「社会は崩壊しなかった」 同性婚を進めたフランスの現在
世界では同性婚が可能になる国が増える一方で、同性愛を犯罪として規定するなど、性的少数者の権利が後退する動きもある。こうした課題に取り組むフランスの「LGBT+権利担当大使」、ジャンマルク・ベルトン氏が10月末に日本を訪れた。フランスでは2013年に同性婚を法制化した当時、反対運動も起こったが、現在はどうなっているのか。同性愛を巡る世界の動きや、フランス社会の変化について書面で聞いた。【聞き手・藤沢美由紀】
同性愛の権利が後退する国も
――大使の具体的な役割や業務内容を教えてください。
◆第1の任務は同性愛の「非犯罪化」を求める運動を後押しすることです。LGBTであること自体を犯罪とする国が今でも61カ国あります。50年前に比べれば大幅に減少しましたが、それでもまだ多すぎます。そうした国々はLGBTの人たちに一昔前の刑罰一式(罰金、禁錮、体罰、強制労働、11カ国では死刑)を科しています。これは無論、人権侵害です。
第2の任務は性的少数者の人権の尊重を促進することです。同性愛への罰則はなくても、当事者の権利を制限している国が一定数あります。私の役割はこうした人権侵害に対するフランス外交の調整役です。国際機関にも出向いて、LGBTに対する差別や暴力から被害者を守ることを訴えています。
――そうした大使を設置することが、フランスにとってなぜ重要なのでしょうか。
◆数年前から、一部の国でLGBTの権利が後退しているからです。既存の法律をより厳格に適用するケースが多く、新たに抑圧的な法律を定める国もあれば、犯罪化を検討する国もあります。例えばウガンダは死刑導入に踏み切りました。
極めて攻撃的で、ますますイデオロギー的な言説も出現しました。ロシアはLGBTへの攻撃の急先鋒(せんぽう)を自任しています。国家ぐるみのホ…
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