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2018年9月27日木曜日

民放ネットデジタル会議 2017

■民放ネットデジタル会議 2017

 ぼくが座長を務める民放連のネットデジタル会議。
 今春も報告がとりまとめられ、ぼくが巻頭言を寄せました。
 業界向けのコメントですが、参考まで貼り付けておきます。
 なお、昨年のコメントはこちらに。

2020Tokyoに向け民放は」

―――――――――――――――――
 生臭い政治の風が吹いている。放送の規制や電波制度を見直せという声を政権が上げている。本会合としても気がかりな事態だ。

 昨年のレポートは、NetflixやAmazonなど米OTTの本格上陸を踏まえつつ、TVer、ソーシャル連動、ライブ配信、Vlowマルチメディア放送など各局のネット対応のリアリティーを確認した。そして私は、スマホファースト、オールIP、AI/IoTの動向に注意を傾けるべき状況に言及した。

 その上で、2020Tokyo大会では、「スマホファーストや4K8Kは無論、オールIP、VR・AR、IoT・AI、それら新技術が放送との関わりに決着をつけ、日本が世界のショウケースとなるはずだ」と締めくくった。

 今年のレポートには、早くもその回答が寄せられている。ウェブ上のライブ配信やCM挿入システム、radikoを軸としたハイブリッド展開、そして4K配信など、各局は地に足のついた取組を見せる。さらに、AIの放送利用、VR・ARの展開など、改めて「技術の時代」が到来したことを示している。一昔前の通信・放送融合が理念先行の第一ステージとすれば、実態を伴う2.0に突入した感がある。

 しかし、この2.0を突破して新ステージにたどりつくイメージは未だ乏しい。試行錯誤がなお続く。TVはTVのままなのか、脱却するのか。放送を成長産業にする展望は得られるのか。正力松太郎さんや吉田秀雄さんを超えていけるのか。会議の場でも、そんな議論がたたかわされた。

 ネットやAIの成長トレンドに放送はどう乗るのか。ITのグローバルプレイヤーとどう向き合うのか。これらは至極、経営戦略の根本イシューであり、放送人のマインドセットを自ら問う設問だ。

 だが吹いてきた風はどうにもフワフワとホコリばかりを立たせている。通信・放送融合の推進という点では12年前の総務省「竹中懇」を彷彿させるが、放送法4条削除やハードソフト分離徹底といったアイディアは、放送界の取組や実態に根ざした香りがなく、唐突感が否めない。

 ただ、「竹中懇」後の一世代、地デジ整備は終了し、いわゆる「融合法制」も整い、放送のデジタル時代が到来したにもかかわらず、デジタルならではのサービスやビジネスモデルは開拓途上で、利便性や成長性はスマホやネットに根こそぎ持っていかれているのが実情だ。

 放送界として「対処」はしているが、これから力強く前進するという展望を描けているわけではない。吹いてきた風は、これに対する気構えを求めるシグナル、と捉えるべきではないだろうか。


 改めて技術の時代。融合2.0への突入。これを追い風とし、政治の向かい風を上昇気流に活かす。いま必要なのは、その先を描くビジョンを自ら示すことではないだろうか。

2018年9月24日月曜日

ニコニコ超会議2018

■ニコニコ超会議2018
ニコニコ超会議2018 @幕張。7回目。
ポップ&テック&参加型の、2日で16万1277人を動員する、最重要イベント。
ぼくはもう今年で最後にします。
と毎年言いながら、今年も来てしまった。
ぼくはもう今年で最後にします。

去年までのメモはこちら。
13年
14年
15年
17年


ドワンゴ横澤大輔さん(超会議統括P)はこの場を「同じことを好きな人が遊び方、楽しみ方に応じて集まれる文化祭のような居場所」ととらえます。
「リアルなコミュニティで好きなものを好きと言える環境」「価値観を否定される恐怖を減らす」、その目的は果たしていると見受けます。
(VYT3時間待ち)


新基軸。超テクノ法要向源。
バーチャルのニコ動がリアル空間に進出して、どいつも入り乱れる。
自民党や民主党、自衛隊や警視庁、大相撲や歌舞伎。
日本の奥の院を次々とこの変態空間に手繰り寄せた超会議が、お坊さんたちを呼
び寄せるのは難なきこと。
アジり、叫ぶパンクな袈裟たちでありました。


超笑点。
これも一つの奥の院、50年以上、日本の日曜夕方をジャックしてきた、師匠みなさんお越しで公開収録もされたそうです。
政治、行政、国防、経済、文化、芸能、風俗、スポーツ、技術。
掘れる穴は、だいたい掘り尽くしたんじゃありませんか。
残るは教育、医療、食、ファッションぐらいかな。


目玉の超歌舞伎第3弾、初音ミク中村獅童、「積思花顔競」。
NTTのイマーシブテレプレゼンス技術Kirari!が進化しています。
被写体と背景の色情報を教師データとした機械学習を取り入れて、わずかな色の違いでも被写体・背景を識別する。
バーチャルとリアルにAIの投入ですか。
初音屋!電話屋!


