乃山関、遠藤関、琴櫻関(琴ノ若時代)などは、このグループです。逆に、ファンサービスが良いのは、負けた日もサインに応じていた大栄翔関、写真やサインに毎日応えている大の里関、勝った日は満面の笑みで写真に応じてくれる熱海富士関(逆にできの悪い相撲を取った日は見るからに落ち込んでいる)などでしょう。すべての力士を見たわけではないので、このほかにも紳士的な力士はいるかもしれません。国技館に足を運ぶ機会は少ないので、塩対応されたら、力士を見る目が変わってしまうと思います。この通路では、力士の本性を観ることができますので、国技館へ行かれた際には、観察してみてください。幕下以下の力士で推しを作って、接触を試みるのも良いと思います。ツーショット写真は撮れますが、サインは十両以上にならないと禁止です。

 

私大の経営困難101法人

 私学事業団の調査によれば、資金ショートを4年以内に起こす法人が16(レッドゾーン)、10年以上先に起こす恐れがある法人が85(イエローゾーン)あるとのことです。このほか、イエロー予備軍が、135法人となっています。18歳人口が減少し続けるので、典型的な構造不況業種ですから、こうした数字に驚かれなくなっていることでしょう。経営支援にも乗り出していますが、構造を変えることは不可能なので、全ての法人が生き残るというわけにはいきません。愛知県の専門学校が年度途中で授業を打ち切る(閉校する)というような無茶苦茶な状況に陥りましたが、こうしたことが、仮にも大学で起こらぬようにするのが、文科省の狙いだと思います。よほどの事情がない限り、レッドとイエローの法人が運営する大学には、進学しない方が良いでしょう。定員割れが続く大学が、日本で就労する目的で、留学生として入国するための基地になるケースもありますが、そこまで行けば、真っ当な大学としての機能は無くなっていると考えて良いと思います。レッドの大学は、恐らく、有効な手段はないと思いますが、イエローについても、粛々と閉校へのプロセスを進むべきでしょう。構造不況業種なので、イエローはまだ助かる余地があると誤解しない方が良いと思います。

 

忍びの家

 Netflixの8回シリーズの作品で、日本の力量ある俳優さんたちが出演していたので、一応最後まで見ました、気になったのは、現代に生きる忍びの姿が、非常にレトロなものだったことです。文化庁が所管しているのが、無形民俗文化財のようなものだということなのかもしれませんが、今日に忍びの技術を生かすとすれば、スパイの基本である情報通信の活用はイの一番に重要でしょう。また、武器も、刀よりは、テザー銃のような、相手を動けなくするようなものを取り入れるべきでしょう。爆発物や毒物・解毒など化学的な手法にも精通する必要があると思います。田舎で造り酒屋を細々とやっている場合ではないのです。それに、古式ゆかしい家自体が、無用の長物です。実際、風魔一党に襲われて、侵入を防ぐ手立てもなかったのですから、城として不十分でした。また、男女の交際が禁じられているのも、不思議でした。子どもが増えないと忍者の家系が行き詰まります。辻褄が合いません。一家だけで服部党を維持できないとすれば、他にも服部の分家があるのでしょうか?仲間が少なければ、宗教法人でメンバーを掘り起こしている風魔に負けるでしょう。最後に、風魔の真の狙いは政権の簒奪にあるようですが、国家権力の情報機関が、風魔の動向(毒性のある花の栽培)にまったく注意を払っていなかったというのは、ありえないという感じです。あるいは、運搬しているトラックを警察が止めればよかったのでは?毒による政治家の大量殺人についても、なぜ防げなかったのか疑問です。怪しげな花の栽培拠点や毒薬の精製工場は特定、分析できたはずでしょう。風魔の持っている毒については、警察も認識があったはずです。なぜ毒を持つ風魔の大量殺人を警戒しないのでしょうか?ホテルでの乾杯でも、みなが同じものを同じだけ直ぐに呑むわけではないので、生き残る人間もかなりいるはずです。誘拐後に解放された人間(政治家、忍者)への洗脳の疑惑も、持つのが当然でしょう。警戒しないのは迂闊すぎます。要は、忍びの家の脚本は、国家権力側が脳天気で、風魔のやりたい放題になっているわけです。続編を予定しているのでしょうが、忍びの概念の現代化から取り組んでほしいと思います。

 

2024年5月21日 (火)

雀の鷹の巣に近づけるがごとし

名人戦第4局

 先手の豊島9段が3連敗のあと、別府で1勝を返しました。おめでとうございます。後手の藤井8冠から横歩取りする形に誘導して、8三角から有利を築きました。飛車を切らせて、5六金で馬を封じる形になり、豊島9段が優勢となりました。藤井8冠は、受けが効かないと判断して、攻め合いに出ます。一手間違えれば、逆転模様です。実際、藤井8冠が5三玉と粘りに出て、豊島9段の9五角で、互角の形勢に戻りました。その後、藤井8冠が、4三歩としたのが敗着になってしまいました。2八銀成が正着で、それなら優劣不明だったようです。豊島9段が3八飛として、再び優勢となりました。その後の難しい局面が続きましたが、飛車2枚を4筋に配置したところで、はっきりと勝ちが見えてきたようです。両者の将棋は、終盤まで紙一重の互角の戦いが続くことが多いですが、今回は、豊島9段が抜け出しました。これまで3連敗はしていましたが、これで、流れが変わる可能性もあります。次局は紋別で行われます。豊島9段の勝利を一番喜んだのが、開催地の紋別の方々でしょう。

 

5月場所中日

 知人の方から譲っていただいて、家族で国技館へ行きました。C席ですので、上から見下ろす形です。途中で、地下のチャンコを食べに行った以外は、序二段の3番目から、通しで観戦できました。さすがに、固い椅子の上にクッションを強いていましたが、お尻が痛かったです。幕下からは、攻防のある取り組みが増え、特に無敗同士の対戦には熱が入ります。安青錦さんが今場所一番の苦戦でしたが、何とか一翔さんに勝ち、4連勝です。他に、琴裕将さん、藤青雲さんも勝ちっぱなしで、今後、優勝を争うことになります。十両で相撲を取った東3枚目の木竜皇さん(21歳)は、4勝1敗となり、来場所の新十両に近づきました。もう1番積み上げたいところです。関取としては小兵ですが、非常にスピードのある動きで、生きの良い若手です。十両では、ベテラン遠藤関の好調さが続いています。対抗は、若隆景関と新十両の阿武剋関ですが、このまま優勝してほしいと思います。幕内では、1敗の大の里関、2敗の琴櫻関の争いだと思います。大の里関は、大栄翔関の突き押しに苦戦しましたが、運動神経の良さを発揮して勝ちました。琴櫻関は、王鵬関に対して慎重な取り口で、絶対に負けないような相撲を取ったと思います。宇良関は、豊昇龍関に対して健闘しましたが、最後は、大関の力に屈しました。上位陣に休場力士が多い中で、今場所を盛り上げてくれています。これだけ休場が多いのも珍しいのですが、中日では幕内で7人にも上っています。しかも、上位力士が多いので、取り組み表を見ても、物足りない印象を受けます。9日目からは、高安関が復活するので、後半を盛り上げてもらいましょう。なお、御嶽海関は、中日の取り組みで土俵から落ちた際に、脚を痛めたようで心配です。本日の修学旅行生による大声援は、正代関に集まっていました。いつになく強い正代関が見られました。やればできる人です。

 

うなぎ

 ヒノキヤグループのイベントの抽選で頂いた鰻蒲焼が届いたので、早速、同封されていた会津のお米を炊いて、1串食べました。福島市の大亀楼という老舗から、真空包装で送られてきたものです。国産鰻を、関東風に、三度焼きしたと、説明書きにありました。私は鰻好きですから、当然、非常にレベルの高い蒲焼だと感動しましたが、好んで食べることはない家族にも一口食べてもらったところ、これならおいしいと賞賛されました。昨今は、贅沢品となった鰻蒲焼ですが、本格的な暑さを前に、鰻から滋養強壮をもらうことができました。大亀楼さんの鰻蒲焼をお勧めします。包装紙には、「ゆくさきは うなぎに聞けと 大亀楼」とありました。残りの1串も、近日中にいただくつもりです。

 

2024年5月20日 (月)

進退やすからず

就活セクハラ

 厚労省調査で、インターンシップや就活時に、セクハラを受けたとする学生は、30.1%に上りました。内容は、言葉での揶揄い、食事などへの執拗な誘い、性的な質問、体への接触に加えて、性的な関係の強要が被害者の5人に1人もいることには驚きました。日本には美徳も多くありますが、他方で、痴漢が多いだけでなく、セクハラが蔓延している異常な社会です。弱みに付け込む卑劣な行為は、企業サイドで、取り締まりを強化すべきでしょう。セクハラ対策が甘い企業については、厚労省の関係団体がリスト化して、就活生に対して危険を知らせると良いと思います。就活サイトの運営会社は、商売だからと言って、セクハラに甘いと知りながら企業の人材募集に力を貸すのは、倫理的に問題だと思います。このご時世に、就活生の3割が被害を受けるような状況は、日本の恥ですから、改善が必要です。

 

自転車の反則金制度

 道路交通法の改正により、2026年にも、制度の適用が開始されます。悪質性や危険性が高い16歳以上の行為に対して、5000円程度の反則金を課することになるようです。信号無視、一時停止違反、逆走などは、よく見るので、どの程度、取り締まるのか注目です。難しいのは、同じ行為に対して、機械的に切符を切るのであれば、仕方がないと諦めるでしょうが、そうでない場合は、なぜ自分だけが反則金の対象になるのかと抗議する人間も出てくるでしょう。また、今回の改正で、スマホを見ながらの運転や酒気帯び運転についても罰則が整備されましたので、気を付ける必要があります。自転車の運転は、自由に動ける歩行者とは全く違うのだという認識が求められることになります。頭が切り替わらないと、反則金を払うことになってしまいそうです。

 

中国の住宅在庫買い取り

 中国政府は、住宅在庫の消化に向けて、地方政府が買い取って、安価な住宅の転換して、有効活用するという方針を決定したとのことです。住宅ローンの下限も撤廃しました。低迷が続くマンション市場を、何とか動かそうと苦肉の策を講じている印象です。在庫を減らしたいのは分かりますが、価格の下げ止まりになるかは疑問です。あくまで地方政府の責任で在庫処理を進める方針なので、地方政府は融資を受けて買取りを進めなければなりません。金融機関にとっては、融資が焦げ付く不良債権化のリスクがあり、また、ローン金利が下がれば、収益に影響します。政府主導で不動産開発を進め、供給過多の状態に陥ているわけですから、実需を掘り起こそうにも買い手が増えるとは思えません。上海の自宅物件を処分して、日本株で儲けて、東京のタワーマンションを買う富裕層がいるくらいですから、作りすぎた住宅は売れないと思います。ブレーキが遅すぎました。

 

2024年5月19日 (日)

