「被爆地拡大 歯止めに作成」 広島高裁が痛烈批判の44年前報告書

被爆体験者を被爆者と認めるよう訴える岩永千代子さん(中央)。長崎地裁の訴訟で原告団長を務める=長崎市で2024年7月29日午前11時28分、樋口岳大撮影
被爆体験者を被爆者と認めるよう訴える岩永千代子さん(中央)。長崎地裁の訴訟で原告団長を務める=長崎市で2024年7月29日午前11時28分、樋口岳大撮影

 広島原爆投下後に降った「黒い雨」に援護区域外で遭った人や、長崎の区域外で原爆に遭った「被爆体験者」について、国は長年、被爆者と認めてこなかった。その理由の一つとして国が度々持ち出してきたのが、1980年12月に厚相(当時)の私的諮問機関「原爆被爆者対策基本問題懇談会」(基本懇)がまとめた報告書にある次の文言だ。「被爆地域の指定は、科学的・合理的な根拠のある場合に限定して行うべきである」

 被爆79年を迎えようとする中、今も「被爆者」としての認定を求め続けている人たちがいます。なぜ訴えは届かないのか。被爆80年、戦後80年を見据え、被爆地に残された問題を追います。
 「岸田首相、話を聴いて」 長崎でも雨や灰 顔と手が真っ黒に
 「雨域を絶対視しないで」 今も広島で続く黒い雨訴訟

 国は57年、原爆投下当時の広島、長崎両市と隣接区域を被爆地域に指定し、そこで原爆に遭った人々らに被爆者健康手帳の交付を始めた。その後、「被害はもっと広範囲だ」という住民らの訴えを受け、国は広島原爆投下後に大雨が降ったとされる区域や旧長崎市の周辺区域などを、一定の健康障害があれば手帳を交付する援護区域として加えていった。

 そうした中、橋本龍太郎厚相が79年に設置したのが基本懇だった。委員となった元東京大学長や元最高裁判事、原子力安全委員会委員らが被爆者対策のあり方などを14回にわたって議論した。会議は非公開だったが、後に開示された議事録によると、委員のこうした発言もあった。

 「いまだに地域拡大を言うのは、いくらかでもありつこう、国から金を出させてその分け前にあずかろうという、さもしい根性の表れだ」「被爆地域を政治的に決めてきたのは、一種のたかり構造の表れだ。もっと科学的に合理的な線を引くべきだ」

 基本懇は報告書で、原爆投下による直接放射線量や残留放射線の調査結果を科学的根拠の例として挙げ、「科学的・合理的な根拠に基づくことなく、被爆地域を拡大することは、不公平感を生み出す原因となり、いたずらに地域の拡大を続ける結果を招来するおそれがある」とした。その後、「科学的・合理的…

この記事は有料記事です。

残り1028文字(全文1911文字)

あわせて読みたい

アクセスランキング

現在
昨日
SNS

スポニチのアクセスランキング

現在
昨日
1カ月
' + '
' + '

' + csvData[i][2] + '

' + '' + '
' + '
' + '' + '' } rankingUl.innerHTML = htmlList; } const elements = document.getElementsByClassName('siderankinglist02-tab-item'); let dataValue = '1_hour'; Array.from(elements).forEach(element => { element.addEventListener('click', handleTabItemClick); }); fetchDataAndShowRanking();