NTTは出展5年目。
伝統芸術(歌舞伎)と、世界に誇るポップ・キャラ(初音ミク)と、先端技術(Kirari!)と、炎上型ユーザ参加(ニコ生)という、「これぞ日本」の凝縮をショウケースに使うセンス、正しい。
今回は「超未来大都会」と銘打っての参戦です。


NTTはAIや5Gを顕示してます。
Tech推しで気を吐く。際立つ存在感。
でもね、今回は周囲の空気が去年までと異なります。
B2C感が薄い。
入場者数が最大なのに、会場ぜんたいがゆったりしていて、そのぶん参加感、C2C感が高い気がします。


MRあり、痛車もあり、歌舞伎もNTTもいる。
自衛隊も自治体もみんないる、いつもの光景。
でも、見かけなかったものもある。
大相撲。
自民党に民進党。
いずれも問題を抱えているしね。
だけどそれだけじゃない。
JAXAも競輪も警視庁もかんぽ生命も競輪も進撃の巨人もいません。


超コスプレ。超ボカロ。超音楽祭。超アニメ。超囲碁・将棋。超配信。超神社。
今年もまた超いろんな表現の機会が備えられていました。
超踊ってみた。超演奏してみた。超歌ってみた。超描いてみた。
大どころがぼくらに見せてくれる、よりも、みんなで見せ合う、ニコニコの原点に立ち戻ったかんじ。


かつてドワンゴ川上さんは、ここは「ネット民とリアル民の戦いの場」と言いました。
分断されているリア充文化とネト充文化が衝突する最前線だと。
今はぶつかる段階。
それを経て「ネットとリアルの和解」がもたらされるかどうか。
壮大な実験場であり、公益的な挑戦です。
そこに立ち戻ったかんじ。


大どころに一段落つけて、C2Cの、みんなの才能を衝突させる場へと再定義するとすれば、ゲームショウでもCEATECでもない、SXSWでもアルスエレクトロニカもない、独自のサステナビリティが見えます。
(超クリエイターズLabではポプコンを作った上出さんとクリプトン伊藤さんという驚きのブッキング!)


超N高文化祭。
N高生がサーターアンダギーや玉子おにぎりなど沖縄のソウルフードでおもてなし。
夏野さん「だいたい引きこもりなんだけど店出すんだよね。」
そんな学生たちの学校を作り、出ていこうと思わせる超賑わいの場を用意する。
吉本興業と並んで「やっちゃう」企業ですよねドワンゴ。


「日本うんこ学会」に面白法人カヤック柳澤社長が登壇しています。
仕事選ばなくて大丈夫でしょうか。
いや柳澤さんには夏野さんと並びi大の客員教授もお願いしてるんだった。
この後われらが超人スポーツ稲見昌彦さん江渡浩一郎さん犬飼博士さん、ゆるスポーツ協会澤田智洋さんがご登場。ぜいたく。


超フェンシング。VR太田雄貴。超スポにもご協力いただいている太田さんであります。
昨年はぼくらも超・超人スポーツとして、ラスボス小林幸子さん、超柔道・篠原信一さん、超シンクロ・青木愛さんに参戦いただきました。
やはり自分で参加しないと躍動しないイベントですなコレは。


超感触HAPTIC TV。
映像・音声に触覚情報が伝えられる。
NTTの研究所+慶應・KMDのEmbodied Media Project。
大学が企業とガチで現れてここの客にいじられるのは、気合を要するしごと。
身内ながらあっぱれ。


ニコラス・ネグロポンテ師匠がBits meet Atomsを唱え、リアルはバーチャルに、いずれはバーチャルがリアルに、と喝破しました。
その後段、B→A、つまりV→Rを世界で最も体現している超会議。
ユビキタス信者どもの想像を超えた、ポップで脱力的でカオスな、でもネットなんだから当然の、現実です。


ものづくり、コンテンツ、お祭り、何でもあります。
ものづくりの技術力と、コンテンツの文化力のかけ算が日本の地力。
さらにみんなが参加して作ってみたりいじってみたりする、ソーシャルな力、それが日本の強みである、増殖炉。

ぼくはもう今年で最後にします。 では

2018年9月20日木曜日

「朝ドラには働く女子の本音が詰まってる」?

