■ 第一回デジタルえほんアワード
電子書籍という新しい出版のカタチが誕生して以来、日本でも独自性のあるすぐれた電子書籍が作り上げられています。多くの人にとって、初めて手にする書籍である「絵本」も例外ではありません。子どもたちに夢を与え、想像力を喚起し、現実の世界をより豊かにさせる「絵本」は、デジタルでもさらに子どもたちを魅了するコンテンツとなるでしょう。
そこで企画されたデジタルえほんアワード。主催のデジタルえほん社は2011年に設立された新会社で、ぼくも取締役として参加しています。ここではタブレット、電子書籍リーダー、電子黒板・サイネージ、スマートフォン等テレビやパソコン以外の新しい端末を含む子ども向けデジタル表現を総称して「デジタルえほん」としています。
アワードは2部門。企画部門と作品部門。企画部門のグランプリは賞金100万円orデジタルえほん化。豪華です。
審査員は、いしかわ こうじ(絵本作家)、伊藤穰一(MITメディアラボ所長)、角川歴彦(角川グループホールディングス取締役会長)、香山リカ(精神科医・立教大学教授)、小林登(東京大学名誉教授・国立小児病院名誉院長)、杉山知之(デジタルハリウッド大学学長)、水口哲也(クリエイター・プロデューサー)、茂木健一郎(脳科学者)。こちらも豪華でしょ。
約200件の作品応募。ありがとうございました。
選考結果は2月のワークショップコレクションの場で発表・授賞式がありました。
作品部門 グランプリ:tocco「ちょんちょんちょん」
特別賞:ラジオえほんプロジェクト「とんでけおふとん」 準グランプリ:チームこえのわ「こえのわ」
企画部門 グランプリ:西野つぐみ「アカリ・トモス・ユビサキ」
特別賞:チームわれら「ホニャかわ!!」 準グランプリ:滝原宏野「ねこみっけ」
企画部門準グランプリ「ねこみっけ」は制作が進み、3月21日にiPadアプリとして配信されるなど、既に成果も出てきていますので、これら作品も順次紹介していきます。
その表彰式、茂木健一郎さん、香山リカさん、水口哲也さんは映像で参加。
いしかわ「デジタルえほんは、紙のよさとデジタルのよさを併せ持つ。その両面を評価したい。」
角川「iPad登場から2年でこんな作品が現れるとは驚き。
これまでは絵本の中の人物・キャラが主役だったが、これからは遊ぶ人が主役になる。」
小林「遊ぶ+学ぶ、という二つの力がデジタルえほんにはある。
感性と理性を刺激し、教科書にも発展していく。
チャイルド・ケア・デザインが重要となる。」
杉山「絵本はクリエイターの想いを伝えやすいメディア。
それがデジタルでエンパワーされる。無限の可能性を秘める。
ワークショップコレクションに来る子どもたちはデジタル教科書を使っていく世代。
クリエイターには大いなる挑戦のチャンスが広がっている。」
角川「絵本のデジタル化というより、デジタルえほんの制作という考え方になる。
デジタルえほんは電子書籍の基本となるだろう。
小学生のランドセルがなくなって、iPad一枚になる。
これはさまざまな重荷からの解放だ。」
いしかわ「絵本は世代を超えて楽しめるモノ。
デジタルでもそういうものを作っていきたい。
0〜100歳まで一緒に遊べる、それが魅力。
杉山「大手企業だけでなく、個人がアパート一室からでも創出できる。
多言語で世界に配信できる。
フォーマットもない。だから実験的なものができる。
それが教科書にも広がる。面白い。」
各界を代表するかたがたのコメントは実に刺激的で、未来を展望させます。しかも絵本の分野は日本が強い競争力を持っています。それがデジタル技術でさらにパワーアップ。文化面でも産業面でも、期待がふくらみます。