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2012年9月27日木曜日

東京おもちゃショー2012

■東京おもちゃショー2012
 今年も来ましたクリエイティビティとものづくりの結晶、東京おもちゃショー@ビッグサイト。
 6/14174日間で16万人だったそうです。
(それに比べるとぼくらのワークショップコレクションが15万人ってすごい数字だな。)
 2010年と2011年についてはブログにスケッチしましたので参考まで。
  http://ichiyanakamura.blogspot.jp/2010/09/2010.html
  http://ichiyanakamura.blogspot.jp/2011/08/2011.html
 今年ははごく簡単なメモにとどめておきます。

 昨年に増して墨田タワー、もといスカイツリー案件が多数。
 がんばれ東京タワー。






 ほしいのはコレ。
 ビデオカメラつきラジコンヘリ。
 となりで中年女性の「うわ〜プライバしぃ〜!」という感想、刺さりました。


 今年の注目はデジタル。
 これはカードのARマーカーを呼び出してバトルする「ワンピースARカードダス」。 




 スマートフォンものも続々と。 







 大賞受賞「スマートペット」。
 バンダイ。






 iPhoneをボディにセットして、お世話したり芸をさせたり。



 
 トヨタがブースを出してました。
 ぜひ子どもに投資してください!




 われらがデジタルキッズチームは今年も清水建設ブースでワークショップ。
 木でコースターづくり。エラいでしょ。

2012年9月24日月曜日

デジタル教科書法案

■デジタル教科書法案
 デジタル教科書教材協議会(DiTT)がデジタル教科書を正規教科書とせよとの政策提言を発出したのが201245日。政府が知財計画でそれを検討すると正式決定したのが529日。事態は急展開しています。
 言いっぱなしはいけない。そこでDiTTは教科書会社やメーカなどの会員企業のほか、衆議院議員、官僚、弁護士、経済学者などを招き、プロのWGを形成して、法案を策定する作業に入りました。
 まずは論点整理。デジタル教科書を教科用図書とするためには、以下の制度改正が必要であることを確認しました。
1.       学校教育法
 「教科用図書」(第34条)の中に「デジタル教科書」が含まれることを明確にするための法改正が必要。
2.       教科書検定制度
 紙の教科書を前提としている検定事務の取扱(申請・審査手続きの様式等)について、「デジタル教科書」の審査を行うための修正が必要。
 ただし、これは省令及び告示レベルの規定改正。また、紙の教科書と同じ内容のデジタル教科書(pdf等)の場合、改めて検定を行うことは不要となる。
3.       教科書発行法
「教科書」(第2条)の中に「デジタル教科書」が含まれることを明確にするための法改正が必要。
 併せて、紙の教科書を前提としている規定のうち、「デジタル教科書」の発行に対応した文言の見直しが必要。例えば、教科書の表紙と末尾への必要な記載(第3条)、発行指示における「部数」という概念(第8条)。
4.       無償措置法
 無償措置法の「教科用図書」は、学校教育法上の「教科用図書」と同義なので(第2条第2項)、1.で「デジタル教科書」が学校教育法上の「教科用図書」に位置づけられれば、義務教育段階における無償措置の対象となり、法改正は不要。
5.       著作権法
 公表された著作物を掲載することができる「教科用図書」(第33条)の中に「デジタル教科書」が含まれることを明確にするための法改正が必要。

