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村上春樹をめぐるメモらんだむ

現代作家として国際的に高い評価を受けている村上春樹さん。小説の執筆だけでなく、翻訳に、エッセーに、ラジオDJにと幅広く活躍する村上さんについて、最新の話題を紹介します。

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村上春樹さんが描く「こちら側」と「あちら側」 元は一つのもの

オウム真理教の信者らに取材したノンフィクション「約束された場所で」で桑原武夫学芸賞を受賞し、贈賞式であいさつする村上春樹さん=東京都千代田区で1999年7月8日、画星充撮影
オウム真理教の信者らに取材したノンフィクション「約束された場所で」で桑原武夫学芸賞を受賞し、贈賞式であいさつする村上春樹さん=東京都千代田区で1999年7月8日、画星充撮影

 7月28日放送のラジオ「村上RADIO」(TOKYO FMなど全国38局)は、この番組ですっかり恒例化した「リスナーからのメッセージ特集」で、寄せられたさまざまな質問にDJの村上春樹さんが答えた(引用は番組ウェブサイトに基づき表記を一部改変)。

作家として「やらないこと」

 今度も「好んでおでんを食べますか?」とか「関西出身の春樹さんは、関東弁を身に付けるにあたって苦労したことはありますか?」といったユルい感じのものから、中学3年の息子がなかなか村上作品を手に取らないが「母のススメは逆効果にしかならない気がするので黙っています」という48歳の女性からの深刻な(?)相談まで、バラエティーに富んだ問いが寄せられた。

 村上さんの答えも、いつもながらユーモラスだが誠実、かつ「らしさ」がうかがえるもので、面白かった。ちなみに、三つ目の問いには自身の体験を交えつつ「おっしゃるように、口出しはなさらないほうがいいように思います。(中略)読書にとって大事なのは、まず雑食です」などと丁寧に応じていた。

 中で注目したのは、次の二つのやり取りだった。一つは4月に77歳で死去した米作家、ポール・オースターさんに関し、「記憶に残る」エピソードを尋ねた質問への答えである。1947年生まれのオースターさんは村上さんと同世代であり、80年代に本格的な創作活動を始めた点も共通する。主な作品は米文学者の柴田元幸さんによって翻訳され、日本でも根強い人気がある。

 ラジオで村上さんは「才能あふれる優れた作家」とたたえ、こう語った。

 「僕は一度、ニューヨークのブルックリンにあるオースターさんの家を訪れて、話をしたことがあります。1990年代初めのことですね。(中略)僕はちょうどそのとき新刊書だった彼の『偶然の音楽』を読んでいたので、その話をしたような気がします」

 もう一つは、「年を取ると、以前はこだわっていたことも、まあいいかと流せることが増えてきました」という59歳の男性からの質問だ。「それでも幾つかのことは譲れず、こだわり続けている」といい、作家の「昔から一貫して守り続けているこだわり」を聞いていた。

 村上さんは…

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