わが身と住家の儚く徒なるさま

和田合戦女舞鶴

 若太夫襲名披露狂言です。国立劇場の建て替えで、北千住のシアター1010での上演です。初代が初演し、祖父の10代目も襲名時に取り組んだ名作です。今回からは、ABの2つのプログラムでの公演になりました。襲名披露はAプロです。若太夫さんの芸歴や芸論に関しては、呂太夫・片山剛「六代豊竹呂太夫~五感の彼方へ」(創元社)に詳しいので、ぜひお読みください。表題の作品は、我が子(市若)を源氏の直系(公暁)の身代わりにする両親(与一、板額)の苦悩がテーマです。わざと切れるように仕組んでいる兜の緒が、市若を身代わりにせよとの暗示になっています。暗示の意味を悟って、母親が、一芝居打って我が子に切腹させるという筋書きは、なかなか凝っています。そして、死に際に、母親は、一切を打ち明けて、我が子に天晴と賛辞を送り、外では父親が念仏を唱え、子は歓びのうちに絶命します。このシーンがクライマックスです。母親は、泣きながら我が子の首を切って、使者である父親に渡します。思えば、凄い夫婦です。義理を立てるために、子が犠牲になる筋は、文楽の床本ではしばしば出てきます。親の思いに応える子の健気さ、武家らしい覚悟には、一方的な犠牲者ではない、幼いながらも自立した武士の姿が籠められています。母親(板額)の人形は、桐竹勘十郎さんが務めています。若太夫さんは、襲名を契機に、更に至芸を極めてくれることでしょう。若手の太夫さんの方が、声が出るので聞き取り安くて好きだという人もいますが、陰翳ある表現の深さは、切の字をもらっている太夫さんには叶いません。

 

戸建て賃貸による差別化

 地主と家主6月号に、浜松市で、戸建て賃貸25戸を所有しているオーナーさんの紹介記事がありました。主に、ガレージ付きの戸建て賃貸を新築しているそうです。当初は、中古アパートを買い進めていたが、修繕費の増大と入居者の属性の低下に不安を感じたとのことです。この10年は、新築物件の建設に取り組んでいますが、駅周辺の新築戸建ての供給が少ないことに目を付けて、戸建てに特化した戦略にシフトして行ったと言います。オーナーさんによれば、戸建てはクルーザー戦略だそうで、同じエリアのRCマンションと同程度の家賃が設定できている上に、将来の建て替えにも対応しやすいメリットがあります。他人と同じことをしていれば、レッドオーシャンで空室を埋める競争に苦労しますので、このオーナーさんは、うまく独自の路線で、そのリスクを避けています。頭の良いやり方だと感じます。今後も、時代の先を読みながら、柔軟に経営判断をしていくそうです。

 

老害の人

 内館牧子さんの原作を、コロナ禍を背景に内容を改めて、伊東四朗さん主演で放送が始まっています。毎回面白く見ていますが、高齢者が知らず知らずに他人の迷惑になる行為を行うという筋書きは、身につまされる部分が多いと感じます。組織の中で活躍する機会がなくなってしまうために、自分の存在を認めてもらいたいとつい力が入ってしまうと失敗の元です。自尊心を傷つけられて耐え難いと思うのは、自分という存在の価値を高く見積もり過ぎているのだと思います。自己嫌悪に陥るくらいなら、自分に対して甘くする方が良いでしょう。老化は避けられず、若いころほどの能力はもうないのです。仕方がないことです。諦めが肝心です。怒りを他人にぶつければ、結果的に自分が大きな損をするでしょう。頼まれれば、それに応じるが、頼まれない限りは、手を出さないオランウータン流が平和を保つ秘訣だと思います。番組の中では、登場する全ての老人が何らかの老害の主になっていくようですので、色々な老害の態様を楽しもうと考えています。こういう番組を見れば、ますます自分に甘くなりそうです。

 

2024年5月18日 (土)

東大寺の仏の御頭落ち

専門学校の閉校

 学納金を徴収しているにも拘らず、年度開始直後に閉校するという無責任な専門学校が現れました。返金が5万円のみというのも、学生や保護者を馬鹿にした話です。既に、半年以上前から、経営の継続に見通しがつかない状況だったようですので、今年度の募集停止、在校生の他校への転校を進めておくべきでした。年度が始まってから生徒を放り出すようなやり方は決して許されるものではありません。すべて経営者の責任です。専門学校の所管は、愛知県なので、転校の斡旋を含め生徒への学習継続のための救済策を、至急実行すべきだと思います。また、これまでの経緯を踏まえて、経営者の責任を明確にし、教育活動の未実施分の全額返金を実現すべきでしょう。これほど酷い学納金の食い逃げを、見過ごすことはできません。学校が閉校されるケースは今後もあり得ますので、愛知県が最悪の前例を作ることがないよう、然るべく対応してほしいと思います。

 

5月場所5日目

 国技館で相撲観戦しました。親方トークでは、北陣親方(元天鎧鵬)のMCで、中村親方(元嘉風)から興味深い話を聞くことができました。大の里関に関しては、来年にも横綱昇進がありうるとのことでした。その対抗馬になりそうな力士としては、大関の豊昇龍関、琴櫻関のほか、尊富士関、伯桜鵬関の名前を挙げていました。細マッチョタイプの幕下力士宮城さんが関取になるためには、嘉風の頭脳を持つことを条件としていました。研究熱心な力士ですから、遠くない将来に、十両昇進を期待したいと思います。北陣親方のMCは角界随一を言って良いでしょう。私は陰の広報部長だと思っています。地下のちゃんこで、おにぎりを食べて腹を満たし、焼き鳥とシュウマイでビールを飲み、乾き物で日本酒を飲んで、三段目の終盤から相撲観戦をしました。印象に残ったのは、怪我で番付を落としている貴健斗さんは膝が不十分ながら復活を目指していること、デビューした草野さんが受けながらも確実に勝利を積み重ねていること、急成長中の安青錦さんが尊富士関並みの前に出る相撲で実力者の上戸さんに相撲を取らせなかったこと、納谷さんが2番後取り直しの一番でスタミナのあるところを見せて勝利を収めたこと、風賢央関が阿武剋関を得意の押しで立ち合いから圧倒したこと、十両に落ちている遠藤関が極めて好調で全勝を守ったこと、竜電関への修学旅行生による応援が凄かったこと、宝富士関、御嶽海関、宇良関が全勝を守って優勝争いのトップに立ったこと、若元春関が左四つで熱海富士関に完勝したこと、大の里関が霧島関に圧力勝ちしたことです。これで1勝4敗となったカド番の霧島関がメンタル面で心配です。開き直りが必要です。1階の升席に空席はほとんどなく、大盛況でした。女性と外国人の観客が増えています。弓取り式の後、大の里関を待っていましたが、帰り際にも丁寧にファンサービスしていて、好感が持てました。次代の大相撲を背負う逸材であることは間違いありません。

 

省エネ賃貸住宅

 地主と家主6月号は、「今こそ省エネ化」と題して特集を組み、賃貸住宅の省エネ化の夜明けがやってくるとしています。4月以降に建築申請を行った建物を賃貸する際には、省エネ性能ラベルの表示が義務付けられています。ラベルには、エネルギー消費性能、断熱性能(熱の逃げにくさ、日射熱の入りにくさ)が、星と家の形で表示されます。賃貸住宅に住む若い世代は、住宅性能が良い実家で育っているために、賃貸を選ぶ場合にも省エネ基準を意識するものと考えられます。2025年4月には、省エネ化が義務化されるので、賃貸物件にも急速に普及して行きます。既存の建物に関しても、補助金を使って省エネ化を進めることを提案しています。高断熱窓へのリフォーム、省エネ型給湯器導入などが紹介されています。また、国交省から、断熱性向上や遮音対策のガイドブックが出ています。競争力を高めることで、入居者のみならず、家主側にもメリットがあるとしています。

 

2024年5月17日 (金)

世の常驚くほどの地震

川崎市とふるさと納税

 2023年度の税流出が121億円に上っており、2022年度の寄付受入額はその5%程度です。寄付受入を増やすために、ポータルサイトを増やす、高級ヘッドフォン、洗剤・トイレットペーパーなどの日用品などの返礼品を増やすとのことです。税流出分の10%程度が受け入れの目標だそうですが、そのための追加コストも馬鹿になりません。得をしているのは、ポータルサイトの運営者さん、返礼品の発注を増やしている業者さん、それに大幅に黒字を計上している一部の自治体でしょう。急にふるさと納税制度をやめるわけにはいかないのかも知れませんが、給与所得者にとって、自分の枠一杯利用しなければ損をするような仕組みは、おかしいのではないでしょうか?また、利用可能額も、大きくなり過ぎているのではないでしょうか?実質的には、ショッピング感覚で、返礼品を選んでいる人が大半です。ふるさと納税を促進する一方で、川崎市のような自治体が毎年税収を減らすことで、市民サービスが確実に低下するという弊害も無視できません。異形の制度は、ふるさと納税の総額を徐々に抑制する方向で改善すべきだと思います。

 

東京大学の授業料値上げ

 年間64万2960円への値上げが検討されています。長期間、凍結されてきたので、20%アップ(文科省が定める事実上の上限)も仕方がないと思います。既に、理工系総合大学の東工大では、2019年4月以降の入学者から、年間635400円へ改定しています。東京大学は、いわゆる文系も大きな規模なので、他大学への影響が大きいと思います。どの国立大学も、財務状況には余裕がなくなっており、値上げは潜在的な課題となっていたので、「みんなで渡れば怖くない」状況になれば、多かれ少なかれ値上げに踏み切るところが多くなるでしょう。真っ先に上げたくはないが、遅れたくはないというのが本音です。

 

国技館の異変

 芝田山親方が出店していたパン屋さんが、5月場所から消えました。残念に思う人も多いでしょう。人通りの多い1階の西側への通路にあり、相撲ビスケットのつかみ取り300円も人気でした。店に座っていた芝田山親方の姿が見られたのも良かったのですが、そういう機会もなくなりました。報道によれば、芝田山親方は理事長に意見して左遷されたため、そのあおりで、パン屋さんも撤退になったようです。相撲協会が、八角理事長の独裁体制になるのは、道を誤るもとだと感じます。宮城野部屋の閉鎖など、最近の相撲協会は、依怙贔屓や差別が目立ちます。説明責任も果たしていません。今また、八角部屋の力士の不祥事に関して、隠ぺい工作が報道され始めています。もう少し風通し良く、真っ当な運営ができないものでしょうか?大相撲の未来を考えたとき、直ぐにでもアクションを起こさなければならない課題が目白押しです。直言居士の芝田山親方のような人材を生かす方向で、運営を改善すべきだと思います。

 

2024年5月16日 (木)

竜ならばや雲にも乗らむ

選挙妨害

 つばさの党は表現の自由を主張しているようですが、報道番組ではがれている映像を見る限り、他の候補の選挙活動を妨害しようとしているだけに見えます。議会制民主主義は自由な選挙に支えられていますので、候補者の演説の場を荒らす行為を放置することはできません。現場で個人がヤジを飛ばす程度ならばともかく、拡声器を用いて、他の候補者の演説を聞こえないように妨害しているのですから、集まっている群衆に対しても、大いなる迷惑行為になります。新手の選挙妨害ですので、警察も慎重に捜査を進めるとは思いますが、民主主義の破壊に繋がる妨害行為は、憲法で保障された表現の自由を逸脱するものですから、きちんと罰するようにしてもらいたいと思います。また、選挙期間中は、逮捕はせず、警告に止めざるを得なかったようですので、今後は、現行犯逮捕が可能な法整備をすべきだと考えます。尖った行動で名前を売るつもりなのでしょうが、選挙で当選を目指すには大衆の支持が必要ですから、いくら何でもガキっぽくて逆効果だと思います。政策の中身で勝負したらどうでしょうか?

