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村上春樹をめぐるメモらんだむ

現代作家として国際的に高い評価を受けている村上春樹さん。小説の執筆だけでなく、翻訳に、エッセーに、ラジオDJにと幅広く活躍する村上さんについて、最新の話題を紹介します。

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コロナとウクライナ戦争が変えた 村上春樹さん講演とインタビュー

村上春樹さんの講演が行われた米ウェルズリー大「ウォルシュ同窓生ホール」=2023年4月28日、大井浩一撮影
村上春樹さんの講演が行われた米ウェルズリー大「ウォルシュ同窓生ホール」=2023年4月28日、大井浩一撮影

 2023年4月下旬、米国マサチューセッツ州のウェルズリー大に滞在中の村上春樹さんを訪ね、インタビューすることができた(記事は毎日新聞ニュースサイトに掲載)。当コラムでも前に少し紹介したが、作家は1~5月、この米国を代表する名門女子大学に特別客員教授として招かれていた。もちろん、事前に依頼し、応じてもらった取材であり、ちなみに筆者にとって初めての米国渡航でもあった。【大井浩一】

講演での質問に長蛇の列

 感慨深かったのは、取材前日の4月27日に行われた村上さんの講演を現地で直接聴く機会が得られたことだ。同大キャンパス内にある「ウォルシュ同窓生ホール」の講堂が会場で、開始時刻の午後6時より30分以上も前から続々と学生や大学の関係者らが詰めかけ、期待の高さがうかがえた。

 英語による20分余りの講演中、村上さんのジョークで約900人の聴衆が笑いに包まれる場面もあり、終了時には多くの人が立ち上がって拍手を送った。その後の質疑応答では、質問を希望する学生らが2台のマイクの前に長い列を作った。村上作品が50を超える言語に翻訳され、世界各地に熱心な読者を持つ事実の一端が肌で感じられた。

 この講演の日本語原文と、会場で読まれた英文は文芸誌「新潮」7月号に掲載された。タイトルは「疫病と戦争の時代に小説を書くこと」(英題:Writing Fiction in the Time of Pandemic and War)である。現場では漠然としか理解できなかった内容が確認でき、また、作家による「前書き」も付されていて興味深く読んだ。

 同誌に基づき講演の概要を記すと、まず、ちょうど2週間前に新作長編小説「街とその不確かな壁」が日本で出版されたことに触れ、英語版の刊行は「来年になりそう」と見通しを語った。「(小説の)主人公は二つの世界を往(い)き来することになります」と述べ、…

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