 その上で整理・公表したのが下記の「デジタル教科書法案概要」です。
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デジタル教科書法案概要
第一 前文
 資源に乏しい我が国が、文化及び経済を更に発展させ、社会の活力を維持するためには、豊かな人間性と創造性を備えた人間を育成する必要がある。特に、世界的に進行する高度情報通信ネットワーク社会を生きる世代には、情報活用能力を駆使して創造力、表現力及びコミュニケーション力等を発揮することがこれまで以上に求められる。
 このような資質を備えた人間を育成するには、二十一世紀にふさわしい教育の機会を保障することが重要であり、その実現のためには、教育においてコンピュータやインターネット等の情報通信技術を最大限に活用するとともに、主たる教材である教科書については、デジタル教科書で学べる環境を全ての児童生徒に保障することが必須である。
 このような基本認識に立ち、ここに、デジタル教科書の普及及び利用を促進する施策を総合的かつ計画的に推進するため、この法律を制定する。
第二 目的及び定義
一 目的
 教科用図書としてのデジタル教科書の普及の促進を図り、もって二十一世紀にふさわしい教育の実現に資することを目的とする。
二 定義
 この法律で「デジタル教科書」とは、児童及び生徒の学習の用に供するため文字、図形、音声又は映像を組み合わせたものに係る情報を電子計算機を介して提供するためのプログラム(電子計算機に対する指令であって、一の結果を得ることができるように組み合わせたものをいう。)をいうものとする。
第三 学校教育法等の一部改正
一 学校教育法関係
 学校教育法(昭和二十二年三月三十一日法律第二十六号)第三十四条第一項中、「教科用図書」を「教科用図書(デジタル教科書法第二条に規定するデジタル教科書を含む。)」に改める。
二 教科書の発行に関する臨時措置法関係
 教科書の発行に関する臨時措置法((昭和二十三年七月十日法律第百三十二号)第二条第一項中、「図書」を「図書(デジタル教科書法第二条に規定するデジタル教科書を含む。)」に改める。
三 著作権法関係
 著作権法(昭和四十五年五月六日法律第四十八号)第三十三条中、「児童又は生徒用の図書」を「児童又は生徒用の図書(デジタル教科書法第二条に規定するデジタル教科書を含む。)」に、「掲載すること」を「掲載すること並びにデジタル教科書にあっては複製及び自動公衆送信(送信可能化を含む。)を行うこと」に改める。
第四 責務
一 国の責務
  国はデジタル教科書の普及の促進等のために必要な措置を講じるものとする。
二 地方公共団体の責務
  地方公共団体はデジタル教科書の普及の促進等のために必要な措置を講じるものとする。
三 学校の責務
 学校は児童及び生徒がデジタル教科書を適切に活用する能力の習得の促進に努めるものとする。
第五 規格等
一 規格
 国はデジタル教科書、それを表示する端末及びデジタル教科書等に関する情報の電磁的流通について標準的な規格(障害のある児童及び生徒へ配慮したものを含む。)を策定し、公表するものとする。
二 障害者対応
 国は障害のある児童及び生徒が読み上げ、拡大等の機能に対応するデジタル教科書を使用することができるために必要な措置を講じるものとする。
三 端末無償給付
 国はデジタル教科書を表示する端末(読み上げ、拡大等の機能に対応するものを含む。)を児童生徒へ無償で給付するものとする。
四 調査研究
国はデジタル教科書に関する調査研究等を推進するものとする。
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 この法案では、デジタル教科書を定義したうえで、学校教育法の「教科用図書」、教科書発行法の「教科書」及び著作権法の「教科用図書」がこの「デジタル教科書」を含むと規定することとしています。ここが本丸です。
 これらにより「デジタル教科書」は、法律上、現行の紙の教科書と同等のものとして、検定及び無償配布の対象となるとともに、現行と同等の著作権法上の特例を受けることとなります。
 また、この法案は、下記の3点の整理に基づいています。
1.紙かデジタルか
 ア)紙の教科書のみの利用
 イ)紙の教科書とデジタル教科書の併用
 ウ)デジタル教科書のみの利用
 上記3パターンの利用形態が想定され、いずれも可能とする。
 学校及び自治体単位で上記3パターンを自由に選択できることとする。
2.デジタル教科書の内容について
 ア)紙の教科書とほぼ同一の内容(例:紙の教科書のPDF版)
 イ)デジタル教科書ならではの表現を活用した内容
 上記2パターンの内容が想定され、いずれも可能とする。
 アの場合は、別途検定する必要はないと考える。
 イの場合には、別途検定対応することが必要となる。
3.デジタル教科書の内容(コンテンツ)と端末との関係
 デジタル教科書は、コンテンツのみを指すよう定義する。
 そのデジタル教科書を正規教科書とするため、無償配信の対象となる。
 しかし、デジタル教科書は表示端末と切り離した利用は不可能であるため、表示端末の配布に関する整理が必要となる。
 表示端末の配布について、無償、各家庭負担等議論の余地があるが、本法案では、表示端末も含めて、デジタル教科書の配信を受けるすべての児童生徒に保障するため、無償配布すべきという考え方をとった。

 この法案は、議論を始めるための叩き台です。立法論から言えば新規立法は不要で、関係法をそれぞれ個別に改正すればよいという意見もあるでしょうし、まして前文など不要という声もあるでしょう。そこは自信をもって、ツッコミどころ満載の案を提出致しますので、煮るなり焼くなりしてくだせえ。なんにせよ、結果、デジタル教科書を実現してくれることになれば随喜の涙でございます。

2012年9月20日木曜日

Japan Expo 2012

Japan Expo 2012
Japan Expo 2012@パリ。
今年も来ました。
昨年、一昨年のレポートはここにあります。
http://ichiyanakamura.blogspot.jp/2010/08/2010_13.html
http://ichiyanakamura.blogspot.jp/2010/08/japan-expo-2010.html
http://ichiyanakamura.blogspot.jp/2011/08/japan-expo-2011.html
今年はその微分値の確認。写真メモで行きます。