■「朝ドラには働く女子の本音が詰まってる」?

矢部万紀子さん著「朝ドラには働く女子の本音が詰まってる」読む。
さすが松本人志「遺書」「松本」を当てた矢部さん。おもしろい。
(ぼくもこの本の途中で登場するんですがね。)

ちりとてちん、ゲゲゲの女房、ごちそうさん、カーネーション、花子とアン、あさが来た、まれ、べっぴんさん、あまちゃん、とと姉ちゃん、ひよっこ。
この10年の朝ドラを縦横に斬る。
忙しいのに、よく見てたなぁ矢部さん。

カーネーション、あまちゃん、ひよっこ。
矢部さんはこの3作だけダブルで項を設けて論評。
近年、いや恐らく歴代の中でも出色のトップ3です。
という朝ドラ趣味がぼくと一致。
(梅ちゃん先生や純と愛のように全く登場しないチョイスにもにんまり。)

ぼくが途中で観るのを断念した作品も、
花子とアン「イラッとする」
まれ「なめてんのか、おい」
べっぴんさん「うっすいドラマ」
と柔らかく温かくdisってるのは、処理がうまいです。

カーネーション考。
主人公・糸子が玉音放送を聞いた後、「さ、お昼にしよけ」とだけ切り替える。
ぼくも名場面だと思います。
女が堂々とする、女のドラマでした。

もう6年も前ですか。
カーネーションが終わるのを惜しみ、ぼくは初めてドラマについてブログを書きました。
カーネーション・ラブでした。

「カーネーションが、終わってまう」

あまちゃんについてもちょっとメモしたことがあります。5年前です。
「半沢直樹vsあまちゃん」

そして、ひよっこ。
「勝ちにいかない人生」「普通は、とても美しい」。
矢部さんの評は、ずんずん堀井憲一郎先輩の見方とも一致します。
この世界観は、成長と停滞を経て、改めて日本がこれから向かう先ではないか。
ぼくは近頃そう考えています。

ひよっこを惜しんでぼくもブログを書きました。
ドラマについて書くのはカーネーション以来でした。

「ひよっこ」と「前略おふくろ様」

矢部さんが持ち上げる3作では、男の存在は薄いのですが、大切です。
カーネーションの、へたれで戦死する勘助。
あまちゃんの、ミズタク。
ひよっこの、インパールとビートルズの宗男。
忘れがたい記憶を残す演技でした。そこに光を当てるのもさすが。

さーて。
「半分、青い」を矢部さんが持ち上げるかぶっ叩くか。

楽しみに待っております。

2018年9月17日月曜日

ワークショップコレクションin福岡2018

■ワークショップコレクションin福岡2018

ワークショップコレクションin福岡2018。
「あそびながら、まなぶ。」
福岡では3回目の開催、福岡市科学館にて、科学や電子工作、デジタル、アート造形など、子どもたちが遊びを通じてモノづくりの素晴らしさやアイデア・発想につながるようなワークショップが集結しました。

昨年の模様はこちら。
「ワークショップコレクション ミニ@福岡」


36ワークショップ、2日間で2万人の賑わい。
2020年から小学校でプログラミング教育が必修となる状況を反映し、プログラミングやロボットのワークショップが目立ちました。
Makeblock Co.+ニューシークエンスサプライのロボット+プログラミング。
STEM教育用ロボット『mBot』を動かすプログラミングに挑戦。超音波センサー、光センサーなどの機能を覚え、センサー類の使い方も学習します。


littleBits×ALBA英語塾プラス:DROID INOVATER KITを作ってみよう。
マグネット式の単機能の小さな電子回路基板Bitをつなげて電子工作。
各Bitには決まった機能(光る、音を出す、センサー、ボタン、スイッチ、モーターなど)があり、Bitをつなげていくことで電子回路を組み立てることができます。


英進館:LED電子工作に挑戦!
光センサーなどの電子部品を使って、暗くなると自動で明りがつくミニライト工作に挑戦します。 
豆電球とLEDの違いなど、電子部品のしくみや身の回りの利用などについても学習します。