 

ビッグサイエンスへの逆風

 日経新聞に、矢野編集委員の記名で、これからの日本には、ビッグサイエンスに手を出す余裕はなく、官主導のプロジェクト型研究も縮小する時だと述べています。他方で、科研費を大幅に増額して、広く浅くではなく、優れた若手や基礎研究に手厚く配分すべきだとしています。科研費はもともと競争的資金なので、競争性を高めるという意味は、採択件数は抑えて、1件当たりの金額を上げるという意味なのでしょうか?現場の研究者たちの多くは、必ずしも貧富の差を拡大するような変更には賛成しないでしょう。それにしても、日本は、素粒子物理やロケット開発などのビッグサイエンスから撤退すべきという主張には、驚きました。ある意味で、かつての科学技術庁が取り組んできた国家的な開発研究の全否定です。また、純粋な科学研究という面でも、大型の実験・観測装置は、物理学や天文学などの学問の発展に欠かせないものですが、規模が巨大化していることから国際共同で建設・運営されるようになっています。その場にさえ加わらないとすれば、その学問分野は、我が国では衰退するでしょう。ビッグだスモールだという区分で、一部の学問分野を切り捨てるのは愚だと思います。また、核融合、ロケット開発、海洋開発等への投資は、日本の国力を支える技術を高めるためのもので、研究者の自由な発想や民間の取り組みに委ねるという性格のものとは異なります。国家プロジェクトを後退させて良いならば、その予算は、子育て支援などの別の社会課題に使われるでしょう。科学技術政策に関して物を言う場合に気を付けなければならないのは、部分的に切り取られて都合よく使われてしまうことです。矢野編集委員のような「提言」は、ビッグサイエンスやプロジェクト研究の予算を切る踏み台にされる恐れがあります。日経新聞からの発信だけに、特に衝撃的でした。

 

介護保険料の格差

 自治体間で格差があるとは認識していましたが、65歳以上の基準月額は、政令市・東京23区を比較すると、最高の大阪市の9249円に対して、最低の千代田区は5600円となっています。大阪市は千代田区の1.65倍です。千代田区は、高額所得者の保険料を上げることで、基準額は抑制しているとのことです。5900円と金額が低い浜松市は、介護予防に注力しており、家族と同居する高齢者が多いことから介護サービスの利用が抑制されているようです。世田谷区は、全国平均よりは高いですが、6280円と、23区では中位です。介護保険料の負担が割高かどうかは、サービス利用との兼ね合いもあるので、基準月額ランキングでは一概には判断できません。それにしても、基準月額が高い自治体は、その原因を分析して圧縮を図る必要があると思います。65歳以上にとっては、負担の多寡は住みやすさに影響してくるでしょう。東京23区の間でも意外な格差があることに、気づかされます。

 

2024年5月15日 (水)

盛りなる煙の如し

第三帝国とプーチン

 マクドノー「第三帝国全史」(河出書房新社)からは、ヒトラーという一種の狂人に率いられたドイツの暴走が反面教材として学べますが、ロシアのプーチンのような人には、ヒトラーの大衆操作の手口から学ぶことが多いのではないかと感じます。ヒトラーの目的は、人種的に純粋なドイツ人によるドイツ帝国の創設でした。人口2億5000万人を想定して、食糧と燃料資源を自給しうる生存圏を確保しようとしたのです。異様な妄想です。イデオロギーの面では、マルクス主義を根絶しようとしました。強烈な反ユダヤ主義は、ドイツの人種的統一を弱体化させるという点と、ドイツ社会から彼らを排除することによってのみ最終的な解決が可能になるという点で重要でした。反ユダヤ主義の偽書「シオン賢者の議定書」の流布が、ヒトラーの妄念への支持を生み出す背景になったと考えられます。ソ連への攻撃は、マルクス主義の破壊を目論むヒトラーにとっては必然でしたが、英国による包囲を阻止するための先制攻撃だと説明していました。モスクワを支配するユダヤ勢力と英国のアングロサクソンとが一緒になった陰謀への対処だというわけです。このプロパガンダに踊らされたドイツ国民は、悲惨な敗北へと突き進むことになります。ソ連側の記録によると、スターリングラードでの激しい戦闘で、ドイツ軍は、14万7000人が死亡、9万1000人が捕虜となり、生きてドイツに帰還したのは5000人に過ぎませんでした。ソ連側の損失は、さらに大きく、47万8741人が、死亡または行方不明になっています。信じられないほどの数字です。死の直前に認められたヒトラーの政治的遺言には、後悔も反省の兆しすらありません。戦争は、専らユダヤ系の政治家によって引き起こされたとして、ユダヤ人こそすべての破壊と殺戮の責任を負うべきだとしています。ウクライナ戦争を仕掛けたプーチンの頭の中も、きっと、ヒトラーと似ているのではないでしょうか?ロシアの生存圏の確保のために、ロシア国民を動員して、多くの犠牲を払いながら領土の簒奪を諦めていません。恐らく、一切の責任は、NATO諸国とウクライナの指導者にあるという理屈になるのでしょう。国民向けのプロパガンダ、反対派への容赦のない弾圧も、第三帝国(又は旧ソ連)が参考になっていると感じます。ヒトラーは、軍事に介入して作戦的には成功しませんでしたが、プーチンも、戦闘に勝てない状況になれば、同じ轍を踏む可能性があります。独裁者にありがちな欠点ですから、克服するのは難しいでしょう。

 

限界分譲地

 吉川祐介「限界分譲地」(朝日選書)には、バブル期に脚光を浴びた千葉県北東部において、競売が激増しており、新築当時に3000万超の家屋が築30年にも満たないうちに、200~300万円程度で市場に放出されている状況が紹介されています。そういう地区には、空き家、空き地が目立ちます。他方で、低価格の中古住宅を仕入れて、貸家として利用するビジネスが展開されており、外国人を含む低所得層、就学前の子どもがいる家庭の一時的な受け皿に利用されています。リゾートマンションに関しては、投げ売り状態なのは、湯沢ではなく、駅から20キロの苗場だそうで、10万円という価格で大量販売されています。ただ、利用頻度が低いにも拘らず、管理費や修繕積立金の負担があるために、低価格でも売却する人が多く、買い手が少ないだけで、管理費の滞納はあるものの、管理自体は十分されているとのことです。年金生活の高齢者の住まいとしてのニーズはあるのです。以上のように、人口減少が進むにしても、都市郊外の限界分譲地から人がいなくなることはなく、利用と放棄が混在し、街が衰退する中で、人口は増えるという矛盾した状況が生まれているのです。自治体には、地域の荒廃を防ぐ方策が求められます。著者が指摘しているように、持続可能性が低い地域だけに、生活インフラを維持するだけでも相当な難題だと思います。

 

社会教育史

 大串、田所「日本社会教育史・改訂版」(有信堂)は、明治維新から20世紀末までが対象になっています。21世紀に入って、既に20年以上ですが、対象にしなくて良いんでしょうか?終章に、生涯教育が登場した時代として、10ページほどの記述がありますが、本当に社会教育の今日的な役割を論じるならば、この章の内容を膨らませるべきでしょう。著者が指摘している多文化教育、外国人住民の学習活動、障碍者の学習活動、平和学習などの分野で、社会教育が実際にどのような目標を持ち、如何なる体制・方策によって、それを実現しようとしているのか、直近の取り組みの歴史を詳しく論じるべきです。遠い過去の歴史を学ぶことにも意義はありますが、この著作では、社会教育の今日的な動向が見えなくなっています。この20年以上を空白にしたままの社会教育史は、ありえないでしょう。失礼ながら、他の学問分野の専門家からも相手にされなくなると思います。

 

2024年5月14日 (火)

海は傾きて陸地をひたせり

核ごみ処分場

 高レベル廃棄物の最終処分地の受け入れ先が決まらない状況が続いています。建設地の決定までのプロセスは、文献調査2年程度、概要調査4年程度、精密調査14年程度を経て、数十年をかけて行われます。この度、3つ目の文献調査の受け入れ自治体に、玄海町が名乗りを上げました。文献調査の受け入れで、20億円ほどの交付金が自治体に入ります。金目的ではないと言いますが、町にとっては非常に大きな財源を得ることになります。第2段階の概要調査に進むには、都道府県の同意が必要で、先行している2自治体が属する北海道、玄海町が属する佐賀県ともに、今のところ反対の立場で、2年間のうちに方針変更がない限りは、20億円の交付金の支給をもらって、サヨウナラということになります。食い逃げのようで腑に落ちませんが、藁をもつかむ思いなのでしょう。どう考えても、うまく行きそうにありません。経産省は、やっている振りを続けるつもりなのでしょうか?

 

統合型リゾート(IR)

 日経新聞によれば、北海道(苫小牧市)、横浜市、和歌山県、長崎県では、IRの計画が頓挫して、見送り、撤回、否決、断念となっています。残っているのは、大阪府・大阪市ですが、大阪万博から実現への流れを作っていこうという目論見は、万博の不人気で苦しくなっています。一般の日本人は、カジノに馴染みがなく、博打はまともな人間がすることではないという観念を持っているので、子どもたちへの悪影響やギャンブル依存症の助長などへの懸念から反対する人たちを説得するのは難しいでしょう。また、競馬や競輪などの既存のギャンブルとの競合を心配する向きもあり、IRの実現には強い逆風が吹いています。外国資本がIRへの投資機会を狙っていることへの警戒もあるでしょう。アメリカのラスベガスはカジノ付きのホテルから発展して、今や、エンターテインメントの一大中核都市になっています。源流を辿れば、ギャングから転身した実業家が築いた街なのです。今日のラスベガスの繁栄を見て、清らかとは言えない歴史をスキップして、IRによる経済成長の果実だけを収穫しようとするのは、非現実的な話だと思います。IRを推進している人たちは、真っ当なビジネスをしてきた方々でしょうが、水原一平事件でギャンブル依存症の怖さを教えられた日本人の多くが、現時点でIRの建設に賛成するとは思えません。

 

十一代目豊竹若太夫さん

 祖父が十代目でしたが、他の古典芸能の世界とは異なり実力主義の文楽ですから、若太夫という非常に重い名跡を継ぐことは、世間の人たちが思うほど簡単なことではないようです。あぜくら会という国立劇場のファンクラブのようなものが主催した「義太夫節の魅力」第2部で、若太夫さんと児玉竜一教授の対談があり、抽選で選ばれた80人ほどの会員の一人として、お話を聞く機会がありました。印象深かったのは、舞台側からも客席の様子はよく見ているという話です。若太夫さんばかりでなく、三味線の清介さんに加えて、人形遣いの勘十郎さんまで、襲名披露狂言の「和田合戦女舞鶴」(市若初陣の段)において、市若が初めて舞台に登場した時点で、後の悲劇に思いを巡らせて、もう涙を流していた観客が目に留まったということでした。また、若太夫の襲名について咲太夫さん(故人)が、来訪を断って、電話口で即OKを出したというエピソードも興味深いものでした。ロ(呂太夫)の後には、ワ(若太夫)があるなどという謎かけをしていた洒落気のある師匠でした。77歳での若太夫襲名ですが、80代においても芸道を極めてくれるでしょう。私も、近々、襲名披露を含む文楽公演を観に行く予定です。なお、7月には、喜界島にて、「鬼界ケ島」を上演されます。30人限定(残り10席とか)で特別ツアーへの参加者を募集していました。