マンガ・アニメ・ゲームの会場は企業が本格的なブースをしつらえ、もはや草の根イベントではありません。
中でもジブリのブースが威光を放っていました。




そうだ今年は浦沢直樹さんが見えるんだった。
秋にぼくらがビッグサイトで開催する海外マンガフェスタではお世話になります。




Brotherのカラオケブース。
フランス娘が日本語でアニソンを絶叫。
毎度の光景です。




これもすっかり定着した仏日ニコニコ生放送。
出演を心待ちにするフレンチ・キッズ。





今回ぼくが注目したのは、政府が目指す「コンテンツで出て行って他で稼ぐ」モデル。
例えば観光客の誘致。





  
沖縄、福岡、京都、松江、名古屋の世界コスプレサミットなど、都市が独自のキャラを見せているのがいいですね。





フード。
カップめんやたこやきは既に独自の存在感を示しています。





今回、金印わさびさんが初参加。
わさび青汁を振る舞ってました。
うむ、フランスだったらイケるかも。




そしてファッション。








ゴスロリなんて本来こっちのものですよね、クールジャパン然としてますが。







友禅さんが来たはりましたえ。






コスプレはワンピース、ナルト、ブリーチが強いのは変わらず。
ただし初音ミク割合が増えた感じ。





でもコスプレは流儀として落ち着いてしまっているので、追うのはやめにしました。  





アニメキャラや著名デザインを超えた、萌え要素だけで押してくるカワイイ系ショップも増えました。
クールジャパンの調理法としてはこれが王道かも。




あ、赤坂のご近所さんだ。 
ブースに姿が見えなかったが。
何しに来てるの?




アイ・アム・ア・ヒーローのコーナーで、ZQNメイクが施されてました。
フランスの子は怪奇モノも好きそうだが、あのマンガを読みこなせてるかは疑わしい。






 バンドデシネ的なポップ絵本。
なるほどね。
来年はデジタルえほんも出展するかな。




女子美、われらが季里さん、ご本人がブース展示。
他の大学のような学生勧誘ではなくて、学生たちの作品を売りに来ています。
絵本やクラフトなど。



学生が自分のコンテンツをこういう国際舞台に持ち込んで勝負。
これこそぼくらKMDリアルプロジェクトが目指すもの。
勉強になりました。







孫さんのファン。かもしれない。 

2012年9月17日月曜日

ボールは蹴ってみるもんだ。

■ボールは蹴ってみるもんだ。
 デジタル教科書。2010年にぐいっと動きました。タブレットなど教育にも使えるデバイスが出そろってきたのと、政権交代で政府が力を入れ始めたのが共鳴したのです。政府は2020年に一人一台環境を整備することを目標に掲げ、総務省と文科省とが連携して20の小中学校で実証研究を進めるに至りました。
 しかしその後、事態はなかなか進みません。政府関係者と話しても、実証研究の成果を上げていくことが必要だいうのが基本方針で、実証研究が事態を進めないための仕掛けにも見えてきます。しかも総務省のフューチャースクールが仕分けに遭ってしまうありさまで、政府もフラついています。
 だいいちデジタル教科書を標榜していますが、デジタル教科書は存在しません。学校教育法、教科書発行法、著作権法上、教科書は「図書」と定義されていて、つまり、紙でないと認められないのです。いくらデジタルががんばっても教科書にはなれないのです。

 早く教科書になりたい!
 暗い定めを吹き飛ばすため、制度問題にも取りかからねばならない。教科書の法的な位置付け、検定制度との関わり、著作権法上の扱い、の3大テーマに取り組む必要がある。しかしそれも実証研究を待て、という姿勢に門前払いを食ってきました。民間企業としても政府の反発を恐れ、表向きは言い出しにくいことでした。いわば、タブーだったのです。
 しかし、デジタル教科書教材協議会(DiTT)の事務局を務める「学」のぼくらは別に死んだってかまわない、そもそもそういう勢いで作った協議会だから、ここはもう一歩グッと進もうよ。ということで、4月頭に政策提言を発出しました。
1 デジタル教科書実現のための制度改正
 2 デジタル教科書普及のための財政措置
   3 教育の情報化総合計画の策定・実行」
3項目。制度改正を正面に据えました。併せて、「DiTTはこの計画の実行・推進のためのプランを別途委員会を設置して策定する。」ことも明記。自ら法案も用意して突きつけることにしました。