NPO法人QUEST & PCN福岡:IchigoJamで作って遊ぼう! BASICプログラミング
子どもパソコンIchigoJam(イチゴジャム)で、プログラミング言語BASICを使いコードを書きます。
けっこうガチなコーディング教室。


グローバルワークス「PiTme(ピットミー)」:パソコンを使わないプログラミング体験
PRIMO TOYS社のロボット「キュベット」を使用したゲーム形式のワークショップ。
ロボットを動かし、ゲームを楽しみながらプログラミングに必要とされる「論理的思考」を体験します。
アンプラグド。


イーケイジャパン:アンプラグド・プログラミングを体験しよう
電子回路モジュール「PIECE」を使って「どうぶつロボット」を作る。
ペーパークラフトの動物型ロボットを「キャラクターに応じて動かす」ことを課題とし、電子回路モジュールの組み合わせによるプログラミングで実現する方法を体験。


福岡ロボコンプロジェクト:ローバータクシーを操作しよう
約2メートルのコースを、動物ぬいぐるみを乗せた6足移動ローバーロボットで、ゴールを目指します。
超ミニジオラマコースで、物資に見たてた動物ぬいぐるみをゴールまで運ぶローバー操縦体験にチャレンジ。
一人あたりの制限時間は5分まで。
中学校の元先生が提供しています。


トヨタ自動車 くるま育研究所 × 山岡潤一:未来のクルマをつくってみよう
未来の街では、どんなクルマが走っている?ひととクルマが仲良くなるのは、どんな街?自由に、クルマや街の未来を考えよう!
本ワークショップは、独自に開発した知育玩具を使って、あそびながらクルマづくりやプログラミングを体験できるワークショップです。


筒井時正玩具花火製造所:線香花火をつくろう!
36ワークショップの中で一番惹かれたのがコレでした。
線香花火は原料や配合率はもちろん、撚り方で火花の美しさが決まるそうです。
国産の線香花火の製造所はわずか3か所。自分で作って、こどもたちに職人さんたちの技術力の高さを知ってもらおう。


経済が活況で人口も増えているブイブイの福岡市ですが、教育情報化では1707位。ほぼ最下位です。
この状況を脱し、1位を目指そう。
ワークショップコレクションを契機にそんな産官学の取組を進めようという動きも見られます。


デジタル+アナログ。バーチャル+リアル。親も子もいっしょに、作ってまなぶ。

ワークショップコレクション福岡、これからもよろしく。

2018年9月13日木曜日

オープンデータ勝手表彰2018

■オープンデータ勝手表彰2018

オープンデータ推進機構VLED勝手表彰2018@赤坂。
優れたオープンデータ案件を表彰するイベント、第5回です。
審査委員長を務めます。
今回、最優秀賞は法制執務業務支援システムeLaws。政府初の受賞。
受賞してくださって、ありがとう。



最優秀賞。
法制執務業務支援システム(e-LAWS)法令データのオープン化
総務省行政管理局
国が保証するデジタル法令コンテンツ。
法令の機械可読性を向上させる取組です。
法令改正の際に「改め文」を自動作成する機能もあり、「霞が関の人たちは泣いて喜んでいる」との審査コメントあり。
ぼくが現役の時にコレがあったらなぁと思わせるシステム。


優秀賞、3点。


Code for選挙:衆院選2017候補者オープンデータ作成プロジェクト
Code for Japan及び有志メンバー
比較検討しにくい候補者情報をみんなでオープンデータ化。
審査コメント「必要なデータを有志で作ろうという自発的な動きが広がり、作成したデータがFacebookで使われるなど早速成果が生まれた」。

ひなたGIS
宮崎県庁情報政策課
昨年RESASアプリコンテストで最優秀賞を受賞した後、バージョンアップを続けているとのこと。
代表で受け取られた落合さんは「地道にやってきたものに光を当ててもらい、今後の活動につながる」とおっしゃってくださいました。

いらすとや 
自治体はじめ官民さまざまな資料でこのイラストが使われています。
無料で自由に使える素材が充実。
「オープンなイラストがさまざまな場所の風景を変えた」との審査コメントあり。


貢献賞は5点。

富士通・富士通総研:3Dレーザーセンサーを用いた「体操の採点支援」。
AIビッグデータで動きを認識するもの。
社内大反対で、ジョークとして始めたものだそうです。
採点競技をデータで改革するのは是非進めてもらいたい。

