能登被災地に「希望の灯り」 神戸の支援団体が来年3月に設置へ
能登半島地震から1年を迎えるのを前に、阪神大震災からの復興を願って神戸市に設置されたガス灯を石川県輪島市にも建立する取り組みが始まった。ガス灯の形状は能登の観光名所をイメージしており、2025年3月の設置に向けて支援を募るクラウドファンディング(CF)を実施している。
ガス灯のモチーフになったのは、輪島市町野町の曽々木海岸の奇岩「窓岩」だ。板状の岩の真ん中に開いた直径約2メートルの穴が特徴。海岸から望む夕日が穴と重なる情景が人気で、観光名所として知られていた。ところが、元日の地震の揺れで岩の上部が崩れ、穴がなくなった。曽々木地区の自治会長、刀祢(とね)聡さん(68)は岩が崩落した様子を目にしたお年寄りが涙を流していたと振り返り、「子どもの頃から見慣れていた景色が失われてしまった」と話す。
ガス灯設置は、神戸市のNPO法人「阪神淡路大震災1・17希望の灯(あか)り(HANDS)」が企画した。HANDSの藤本真一代表理事(40)らは1月以降、月1回のペースで曽々木地区を訪問。関西の学生らを連れて、家財道具の搬出や炊き出し、8月にあった伝統行事「キリコ祭り」のサポートをしてきた。
ガス灯は「希望の灯り」と呼ばれ、震災5年後の00年1月に神戸市中央区の東遊園地に設置された。土台の御影(みかげ)石には犠牲者の鎮魂や、生き残った被災者が少しでも前を向けるようにとの願いを込めた碑文を刻む。その上に置かれたガラスケースの中で火がともされている。これまで東日本大震災(11年)や台湾大地震(1999年)など国内外の被災地計9カ所にも建立された。
HANDSは「復興へのシンボルとなれば」と「希望の灯り」を窓岩近くの休憩スペース「窓岩ポケットパーク」周辺に設置することを提案し、地元から賛同を得た。窓岩に見立てた模型をあしらい、ガス灯の火が窓岩の穴に重なる夕日に見えるようなデザインを想定している。地元住民の意向を踏まえた碑文も彫る予定だ。
CFでは、被災した家屋から集まった輪島塗を返礼品とする。冠婚葬祭用に各家庭で使われてきた食器類が大半で、学生らが片付けに入った家屋から傷のないものを選び、一つ一つ地元住民と丁寧に洗浄した。設置費など300万円を目標に、3月1日まで実施する。寄付はhttps://camp-fire.jp/projects/814856/viewから。
学生らは12月14日、東遊園地から種火をランタンに移し、翌15日に能登に届けた。灯りは、能登地震発生日に現地で開かれる追悼行事でも使われる予定だ。関西大4年の西出梨乃さん(22)は「地震に加え水害でも苦しんでいる能登の被災者に、阪神大震災が30年という歳月を経て復興してきたというパワーを伝えたい」と語る。
刀祢さんは「窓岩自体の復旧が難しい中、後世に残るような碑を造ってもらえるのはありがたい。これを見て、輪島のかつての姿を思い出してもらえれば」と語る。藤本さんは「被災した皆様が少しでも前を向いて歩むことができるようお手伝いができれば。今後も神戸から被災地との結びつきをつくっていきたい」と支援を呼びかけている。【山本康介】
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