 叱られるだろうな、と思っておりました。しかし、驚いたことに、その後、化学反応が起こります。まず、政党の反応。民主党、自民党、公明党ともに、ワーキングチームや議員連盟から声がかかり、プレゼンと議論の機会を得ました。「前向きにやりましょう」、「基本法を作ろう」、温度差はありながら、一部に慎重意見も混じりながら、基本的に好感触です。選挙が近いという事情だけではない。前進させようという気運が高まっているようです。
 そうした場には霞ヶ関も同席しています。それも作用したのでしょうか。あるいはぼくらが霞ヶ関に提言を持ち回っていたのが効いたのでしょうか。ぼくが会長を務める知財本部の会合で、内閣官房から下記の文書が提出されました。
「児童生徒11台の情報端末によるデジタル教材の活用を始めとする教育の情報化の本格展開を目指して義務教育段階における実証研究を進めるとともに、実証研究などの状況を踏まえつつ、デジタル教科書・教材の位置付け及びこれらに関連する教科書検定制度といった教科書に関する制度の在り方と併せて著作権制度上の課題を検討する。(総務省、文部科学省)」
 驚きました。民間委員として全く異存ありません。気が変わらないうちに霞ヶ関内を調整して閣議決定してもらうことを祈りました。そして529日、野田首相以下全閣僚が出席する知財本部会合でこれを了承、内閣として正式決定をみました。ぼくもその会議には出席し、決定の瞬間を確認しました。政府は自らに義務を課しました。

 この文章には4つのポイントがあります。1)デジタル教科書・教材の「位置付け」、つまり法律上デジタルを含むことにするかどうか、2) 教科書検定制度に乗せるかどうか、3)著作権制度上どう扱うか、の3大テーマを検討するということです。
 タブーが破れました。これで入口に立ちました。大前進です。ただ、それでも「検討」するに過ぎません。これを「実現」するまでやらねばなりません。検討から実現までには10ぐらいの険しい険しいステップがあります。それでも0が1になった意義は大きい。
 もう1つのポイントは、「つつ」です。実証研究などの状況を踏まえ「つつ」、制度を検討するとされたことです。それがどうした?と思われるかもしれません。でも、霞ヶ関出身としては、これは「おおおっ」と声が出たぐらいの事件。大きな意味があります。
 これまでの政府方針には、この「つつ」がなかった。だから、つつがなかったw。「つつ」がなければ、研究を踏まえないと、次に進めなかったのです。「成果を待って」次に行こうという立場だったのです。だから、実験をし続けていると、いつまでたっても本格化できなかったのです。でも、「つつ」が入ると、同時並行になる。研究しながら、もう今年から、制度論に移行できるということです。さあ、早くやろう。

 ボールは蹴ってみるもんだ。シュートを打ってみれば、ゲームは動く。
 しかし、過去20年以上この分野の研究が続けられながら、タブーを破る議論にならなかったのはなぜなのでしょうか?今回ぼくはよくわかりました。要するにやる気がなかったんですよ。これに携わってきた全員に。永田町も霞ヶ関も学界もね。
 ここはやる気のある人たちを募って、次のステージに進みたい。そこで、この機に「教育情報化ステイトメント」を公表し、賛同者を集めることにしました。ここです。
 DiTTの政策提言と同じく、制度改正 、予算確保 、計画の策定と実行 の3点を進めよとの提言に、多くの有識者が賛同を表明してくれています。東浩紀さん、猪子寿之さん、大﨑洋さん、角川歴彦さん、川上量生さん、河口洋一郎さん、季里さん、佐々木かをりさん、佐々木俊尚さん、白河桃子さん、孫正義・孫泰蔵兄弟、田中孝司さん、津田大介さん、夏野剛さん、中山信弘さん、村上憲郎さん、茂木健一郎さん、山下徹さん・・・。
 さらに重要なことは、1月足らずで全国45自治体の首長が賛同の声を寄せてきたことです。政府は動き出したというものの、予算を仕分けてしまうなど、全面的に信頼をするわけにはいきません。この動きは地方から、現場から盛り上げていく必要があります。教育情報化は、東京で政府のドアをドンドン叩くのが第一ステージとすれば、やる気のある首長たちと全国で風を起こしていく第二ステージに入ったと言えるでしょう。
 おっと、次のホイッスルが鳴ったな。蹴りに行きます。

