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2011年9月29日木曜日

新・日本型サイネージ


■Net  新・日本型サイネージ

 「日本型サイネージを作ろう」。「デジタルサイネージ革命」(朝日新聞)や「デジタルサイネージ戦略」(ASCII)でも書きましたし、このブログでも再三触れていますが、日本のデジタルサイネージは世界に先行する進化をとげています。そのデザインとビジネスモデルを作り上げ、海外に出て行きたい。ケータイが「ガラパゴス」に陥った轍を踏まず、はじめから世界を見据えて広がっていくことを期待します。
 では、日本型にはどんなものがあるでしょうか。自販機やケータイを駆使したサイネージはもうあたりまえ。JRの自販機が全面サイネージであるのも、ローソン「東京メディア」やファミマ「SSE」がケータイにフェリカタッチさせているのも、そりゃそうだよね、と思わせます。日本では。アメリカ発のコンビニのシステムをとことんまで練り上げて今やアメリカの経営を主導する日本のコンビニには、日本風のサイネージが似合います。
  ブログから・・・
   日本型サイネージを作ろう-1
    http://ichiyanakamura.blogspot.com/2009/11/1_16.html
   自販機サイネージ
    http://ichiyanakamura.blogspot.com/2010/11/blog-post_21.html
 
 先日紹介した湯島天神と東京大神宮のサイネージってえのも日本的ですね、そもそも神社ですし。ディスプレイの筐体が神社っぽい東屋風で、ついてる屋根が「銅葺き」ですぜ。職人的にこだわって作り込んでしまう愛情。日本的です。「こだわり」と「ものづくり」が生きています。
 そのコンテンツも、(平時には)式年遷宮のPRとか、四季の祭事だとか、皇室ニュースだとか、いかにもニッポン。東京大神宮のビジョンは「しくみデザイン」の双方向ARソフトを使って、参拝者が画面に手を振ったり動いたりすると自分の動きに合わせて桜の花びらがまったり、お守りが降ってきたりする「遊べるビジョン」。
 そう、コンソーシアムが断行したアキハバラ初音ミク献血実験だとか、大阪・道頓堀で通行人がイノキに変身させられてしまう阪神競馬のCMサイネージとか、海外でやったら苦情が来そうなイカれたポップを神社でやってしまっているのです。
 神社とサイネージという、太古と21世紀をつなぐには、日本社会が長く培ってきた「ものづくり力」=技術力と、「ポップなコンテンツ」=文化力のドッキングが威力を発揮。これから世界に打って出るには、この「ハード」と「ソフト」を合体した力が必要です。その両方を持っているのが日本の強みなのです。
   アキハバラ初音ミク日本赤十字デジタルサイネージ実験
     http://ichiyanakamura.blogspot.com/2010/01/blog-post_10.html
   サイネージ都市トーキョー:浅草
     http://ichiyanakamura.blogspot.com/2010/08/blog-post_03.html
   大阪サイネージ
     http://ichiyanakamura.blogspot.com/2010/12/blog-post_11.html
   すすきの無料案内所
     http://ichiyanakamura.blogspot.com/2010/12/blog-post_21.html

 ほかにも日本的なサイネージはたくさんあります。カラオケ、パチンコ、ゲーセン、これまでぼくはいろいろとクローズアップしてきました。
   カラオケ・サイネージ
     http://ichiyanakamura.blogspot.com/2010/11/blog-post_23.html
   パチンコ・サイネージ
     http://ichiyanakamura.blogspot.com/2010/12/blog-post.html
   ジョイポリス・サイネージ

 外人に「日本の面白い商品は?」と聞くと「ウォシュレット」という答えがよく返ってきます。ならば、トイレサイネージってのはあり得るのではないか? 羽田空港の女便所に導入されているようなサイネージといふものを、男もしてみむとてするなり。そこでいつものピョコタン画伯に冒頭の絵を描いていただきました。
 すると、セガがやってくれました。「トイレッツ」。おしっこでゲームができる!おもしろ電子POP!。「溜めろ!小便小僧!」おしっこの量を量ります。「落書き早消し!何秒で消せるかな?」おしっこで落書きを消そう!「ぶっかけバトル!鼻から牛乳」前におしっこした人と対戦!
      http://toylets.sega.jp/index.shtml

 くだらねーっ!
 ぼくがアキハバラのゲーセンで試した溜めろ!小便小僧!では、「あなたの量は203mlと出ました」という結果。もっと溜めておくべきでした。
 いや、ぼくが言いたいのはそれじゃない。面白くクダラナイことを考えるのはぼくでもできるのですが、それをホンマにやってまう、というのが日本のポップなんですよね。システム作って、コンテンツ用意して、実際に便所に設置して実用に供するんですよ?経営会議でどんな議論を経て資金を投入してチームを作ってスケジュール管理して実現に至ったんですかね?こういう魂があれば大丈夫。かつて世界市場を凌駕した日本ゲーム界のDNAがサイネージでも何かやっちゃってくれると思うのです。
 結論。
 ものづくり力+コンテンツ力、そして「ホンマにやってまう力」、つまり「鉄の意志」をかけあわせたところ、3つの光が交わる点に、日本型サイネージの明るい未来が展望できます。