 

2024年5月13日 (月)

おびたたしく大地震振ること侍りき

教職大学院卒の奨学金返還免除

 国立47校、私立7校の教職大学院で貸与を受けた奨学金の返還が、正規教員になれば、全額免除されます。適用は、2025年春の新卒採用からです。それ以外の大学院卒についても、30時間以上の教育実習を受けた場合は、対象になります。昨年実績では、教職大学院卒が753人、それ以外の院卒が518人ですから、1300人ほどの教員の修士課程2年分の奨学金が、この措置のコストになります。これにより、教職大学院への進学を後押しする効果はありそうですが、教職大学院卒の教員が、学部卒と比べて、教師としてどれほど違いがあるのか、公費によって返還分を埋めるほどの意義があるのか、質の面での腑に落ちる説明が必要だと感じます。また、世の中で、学校教員だけが特別な職業ではありません。なぜ数ある大学院の中で教職大学院だけを優遇するのか、なぜ学校教員になった人間だけを優遇するのか、疑問に思う人は多いでしょう。制度的な返還免除ではなく、雇用している側が返還を補助するような支援措置を取るのが筋だと思います。

 

大根の花

 春先に、発芽した後、寒い日があると、5月に入ると大根の花が咲いてきます。ファミリー農園に植えた大根も、すべてがそういう状態になりました。このまま育てても、すが入って、柔らかくならないので、すべて抜きました。試しに食べてみましたが、ガリガリという食感です。早めに種を撒いたのが、徒となりました。気を付けましょう。

 

脳と音楽

 NHKのフロンティアという番組で、音楽と脳の関係に関して面白い研究成果を取り上げていました。一つは、認知症の進行を遅らせる効果です。数字を記憶することができなくなっている人も、若い頃に親しんだビートルズの楽曲は記憶しています。2人で演奏と歌唱を担当して、老人介護施設で演奏していました。この2人に関しては、音楽を奏でることが、前頭前野の機能を高めることに繋がっているようです。また、アフリカの熱帯雨林で原始的な狩猟生活をしている50人ほどのグループが、女性の集団による独特の合唱を行っていることが紹介されていました。他人が発しているフレーズをよく聞いて、それぞれが音を加えることで、ジャムセッションのように全体が多重的で複雑な音楽になります。みなの力を合わせる音楽の創造が、グループの絆を高める効果を生み出しています。人が集まる場では、よく音楽が使われますが、人間というものは、長い歴史になかで、音楽により一体感を感じ、他人への共感を培い、集団の絆を高めて、生存してきたのだと思います。音楽を聴くと、文字を読む、あるいは話を聞くよりも、脳への直接作用を感じまずが、そういうふうに人間ができているからなのでしょう。

 

2024年5月12日 (日)

まのあたり珍かなりし事也

5月場所の見どころ

 朝乃山関、尊富士関が、休場になったことは残念ですが、怪我を直すことを優先するのは当然のことです。特に、尊富士関は、先場所の千秋楽に強行出場したことが、徒となっているわけで、仕方がないと感じます。横綱照ノ富士関も、稽古総見の際に、脇腹を痛めていましたので、万全ではなさそうです。優勝争いは、豊昇龍関、琴櫻関、大の里関あたりが中心になるでしょう。特に、琴櫻関には、初優勝の期待がかかります。若手力士が台頭してきたので、刺激を受けている豊昇龍関にも、チャンスの場所になると思います。さらに、次の大関を狙う熱海富士関、平戸海関、豪ノ山関、王鵬関らの若手による三役争いも楽しみです。2年後の番付を考えると、横綱の器である大の里関が中心になることは間違いなさそうですが、その対抗馬が誰になるのかに注目したいと思います。尊富士関、伯桜鵬関も、その候補でしょう。世代交代が進みますが、最終的に綱を締める力士が誰になるのかは、まだ予測がつきません。若手の親方たちにも、推しを聞いてみたいと思います。国技館には、今のところ2回行く予定です。

 

立川流落語会

 5月に渋谷で行われた会では、立川らく兵さんの真打昇進披露が行われました。志らく師匠のお弟子さんです。修業時代は、酒でのしくじりがあり、真打昇進が遅れたようですが、立川流の名に恥じない実力があると感じました。口上には、談志一門の長老格の師匠が並び、立川流を挙げて彼の昇進を祝ってくれていました。落語は、前座の志音さん(道灌)、二つ目の吉笑さん(狸の恩返し)、小春志師匠(転宅)、ぜん馬師匠(孝行糖)土橋亭里う馬師匠(試し酒)、志らく師匠(看板の一)、談四楼師匠(おすわどん)と続き、米粒写経さんの漫才を挟んで、トリを務めたらく兵師匠が、粗忽の釘を披露しました。中でも、談春師匠の弟子で、らく兵師匠の従妹弟子に当たる小春志師匠が、真打昇進時に比べて、年増女性の表現に確かな進歩を感じさせてくれました。女流の落語家さんも増えてきましたが、オールラウンドに幅広く古典ができるという意味では、若手ながら、談春師匠に鍛えられた小春志師匠をナンバーワンに推したいと思います。なお、転宅は、故小三治師匠を参考にしているような気がしました。らく兵師匠は、顔が大きくて迫力があるので、怪異が登場するような噺に注力したら成功しそうです。前座の方は、志らく師匠の18番目のお弟子さんだとのことで、志らく一門は、立川流の勢力拡大の原動力になっています。

 

名人戦第3局

 羽田空港で行われ、先手の藤井8冠が、いわゆる藤井曲線での勝利を納めました。棒銀戦法で龍を作ることに成功しました。豊島9段は、4一玉で形勢を損なってしまったようです。藤井8冠は、封じ手の1六角から3八角と展開して、7三歩からの流れるような攻めで、豊島9段の飛車を封じ込めました。さらには捕獲に成功して、反撃の手段を根こそぎ奪ってしまいました。その後も、着実な玉頭への攻めと相手の逆襲を封じる守りで、豊島9段を投了に追い込みました。投了が早すぎる印象もありましたが、攻守ともに見込みがないと判断したのも仕方がないと感じます。特に、藤井玉は右辺が広いので追うことは不可能です。中盤までに優勢を築き、そのまま押し切る形は、久しぶりですが、第2局までの接戦とは異なり、藤井8冠の強さだけが目立ちました。第4局では、豊島9段が一矢を報いることができるか、注目です。

 

2024年5月11日 (土)

額に阿字を書く

マイナンバーカードの偽造

 カードの偽造によって、スマホを乗っ取られて、高額商品を購入されるなどの詐欺被害が発生しました。スマホは、本人確認にも使われており、マイナンバーカードとともに、なりすましによる更なる被害が懸念されます。発覚した被害者は、個人情報をある程度公開している市議会議員さんらでしたが、狙いやすい対象だったのかも知れません。それにしても、マイナンバーカードの偽造事件が発生したことは、全ての人にとって脅威です。組織的な犯罪だろうと推測しますが、あらゆる個人情報をマイナンバーカードに収納しようと進めている政府にとっては、非常に頭の痛い問題です。警察も総力を挙げて、犯罪捜査に当たるものと思いますが、国が構築した本人確認システムが揺らぐ事態は忌々しきことです。カードの偽造が完全には防げないならば、それを前提に、本人確認の方法を強化するなどの措置が必要になるでしょう。

 

国立大学の授業料150万円?

 慶応義塾大学の塾長ともなれば、お金の感覚が庶民とは、大きくかけ離れているようです。中教審で、国立大学の年間の学費を150万円に上げるべきだと提案されています。日経新聞では、その提案の趣旨を語っておられます。今日の高度な大学教育には、年間300万円が必要であり、教育水準を高めるには学費を上げるしかないとのことです。一方で、自己負担の額が平準化されれば、国公私立間の健全な競争が促進されると述べています。簡単に言えば、国からの運営費交付金は増やさずに、教育水準の確保を名目に、国立大学の授業料(標準額は54万円弱)を、文科省は、私大の平均以上に引き上げろということのようです。もちろん、文科省には、そんな気は毛頭ないと思います。給付型奨学金を増やせとも言っているので、国費を、今よりも、私学の経営ないし私学の学生支援により傾斜するよう求めているわけです。年間300万円を要するという試算の根拠は、積算根拠が不明で、よく分かりません。例えば、法学部のコストなどは、ほぼ人件費が大半で、極めて安く運営が可能です。年間300万円は、どう考えてもかかりません。また一部の学生しか使用しないスポーツ施設などは、別途とすべきでしょう。かりに300万円が正しいとして、年間54万から150万への値上げは、子育て支援の充実で、少子化に歯止めをかけようとする政策に逆行し、我が国の大学進学への障害を一層高くすることになります。国立大学の卒業生の給与が3倍にでもなるのであれば別でしょうが、負担能力がある家庭は限られます。もしも、値上げによって生じる差額を使って、国立への運営費交付金を削減して、国公私立を対象にする給付型奨学金の財源にするなら、最も利益を得るのは私学関係者でしょう。見え見えの我田引水の提案は、伝統ある義塾の看板に泥を塗っているようなものです。こういう人には騙されたくないものです。

 

若手の転職希望の増加

 日経新聞に、新入社員の4割が転職を検討しているという記事がありました。会社を辞める理由は、仕事にやりがいを感じない、給与水準が低い、自分のやりたい仕事ができない、会社の将来性に不安がある、労働環境が悪い、人間関係が悪いなどです。転職サービスへの登録に抵抗感がなくなり、実際に中途採用が増えていることも、背景にあるでしょう。最近は、退職代行サービスなどの利用が増えており、入社直後(あるいは入社前)にも辞めることに心理的な抵抗感がなくなっています。常識的には、より高給を得られる転職を実現するには、まずは自身のスキルを磨いて、業界で人脈を広げて実績を積むことを優先するはずですが、与えられた仕事がそうしたチャンスに繋がらないと判断すれば、我慢することなく辞めるという選択をするのが、今の若者のやり方なのでしょう。実際、昔ながらの辛抱を強いるような方法で、社風に染め上げようとしても、その前に、逃げられてしまう時代になったと感じます。今どきの奴は我慢が足りないという上司の方が、時代遅れのポンコツなのです。転職が当たり前になったとは言え、新入社員がいきなり転職を希望するというのは、会社の側に問題がありそうです。会社に対して離職防止を支援するサービスも普及してきています。しかし、結局、待遇を含めて、仕事にやりがいを感じられなければ、人材流出は避けられないと思います。新卒を採用して育成していく従来の人事システムは、維持するのが苦しくなっています。

 

2024年5月10日 (金)

