憲政史上最長の政権を築きながら、凶弾に倒れた安倍晋三元首相の国葬から27日で1年。岸田文雄首相は当時、批判の声が相次いだことを受けて有識者を交えた検証を行い、一定のルール化を目指すと表明していた。ところが、意見を聞き取ったもののルール化は見送られ、検証を巡る議論も低調だ。国論を二分したまま実施された国葬は、私たちに何を残したのだろう。
西田亮介さん 内閣支持率下落 「立法化しない」結論か
飯島滋明さん費用や「弔意の強制」問題に「幕引き」では
「私が最初のインタビュー対象だったと聞いています。前例もなく、手探りで進めているという印象を受けました。取りまとめ役の座長などは置かれておらず、何か結論を導き出そうという構えではなかったと思います」。昨年11月10日に内閣府の国葬儀事務局による意見聴取に応じた東京工業大の西田亮介准教授(社会学)は振り返る。
一連の経緯を改めて整理しておきたい。岸田政権は「国の儀式に関する事務」の執行を定めた内閣府設置法と、「葬儀は、国において行い、故安倍晋三国葬儀と称する」「葬儀のため必要な経費は、国費で支弁する」などとする閣議決定(昨年7月22日)を根拠として国葬の実施を決定した。これに、野党などから「根拠法や費用など説明不足」といった批判が相次いだ。
その後、安倍元首相を含めて自民党を中心とした保守政治家らと世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との関係が連日報じられ、国葬中止を求める署名が広がり、内閣支持率が急落。岸田首相は、昨年10月5日の衆院本会議の答弁で、「(首相経験者の国葬については)どのような手順を経るべきか一定のルール作りを目指す」などと答弁した。
岸田首相はこの答弁の中で、(1)政府として国葬を検証(2)そのために幅広い有識者の意見を聞く(3)聞き取った論点を整理してルール化を目指す――との方針を示した。これを受け、内閣府は昨年11~12月に憲法や政治学などの学識経験者、新聞社の論説委員ら計21人から意見を聴取。その一人が西田さんだった。…
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