2011年9月26日月曜日

IT復興円卓会議ニコ生「行政」-3/4


■Net  IT復興円卓会議ニコ生「行政」-3/4

IT復興円卓会議ニコ生 第一回「行政」、総務省 谷脇さん/内閣府瀬戸さん/経産省 境さん/佐々木俊尚さん/池田信夫さん/中村伊知哉の続きです。
http://bit.ly/q31dy2
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中村;では、政治問題を離れ、IT復興のことについて話しましょう。今回、どういうメディアが役に立ったのか、立たなかったのか。

境さん;新聞はだめだった。タイムラグがあるから。ソーシャルは使える人・使えない人の差があったのは事実。使える人が一人いて。その人からの口コミで伝わることもあったので良かったのではないか。また、ボランティアスタッフでITを使うスタッフが要ることがあるのだが、そんなことしている場合ではない、という雰囲気になって、結局がれき除去に回るという話をよく聞く。情報を入力することが重要なんだということをみんなで意識すべきだと思う。

中村;前回、三田での会議でウェザーニュースの石橋さんが、「今回の最大の被害は津波だ。しかし津波は情報がちゃんと伝われば逃げることができたはずだ。情報が最も重要。その情報の伝え方についてまだ議論されていない」と言っていたのが印象に残っている。

谷脇さん;今回の震災では携帯がつながらなかった。また、通信というものはそもそも電気がないと意味がないことがよくわかった。蓄電池などとの一体的な配備など、災害に強い通信ネットワークが必要。また、今回はラジオの重要性が広く認識された。総務省も1万台のラジオを被災地に送ったが、メーカも同様に3万台を送った。また、災害FM局が多数立ち上がったが、被災された方が自分でラジオ局を作って情報を発信し、同じコミュニティの方が聴くということで地域の絆を実感したというような事例もあった。今回の災害FM局を立ち上げる際には手続きを省略し、口頭で開局を認めるようにした。しかし、今後こうしたコミュニティの放送局を維持していくうえでは資金面の問題もあると聞いている。

境さん;単一電池がなくなる事件があった。電池でパニックになるくらい電気は大事だ。

佐々木さん;一個のメディアが良いと言っちゃうとそれに集中するので良くない。今回はツイッターが役に立ったと話があるが、人口に比べとスマホやツイッター人口が少ないだけの話。

中村;阪神の時の携帯と同じですね。

佐々木さん;ソーシャルか、マスメディアか、口コミか、チャンネル分けるのではなく、情報の分析などにインターネットは強い、東京で分析やフィルタリングして現地に伝えなければいけない。ありとあらゆる方法で情報を伝え続けなければならない。多重に情報を伝える方法を確保し、東京できちんと情報を分析しなければいけない。

中村;90年代にマルチメディアという言葉が流行ったが、それの逆。マルチメディアはテレビや電話やコンピュータを1台に集約しようとしたのだが、さまざまなマルチ「な」メディアを装備しようということか。

池田さん;NHKをユーストした広島の中学生の話。未だにメディアの人間は放送と通信と縦割りで考えている。視聴者の方がメディアより進んでいる。radikoもエリア制限をかけているとツイッターで言われたので、文化放送の人に直接言った。マスコミの人たちのメディアの縦割り意識がある。

中村;しばらくネット放送しても、今は元のポジションに戻っている。ユーストは日本のテレビを配信した影響で世界のユーザーが2倍になったという。あの広島の中学生はどうしてるんだろう。表彰したい。さて、前回の会議では、基盤整備として、1)強靭で高速なネットワークの構築、2)新国土形成への貢献—スマートグリットやコンパクトシティ等を考えていくべきでないか、との指摘があった。今後何が求められるか。

谷脇さん;災害に強いネットワークを作るには、佐々木さんのおっしゃったように、レイヤーの違うメディアは重要。防災無線でも窓が閉まってたりして聞こえないこともある。警察の無線と消防の無線が連動できてないのも問題。横連携が重要。学校の体育館等避難施設になりそうなところにWi-Fiを設置しておく。平時から使える様にしておくことが重要。

中村;学校など公共施設のIT化が重要になる。

谷脇さん;災害時に使うネットワークは平常時から使っているものでないと、なかなか役に立たない面がある。例えばホワイトスペースなどを活用して、平時は観光案内などを流し、災害が起こったら地方公共団体が災害情報や物資関連の情報を流すという仕組みも、考えられる重要な検討課題ではないか。