なほ乳をすひつつ臥せる

井上尚弥さん

 5月6日に、東京ドームで、4万人の観衆を集めて、ネリ選手とのタイトルマッチを行い、6ラウンドKOで勝利を納めました。戦績は、27戦27勝、うち24KO勝ちです。2014年に、プロ6戦目で世界チャンピオンを破って以来、階級を上げながら、世界の頂点に立ち続けています。世界4階級制覇、2階級4団体統一王者(2人目)などの大記録を打ち立てていますが、まだ31歳なので、ボクサーとして前人未到の領域をさらに突き進んでいくことでしょう。チケットは、リングサイドは最高で22万円だそうですが、幸いAmazon Primeで中継があった試合を見ることができました。1Rで、井上選手がダウンを取られた時には、吃驚しました。ネリ選手の左のパンチは流石に強烈です。人生初のダウンだったようですが、イメージトレーニングをしていたとのことで、相手の攻勢を冷静に切り抜けて、2Rからは、見事に逆襲して行きました。逆にダウンを奪ってからは、手数、スピード、正確さで優っていたので、KOも時間の問題かと見ていました。両者がクリーンに打ち合っていたので、クリーンヒットすれば、どちらも倒れる可能性がある状態でした。これぞ、トップレベルのボクシングです。ネリ選手も、持てる力は十分発揮したと感じます。骨のある挑戦者でした。それを凌駕する井上選手の力量は、モンスター級でした。ファイトマネーも10億円超が確実だと報道されています。ボクシングという種目を超えて、歴史に残るプロスポーツ選手になったと思います。テレビ画面を通じて、史上最高の日本人ボクサーと言われる彼の全盛時代のファイトがライブで見られて、大型連休を気分よく締めくくることができました。

 

サッカー女子日本代表の夜明け

 なでしこというニックネームのなかった時代、1995年の第2回スウェーデン大会のグループリーグでの対ブラジル戦の試合を、NHKBSで、フルに見ることができました。この試合は、チームとしての初勝利、ワールドカップでの初得点(第1回では3戦で得点ゼロ)、澤穂希選手の初出場(16歳)という意味で、歴史的に重要な意味を持ちました。2,011年の優勝への原点になった試合です。試合は、ブラジルにミドルシュートで先制されたものの、エースの野田選手のヘッドによる2得点で、前半をリードしました。その後、PKを止められますが、後半は、攻勢に出てくるブラジルに対して、組織的な守備と球際の強度で、決定機を作らせませんでした。1974年にオランダが見せたコンパクトな陣形を参考にして、ラインを上げて、GKが積極的に飛び出して広い範囲を守る戦術が印象的でした。また、タックルに関しては、当時の男子でも同じですが、反則を取ることが少なかったので、女子でも、激しいプレーが見られます。交代枠も2人で、選手がよく怪我をしなかったものだと感じます。その後のなでしこでも見られた技術力の高さは、この時代から既に培われていました。その後なでしこの監督になった高倉選手らの中心選手は、確かに上手かったです。観客は3000人弱で、ピッチも荒れていましたが、身体能力で圧倒されていた4年前とは、一味違う戦いができたことで、日本代表には自信になったと思います。澤選手は、若いながら、走力も技術もレベルが高く、堂々と相手と渡り合っていました。女子サッカーの黎明期は、日本経済が伸びていた時代で、企業からの支援も厚く、選手が良い環境を与えられて、育ちやすかったようです。その後は、支援が撤退する苦しい時代になっていきます。2024年パリオリンピックでは、もう一度、世界の頂点を目指す一里塚として、メダル獲得を期待しましょう。

 

環境省の議事運営の不手際

 環境大臣と水俣病患者団体との懇談の場で、発言の制限時間を超過した者に対して、マイクの電源を切るという極端な方法がとられました。当然、団体側からは反発があり、役所としても善後策(大臣自らによる謝罪)を講じることになりました。確かに、3分間として制限時間の中で、的確に言うべきことを伝えるのが、あるべき行動パターンですが、発言者を見ると80歳を超えたお年寄りで、そうした行動がとれる人には見えません。発言したいことはメモにしていたようなので、それを大臣に渡して後で読んでもらうというかたちで、1分程度の超過に収めて、穏やかに次の発言者に交代してもらえばよかったのです。その場で議事の運営が臨機応変にできない職員は、別の人間に代えておくべきでした。発言の制限時間を超過したからといって、マイクを切るというような行為は、霞が関では見たことがありません。環境省も劣化しているのではないでしょうか?民間団体との懇談では、発言者が時間を守れないことは、想定しておくべきです。その程度のことも分かっていないようでは、中央官庁の役人は務まりません。

 

2024年5月 9日 (木)

親ぞ先立ちける

安倍政権の評価

 後藤謙次「安倍「超長期政権」の終焉」(岩波書店)は、政治記者が、安倍政権で起こったことをドキュメントとして記録し、現時点における多面的な評価を試みた作品です。最も興味深いと感じるのは、森友学園(国有地払い下げ)及び加計学園(獣医学部新設)のモリカケ問題です。両者は、安倍総理への忖度により、行政判断に大きなゆがみが生じたスキャンダルでした。前川前文科事務次官による告発と、安倍総理及び菅官房長官による口撃(読売新聞によるスキャンダル暴露報道を含む)は、歴史的に見ても極めて異例の展開を辿りました。それと並行するように進んだのが、小池都知事による「希望の党」による政権構想による危機でした。結局、新党は混迷状態に陥り、国民の支持を失い、モリカケ問題は、事実関係が確定されることもなく、疑惑を残して幕引きとなりました。著者は、中曽根政権の後藤田官房長官を例に挙げて、直言型の政治家を周囲に置かなかった安倍政権の危うさを指摘しています。ある政治家の言を引用して、安倍さんの長所は友人を大事にすること、欠点はその人たちを、かばいきることだとしています。非を認めて謝れば済むことを、意地になって事を大きくしたと批判する先輩政治家の声も紹介しています。もう一つ、注目したいのは、「隠れ移民大国」への転換です。技能実習生という、本体の趣旨とはかけ離れた劣悪な労働環境で外国人を働かせる問題のある制度が創設されたのも、安倍政権でした。安倍総理は、繰り返し、この制度が移民制度の導入ではないと説明しています。しかし、地方の産業が人出不足で崩壊しかねないために、外国人のマンパワーが必要とされたために、急遽導入された苦肉の策でした。今や、大量の逃亡者を出し、一部は不法残留者となり、彼らが集住する街は犯罪の温床となっています。非業の死を遂げた安倍総理には、いまだにファンも多いでしょうが、大きな負の遺産(アベノミクスによる金融政策の歪みを含む)を残したことも事実だと思います。

 

受刑者にさん付け

 全国の刑務所で、受刑者の呼び方が変更されたとのことです。誰の発想か分かりませんが、刑務所が、受刑者をお客様扱いして、楽しい生活を過ごす場所になるのでしょうか?滑稽です。受刑者の人格を尊重するなら、刑罰になりません。基本的に、生存に関わる最低限の人格は尊重するにしても、社会に代わってお仕置きをするわけですから、手ぬるいことでは困ります。二度と戻りたくないという程度に、厳しい環境にしておくべきだと思います。さん付けにすれば、お客様扱いで、刑罰の趣旨が損なわれます。刑務所がありがたいシェルターになっては、本末転倒です。日経新聞は、刑務所と社会の関係を新たにする第一歩だとしていますが、受刑者暴行事件によって、再発防止策の振り子が振れ過ぎた結果だと感じます。少なくとも呼称については、元に戻した方が良いと思います。

 

美術館と抗議活動

 日経新聞の文化欄で、この3月に、西洋美術館主催の展覧会の内覧会で、出品者が、イスラエルによるガザ侵攻をジェノサイトとして断罪し、オフィシャルスポンサー(川崎重工)が、防衛省に納入するイスラエルからの攻撃用ドローンの輸入を検討していることに関して、抗議活動を行ったことが紹介されていました。この種の活動は、海外でも行われているそうで、西洋美術館も、芸術家による抗議活動を尊重したとのことです。仮に、美術館での抗議活動が、言論の自由や思想信条の自由で保障されるべきだとするなら、一般の入場者によって、抗議活動が行われることも容認するのでしょう。しかし、少なくとも敷地内での拡声器の使用などは、全面的に禁止した方が良かったのではないでしょうか?反イスラエルの活動に刺激されて、イスラエルによるガザ侵攻を擁護する立場の活動が、行われてもおかしくありません。そうした宣伝合戦が敷地内で行われるようになれば、美術館の混乱は必至です。スポンサーとの契約の基準は、西洋美術館が決めればいいことですが、あらゆる企業活動に正統性があるかを美術館が判定することは、非常に難しいと思います。ケチを付けようと思えば、幾らでもできるので、スポンサー探しは極めて難航するでしょう。歴史的に、芸術活動は、巨万の富を蓄えている富裕層によって支えられてきました。今回のような抗議活動が起こるなら、君子危うきに近寄らずで、上場企業はメセナからは撤退して行くでしょう。美術館を抗議活動の場とすることを認めることは、百害あって一利なしではないでしょうか?内覧会という公式行事の最中に、こうした活動を容認してしまったのは、国立美術館の運営に大きな禍根を残す判断ミスだったと感じます。

 

2024年5月 8日 (水)

必ず先立ちて死ぬ

危機にある二所ノ関部屋

 能登半島地震の被災地支援を謳った勧進相撲のイベントに、二所ノ関親方の姿はありませんでした。後援者たちとのゴルフ大会に出ていたようです。それも仕事ですが、重要な公式行事とは比べようもありません。将来の理事長候補としては、不安材料にしかなりません。師匠として、未成年の力士の飲酒事件で、大の里関とともに、厳重注意処分も受けました。実態は、アルコールハラスメントで、部屋の中でのいじめだったとようです。こうした事件が起きるのは、部屋の風紀の緩みが原因ですが、師匠自身が外に出ている時間が長すぎるとも言われています。元横綱で、人柄も気さくで、親方の中でも人気もあるので、後援者との付き合いやテレビ出演などもあり、多忙なのだとは思いますが、女将さんや部屋付きの中村親方とともに、自身の主宰する部屋運営の足元を固めて行かないと、角界の最大勢力になっている二所ノ関一門の総帥として、威厳が保てなくなるでしょう。元横綱白鵬が主宰する宮城野部屋が、いじめ事件への対処の不十分を咎められて、閉鎖されたのは記憶に新しいところです。相撲協会の説明責任が果たされておらず、この措置は不当だと感じますので、二所ノ関部屋にも同様の処分を下すべきだとは、全く思いません。それにしても、師匠や力士が同居する相撲部屋の従来型の家族型モデルは、現代の生活に適合しなくなってきています。二所ノ関部屋の運営について、この際、信頼できる外部専門家にも助言をもらって、師匠自ら、新しい部屋のモデルを確立することを目指してほしいと思います。二所ノ関親方には、小さな躓きを糧として、新時代の大相撲のリーダーに相応しい道を歩んでもらいたいからです。

 

