米欧と中露、対立の末「今世紀半ば」 温室ガスゼロ、具体策示せず
日米欧と新興国からなる主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)は10月31日、温室効果ガスの排出量を「今世紀半ば」までに実質ゼロにすることなどを盛り込んだ首脳宣言を採択し、閉幕した。英グラスゴーで同日開幕した国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)に向け米欧は踏み込んだ合意を狙ったが、中露との対立が表面化し、具体策を示すことができなかった。
書き込めなかった「2050年」
「G20の合意は歓迎するが、希望は満たされずにローマを去ることになる」。サミットに出席した国連のグテレス事務総長が31日にツイッターに投稿した内容が、今回のサミットの実態を物語っている。
米欧は首脳宣言に、温室効果ガスの排出量実質ゼロの時期を「2050年」と書き込むことを目指していた。しかし、最終的に宣言に盛り込まれたのは「今世紀半ば」。世界最大の二酸化炭素(CO2)排出国である中国の習近平国家主席が60年の従来目標を維持すると早々に表明して冷や水を浴びせ、ロシアもこれに同調したためだ。
15年に採択された温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」は、産業革命前と比べた世界の気温上昇を「2度未満」、可能であれば「1・5度」に抑える目標を掲げている。
G20は「1・5度」達成に向けて、すべての国に「意味のある効果的な行動」を求めた。しかし、達成には50年ごろには温室効果ガスの実質ゼロを実現する必要があるとされ、実質ゼロの時期があいまいになったことで「1・5度」の実現そのものが揺らぎかねない状況だ。
「気候変動対策への責任という観点で言えば、ロシアと中国は基本的に目立たなかった。失望した」。バイデン米大統領は31日、サミット閉幕後の記者会見で中露を名指しで非難した。COP26議長国として排出量削減を主導してきた英国のジョンソン首相も「50年以前に排出量を実質ゼロにすると確約したのはG20の中で12だけだ」と不満を隠さない。
中露、米欧の連携強化に警戒感
今回のG20サミットは2年ぶりの対面開催となったが、習氏やロシアのプーチン大統領は直接の参加を見送った。サミットではそれぞれオンラインで演説したが、新型コロナウイルスの中露製ワクチンの緊急使用を認めない米欧をそろって非難するなど対決姿勢をあらわにした。
背景には…
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