台北駐日経済文化代表処:Asia Open Data Hackathon
AIIoTを台湾は官民あげて推進、海外連携を進めたいとのこと。

日本気象協会・相模屋食料:気象データを活用した「食品ロスの削減」
気象データで豆腐の売上を予測。

砥部町役場:公会計の改革-資産台帳の整備及びデータの公開
資産台帳を整備しての公会計改革。
「情報開示に努めても住民に伝わらなかったが、こうした小規模自治体の取組にスポットを当ててもらえるのはうれしい」とのこと。こちらこそうれしい。

静岡県交通基盤部:3次元点群データのオープンデータ化
公共工事によって生まれたデータをオープン化・共有。
「バーチャル静岡県をつくる」という意気込みです。


スポンサー賞、ぼくに関わりのある団体のもの3点紹介しましょう。

融合研究所賞:シビックパワーバトル
市民がまちを愛する気持ちという着眼点を活用した新イベント。
副賞:伊達のウィスキーとガンダム・シャアのマグカップ(Date+Char → Data Share)

CiP協議会賞:データクレイドル data eye 高梁川流域圏データポータル
市町村をこえて高梁川流域の地域で取り組み、データのオープン化、データサイエンティスト育成など広範囲な活動。
副賞:ウルトラセブンのウルトラアイ(サインつき)

ニューメディアリスク協会賞:千葉市 市税の使いみちポータルサイト
自分が支払った税金がどう使われているかを直感的に理解できるようにしたサイト。
副賞:オーブントースター  オープンデータとちょっとズレてるけど、炎上協会として。


勝手表彰の最優秀賞、1年目は鯖江市。2年目はオープンデータの地域連合。3年目は東京メトロ、公益企業。4年目は静岡市とトヨタ、自治体と民間企業のセットでした。
昨年5年目は官民データ活用推進基本法、つまり国会・立法府でした。
そして今回、ようやく政府が獲得。
政産官学連携でオープンデータ大国の道を歩みましょう。

オープンデータ国際ランキングでは、OECD諸国中、2014年に14位だったものが2016年には3位に上昇(1位韓国、2位フランス)。
2012年に取り組み始めたころ世界一を目指そうとぶち上げましたが、少し見えてきましたね。

事例が多くなって、探すのも大変になりました。
ありがたいことです。
ただ、オープンデータは、具体的なアウトプットや成果が求められる時期に来ています。
この広がりをおホメ申し上げ、来年度につなげていきたい。

受賞者のみなさまにはおめでとうと言うべきところ、毎年申し上げているが、これは勝手に表彰させていただいているので、受賞されたみなさま、受賞してくださってどうもありがとう。


ではまた来年。

2018年9月10日月曜日

超・文科省で進むAIの教育利用

■超・文科省で進むAIの教育利用

「AI時代の教育を考える」と題するシンポを開催しました。

 生徒一人ひとりに合わせた学習やデータの活用などAI利用教育の可能性が広がっています。そこで算数・数学、英語の教材を開発している企業とシステム導入した学習塾や予備校の発表から、AIと教育について議論しました。

 登壇者は、atama plus中下真さん、Z会エデュース稲葉尚樹さん、メイツ遠藤尚範さん、ウェブリオ辻村直也さん、COMPASS神野元基さん、UNIVERSCHOOL湯浅浩章さん、河合塾河合英樹さん。それぞれプレゼンをいただきました。

 2017年4月に設立されたばかりのatama plusはタブレットの個人レッスンを提供。一人ひとりの得意、苦手、つまずきをAIが分析、自分専用レッスンを作ります。冬期2週間の講習で受講生は50.4%の伸びを見せたとか。

 Z会エデュースは塾でatama+を導入、人(講師)とAIからなる授業を提供しています。
 同じく塾を経営するメイツは、iPadを導入することで3人を担当していた講師一人で24人の生徒を受け持つことができるようになったという成果の上に、ウェブリオのAIを導入、さらなる成果を上げているそうです。

 COMPASSが提供するAI教材「Qubena」は7000ユーザを持ち、3年かかった算数・数学の学習時間を9か月に短縮。
 これを導入したUNIVERSCHOOLの塾では1時間で問題を解く量が倍以上になったそうです。
生徒数11万人を擁する河合塾もCOMPASSと提携、アダプティブな出題を実行しているといいます。