2012年9月13日木曜日

NHK放送技研公開2012

NHK放送技研公開2012
  放送技術のメッカ、NHK放送技研にやって来ました。一番人気はスーパーハイビジョンの超高精細映像ですが、ぼくの関心は「通信・放送融合」。マルチスクリーン、クラウドネットワーク、ソーシャルサービスの3点セットに日本の放送がどういう技術的な答案を書くのか。
 技研公開には去年も参りました。その際のぼくの関心も同じ。融合の新展開について、ブログにも書きました。
 そして今年の注目は、放送と通信を連携させる「Hybridcast」の進化度合いと、放送とSNSを結合した「ソーシャルテレビ」の2プロジェクトです。主任研究員の浜田博士に解説していただきながらじっくり拝見。

 まずHybridcast
 テレビとタブレットのダブルスクリーンです。高橋大輔さんが舞うシーンをテレビで観ながら、タブレットで足下アップの指示や再生のコマンドを与えてネット映像を見る。旅番組をテレビで観ながら、その地図をタブレットで確かめる。
 サッカー中継中、選手たちのフォーメーションがタブレット上にリアルタイムで示される。同じ画面がテレビ上にもオーバーレイされる。あるいはテレビ画面に映る選手の頭上にフキダシで名前が表示される。これらデータはネットによる配信です。
 放送の番組と通信のデータとを合成し表示するのはhtml5の役目。html5で記述されていれば特別な装置は要らない。ただ、「同期合成」が重要なポイントとなります。放送で映像を端末に送るのに比べ、ネットでの配信は若干の時間的なズレが生じる。それをダブルスクリーンにしろ同じ画面にオーバーレイするにしろ、放送コンテンツと通信データを合わせて見るには、放送コンテンツの表示を通信に合わせて「遅らせる」ことが必要。それを正確に計測して実行するんですと。
 悔しいでしょうな、放送屋としては。通信のために、放送の速度を、ほんのちょっとだけど、遅らせてやるっていうんですから。ま、そこは大人の放送人ということで。
 これにより、放送でニュース画面を送り、ネットで手話CGをかぶせ、同期を取って同時に表示。野球中継で多地点カメラが映像を配信、テレビの大画面と、ぼくの好きなカメラアングルを同時に表示。AKBの板野友美ちゃんをタブレットで選び、テレビ画面に彼女をクローズアップさせて表示。そんな楽しいことができるのは、NHK同期合成のおかげなのです。
 浜田博士によれば、やはりこういうキメ細かい技術は、日本が図抜けてるそうです。

 視聴者向けに情報をカスタマイズする技術もありました。ドラマ好きにはドラマ情報を、スポーツ好きにはスポーツ情報を流してあげます。視聴履歴に基づいて、個人に合った番組を届けてあげる。べんり。
 だけど問題はセキュリティ/プライバシーですね。その人が普段どんな番組を観ているかの履歴に基づいて送られてくるとすれば、その選択機能は局のサーバが持つの?それともたくさんの番組を送っておいて端末で個人が選別するの?
 浜田博士は、まだどちらにも進めるようにしている、と言います。プライバシー保護か、端末コストか、実装段階でどちらを取るか、技術的にはどちらにも対応できても、マネジメント的には重要問題ですね。

 浜田博士がいうHybridcastの特徴は4つにまとめられます。
1 html5
  つまり、BMLを否定するのです。
2 同期合成
  これが融合のキモだということがわかりました。
3 安全安心
  セキュリティ、プライバシーの確保ですね。
4 端末連携
  テレビ、ケータイ、タブレット。マルチスクリーン。
 浜田博士、アメリカと日本とでは、どう違うんでしょう?
「アメリカは、知りたいものを自分で検索する。放送コンテンツも通信コンテンツもバラバラに混在。日本は放送局が放送コンテンツも通信コンテンツも自ら組み合わせてプロデュースするスタイルです。」
 なるほど、アメリカは通信と放送が一つのテレビ画面でしのぎを削る「競合」。日本は放送局が通信を取り込んでマルチスクリーンで展開する「融和」ですね。

 ソーシャルテレビ「Teleda」も気になってました。テレビ画像を知人と共有して、コメントを言い合う。離れて暮らす家族と一緒に番組を観て楽しむ。特に高齢者には優しいソーシャルサービスのインタフェースをテレビが用意してくれるんです。
 これって科学技術振興機構(JST)の資金に基づく、東大、IBMとの共同開発なんですって。ええ仕事してますな。という話をしてたら、使われてる番組が「NHKらくらくデジタル塾」。ギョッ、ぼくの出演してたやつです。「入力は音声認識かねえ」とは浜田博士。
 技研が作った番組制作記述言語「TVML」を使って、SNSユーザがCG映像を作るプロジェクトもありました。クリエイティブライブラリーと連携して、みんなが番組を作る。いよいよテレビもソーシャルになってきましたね。

