終戦の日を迎えました。」
79年目の終戦の日を迎えました。原爆、空襲、玉砕、集団自決、餓死等々、歴史上例がない悲惨な戦争の惨禍の結果、私たち日本国民は、「日本国民は、政府の行為によって再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し」と憲法前文で宣言し、これらの平和主義の法的結晶である9条を定めました。
9条は、日本に対する侵略を排除し日本国民の生命を守り抜くための必要最小限度の実力(=自衛隊)の保有のみを許容することによって、日本の政治家が侵略戦争や他国防衛の集団的自衛権行使などによって日本国民と他国民を殺傷することを絶対的に封じた条項です。
つまり、9条を守っていれば日本国民が他国軍の侵略によって殺されることはなく(もし、そうなったらそれは9条の責任ではなく、外交政策とともに9条が許容する個別的自衛権行使の運用を失敗した国会、政府の責任です)、同時に、日本国民が日本の政治家による無用・不要の戦争で殺されることは絶対に生じません。
一方で、9条は、世界最強の戦力を有する米軍との同盟を許容し(最高裁砂川判決)、日本国民の防衛をより強固なものとすることを可能にしています。
こうした、かつての戦争の反省に基づいた極めて合理的な憲法9条を、その政策的な必要性・合理性や憲法適合性をかなぐりすてて、集団的自衛権行使の容認を始めとする違憲の安保法制、反撃能力の保有、防衛費倍増などが押し進められてきました。
これらの政策で問題なのは、「第三国の米国軍への攻撃を自衛隊が排除する集団的自衛権を日本が行使しなければ、第三国の侵略によって殺されてしまう日本国民が本当に存在し得るのか」、「米軍のために集団的自衛権を行使しなければ、日米同盟が崩壊し、その結果、侵略によって殺されてしまう日本国民が本当に存在し得るのか」という、政策の立法事実たる、その必要性・合理性の立証です。
この「立法事実」の説明を、安倍政権以降の政府は国会で徹底的に拒否してきました。
むしろ、集団的自衛権行使を始め、この間の安全保障政策の重大な変更については、政策的な必要性・合理性の説明に足りるものが全くないことが明らかになっています。
これはかつて、事前の政府・軍部の研究で「必敗」との結果が示されていた米国に対する太平洋戦争を、その研究結果を無視して仕掛けた当時の政府・軍部に「政策的な必要性・合理性」の検討が全くなかったことと同じ過ちを犯しているものです。
(なぜなら、集団的自衛権行使を行えば第三国の反撃を受けて自衛官は戦死し、日本国民にも大規模な殺傷等の被害が生じうることは政府も国会で答弁しています)
アベノミクスが日本の産業競争力と通貨「円」の価値を貶め、物価高騰(ハイパーインフレ)の危険を生じさせる空前の悪政であったことがようやく日本社会で公に議論されるようになりましたが、同様に、安倍政権からこの度退陣することになった岸田政権の安全保障政策が本当に政策的に正当なものなのかどうか、冷静な検証が求められています。
そのご参考に、文末に添付した、4月に岸田総理が「地球の裏側での自衛隊の米軍の協力」を約束した米国議会演説に対する私の本会議代表質問をぜひご覧下さい。
79年目の終戦の日に、「昭和47年見解の曲解等」及び「前文の平和主義の法理の切り捨て」などの法解釈ですらない空前の暴挙によって破壊された平和憲法を国民の手に奪還し、法の支配・立憲主義と国民主権・民主主義を再生し、国民の生命を国益を守り抜く外交防衛(安全保障)政策を確立し、実行する決意を申し上げます。
■参議院本会議(令和6年4月19日)
○小西洋之君 立憲民主・社民の小西洋之です。会派を代表して質問します。
日本の国会で拍手がない。自虐ジョークで始まる岸田総理の米国議会演説を聞きながら、私は笑うどころか大きな不安にとらわれました。
総理は、「未来に向けて 我々のグローバル・パートナーシップ」と名付けた演説において、全て軍事的な文脈の中で、何の留保も条件も付けずに、日本が米国のグローバルパートナーの役割と責任を果たすと繰り返し宣言しています。