 爽快なプレゼンでした。

 デジタル教育の次を行く、AI教育を開発し成果を上げる「意志」が明確な若いプレイヤーの熱を受け止めました。
 デジタル教科書教材協議会(DiTT)をぼくらが創設してから8年、ようやく学校にタブレットやデジタル教科書が入る時期に、民間の塾・予備校はもうAI利用へと歩を進めています。これは必ず学校にも及ぶ熱となります。

 感激したのは、「AI利用で子どもの成績は上がる?」という質問に、全員が間髪入れず◯の札を上げたこと。
 当然と思います?思いますよね。

 でも8年前、DiTT設立時のシンポではそうではなかった。
「デジタル教育で子どもの成績は上がる?」という質問に、登壇者は◯の札を上げなかったんです。

 そのシンポは教育情報化の権威ある研究者が中心だったのですが、その先生方は「断定できない」「さらなる研究が必要」「成績アップが目的じゃない」というご意見。ぼくはその時、そりゃ日本の教育情報化が進まんはずだ、と納得しました。かなり時間がかかるぞ、と。

 確かにデジタル化の目的は成績だけではない。学習意欲向上とか表現力向上とか、大事な効果があります。研究も必要だ。でも、保護者や子どもが最も気にする学力向上にプラスと断定できなければ、専門家にそれを目指す「意志」がなければ、前進することはあり得ない。

 ぼくは、プレイヤーを変えなければ動かない、やる気のある民間プレイヤーが進まなければ、と感じました。
 以来、運動を続け、ようやくデジタル教科書の制度化やプログラミングの必修化が政府方針となりました。
 そして、なので今度はAIです。
 これも気概ある民間が主導します。

 保護者の反応も全員が◯。
 遠藤さん「効果も出てきて、理解が深まり年々上々。」
 河合さん「当初AIはうさんくさいと言われたが、子どもが楽しんでいて、親も成果を実感している。」

 とは言え一筋縄ではない。
 神野さん「OK Google、169÷13は?と聞き、13という答えを書いて宿題に使う子もいる」。
ですよね。
 学習態度も向上するけれど、ゲーム感覚で遊ぶ子もいるので、先生による導入法が大事というコメントもありました。

 中下さんは「AIは学習意欲ある子に向いている」と言います。
 ただ、神野さんは「AIはモチベータにはなれない、AIだけじゃ無理」とのこと。先生の役割は、教える、から、共に学ぶ・学ばせる、に変わります。「先生はTeacherからGeneratorへ」(神野さん)。

 AIもITと同様に先生方がどう使いこなすかがポイントのようです。
 稲葉さんは「うまく乗れる人と乗れない人がいる」と言います。
 河合さんも「教え好きの先生は、最初は難しい」とのこと。
 神野さん「wifiの使い方などITリテラシーのほうがハードルになる」。

 今は塾・予備校に入ったところですが、「学校も使うべき?」には全員が◯。
 では「20年後、先生は置き換わるか?」は◯が半々でした。
 役割が変わる、はコンセンサスですが、◯をつけた遠藤さんは「置き換わらせたい、という考えで進めている」とのこと。ぼくも開発者はそういう意志が大切だと考えます。

「AI利用教育の課題は?」
 「意識・勇気」、「環境」という答えでした。
 変化を受け入れる意志と、それを実現する環境。同意します。

「AI利用教育の可能性は?」
 「人間とAIの共生」「学習と創造の両立」
 IT教育を論じていたころは、アナログvsデジタル、リアルvsバーチャルといった二項対立が目立ちました。でもこの実践者たちは二項対立ではありません。リアリティーのある現場感覚です。頼もしい。

 AI利用教育の推進。シンポを終えてのぼくの総括は「超・文科省」です。

 デジタル教科書の実現は6年かかりました。ここに至る文科省の努力は大変なもので、敬意を表します。国全体を動かすのは大仕事です。しかしそれでもなお日本は教育情報化の後進国で、その改革にはさらなる時間がかかります。

 ITからAIに歩を進め、後進国のキャッチアップから先進国によるリーディングに飛躍するためには、国全体のボトムアップではなく、民間主導で先端を伸ばすことに注力するのがよい。政府・文科省ばかりに頼らず、その枠組みを超えて、進むべき。

 われわれDiTTとしても、デジタル教科書の制度化が実現した次のステップとして、先進分野の開拓に力を入れたいと考えています。
 このため、「教育特区」を構築するなどして、AIやIoT、VR/AR、ロボット、ブロックチェーンなどの実証を手がけるなど教育先進技術の取組も進めたい。これらに関する政策提言も行いたい。