2012年9月10日月曜日

ソウル市教育庁

■ソウル市 教育庁
 スマート教育は、タブレット+クラウドによる教育改革です。
 デジタル教科書が紙を電子化することに力を入れているのに対し、スマート教育は家庭学習も含め教育の格差をなくし、コストを削減することに重点を置いています。
 これをソウルで進める教育庁のLee Hu-Seoung部長とKim Yough Ilさんに現状を伺いました。

2015年を目途にタブレット+クラウドの環境を整備すべく教師たちに準備をさせている。ただ、紙をなくすのか、使い続けるのかについて国は未決定。毎年、教育課程は変更され、教科書も自由化される中で対応は揺れており大変だ。」
 国=KERISとの役割分担は?
KERISは今デジタル教科書を作っているが、方向性を持っているわけではない。今後、デジタル教科書を官民どちらが主導するのか。2案ある。紙の教科書を出版社が印刷しているように、デジタルも民間出版社が作る。あるいはKERISが共通部分を作る。この点、政府はグラついている。ハッキリしてもらいたい。」
 ここは主導権争いのニオイがしますね。

「いずれにしろ、コンテンツのデータベースが重要になる。各出版社のコンテンツのメタデータを持ち寄り、お互いの共通・必要部分をつなぐ。国がデータベース制作を支援し、民間のプラットフォームとする。この点、日本の動きはどうか?」
 日本ではNICERがメタデータのデータベースを試行したんですが、コンテンツメーカが協力的でなかった等の理由で失敗しました。
Googleのような教科書ポータルが必要だと考える。」
 ソウル市の部局ですが、国を代表する意気込みの前のめり感が漂います。

「全国で120人のスマート教育先導教師を指名し、研修を受けさせて推進している。年配の先生ほど研修を楽しみにしている。ソウル市としては、今は先生の研修が最優先。ハードの購入は最後でよいと考えている。
 先生たちは年に60時間の各種研修を受け、それを10年続けないと教頭になれないという強いインセンティブを敷いている。」
 これもショック。ハードの整備の前に、先生のスキルというソフトの整備。そして先生に対するインセンティブ。

「ただ、その前に、先生の9割がスマホを使いこなしているという実態が重要だ。2014年になれば、生徒もみんなタブレットを持っているのではないか。
 OECDで韓国がIT読解力1位を獲得したのは、必ずしも教育のおかげというわけではない。社会全体の利用度が高いからだ。メトロに乗ればみんながスマホを使っていることに気づくだろう。」
 これもKERISの方が話していたことと符合します。韓国では端末を持っているのが「当たり前」のことで、それを前提にデジタル教育を組み立てているということです。つまり、社会としての情報化のベースがあり、教育というアプリやコンテンツをどう乗せるのかという考え方なのですね。
 日本はまずは端末を整備させるところから検討しているため、政策に要する荷重やコストが大きい。それが韓国に比べ重い壁となっている気がしました。

2012年9月6日木曜日

揺れるKERIS

■揺れるKERIS
 KERIS Korea Education and Research Information Service、韓国教育学術情報院)は、教育情報化を推進する韓国の政府機関。1999年設立以来、全国規模で教育・研究情報の開発、管理、提供を行ってきました。

 その本部、KERISビルを訪問。Ahn Seong HunさんとCho Kyu Bokさんの案内で、近未来の教室モデル「U-class」を拝見しました。
 教卓がなく、白と緑の配色はリラックスできる雰囲気を醸成し、曲線でできたレイアウトは安全性を高める工夫です。壁に据えられた酸素発生器は集中力を高めるためのものだそうです。
 教室には4台のプロジェクタと3台のディスプレイ。生徒たちはGalaxyタブレットを持ちます。床に投影するインタラクティブなディスプレイでサッカーしたり、3D顕微鏡を使ったり、ARで人体の仕組みを学んだりもしています。

 問題は教材。韓国では国算社理英の5教科のデジタル教科書が作られていて、KERISが開発するものもあれば、出版社も作っていて、学校が選ぶんだそうです。
 KERISは国算社理の国定教科書をデジタル化していて、1科目あたり2〜4億ウォンの開発費がかかるとのこと。
 デジタル教科書の対象は3年生〜中1。小学1〜2年生の利用には要望が低かったので、予算制約の問題で優先度を落としたそうです。
 ただ、今後は制作を民間出版社に任せ、KERISはその検定と配信の役割となるとのこと。出版社から流通費をもらう計画だといいます。例えば、教科書からネットに張られるリンクがどこまで許されるかの基準を作っているそうです。
 課題は著作権。著作権処理の問題は権利者が納得しておらず未解決とのことです。日本でも紙の教科書とデジタルの扱いが異なるため、デジタル化に弾みがつかないのですが、韓国にも同じ悩みがあるそうです。