すなわち、孤独感や疲弊を感じている米国民の皆様へ、米国は一人で国際秩序を守ることを強いられている理由はないと述べた上で、自衛隊と米軍の共同の任務遂行を称賛しながら、自由と民主主義の宇宙船で、日本は、米国の仲間の船員であることを誇りに思い、共にデッキに立ち、任務に従事し、なすべきことをする、日本は米国と共にありますなどと主張をしています。
そして、日本は地球の裏側にあるNATOとも協力と、地球の裏側という言葉を発した後に、日本はかつて米国の地域パートナーだったが、今やグローバルなパートナーになったなどと表明しているのであります。
この総理演説について、複数のメディアや与党議員さえもが、日本が米国の軍事行動に対して、その内容や地理的範囲に無限定に協力する大風呂敷な国際約束をしたのではないかとの疑念が広がっています。
総理に伺います。
外務省は、四月十六日の私の質疑を通じて、グローバルパートナーシップ、グローバルパートナーという表現は、国際秩序を共に維持強化していく両国の不退転の決意を示すもので、これらの表現をもって、これまでの日米の役割分担や責任分担を変えるものではないとし、また、上川外相は、一昨年の国家安保戦略の枠組みを超えたものではないと答弁しています。
これらは、総理の見解としても間違いないのでしょうか。
なお、当時議場にいた上川外相は、今後日本が地球の裏側を含め米国と軍事的活動を共にするという認識を、広く議場の米国議員が共有したという印象は持たなかったなどと答弁していますが、本当でしょうか。岸田総理もこの上川外相と同じ認識なのでしょうか。
一方で、未来のためのグローバル・パートナーとの表題を掲げる前日の共同声明においては、地域概念のないサイバーセキュリティーなどを除き、自衛隊の行動の地理的範囲はインド太平洋地域に限定されています。この点でも、議会演説の異様さと矛盾が際立っていますが、共同声明と議会演説は日米の軍事面の協力内容として同一のものなのでしょうか。
仮にこれらを同一とするならば、岸田総理は、米国議会や米国民への受けを狙って意図的に大風呂敷を広げる、言わば二枚舌外交の二枚舌演説を行っているのではないでしょうか、真摯な説明を求めます。
この前代未聞の総理演説の悪影響を憂慮いたします。それは、日本がアメリカの戦争に巻き込まれる危険であり、このリスクは絵空事ではありません。
かつてトランプ大統領は、二〇一七年から一八年に北朝鮮に空母打撃群などを派遣し、そこに自衛隊が三十回以上共同訓練を繰り広げ、日本が北朝鮮から核攻撃の威嚇を受けるに至る事態がありました。
私は、この共同訓練は不測の場合に北朝鮮に日本攻撃の口実を与えかねないと当時の河野外相に問いましたが、米空母との共同訓練は、特定の国又は地域を念頭に置いたものではないという驚くべき答弁ぶりでした。
ところが、当時の河野統合幕僚長は、退官後のインタビューなどにおいて、米軍情報からアメリカが軍事行動に踏み切る可能性が六割以上あると認識し、安保法制の集団的自衛権などの発動を検討し、安倍総理に報告していたと証言。後日、岸防衛大臣はこれらを事実と答弁しています。
つまり、当時、日本政府は戦争の準備と態勢を講じ、日本国民は戦争の瀬戸際にあったのです。この事実を議場の皆様は御存じだったでしょうか。安倍総理の、私と日本国民はトランプ大統領と一〇〇%共にありますとの宣言の下の、まさに国難というべき事態でした。
岸田総理、アメリカとともに世界のどこへでも駆け付け、課題の解決に取り組むというメッセージを発したなどと報道されている総理の議会演説は、将来のトランプ政権の再来も含め、米国独自の軍事方針に対して日本が主体的な外交を講じる政治基盤を著しく損ねてしまったのではないでしょうか。あの岸田演説は何だったのか、自衛隊は米軍と軍事行動を共にしないのかと米国に要求される危険はないのでしょうか。
なお、実は当時、安倍総理は、共同訓練の実施など、米国とあらゆる手段を使って北朝鮮に対する圧力を最大限にすると答弁していました。当時の日米共同訓練が、特定の国などが念頭になかったものなのか、それとも北朝鮮への圧力手段だったのか、戦争の危険をめぐる同盟の真実を日本国民に正直に答弁ください。
