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鷲田清一さんと「哲学カフェ」 「わからなさ」に耐えよ 「多様性」が生む「分断」 考えること、あきらめない

哲学者、鷲田清一さん=仙台市の「せんだいメディアテーク」で2023年12月23日、小国綾子撮影
哲学者、鷲田清一さん=仙台市の「せんだいメディアテーク」で2023年12月23日、小国綾子撮影

 世界中で戦争や争いがやまなくて、毎日人が死んでいて、私は原稿を書くたび悩んでばかり。世の中は簡単に答えの出ない問題であふれている。だから、フランスで始まった草の根の対話「哲学カフェ」運動を1990年代、日本に初めて導入した哲学者、鷲田清一さんにお願いしてみた。私と「哲学カフェ」してくれませんか――。

 「これが地球」。鷲田さんは鉛筆で白い紙にぐるっと丸い円を描いた。直径10センチ足らず。「地球の表面の凹凸、つまり山脈と海溝の高低差はこの鉛筆の線より太いか細いか?」。いきなりの謎かけに戸惑う私。えっと、エベレストは何メートルだっけ。

 「地球の直径は約1万3000キロ。一方、ヒマラヤ山脈と一番深い海溝の高低差は20キロ足らず。つまり鉛筆の線の太さほどもないんですよ」と鷲田さん。物理学者、中谷宇吉郎さんのエッセーで知った話だそうだ。

 哲学者の指が鉛筆の線をなぞる。「人類はこの地球の内部のことも宇宙のこともよく知らない。でも僕らは少なくとも『わかっていない』ことだけはわかっている。『わからなさ』に向き合うには、『わからないけどこれだけは大事。これは逸してはいけない』と判断し、わからないままでも正確に対処できることが大切なんです」

 鷲田さんは東日本大震災以来、仙台市の「せんだいメディアテーク」館長となり、京都の自宅から毎月1回、仙台に通っている。「哲学カフェを」とお願いしたら「仙台においで」と誘われた。そんなわけで仙台で二人、夕飯がてら地酒を飲みながら、「哲学カフェ」ならぬ「哲学晩酌」が始まったのだった。

 最初のテーマは「わからなさ」とどう向き合うか。

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