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村上春樹をめぐるメモらんだむ

現代作家として国際的に高い評価を受けている村上春樹さん。小説の執筆だけでなく、翻訳に、エッセーに、ラジオDJにと幅広く活躍する村上さんについて、最新の話題を紹介します。

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小澤征爾さんと村上春樹さんの創作活動に通底 「ネジを締める」とは

村上春樹著「中国行きのスロウ・ボート」(中央公論新社)
村上春樹著「中国行きのスロウ・ボート」(中央公論新社)

初版と同じ装丁で復刻された短編集

 数日前、不思議な本と「再会」した。村上春樹さんの最初の短編小説集「中国行きのスロウ・ボート」(中央公論新社)である。初版の刊行は1983年5月。個人的なことになるが、当時、筆者は大学3年生で、すぐに購入して読んだ。そう思っていた。

 ところが、書棚の奥の本を取り出してみると、買ったのは翌6月の「6版」だった。貧乏学生だったので、アルバイト代が入ってからようやく手にしたのだろうか。それよりも、わずか1カ月でこれだけ版を重ねていたことに、あの頃(デビューから4年後)の人気の沸騰ぶりを再認識させられる。

 ついでに、旧版の帯文を書き写しておこう。40年以上前に記された言葉が今や、ある種の予言的な響きを持つと思われるからだ。

 「後になって、きっと僕たちはこんな風に思うだろう。/1983年――あれは、ビヨン・ボルグがコートに別れを告げ、僕たちは三度目の夏を迎えた。/そして、村上春樹の初めての短篇(たんぺん)集――『中国行きのスロウ・ボート』が出版され、おかげで、僕たちは愛しあうことも忘れ夢中で読みふけった年だった、て……」

<記事の内容>
・安西水丸さんとのコンビ誕生秘話 
・小澤征爾さんの演歌趣味に面食らう
・ノーベル文学賞を受賞しなかった海外作家に

 ちなみに、ボルグはスウェーデン出身の往年の名テニスプレーヤーだ。「三度目の夏」にはさまざまな含みがありそうだが、地方出身の筆者にはまさに大学に入って東京で…

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