さらに、今回の共同声明では、より効果的な日米同盟の指揮統制が定められていますが、これは具体的に何を意味するのか。報道等にあるように、ハワイのインド太平洋軍司令部から作戦指揮の権限を在日米軍司令部に移管し、自衛隊の新たな統合作戦司令部と対応させるのでしょうか。
実は、既に自衛隊と米軍は、自衛隊の航空総隊司令部が在日米軍司令部が所在する在日米軍横田基地内に設置され、航空総隊司令官の入退出も米軍が管理するといった他国に例を見ないありようとなっていますが、今般の共同声明や議会演説は、自衛隊が圧倒的な戦力や情報力を有する米軍との間で軍事的な一体化に陥り、そして、それが同時に、トランプ政権の危機にあったように、日本が米国の軍事政策に巻き込まれる政治的な一体化に陥る危険はないのでしょうか。これらの危険排除の具体的手段も含めて答弁をください。
さて、岸田総理の議会演説では一切語られなかった日米同盟の最重要の本質があります。それは、日米同盟はアメリカにとっても世界最重要の同盟関係であるという事実です。
かつて、駐留経費の膨大な負担増を訴えていたトランプ氏は、大統領就任後の最初の訪日で、アメリカ軍を駐留させてくれてありがとうと述べました。すなわち、世界で唯一の空母機動艦隊の海外母港であり、自由で開かれたインド太平洋の中核拠点である横須賀の海軍基地、嘉手納や岩国などの空軍や海兵隊の航空基地などなど、日米同盟に基づく在日米軍基地がなければ、アメリカは東アジアから中東域に至るまで実効的な軍事プレゼンスを一秒たりとも保持できず、一言で言うならば超大国たり得なくなるのであります。日米ガイドラインに基づく自衛隊の米軍基地防衛、高度な技術力などの貢献も含め、アメリカにおいて日米同盟こそが世界最重要の同盟関係であるのであります。
このような事実認識に基づき、これまで茂木外相と林外相が、日米同盟は米国にとっても他に並ぶもののない最も重要な二国間関係であると答弁していますが、岸田総理も同様の認識にあるのか、その具体的な理由とともに明確な言葉で答弁を求めます。
そして、実は、私からの、米国の国民や政治家はこうした日米同盟の本質、メリットをほとんど知らない、政府を挙げた説明をとの求めに対し、令和三年三月に茂木外相からは、米国の議会や、米国の議会や米国内の各層の理解増進に一層取り組んでいきたいとの答弁をいただいています。なぜ岸田総理は、こうした政府の外交方針に反し、ただただ日本の更なる貢献、しかも地球規模での軍事貢献などを訴えるだけで、日米同盟が本来的に有する米国にとっての死活的かつ代替不可能な価値を米国議会で一切、ただの一言も訴えることをしなかったのでしょうか、説明を求めます。
また、日米同盟は、米国民の繁栄の存立の礎であるとともに、日本国民においては同時にその存立のリスクをも抱えるものであります。すなわち、日米同盟は、在日米軍基地を基盤とする米国の戦争に日本が必然的に巻き込まれるリスクを有するものであり、このことは、日米安保六条に基づく米軍の在日基地使用の戦闘作戦行動の事前協議制度に具体化しています。
総理は、仮に台湾海峡有事、米軍と中国軍の武力紛争が勃発すれば、在日米軍基地が中国軍の標的になるという認識はあるのでしょうか。特に米軍の在日基地へのミサイルの持込みとその他国への発射は、米軍の戦闘作戦行動として当然に日米の事前協議の対象になるのでしょうか。政府はこの間、これらの常識問題に答弁拒否を連発していますが、日本国民の命、日本国の主権に懸けて、逃げることなく答弁をください。
以上のように、日米同盟とは、今般の総理の訪米のように、米国への多大な軍事協力や軍事的一体化をただ進めれば日本が安全になるというものではありません。
自由で開かれたインド太平洋の基盤となっている日米同盟の健全な維持発展とその抑止力、対処力の強化により日本の防衛を確かなものにすることは必須ですが、その一方で、常に同盟の米国側のメリット、そして普天間基地、横田空域、佐世保制限水域などの日本国民が負う代償や負担、日本の抱える戦争のリスクなどの本質を真摯にアメリカに訴え、共有し、同盟国として米国政府、米国議会、世論と対話し、時にそれを制御していく営み、すなわち高度の戦略性を要する強靱な日本の主権外交が必須なのであります。