妙義龍関の相撲甚句

 兵庫県高砂市出身の妙義龍関は、5月場所で十両から幕内復帰を目指しています。応援の意味を込めて、今年初めに相撲甚句を作成したので披露させていただきます。

はあー  空を駆けてく 妙義龍  ヤマトタケルの 名にし負う  妙義を背負う 漢なり  右を指したら 寄り足の  速さうまさは、玄人を  唸らせるほどの 名力士      生を受けたる 兵庫県 相生松の 高砂市 家業は、板金塗装業 父親譲りの 体格と 母親の愛に 支えられ 八つで 相撲を始めたり  荒井中では 全国へ 素質見込まれ 埼玉の 名門栄へ 一人行く  山田監督 指導者で 豪栄道とも 競い合う  日体大では 国体で 優勝飾って 花開く  選んだ師匠は 境川 人柄見込んで 大相撲 幕下付け出し デビューする  怪我に 苦しめられながら 十両優勝 幕内へ 昇進したれば 地力付け 金星 6個の活躍は 相手が 白鵬 日馬富士 鶴竜さらには 稀勢の里  優勝争い 繰り広げ 技能賞にも 6回と 妙義の 四股名の通りなり 関脇の地位へ 上り詰め 筋トレ欠かさず 日本人 幕内 最年長となり 三十七歳 天晴な 相撲人生 これからも 技能相撲の お手本に もうひと頑張り 願います  地元のみなさま 応援を 末広がりで いつまでも ひとえに お頼み申します  はあー どすこい どすこい

 

私のよりよいバージョン

 ムカジー「細胞」(早川書房)のエピローグには、カズオ・イシグロの「わたしを離さないで」が引用されており、細胞を使って、パーツごとに、より新しい人間をつくっていくという試みについて言及があります。現に、人工膵臓の作製は研究開発中です。人工心臓を生み出す実験も着手されています。哲学者のサンデル教授は、こうした「増強」の探求に異議を唱えています。ゲノム革命は、道徳的な眩暈を引き起こすとも書いています。それを現実化しようとしているのが、細胞革命です。著者は、遺伝子治療の例を挙げつつ、医療技術の進歩が人類にもたらす可能性を示唆して、筆を止めています。イシグロの描いたクローン人間が存在する世界はともかくとして、IPS細胞を使ったパーツづくりは、止められないと思います。著者は、部分を変えれば、総和も変わり、ニューヒューマンが誕生することになる表現しています。それが当たり前になる時代が、やがて来るのです。

 

2024年5月 7日 (火)

濁悪世にしも生れあふ

ハラミちゃんロンドンを行く

 NHKBSで、ハラミちゃんの欧州音楽旅の第2弾の放送がありました。今回は、ストリートピアニストとして成功を収めて、武道館公演まで成し遂げたハラミちゃんが、音楽家として進むべき道を探ることが旅のテーマです。ハラミちゃんのような成功者が直面するのは、表現者として自分のやりたいことを探求するか、大衆が求める演奏を届けることに徹するかという課題です。今回も非常に良い出会いがありました。エルトン・ジョンが寄付した駅ピアノを弾いている人たちは、それぞれの純粋な生きがいとして演奏を楽しんでいました。声の質が良い12歳の少女は、テイラー・スイフトのような歌手になることを夢見ていました。ピアノでお客さんが合唱する古いパブでは、イギリスの音楽文化の深さが感じられました。クイーンを成り切りコピーする親父バンドからは、人生をクイーンの音楽とともに渡っていく悦びが溢れていました。ロンドンから200キロ離れた小さな街の公民館のようなところでの演奏は、さすがロックが生活レベルに馴染んでいるイギリスだと思わせます。最後に、ハラミちゃんが憧れるジェイコブ・コリア―さんとの対談とコラボがありました。ハラミちゃんの極度の緊張が伝わってきましたが、初対面でも、コリア―さんは、実に気さくに迎えてくれました。この部分は、番組の白眉です。クイーンの「愛にすべてを」(Somebody to Love)は、ハラミちゃんにとって人生を変えた楽曲で、今回の旅のテーマソングにもなっていました。2人のコラボで、この楽曲をコリア―さんが歌ってくれた時間は、ハラミちゃんにとって、大きなエネルギー・チャージになったと思います。しかも、ハラミちゃんの作曲した楽曲を、早速組み込むことで、天才ぶりを垣間見せてくれました。演奏シーンは、圧巻の一言です。彼が、質問に答えて、自身の音楽を探求することで、ファンに喜んでもらうという明確な姿勢を語ってくれたことで、ハラミちゃんも音楽家としての覚悟を決めたと思います。第2弾も、ハラミちゃんの音楽に向かう真摯な態度が好ましく、素晴らしい作品になりました。良い音楽は、世界の共通言語です。

 

教育実習

 教員免許の取得のために、教育実習に行って、現場の状況に触れた結果、教職への就職をやめるという人が相当いるという話を聞きました。主として、長時間勤務に耐えられない、待遇が見合っていない(労働に対する対価が低い)、部活動の指導に自信がない、保護者への対応に不安があるなどが理由です。教職課程の履修をしている真面目な学生にとって、理想と現実の違いを突き付けられる経験だったのではないかと思います。教育実習は、インターンシップのようなものですが、こうした機会が教職回避へと繋がってしまうようでは、優秀な人材を得ることは非常に難しくなります。教育委員会が運営する公立学校システム自体を再構成しないと、教職調整額の値上げ、採用試験の前倒しなどによる小手先の教員確保策は、空振りに終わるのではないでしょうか?教育実習は現場の負担にもなっているにも拘らず、採用にとっては逆効果に陥っているなら、制度を見直すべきだと感じます。

 

外国人嫌いのニッポン

 バイデン大統領は、アメリカにおける移民が果たしてきた役割を強調する一方で、ニッポンの弱点として、外国人を受け入れる姿勢が乏しいことに触れています。ニッポンへの批判を目的にした発言ではないことに注意が必要です。ただ、アメリカ人から見て、日本国が日本民族の純血性を守ろうと固執しているように見えるのは、むしろ当然のことです。都合のいいところをつまみ食いしようとしているだけで、人口減少対策として、外国人を積極的に受け入れる政策への大転換に国民的合意を形成しようとするわけでもありません。シンガポールのように、高度な能力を持つ外国人に自国のパスポートを与えようとするのでもなく、アラブの産油国のように建設工事などに大量の労働者を受け入れることもなく、EUのように苦しみながらも難民の受け入れで協力体制を構築したりすることもなく、アメリカのようにグリーンカードの制度もありません。大きな波のように押し寄せる南からの難民に対しては、アメリカは、人道と法治の狭間で揺れ動いていますが、日本については、一貫して外国人に対して扉を閉ざしているために経済的な活力が失われているように見えるでしょう。実際、マンパワー不足に悩む業界はさらに多くなっていて、多くの逃亡者を出している技能実習生のような中途半端な制度で、途上国からの若い外国人労働者を、相変わらず都合よく使おうとしています。そのうち、自国が経済発展して、待遇にさほど魅力がないと感じれば、日本には、優秀な人材は来なくなるでしょう。

 

2024年5月 6日 (月)

堂の物の具を破り取る

青山剛昌さん

 NHK「プロフェッショナル仕事の流儀」に登場して、創作の裏側を披露してくれました。名探偵コナンは、30年間、週刊少年サンデーの看板作品であり続け、コミックスが104巻、累計で2億7000万部発行されています。劇場版映画も27作目が上映されており、累計で観客動員数1億人を突破しています。海外にも熱心なファンが大勢います。ミステリー×ラブコメのバランス、登場する多彩なキャラクターの魅力が出色のシリーズです。一口に漫画家といっても、青山さんは、ストーリー、脚本、キャラクター、作画のすべてを一人でこなしています。編集者から作品の中で使えそうなアイデアを吸い上げてはいますが、基本的に、それをストーリーに落とし込んで、謎解きに仕立てて行くのは、青山さんだけの孤独な作業です。天井を見あげて、頭の中で、ラフスケッチを組み立てている姿は、技を極めた職人のようです。劇場版映画の人気が高いのも、青山さんに、映画監督の資質があるからでしょう。私には、寅さん映画を作り続けた山田洋次監督と重なって見えました。60歳を迎えたということで、栄養と睡眠には、これまで以上に気を配ってほしいと思います。運動不足にもなりそうなので、仕事場兼住宅にエアロバイクを設置して、特に脚を鍛えてはどうでしょうか?何よりもファンを大切にして、サービス精神が旺盛な方ですから、健康寿命を伸ばして、作品を生み続けてほしいと思います。ちなみに、私は、高校生ながら、真剣を振り回し、バイクを乗り回し、必ずガールフレンドを危険な目に遭わせる服部平次君のファンです。自分が和葉さんの親ならば、危ないから服部君からは離れるように言いますが・・・。

 

中森明菜さん活動再開

 デビューから42年だそうで、8年ぶりの活動再開は朗報ですが、きちんと年間を通じて歌が披露できるのか不安もあります。彼女の楽曲を愛する人は男女を問わず多いので、マイペースで継続してもらえば、昔からのファンは喜ぶでしょう。ねとらば調査隊が、人気曲のアンケート調査に関する最新の結果を発表しています。1位から、北ウイング、ミ・アモーレ、スローモーション、DESIRE~情熱、セカンド・ラブ、サザン・ウインド、難破船、十戒、飾りじゃないのよ涙は、TANGO NOIRと続きます。北ウイングがあった時代に、成田空港から海外へ旅したことがある古手の人達がアンケートに応えたのかもしれません。北ウイングを始め、私がベスト5だと思ったものが4つ入っていますが、TATOO(12位)だけは漏れました。年齢を重ねた歌手として、ジャズバージョンなど、新しい編曲で聴かせることを考えているようですから、セルフカバーも楽しみです。難破船などは、若いときとは違った味が出せるでしょう。シングルにならなかったものの、竹内まりやさん提供の「駅」などは、大事に歌ってほしい作品です。今度発売されたベスト盤には収録されています。ご活躍を切に祈ります。

 

北朝鮮入門

 磯崎、澤田「北朝鮮入門」(東洋経済新社)は、不思議の国を理解する上で、大いに助けとなります。興味深いと感じた点は次の通りです。第1に、最高指導者への責任集中の回避策として、金正恩の象徴化が行われています。人事に関しては、序列ナンバー2を作らず、短期間に昇格と降格を繰り返す、重要ポストを入れ替えるなどの変化が激しいのが特徴です。金正日政権以来、軍さえ裏切らなければ体制は安泰と考えているのです。第2に、30世帯程度で1人民班が構成され、密告奨励による監視システムが整備されていることです。反体制運動が起きる可能性は極めて低いわけです。外国人と接触したら政治犯とみなされて、強制収容所(北朝鮮は存在を否定)送りになります。家族にも連座制が適用されるようです。第3に、脱北者に関しては、韓国による全面受け入れとNGOによる支援で、2009年ころがピークになりましたが、中国当局による監視の強化、金正恩政権による取り締まり強化(さらにコロナ禍を踏まえた国境閉鎖)によって、現在は事実上不可能になっています。なお、コロナ禍を契機に、北朝鮮は、自力更生による経済建設へと方針転換しています。第4に、拉致問題の解決に関しては、日本側が求める無条件対話には応じる気がなく、停滞したままです。アメリカとの交渉で、経済制裁の解除を取り付けることで、中韓からの支援を得るというシナリオで外交が展開されており、日本を重要な交渉相手とみなしていないのです。背景には、日本の経済力の低下が影響しています。第5に、韓国国民の統一に関する世論は、従来から多数の「条件が整うまで待つべき」が48.0%を占めていますが、相対的に減少しており、むしろ、「現状のまま」が26.3%と増加する傾向にあります。統一を急ぐべきとするのは16.8%に過ぎません。本音としては、南北の体制間競争には勝負がついており、統一時の混乱を避けるには、北朝鮮経済の底上げが必要だと考えているのです。なお、北朝鮮の貿易相手は、今や95%以上が中国で、その依存関係が顕著になっています。