 さて、今回それよりも注目したのは、端末のことです。韓国ではデジタル教科書は国が保障しますが、端末は生徒/家庭が用意すると聞きます。日本では一人一台と唱いながら、端末の負担をどうするかは未だ議論となっていません。それをどうとらえるか。
 これには以下のような回答でした。
「端末は自分で用意する。いずれは国が買って配ることになるだろうと思うが、当面は自前となる。既に学生の4割がスマホを持っている。タブレットはまだだが、いずれ広がる。逆に、いつまでに何台かという目標を立ててはいない。
 2014年に全小学校でデジタル教科書をスタートさせる。ただし、一人一台ということではなく、子どもたちの端末配備は間に合わない。電子黒板だけになる学校もあろう。
 一人一台の情報端末で、全授業でいつでもではない。デジタル教科書が「選択できる」よう整えるという考え方だ。一週間使わなくてもいい。使いたいときに使えるようにしておく、ということ。」

 なるほど、一人一台×デジタル教科書という日本が抱くイメージとは異なるということです。まず教科書の整備ありきで、利用シーンはバラバラなんですね。ネットワークは?
「無線LANも間に合うかどうかは不明。無線LANなどのネットワークは来年から整備となり、国が大半を支援する。クラウド・コンピューティング環境も政府は整える予定。KERISが運用することになる。
 スマート教育の予算は2012年は332億ウォン。うちデジタル教科書は12億ウォン。その中で整備していく。
 みんなタブレットを買え、ということではない。紙だけ、タブレット・PC利用、どちらもOKだ。ただし、いずれはデジタル教科書のみになるのではないか。」

 韓国の動きがことさら速く見えるのは、端末×教科書×ネットワークの一体整備を目指す日本と同様の展開を韓国が早いスケジュールで達成するように見えていたからかもしれません。
201415年に達成するのは「速い」と見られているかもしれないが、Edunetやサイバー家庭学習などで先生も生徒もデジタル教育には慣れているから、抵抗が少ないという実態もある。
 PCかパッドかも未だ決めていない。というよりデバイスの種類を問わず、アプリやコンテンツが使えるようにする。
 このため、「標準化」が重要となる。2015年には、全てのアプリやコンテンツがあらゆる端末で利用できるようにしたい。」
 なるほど、このようにコンテンツとクラウドの利用が先に走り、デバイスフリーという考え方や、そのためのポイントが標準化だとする視点は、やはり韓国は先に行っていると思わざるを得ません。

 これまでのPC・ネットベースの対応から、マルチデバイス×クラウドに情報環境が大きくシフトする中で、KERISの役割も変わりつつあり、自身、進路を迷っているようにも見えました。担当者は「日本には、韓国の動きをみて大げさにとらえないでもらいたい。」と謙虚に話していましたが、そうは言っても韓国には先に進んでもらい、いろいろと課題解決のヒントを教えてくれるとありがたいなぁと感じた次第です。

2012年9月5日水曜日

御用学者って呼びました?


御用学者って呼びました?
中村伊知哉は御用学者である。IT業界に近すぎる。けしからん。
そういう批判を見かけます。ある有名サイトでもそうした論調を拝読しました。
 やったぜ! チャンスだと思いました。だって、その意見、バカなんだもん。真っ向から潰し、世間の認識誤りを改めてみたい。だから、できるだけ炎上してもらいたかった。ところがコレが全く盛り上がらない。つまんない。
 なのでここでサクっと御用+業界けしからん論に反論しておきます。(なお同時に、中村は学術論文を一つも書いていないという批判もあったのですが、確かにそこに力は入れていないものの、単なるウソなので、それは省略。)

 まず、御用について。
 御用学者ってのは通常、政府や政権の意を受けて、その都合のいいように太鼓持ちをする輩のことを指すのでしょう。ところが、ぼくはけっこう政府の逆張りなのです。ヲチしてる人はご存じのとおり。
 民主党政権が掲げた日本版FCC設立に真っ向から反対し、話が潰れるまで論陣を張りました。電波政策に対しても開放路線を主張、電波特区も推進しました。自民党政権時代には国内産業重視で総花的なコンテンツ政策に反論、デジタル+ポップカルチャー+海外重視路線に転換すべく動き、民主党政権で実現。通信・放送融合法制も政府の意向を突き抜ける案でニラまれました。教育情報化は今も改革急先鋒で政府から目をつけられています。
 要は困ったひとなのですが、なのに二桁の政府委員を務めているので御用に見られるのかもしれません。それは単に政権側の人材不足の結果です。
 御用学者のレッテルを貼りたがる人は守旧派の回し者でしょう。
 もちろん政府の正しい政策には乗ります。コンテンツ海外展開策の推進やデジタルサイネージの技術開発など。最近では情報公開と民間利用を進めるオープンデータ構想には積極的に協力しています。