さえないジョークを飛ばし、大風呂敷を広げて相手の機嫌を懸命に取り、その場の雰囲気で拍手とスタンディングオベーションを得るのが日本国総理の国賓演説ではありません。
そもそも、まさに全ての米国議員が共有できるはずの、米国にとっての自由で開かれたインド太平洋の具体的価値すら一切訴えなかった岸田総理の議会演説は、九年前の安倍総理の演説に続いて、アメリカとの間で日米同盟の本質を共有し、未来における健全かつ実効的な同盟関係を創造する基礎、基底を形作る絶好の、かけがえのない機会を逸したものであり、私たち日本の国会として到底すてきな拍手を送るべきものではないと考えますが、総理の見解を伺います。
さて、今後も人口が増加し世界経済の牽引役である米国と、失われた三十年で衰退に陥り、アベノミクスの失政による構造的な岸田インフレなどに直面する我が国の国力の差は歴然たるものがあり、日本の実情を真摯に米国と共有し、厳しい安全保障環境に対処し得る、身の丈に合った同盟の責任を果たしていく国家戦略が求められると考えますが、総理の見解を問います。
また、この点で、総理が米国議会で超党派の強力な支持を訴えた防衛費倍増が本当に一兆円程度の増税だけで賄えるのか、円安による調達費用の高騰も含め、更なる増税や国民負担の見通しについて答弁ください。
また、この倍増に至る防衛費四十三・五兆円の内訳について、政府はこの間、百四十六項目の事業名を並べたA4の紙五枚の資料しか国会に提出していません。これは、財政民主主義を踏みにじり、国を誤る、GDP比二%ありきの史上最大の丼勘定と言うべき暴挙ですが、いつまでに四十三・五兆円の内訳、積算を国会、国民に資料説明するのか、具体的期限を答弁ください。
また、共同声明では、日米防衛産業協力などの定期協議とミサイルの共同開発が明記され、木原防衛大臣は、現時点では第三国へのミサイル輸出を予定しないと答弁しましたが、将来に輸出はしないとなぜ言えないのか、説明を求めます。
この点、昨年十一月に政府は、紛争当事国に防衛装備を移転することは、憲法前文の全世界の国民の平和的生存権の理念とそぐわないことから、憲法の平和主義の精神にのっとったものではないと答弁しながら、次期戦闘機の輸出の閣議決定の後には、フルスペックの集団的自衛権などの国連憲章上の武力の行使に次期戦闘機が使用されることは憲法の平和主義に反しないと論理破綻した答弁を行っています。この二つの答弁の論理的整合性について説明を求めます。
最後に、安倍政権以降の国家安保戦略に欠けるのは、国防、安全保障、外交を包含する平和創造、ピースクリエーションの国家戦略です。
その要であり、特に日米同盟の在り方をリードし、補完すべき日本の主権外交について、薮中元外務次官は、近著「現実主義の避戦論 戦争を回避する外交の力」の中で、二〇一七年の日中首脳会談で再確認され、維持されている東シナ海を平和、協力、友好の海にするという二〇〇八年日中合意の早期の条約化、日本が主導したCPTPPへの中国と台湾への加入交渉を提言していますが、一般論として、これらの取組たる外交政策について、日中の戦略的互恵関係の発展に意義があると考えるか、総理の見解を問います。
結びに、主権外交の喪失を含め、失われた三十年の根本原因は、利権、人事、世襲の自民党の派閥政治の弊害であり、その根絶が我々与野党議員が負う歴史的使命と確信しますが、岸田総理は、派閥の政治資金パーティーの根絶を、自民党の内規ではなく政治資金規正法改正で実現する決意がありますか。この間、犯罪と脱税の隠蔽を主導し、自身の処分をも免責した総理が、最後は偽装の政治改革で国民を欺くことがないよう、明確な法改正の決意の答弁を求めて、質問を終わります。
御清聴ありがとうございました。(拍手)
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