 そしてそれはDiTTだけでは力が足りません。ITと教育に関わる民間プレイヤーが結集して環境整備に当たることが望ましい。設立準備中の「超教育協会」を通じ、パワーアップしてまいりたく存じます。

 「「超教育協会」が立ち上がります。」

2018年9月6日木曜日

吉本興業がアジアエンタメプラットフォーム構想を発表しました。

■吉本興業がアジアエンタメプラットフォーム構想を発表しました。
沖縄国際映画祭の場で、吉本興業が「沖縄アジアエンタテインメントプラットフォーム(仮)設立構想」を発表しました。

「国産のプラットフォームでアジアへと進出する。
日本各地域の魅力をアジアへ、アジア各地域の魅力を日本へ。
沖縄から日本とアジアのエンタテインメントコンテンツの架け橋となるプラットフォームを構築する。」
趣旨ペーパーの冒頭にそうあります。

ゲームクリエイター、ゲーマー、マンガ家、アニメーター、イラストレーター、作曲家、パフォーマー、トレンドクリエイター、二次創作クリエイターなど多種多様なクリエイターを発掘・育成・活躍する場とし、アジア全域でクリエイターやパフォーマーなどの人材を供給する。
沖縄を拠点とし、沖縄のエンタテインメント産業の創出と雇用の促進を目指す、とのことです。

創業106年の吉本興業は、次の100年を見据えた方針として「地域」「アジア」「デジタル」をキーワードに事業を展開しています。
中でも今回10回目を迎えた沖縄国際映画祭は、離島を含む沖縄全域で通年でイベントやライブ、ワークショップなどを開催し、沖縄を日本とアジアのコンテンツが集まるハブへと育てる努力を続けてきました。

そして同月、この会見を開いた場に、エンタテインメントの人材の育成に特化した「沖縄ラフ&ピース専門学校」を開校。
クリエイターやパフォーマーを育て、沖縄で生まれたコンテンツを世界へ発信しようとしています。

さらに、ノーベル平和賞を受賞したグラミン銀行のムハマド・ユヌス氏と協業して「ユヌス・よしもとソーシャルアクション」を設立。
全国47都道府県の住みます芸人が地域で暮らして体感した社会問題について、スタートアップ企業のテクノロジーの力とエンタテインメントの力のコラボレーションで問題解決に取り組む活動を始めました。

今回のプラットフォーム構想は、それら大きな事業戦略の延長線上にあります。

大崎洋吉本興業社長は、「20世紀、エンタメはアメリカにやられ敗戦した。21世紀、アメリカの黒船、中国の赤船が来る。日本は自らプラットフォームを持たなければ。」と言います。
ただ、プラットフォームと言っても、どうやら映像配信メディアを作るという単純な話ではありません。

「すべてをエンタメ化する。みんなでエンタメ化する。」というスローガンのもと、表現方法としては映像、マンガ・アニメ、AR/VR、ゲーム、SNS、ライブが挙げられる一方、テーマとしては、教育、地域、観光、地域課題、健康、スポーツが掲げられています。
学校やソーシャルアクションと親和性がありそうです。

会見に臨んだかたからも多様なメッセージがありました。
ビリギャルの作者、坪田信貴さん「教育は本来エンタテインメント。記者会見の仕方、ネクタイの結び方、お箸の持ち方、全て教育エンタメになる。面白く学べるようコンテンツ化したい。」

クリエイターのしんどうこうすけさん「マンガは翻訳が難しい「間」の問題を乗り越えるメディア。笑いをマンガに変えて発信したい。」

会見中、記者席にいたぼくに大崎さんが急に意見を求めてマイクが向けられてしまいました。
「この沖縄国際映画祭は、映画もお笑いもあり、沖縄全市町村が参加するユニークでとらえどころのない祭り。それを10年続けた成果がこの学校と、この発信プラットフォーム。人を育てる入口と、海外に発信する出口、その両方を揃える、ということだと解釈します。
 政府のコンテンツ政策の2大テーマは人材育成と海外展開。本来、この仕事は国がすべきこと。それを吉本興業一社でやってのけようとしている。すさまじいと感じます。」

ホメ過ぎたでしょうか。いやそんなことないと思うんです。

吉本興業は一世紀前、小屋ライブから始まり、テレビへと主戦場を移し、いまデジタルに傾斜している。
このプラットフォームもその文脈で見られ、納得されそうです。でも恐らく吉本興業はもっと遠くを展望しています。