 国会議員や官僚などに特定の政策を実現すべく働きかける手段をロビイングと呼ぶのですが、この動きに対する批判も聞きます。確かにぼくはこの1〜2年、ロビイングに動いています。密室政治っぽいからよくないと見られるんでしょうね。
 ぼくも自民党政権下ではロビイング反対でした。資本力と人材が豊富な強いセクターが政策を左右するためです。政治と官僚と一部の大企業とが密室で政策決定しているように映りました。だから、民間フォーラムやパネル討議を開催してアピールしたり、民間研究会を編成して情報発信したりする手段をよく用いました。
 しかし、民主党政権となって半年ほど経ってから、ぼくは手段を変えました。民意を汲んで政策を作るという姿勢はよかったものの、熟議を重んじるが決議しないからです。「万機公論ナレドモ決セズ」。これでは逆に停滞する。すべき政策が明らかならば、直接、決定権者を説得するほうがいい。もちろん、オープンな議論は大事です。それを捨ててはいけない。でも、決定を他者任せにしていてもいけない。脱原発デモを見ていても感じます。デモるパワーがあるなら、そこにコストをかけるなら、ロビイングせよと。
 ぼくの場合、ロビイングしつつも、それをぜ〜んぶツイートしたりしてるんで、動きはオープン。だからかえって目につくんでしょうね。
 日本最大最強のロビイング機関は霞ヶ関です。毎日、数百人もの官僚が永田町を歩き回っています。学者はロビイングするなと唱える人は、霞ヶ関の回し者でしょう。

 もう一つ、IT業界に近いという批判。これは全く愚かな批判です。日本は産学連携が弱すぎる。特にIT分野はそこが大きな課題です。基礎研究分野ならまだしも、ITのソフトや政策のようなレイヤで、学は産の役に立てずにどうする。MITもスタンフォードもハーバードも、大学がプラットフォームになり、技術もビジネスモデルも開発しています。GoogleFacebookも学生が、大学が生んだじゃないですか。日本の大学はこの分野で何か生みましたか?
 さらに日本は、産と官が遠いのも問題です。90年代半ばの大蔵省不祥事を受けて導入された公務員倫理法以降、特に官僚と産業界とのパイプが詰まり、霞ヶ関が情報不足に陥って的確な戦略が打てない。公務員倫理法はアメリカの陰謀ではないか!? そのパイプを開く役割を学が担うこともあっていいでしょう。アメリカの大学も結構そういう役割を果たしているんです。
 IT業界に近いというのは、ぼくには勲章。でも、モトローラの役員を務めるMITネグロポンテや、ニューヨークタイムスの役員に就いたMIT伊藤壌一や、Googleの役員を務めるスタンフォード大ヘネシー学長などを見ていると、まだ遠いんじゃないかと思います。
 業界に近いと批判する人は外国の回し者でしょう。

 加えて、慶應義塾大学にそういう人材が集中しているのがいかんという批判も。これは当たってるね。IT分野で政府や産業界と近い距離で動いている点で慶應が目立っていることは事実。だからといって、それを分散させるのはどうか。そうではなくて、東大でも京大でも早稲田でも東工大でも関関同立でも、日本でも東洋でも亜細亜でもいいので、他に高い山ができればいい。山脈になればもっといい。
 日本の大学は分散を考えてる場合じゃない。国際競争の中で負け組にならないように、筋肉を増強しなきゃいけない。それはアメリカの大学だって同じこと。うかうかしてるとオックスブリッジや精華・北京が忍び寄る。
 だいたいぼくは国内でのパワー分散を唱える意見に与しません。東京一極集中是正にも現役官僚ながら反対していました。NYロンパリ、北京上海、ソウルにシンガポール。東京を弱めてる場合かよ。ぐずぐずするうち、案の定、日本は沈んでいきました。
 脱官僚だってそうです。官が強すぎるから倫理法なんかで縛って平衡を保つ。違う。国内的に強いセクターを弱めたら国際的に沈むだけ。そうじゃなくて、官僚=行政に比べ弱い立法と司法を強めることです。政治と裁判機能を強化すべきです。
 慶應集中を批判する人は○○の回し者でしょう。(←テキトーな言葉を埋めてください。)

 結論。まだまだです。こんな反論に時間使ってるようじゃいけませんね。ここから早く抜け出して、次に進みたいものです。