中村;今回はデジタルサイネージがあらかじめ協定を結んでいるところは地震後NHKのニュースに切り替えたりした。さて、今回、インターネットは機能を発揮したが、今後はどうなのか。国民全員が映像通信をするようになっても耐えられるのか。

谷脇さん;今回の災害においてIP電話は繋がっていた。メールなども機能しており、インターネットの強さを実感した。ただし、トラフィックが混み合った時にどうするかという輻輳時の問題は検討が必要。またネットの心臓部分のIXが東京や大阪に集中しているので、首都直下型などを想定した場合、インターネットもつながらなくなることが懸念される。分散化が必要。

瀬戸さん;衛星が活躍したが繋がらない場面もあった。大きな機材だと繋がることもある様なので、そういうものを用意すべき。

中村;ネットワークをどうするかの研究開発が必要では?

境さん;ツイッター等の海外のサービスは日本に無いことが逆に良かった。

池田さん;緊急警報放送は災害が起きたら電源が強制的に立ち上がって入るようになってるが、今回みたいに電源が落ちたらなんともならない。そういう仕組みはテレビだけだが、ツイッター等も含めてメディア横断的に警報を出すのあどう?

谷脇さん;すごく重要だと思う。

境さん;放送から情報が入って、トリガーになると、すごく使い勝手が良くなるはず。

佐々木さん;インターネットの仕組みで弱いのはプッシュ。プルしにいかなきゃならないから。放送とネット連動のシステムを作る必要がある。

池田さん;すべてのインターネット画面に危険って出すとかね。

中村;放送の電波にIPプロトコルのせるとかも考えなくては。

佐々木さん;実は原始的でも良いんじゃないか。アフリカなどに携帯が普及していて、ビジネスが変わる。基地局はあるけど、電気が来てないということも多い。その場合週末に充電済みのバッテリーを配って、使い終わったバッテリーを回収するということもしている。ロバにルーターみたいなのをのせて、村でメールをためて、町に戻って発信するということもしていた。いろんな方法を使えば何とでもなる。

(つづく)

2011年9月22日木曜日

つながるサイネージ


■Net  つながるサイネージ
  「役立つ」サイネージと並ぶサイネージ進化の方向性が「つながる」。
 特にブロードバンド大国、ケータイネット王国の日本では、つながったサイネージが威力を発揮しています。
 アメリカのサイネージも面的につながっているものが多いですが、典型例はウォルマート店舗のようにディスプレイを衛星で片方向に配信するタイプ。中国のサイネージは当面、人手でコンテンツを持ち運ぶタイプだそうです。「電子看板」なのです。
 高速ネットでコンテンツ配信を自在にコントロールしたり、サイネージとケータイを連動させてインタラクティブにコンテンツを出し入れしたり個人情報を結びつけたりするのは、日本が先行してます。それがここにきて一層、拍車がかかってきた模様。日本は電子看板の域を抜け、ネットワークメディアに成長しています。

 代表が通信各社が競って提供しているタブレット端末+ブロードバンドの商品。NTTグループの「ひかりサイネージ」Liteシリーズは、タブレット端末、デジタルフォトフレームやSTB内蔵の液晶ディスプレイなど汎用機器を使ったパッケージ商品。
 ニュース、天気、占いの3セットがプリセットされるほか、ランキング、レシピ、エンタメ、音楽、金融情報などいろんなジャンルのコンテンツが手に入ります。ケータイからコンテンツ登録やテロップ変更が簡単にできるようにもなっています。
 小さな商店でも、あるいは家庭でも、テレビ、PC、ケータイに次ぐ第4のメディアとして居場所を見つけています。ハイエンド、ミドルエンド、そしていよいよ一般オフィスや商店、家庭といったところにもネットワーク・サイネージが普及する。ブロードバンドが整備されている日本ならではのモデルです。通信会社がこうして普及版サイネージ商品を提供するのもまだ日本だけだそうで。

