自分より周りを変える方が豊か 白石正明さんと迫るケアの核心/下

医学書院のシリーズ「ケアをひらく」全43冊(同社提供)
医学書院のシリーズ「ケアをひらく」全43冊(同社提供)

 「ケア」っていったい何ですか――。医学書院の編集者、白石正明さん(66)によると、それは論理的に説明できなくて、特徴的な具体例も挙げられないもので、その上、多孔的で、ブリコラージュだという(インタビュー前編)。後編では、白石さんが「ケア」の核心と考えているものに、さらに迫ってみたい。キーワードは「二項対立」。そして「対人関係」あるいは「集団」だ。【オピニオン編集部/小国綾子】

「二項対立ってちんけ」

 白石さんの過去のインタビューや文章を読んでいると「二項対立」という言葉がたくさん出てくる。例えば、彼が医学書院で創刊した雑誌「精神看護」3月号では、シリーズ「ケアをひらく」(ケアひら)全43冊について、白石さんが主観で解説しているのだが、そこから拾い上げるだけでもこんな具合だ。

 <二項対立、AかBかしかないという問題設定をどう崩すかというテーマが僕の中にあった>

<二項対立という言語の枠組みのなかでいかに鋭いことを言ったって、なんの役にも立たない>

<「二項対立を迫る問題設定そのものをどう変えるか」をやってきた>

 硬派な文章だ。かっこいい。ところが、インタビューの席で白石さんが何度も口にしたのはこんな言葉。「二項対立って、ちんけなんだよね」。この日、白石さんは「ちんけ」を10回以上口にしたと思う。

 「二項対立を超えていく、とか言うとヘー…

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