 

2024年5月 5日 (日)

みずからが家をこぼちて市にいでて売る

U23サッカー日本代表対ウズベキスタン戦

 決勝は、難敵相手に苦戦しました。1-0で勝ち切ったことに意義があります。追加時間に決勝点を上げた山田選手、PKを止めた小久保選手が光りました。前半は、ウズベキスタンペースでした。特に、15分までは、相手が運動量を増やして圧力を高めたために、自陣での守勢が続きました。日本が基本とする繋ぐサッカーの弱点を突いてきたものです。前半、シュートは1本しか打てませんでした。後半、中盤の構成を修正して、ようやくチャンスを幾つか作りました。特に、70分過ぎからは、脚をつる選手が多くなり、ウズベキスタンは守備からの有効な速攻ができなくなっていきました。それでも、最後まで、ゴール前に蹴り込んで、零れ球を押し込もうとしてきました。日本は、粘り強く守れたと思います。交代で入ったばかりの荒木選手が相手のGKのラフプレーで頭を打ったシーンは、冷や汗ものでした。非常に危険なプレーなので、一発退場でも良かったと思います。脳震盪の症状で、試合終盤にピッチを後にしていたので、大事に至らないことを祈ります。山田選手のゴールは、個の能力の高さを示すものですが、敵陣でボールを奪ってから、彼に渡るまでの繋ぎが鮮やかでした。PKは不運な判定でしたが、小久保選手の最大の見せ場になって、結果的には良かったと思います。身体能力+反応速度が素晴らしいGKです。この大会では、退場者も出しましたが、大岩監督が、23人の選手をうまく交代させながら使って、過密日程の中で、総合力で優勝を勝ち取った点が実に見事でした。マネジメントの勝利です。ウズベキスタンは、唯一、日本に匹敵する力を持ったチームでした。主力3人が離脱しても、互角の試合をしたのですから、大いに褒められるべきだと感じます。両国が、パリでも上位に進出できることを祈りましょう。

 

アメリカの大学紛争

 コロンビア大学で、パレスチナ人に同情した学生たちが、デモやテントによるキャンパス占拠などの抗議行動をして、停学処分を受け、逮捕者も出しました。詳しい理屈は分かりませんが、大学当局がイスラエルの企業に投資するのをやめよというのが要求だと言います。本心は、アメリカ政府のイスラエル支持をやめさせたいのでしょうが、政治的な要求をするわけにもいきません。誰かが思いついた苦肉の策なのでしょうが、本来、ガザ地区で破壊・殺戮を継続しているイスラエル政府やイスラエル支援の予算を認めた議会及びホワイトハウスに対して行うべき抗議活動なのです。大学当局としても、大学の中で行う理屈のない政治活動なので、躊躇することなく警察を入構させて、違法に大学の一部を占拠している者を排除する措置を取っているわけです。ガザ地区で、罪のない子どもの犠牲者が増えていることには、世界中の誰もが心を痛めていますが、紛争解決には、ハマスによる人質解放が不可欠です。その課題を棚上げして、イスラエルに対して直ちに攻撃をやめろというのは、おかしいでしょう。また、非戦闘員の犠牲者が増えるだけの戦争を推し進めているネタニヤフ政権への批判は可ですが、ハマスへの攻撃継続を多数が支持しているイスラエル国民全体を敵視するならば、反ユダヤ主義に陥る危険があります。パレスチナ人の犠牲者を増やす政策を取り続けるバイデン大統領には投票しないというなら、より強いイスラエル擁護派のトランプ前大統領を間接的に支持することになります。学生運動が、間違った敵を攻撃することは、しばしばありますが、コロンビア大学などの大学紛争は、正に、そうしたカオスに呑み込まれてしまったように見えます。大学の年度末で、卒業認定や単位習得の時期にも当たりますので、せっかく名門大学に籍を置いている学生たちが、道を誤らなければ良いと感じます。全米の大学で2000人もの逮捕者が出ているのは、驚きです。

 

叡王戦第3局

 後手の伊藤匠7段が、藤井8冠が得意としている先手の角換わり戦法を、ついに破りました。タイトル戦で負け続けていた流れを第2局で断ち切って、最強を誇る藤井8冠に連勝の快挙です。おめでとうございます。この結果、藤井8冠は、タイトル戦で初めてカド番に追い込まれました。新年度早々、将棋界の事件です。藤井8冠は、終盤まで7:3くらいで評価値をリードしていました。伊藤7段が、飛車を見捨てて、垂らした6七歩を生かした勝負手を繰り出して、追い込みをかけた時点で、最善手の7九桂ではなく、藤井8冠が8七銀と受けたために、形勢が逆転しました。受けに桂馬を使うのが最善とは、素人には思いも付きませんが、藤井8冠が間違えるほど難しい局面だったというわけです。その後、不利になった藤井8冠が逆に罠を仕掛けていきますが、伊藤7段は時間がない中で悉く最善手を指し続けて、逆転を許しませんでした。特に、あえて金ではなく銀を取った判断が見事でした。この選択を間違えれば、藤井8冠が勝ったはずです。さらに、藤井8冠が猛追する中で、正確な玉捌きで、詰み筋を免れて行きます。伊藤7段は、藤井8冠に匹敵するほどの、終盤に抜群の冴えを見せる数少ない棋士なのです。受けに使った4一香が、攻撃に効いてくる形になり、伊藤7段が攻防の妙手を繰り出して、大逆転を狙って迫り続けた藤井8冠の玉を仕留めました。将棋ファンとしては、藤井8冠のカド番からの逆襲が楽しみですが、次局は伊藤7段が先手番なので、初タイトルを奪取してもおかしくありません。歴史が動くか、大注目の叡王戦第4局です。

 

2024年5月 4日 (土)

馬車のゆきかふ道だになし

読売新聞の記事捏造

 小林製薬の取引企業の社長の談話を捏造するという事件が、大阪本社で起きました。既に捏造を行った48歳の記者らへの処分も行われましたが、ベテラン記者による捏造が起きる環境、風土が現場にあるのだと思います。大新聞は、世論の形成に大きな役割を担いますが、それだけに世論を自分たちが考える方向に導きたいという思いが、報道の倫理からの逸脱を生むのではないでしょうか?また、ジャーナリストとしての功名心が、不正に手を染めても手柄を上げればよいとする悪魔の囁きに耳を貸してしまうものと思います。私は、子どものころから朝日新聞を読んできましたが、記事の捏造を含む報道姿勢に疑問を感じるようになって、日経新聞に切り替えました。読売新聞の読者の中にも、捏造への嫌悪感が生じているものと推察します。日本において、全国紙というメディアが、信頼性を失い、衰退していくことがないよう、祈りたいと思います。

 

能登半島地震の損壊調査

 被災地ではマンパワーの制約から損壊調査が遅れており、判定結果が得られない被災者は、住宅再建への着手などができずに、じりじりと待たされている状態です。外観で判断する1次調査は完了しても、一部損壊などとされた被災者は、仮設住宅への入居申し込みさえできないので、不服申し立てするケースも多くなります。したがって、住宅への立ち入りを行う2次調査の件数が多くなり、個々に現場で調査を行うために、専門家のマンパワーが不足しているのです。他県からの応援を得て、調査を急いでいるとのことですので、市町村によるオペレーションに文句を言うつもりはありません。こうした仕事をこなすためには人海戦術(全国からの動員)が必要であることが分かっているのですから、国が前面に出てすべての市町村における調査を終わらせるまでの計画を立案・執行すべきではないでしょうか?岸田総理は外交がお好きなようですが、被災地の復旧・復興への意欲が薄いように感じられます。報道各社の世論調査結果で、内閣支持率が不支持率の半分以下(3分の1に近い)でしかないことも、能登半島地震の被災地の状況に鑑みれば、仕方がないことだと思います。3つの補欠選挙で1つの議席も取れなかったことも、内閣への厳しい審判だと受け止めています。3選挙区での投票率が過去最低を記録した点も、反省材料にしなければならないでしょう。

 

日本のプロ野球

 大谷翔平選手らの動向は、情報番組で毎日報道されるので、国民全体の大リーグ志向が高まっているものと思います。もちろん、円安も手伝って、稼げる金額に大差があるので、日本の野球選手たちは、大型契約を獲得して活躍中の今永選手や山本選手に続こうと、こぞって大リーグを目指しているでしょう。セ・パ両リーグの優勝争いは、既に、阪神とソフトバンクが抜け出す形になっており、戦力差がそのままチーム成績になっているために、もうこれから大きな変動がありそうにないと思います。NPBの2024年は、静かな年になってしまいそうです。J1、B1では、もう少し、チーム力が拮抗しており、順位争いが面白いので、ファンの熱気も盛り上がっています。このままでは、日本のプロ野球は、少年の野球人口が減っているだけでなく、見るスポーツとして衰退していくのではないでしょうか?大いに危機感を持つべきです。

 

 

2024年5月 3日 (金)

道のほとりに飢え死ぬる

空き家899万戸

 総務省の調査で、住宅総数に占める空き家の割合は、13.8%で過去最高になりました。そのうち、放置空き家は、385万戸にも上ります。また、空き家のうち、共同住宅が502万3500戸で、共同住宅の16.7%が空き家になっています。長期間空き家になっているものは、使用価値も交換価値もゼロ以下になっていると考えられ、解体して更地にすれば解体費用以上で売れるというわけでもないでしょう。文字通り、負動産なのです。空き家率ランキングは、1位の和歌山から、徳島、山梨、鹿児島、高知と続きますが、結局、使えず、貸せず、売れずという物件が多い地域だということです。空き家対策特別措置法で、危険な空き家と判断されれば、自治体が指導や勧告ができるようになっていますが、問題を早めに解決するために、空き家の解体を後押しする支援策も必要だと感じます。空き家が放置されて、自治体にとって良いことは一つもありません。

 

御朱印ビジネス

 桜新町の桜神宮では、毎月、新しいデザインの御朱印が授与されるので、それを求めて、特に初日には長い列ができています。普段は、参拝者もまばらで、祈祷の数もそれほどではないと見受けますが、御朱印という鉱脈を見つけて、繁盛しているようです。外国人を含めてSNSでも評判になっています。また、お守りも可愛いデザインのものを期間限定で授与することによって、御朱印と併せて、販売実績を伸ばしているようです。こうした宗教法人のビジネスは、収益事業とみなして課税しても構わないのではないでしょうか?通常の御朱印やお守りなどと違って、あまりにも収益目的のビジネスの色彩が濃いからです。年間を通して同じものを授与している場合は、通常の宗教行為と見て良いでしょうが、期間限定での頻繁にモデルチェンジしているようなケースは、収益性が高いとみなしてよいと思います。特に桜神宮が悪いわけではなく、裏でそうしたビジネスを支えるデザインの提供者が動いているようですので、もはや純粋な宗教行為とは言えない状態に陥っているのです。税務当局も、形式にとらわれず、しっかり目を配ってほしいと思います。