映画祭や住みます芸人などローカルの掘り起こし。
教育と海外という長期的な新天地の開拓。
社会課題の解決という共存・共生策。

なんというか、利潤やGDPとは別次元の、資本主義の次に来そうな地平を見つめて、「勘だけで100年やってきた」(大崎社長)その正しい勘を働かせている。
そんな感じがするんです。

そして、ぬるぬるドカンと変化を続けつつ、「人」を真ん中に据え、人で仕事をし続ける点は全くブレない。

ただ、芸人6000人の吉本興業の全体像を正しく把握している人はどうやら社内にもいないようで、そんな魅力あふれる不思議な組織をぼくもしばし見つめてみたく存じます。

2018年9月3日月曜日

第10回沖縄国際映画祭&あそぶガッコ

■第10回沖縄国際映画祭&あそぶガッコ

10回目を数える沖縄国際映画祭が開催されました。

世界のどこにもないイベントです。
内外の映画が集まり、世界に発信する。
映像の他にも、お笑い、音楽、スポーツ、いろんなエンタテイメントがある。
コンテンツのマーケットも新人発掘の場もある。
クリエイターを教育する催しもある。
大人だけでなく小学生も参加している。
芸人やアーティストも当たり前のようにうろうろしている。
明日22日に那覇・国際通りを進む行進は、1000人以上が歩く世界最大のレッドカーペットです。

そして沖縄のいくつもの会場が使われ、全島41市町村のみなさんが寄り合って地域を活性化します。
沖縄の全島で開かれて、新しい価値を生み出す。
これぞ「ソーシャルビジネス」です。

さて、それに先立ち、吉本興業は沖縄・那覇に「沖縄ラフ&ピース専門学校」を開校しました。
エンタテイメント人材育成の場です。
別名「あそぶ ガッコ」。
ガレッジセール、吉本興業大崎社長、城間那覇市長らによるテープカットです。

アジアの中心として、諸外国から文化的影響を受けながら、数多くのエンタテイメント人材を生んできた沖縄。
食もファッションも音楽も食べ物も、日本の、いや世界のどことも違う強い文化圏をもつ沖縄。
場としてふさわしい。

これは10回を数える沖縄国際映画祭の成果の一つと位置づけられています。
イベントを通じ、沖縄がもつ文化の潜在力と、人材育成の必要性が学校という形に結実した。
「この学校の目的は、エンタテイメントを沖縄における産業の一つとして確立することです」(吉本興業大崎社長)。

マンガやCGアニメ、パフォーマーなどのコースがあります。
マンガコースは堀江信彦さん北条司さん原哲夫さんが運営する世界最大のマンガ家ネットワーク「サイレントマンガオーディション」を礎に、マンガづくりのノウハウを体系化したカリキュラム。
CG・アニメコースは『火花』を世界190カ国に送る映像プロデューサー古賀俊輔さんが担当です。

パフォーマーコースは、ダンス、歌唱、演技、声優、パフォーマーとしての必要な要素をすべて網羅。
トニー賞3度受賞のブロードウェイのレジェンド、ヒントン・バトルさんと、HEROES天才マシ・オカさんが担当します。

開校に当たってのガレッジセール・ゴリさんのコメント。
「われわれの給料がここに吸い取られていたのか!でも親御さんは振り込めサギじゃなかったと安心していることでしょう。」

沖縄公共政策研究所の安里繁信さん「27年の米軍統治下、沖縄はメディアと学校が「日本に帰る」と唱え続けた。だから返還が実現した。」政治や行政よりも、現地の情報と教育が大切。
重いメッセージです。

沖縄をエンタテイメントの中心地とすべく巨大な映画祭を続け、学校法人まで立ち上げて人材育成の拠点を作る。
そこに社運をかけ続ける。
この時期は幹部も新人も芸人もみんな集合でおもてなしです。
吉本興業の情熱には鬼気迫るものがあります。

映画祭のスタート時、大崎社長は「100年続ける」とおっしゃいました。
達成するにはこれまでの歓喜と苦労をあと10回くりかえすことを意味します。
とんでもないことです。
でも達成してもらいたい。



ぼくが実行委員長を務める弟分の京都国際映画祭は、次回の10月で半分の第5回を迎えます。

沖縄のパワーをいただいて、秋の京都に持ち込みたく存じます。