「日本に帰れ」祝福結婚の果て 異国で破れた「地上天国」の夢
親の信仰の影響を受けて育つ「宗教2世」。安倍晋三元首相の銃撃事件をきっかけに、多くの当事者がその体験を語り始めています。信仰とは、家族とは、生きるとは。寄せられた「声」をシリーズで届けます。
声を聞いて・宗教2世(7)貴子の場合
「将来は神様が選んだ相手と結婚するのよ」。小学生の頃から、母にそう言い聞かされて育った。友達とプールに行きたいと告げると「異性には近づくな」と叱られた。
宗教活動にのめり込んだ母はいつも帰りが遅かった。その理由を尋ねると、母は力を込めた。「地上天国を作らないといけない」
関東地方に住む貴子(仮名)=40代=は、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の宗教2世だ。
中学時代から教会に通い、教団が選んだ見ず知らずの外国人男性と結婚するため、20代で異国へ渡った。そこで貴子は何を見たのだろうか。
「お前の母さん、統一教会なのか」
幼い頃、父は仕事で忙しく不在がちだった。専業主婦だった母は朝から晩まで教会に通った。
貴子は幼いきょうだいと長い時間をテレビの前で過ごし、腹が減るとパン屋へ行った。新学期に夏休みの思い出を楽しそうに話す友達を見て気後れした。
中学からは週2回、教会の活動に参加した。「信仰心より、母を喜ばせたい気持ちが大きかった。教会へ行かなかったら『この家で暮らしていけなくなる』という恐怖もあった」と貴子は言う。
ある時、学校の先生から「おまえの母さん、統一教会の信者なのか」と聞かれたことがある。ただ、偏見を持たれるのが怖くて、母が帰ってこない悩みを打ち明けることはなかった。
高校生になると、同級生は大学への進学など将来の目標に向かって勉強に励んだ。
教団が掲げる「祝福結婚」こそが幸福になる唯一の道――。そう信じていた貴子は勉強に身が入らず、成績は下がり続けた。
連載「声を聞いて・宗教2世」、次回は高校3年で信者組織から追放され、家族とも断絶した「エホバの証人」2世、はなの声です。
「そろそろね」届いた写真
高校卒業後、しばらくすると、親や他の信者から「そろそろね」と結婚…
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