 

相撲部屋

 スポーツ報知の「大相撲力士名鑑」(2024~25)によれば、現在の相撲部屋の数は、43です。関取がいない小部屋が多いと感じます。大相撲の世界は、一門というグループに分属しており、役員選挙や連合稽古などで、通常は行動を共にしますが、部屋数で見る限り、二所ノ関が15、出羽海が14で2大勢力です。他は、時津風が5、伊勢ケ浜が5、高砂が4となっています。常々、疑問に思うのは、部屋付きの年寄(親方)の数と、部屋にいる関取の数のバランスが取れていないことです。師匠+2人以上の親方を擁する部屋は、15あります。そのうち、出羽海、春日野、藤島、尾上、伊勢ノ海、大島部屋は、複数の関取が在籍していません。指導する側ばかりが多いということです。逆に、複数の関取がいるが、師匠+1人以下の親方で指導している部屋は、立浪、二所ノ関、高田川、常盤山、鳴門、片男波、荒汐です。師匠が比較的若い新設の部屋は、有望な力士が集まりやすい一方、所属する親方は少ないのです。ただ、そういう環境の方が、出る杭が打たれることなく、伸びる力がある力士は関取の地位を攫んでいるのです。大相撲の世界では、それが当たり前と思っているのでしょうが、力士の数と親方の数のバランスが悪いのは、普通のプロスポーツでは考えられないことです。普段何をしているのか分からない親方がいると感じている相撲ファンが多いのは、そういうアンバランスが原因でもあります。相撲部屋の所属力士の数にも大きな格差があります。できて間もない安治川部屋、音羽山部屋などは仕方がありませんが、錦戸部屋は3人(うち関取1人)、片男波部屋は4人(うち関取2人)、西岩・雷・朝日山部屋は6人(関取なし)、湊部屋は8人(関取なし)です。こういう部屋を、維持していく意味を見出すのは難しいと思います。斜陽の部屋には新規の入門者が少なく、入門しても早々に廃業して行きます。関取に出世する見込みが薄いと判断すれば、居心地や待遇の悪い部屋からは見切りをつけて辞めて行くからです。例えば、部屋から関取が5年以上出ていないような部屋は、整理・統合対象にするくらいに厳しさがないと、大相撲はプロスポーツとして成り立たなくなると思います。もっとも、十両に上がらないと給料ももらえない世界に、若い人たちがどれほど魅力を感じるのか、根本的に疑問があります。大相撲は、今のところ興行的には賑わっていても、持続可能性が低く、構造的問題を抱えた業種かもしれません。

 

2024年5月 2日 (木)

少水の魚のたとへにかなへり

地上げ屋の復活

 日経新聞に、築40年以上のマンションを対象に、地上げ屋が暗躍し始めているという記事が出ていました。所有者が変わり、借主に退去を求めて、嫌がらせをするというパターンです。全戸から退去させたら、解体して、跡地に新しいマンションやホテルを建設するというシナリオです。嫌がらせの手口は、警察が介入しない程度の方法が使われます。金融緩和が継続し、マンションを中心に不動産価格が高騰していることから、地上げ屋のニーズもあるのです。そろそろ不動産価格がピークアウトするでしょうから、伊丹十三さんが映画にしたような酷い状況にはならないとは思いますが、地上げ屋の再登場は、昨今の不動産市況の異常さを物語っていると感じます。

 

ウェッブトゥーンの台頭

 小川攸介「漫画の未来」(光文社新書)は、韓国発のデジタル漫画(ウェッブトゥーン)の急成長で、日本が得意としている漫画文化に破壊的な影響が避けられないと警鐘を鳴らしています。日本のマンガ雑誌の市場規模は、2022年には537億円で、5年で4割減少しました。集英社の「少年ジャンプ+」は、週刊少年ジャンプとは編集部を別にして、デジタル専用媒体として運営されています。序盤と直近の数話が無料で、後の単行本の販売で利益を上げるというビジネスモデルです。作品は、基本的に、モノクロ、横読みで、日本の漫画のかたちに忠実です。簡単に言えば、日本の漫画は量より質の伝統工芸品、韓国のウェッブトゥーンは質より量の工業製品です。著者によれば、日本の海外進出にとって壁になるのは、ページを逆Z字で読み進めるルールは海外の読者には馴染みがないこと、海賊版被害が深刻化していること、書籍流通システムが必ずしも整備されていないことなどの事情です。日本が官民で進めているクールジャパン機構は、赤字続きで、まったく収益化できていません。マンガやアニメで稼げないようでは、厳しい状況が続きます。

 

大学の政治哲学史

 ガラード、マーフィー「英米の大学生が学んでいる政治哲学史」(草思社)には、30人の思想家の名前が挙がっています。欧米中心主義への批判を経て、1970年代当たりと比較すれば、多様性が見られます。具体的には、アル・ファーラービー(イスラムの先導者)、マイモニデス(ユダヤ教の立法者)、エドマンド・バーグ(イギリスの反革命主義者)、メアリー・ウルストンクラフト(近代フェニミズムの母)、ジェームス・マディソン(合衆国憲法の父)、サイイド・クトゥブ(イスラムの聖戦主義者)、マーサ・ヌスバウム(「能力を発現させる力」を開花させる社会を推進する女性思想家)、アルネ・ネス(エコロジストの登山家)などです。逆に、モンテスキュー、アダム・スミス、ベンサムなどが入っていません。かなり広げたにしても、アジアは、孔子・毛沢東(中国)、ガンディー(インド)だけで、南米やアフリカはゼロですから、まだまだ偏りがあることは否めません。30人という枠の関係もあるでしょうが、人種差別、LGBTQ差別などの重要なテーマへの目配りも不足しています。日本の大学においても、現代的なテーマを考える上で基盤となる政治哲学史の構築が必要だと思います。

 

2024年5月 1日 (水)

まさざまに跡形なし

U23サッカー日本代表対イラク戦

 アジアカップ準決勝というパリ五輪への出場権がかかった大事な試合で、見事、2-0で勝利しました。序盤から押し気味で、順当勝ちでした。イラクは、敵陣でボールを奪って手数をかけずにシュートを狙う作戦でした。日本には、BK陣がボールを素早く動かして、相手のアタックを交わす技術がありました。もう一つは、ロングボールをヘッドでつないで、小人数でシュートに持ち込むという単純な速攻でしたが、これにも余裕を持って対応できていました。後半、イラクに単発的な突破や惜しいシュートはありましたが、2点差以上もレベル差があったと感じます。細谷選手の得点は、左足で打った前のシュートが伏線になっていました。同じような体勢から、逆を突いて切り返し、反転して振り向きざまに右足でGKの届かないコースに蹴り込んだものでした。このレベルの高いシュートをチェックした欧州のチームから、五輪後には、獲得オファーがありそうです。エースの得点で、はっきり優位に立った日本は、年齢制限のない代表がイラクに負けたお返しを果たしてくれました。パリ五輪は決めましたが、決勝ではウズベキスタンにも勝って、タイトルを持ち帰りましょう。その資格があるチームだと思います。

 

アメリカの大学との比較

 向井綾野「米英の名門大学48」(PHP)は、学部留学志願者への正確な情報提供を目的として、現地の大学にいる日本人留学生に取材した結果を取りまとめたものです。留学先を決めるにあたって、天候や治安を含む地理的環境、大学の性格が自分に適合しているかを十分考えることを勧めています。興味深いと感じたことは、アメリカの有力な大学群は、小規模なリベラルカレッジ、アイビーリーグなどの私立名門校(中規模)、大規模な州立大学によって構成されていて、多様性のある大学群が、一つのシステムとして機能しているということです。これらの外側に、実質的に誰でも入れる大学もあります。世界ランキング上位の研究大学だけを取り出して、日本のモデルにするのは、正しい方法とは思えません。留学生比率については、ハーバード大学など高い大学でも15%程度ですが、英語圏の人口を考えれば、日本の大学と数字だけを比較するのは、全くフェアではないと感じます。学生の多様性の確保が教育の場に必要であるという意味で、留学生比率を考えているものと思われます。寮費を含む学費が高騰しているので、手厚い奨学資金を有している大学が有利になっていることも、日米の格差に繋がっています。アメリカでも有名大学は選抜性も高くなっており、志願者の3~5%程度しか入学許可されません。日本の入試倍率(東大でも4倍程度)とは、単純に比較できません。多くの大学が、教授は入試に一切関わらず、学生は入学後に専攻を決めることになる点も、日本と違います。2学期制、3学期制も大学によって異なります。カリフォルニア大学グループの9つの大学の間でも統一されていません。特定の大学の特定の局面だけを見て、素晴らしいからとロールモデルにするというのは、ほとんど意味がないことだと思います。成果を上げるためには、財務基盤、教職員人事、入試、学生支援など、あらゆる要素が絡んでくるからです。英語による授業科目のみで学位が取れるようにするとか、海外から優れた研究者を形ばかり迎えるとか、アメリカの有名大学もどきの取り組みを国費によって支援して続けてきましたが、そういう施策は、世界ランキングを上げたり、大学教育のレベルを上げることには繋がりません。研究力については、上記の著書の範囲外ですが、論文指標による国別のランキングでは、日本が過小評価され過ぎていると感じます。英語による論文作成、国際学会でのプレゼンスは、言語のハンデが邪魔をしています。特に、現在の60~70代と30~40代の海外研究拠点での長期滞在経験を比較すれば、国際的な学術ネットワークへの参入で後れを取っている状況が分析できると思います。円安は、ますます若手研究者の海外経験を狭めてしまうでしょう。日本は、海外の真似をするのはやめて、自分たちなりの合理的な方法で、大学の教育・研究力を向上させることを考えるべきだと思います。大学改革の失敗は、アメリカの特定の大学を物差しに、現実に合わない改革を推進しようとしたことにあります。失敗に学んで、頭を切り替えるべきでしょう。

 

黒石寺蘇民祭

 国の三大裸祭りとされていますが、2024年を最後に終了となりました。祭りのロジを担う檀家さんの高齢化などが原因です。NHK・Eテレで、最後の祭りと青年部による復興の試みについて、「千年の祭りが絶えるとき」という番組が放送されました。黒石寺の蘇民祭は、岩手県の各地で行われる蘇民祭の代表的な存在ですから、今後、各地の蘇民祭の存続問題も議論されることになるでしょう。実際、中止を決めた地区も複数出てきていました。黒石町は、人口が3000人から900人に減少し、小学校も廃止・統合になりました。過疎化、高齢化が進み、町自体が、次第に衰退・消滅する危機に晒されています。蘇民祭の中止は、その一つの現象に過ぎませんが、地域の住民の絆を固めるシンボルが失われてしまったことは、大きなショックだと感じます。身の丈に合った形で、復興が成し遂げられることを祈りたいと思います。人口減少が続く日本では、一つまた一つと、こうした伝統的な行事が維持できなくなるでしょう。宮崎県高千穂の神楽も、各地区で担い手を維持することが難しくなっていますが、蘇民祭は、岩手県の広域で開催場所を持ち回るなどして、千年の伝統の灯を消さぬようにするしかないのではないでしょうか?

 

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