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緊迫する中東情勢

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命と引き換えに守った「砂漠の花嫁」 過激派に屈しなかった歴史学者

内戦が続くシリアで、破壊されたパルミラ遺跡の上空を飛行する軍用ヘリ=シリア中部パルミラで2017年12月18日、篠田航一撮影
内戦が続くシリアで、破壊されたパルミラ遺跡の上空を飛行する軍用ヘリ=シリア中部パルミラで2017年12月18日、篠田航一撮影

 2011年から内戦が続くシリアの情勢が目まぐるしく動いている。私(篠田)は、アサド政権、反体制派、過激派組織「イスラム国」(IS)などが勢力争いを繰り広げていた17年にシリア入りし、現地の状況を取材した。

 当時の日記をひもとき、シリアの人々の思いを数回に分けて報告する。(年齢、肩書等は17年当時)【ロンドン篠田航一】

 第1回 大人たちの戦争
 第2回 爆音を聞きながらアイス
 第3回 ロバには気を付けろ
 第4回 撮れなかった写真

 「やつらが来る前に逃げよう。父に何度もそう言いました。しかし父は『自分は残る』の一点張りでした」

 シリア内戦中の2017年12月、中部ホムスでムハンマド・アサド氏(47)がそう語った。

 「やつら」とは、14年ごろからシリアやイラクで勢力を拡大した過激派組織「イスラム国」(IS)のことだ。偶像崇拝を禁じるイスラムの教えを極端に解釈したISは、多神教の古代遺跡や石像を破壊し続けた。

 やがて、ISの魔の手がシリア中部の世界遺産・パルミラ遺跡にも迫ってきた。

 シリアを代表する歴史学者で、パルミラ博物館のハレド・アサド元館長は家族や友人から何度も避難するよう言われたが、説得に応じなかった。IS侵攻に備え、博物館の収蔵品を別の場所に移す作業を必死に続けていたのだ。

 ちなみに「アサド」といっても、アサド大統領の血縁ではない。

 15年5月、ついにISがパルミラを制圧する。アサド元館長は拘束され、拷問を受けたが、古代の宝の隠し場所を決して明かさなかった。

 同年8月、ISはアサド元館長の首を切り、遺体を遺跡の柱につるした。パルミラを愛し、研究に命をささげた81年の人生が終わった。

 私がパルミラを訪れたのは17年12月。ISは既に撤退していたが、2世紀ごろの建造とされる凱旋(がいせん)門のアーチは崩落し、古代ローマ時代の円形劇場も破壊されていた。博物館の石像も引き倒されていた。

 2~3世紀にシルクロードの東西交易で最盛期を迎え、「砂漠の花嫁」と…

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