 六本木ヒルズ、東京ミッドタウン、赤坂サカスのように、都心のカルチェをネットワーク・サイネージで面的に敷き詰めたものも多い。前回紹介したMarunouchi Visionもネットワークメディアのモデルですね。Marunouchi VisionIPマルチキャストを用いたハイビジョン映像ネットワークとしては世界初。それも2002年にはオープンしていましたから、かなり早くからネットワーク性に注目していたわけです。
 こうしたネットワークメディアを押し上げる決め手がコンテンツ。町じゅうのネットワーク・サイネージに向け、大量のコンテンツをいかに確保していくか。それは、日本のポップなコンテンツ生産力を投入することです。つまり、誰もがコンテンツを作って配信できる環境を整えることです。
 そのためのツールも出そろってきましたよ。オリムパスビジネスクリエイツの「サイネージクリエイーター」は、写真、イラスト、動画など7万点の無料素材が使え、パワーポイントやフォトムービーなどのテンプレートも170種用意。スケジューリングソフトを使ってかんたんに配信時間を管理できるものです。
 シャープシステムプロダクトの商品パッケージも、業種別のサンプルを使ってパワーポイントで制作。会議室の案内や宴席案内などの表組みコンテンツを作る場合には、エクセルで作成したスケジュールデータを入れ込めばサイネージ表示ができるというもの。
 富士フイルムイメージテックはツイッターや電子メールで送信されたつぶやきやメッセージをリアルタイム表示する「ソーシャルメディアサイネージサービス」に取り組んでいます。つぶやきやメッセージを映像効果とともにサイネージ上に表示。商業施設やイベント会場などでの情報提供・販促ツールとして使われているのですが、モバイル端末からのアップロードとサイネージへのダウンロードというネットワーク機能をふんだんに使った事例です。

 まだ世界のサイネージは「ディスプレイを見せる」サイネージ展開が主導ですが、日本は「ネットワーク」と「コンテンツ」の整備・発達にコマを進めているわけです。
 しっかり「つながって」いきまっしょい。

2011年9月19日月曜日

IT復興円卓会議ニコ生「行政」-2/4


■Net  IT復興円卓会議ニコ生「行政」-2/4

IT復興円卓会議ニコ生 第一回「行政」、総務省 谷脇さん/内閣府瀬戸さん/経産省 境さん/佐々木俊尚さん/池田信夫さん/中村伊知哉の続きです。
http://bit.ly/q31dy2
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中村:政治・行政の論点を、情報公開/意思決定/政治主導の3つに分けて話してみよう。まず情報公開。
情報公開という観点で、今回の震災はどうか?

佐々木さん:東電に行政がどこまで入れるのか。民は隠したがる。行政がどこまでオープン化を求められるか?情報公開の基盤みたいなものを、行政が作る必要があることが認識された。インフラを担う会社には適用できるようにしなければ。政府も情報を開示しなければならない。政府2.0とは基本的にはデータベースの公開。公開することによって民間の業者が勝手にアプリ化したりできる。

池田さん:情報公開が今回悪かったのかというと、あれだけ混乱した中できちんと情報は出るもんじゃない。ねつ造、隠蔽と指弾する方が混乱のもと。メディアは冷静だったのでは?原発は正義の味方的な思い込みで行動するジャーナリストが出やすいから問題。初めてメルトダウンという言葉を知ったくらいの素朴な人がパニックになって、自称ジャーナリストの人たちが混乱を招く情報を発信した。

中村:メディアやジャーナリズムよりも情報リテラシーの問題だと?

池田さん:結局、記者クラブより良質な情報は出て来ないし、混乱を招く情報が出てきた。ソーシャルメディアの悪い部分が出たのではないか。

谷脇さん:オライリーが提唱する「ガバメント・アズ・プラットフォーム」という考え方を踏まえ、官民及び民民も含めて情報を連携・共有していくためのプラットフォームが必要であり、プラットフォーム構築に政府としても積極的に関与していく必要がある。政府が保有する情報をホームページに乗せるとしても、それはデットストックの情報となる。もっとリアルタイムベースの情報を政府が提供し、民間情報とマッシュアップして状況の把握を進めるような取り組みが必要。今回、カーナビの通行情報をうまく使ってどの道が通れるかをGoogleMapに表示する試みが、HONDAやパイオニアを中心に、トヨタや日産、グーグルが連携してできたが、これは非常に役立った。こうした情報のマッシュアップを平時から考えるべき。計画停電は東電ホームページでご覧下さいと会見でいい、サーバーがアクセス集中で見られなくなった。手順の明確化が出来ていなかったから混乱した面がある。官民がオープンに情報を連携・活用するという視点も重要。

境さん:誰かが主導権を握って一気通貫でやるのではなく、情報を持っている人がオープンにして、その間を埋めていく作業する人がいて、と連携していく状態が望ましい。少し時間がかかるかもしれないけれど。今回は政府としても東電にお願いしたわけだが、そこから東電とヤフーは連携して、速く動いた。

佐々木さん:そういう動きの速さは見習わなければならない。日本の企業は動きが遅い。

境さん:PDFになぜ行政や企業がこだわるのかという点で、一つわかったことは、PDFは改ざんされないという思い込みがあること。リテラシーを高めなければ。

中村:古賀さんのことはどう?情報公開しすぎでは?

境さん:経験を語る人だと思う。

池田さん:古賀さんは世間の人が思っているほど突っ張ってないが、政治家など後ろにいる応援団が盛り上がって、降りられない。省内は応援する動きはあまりないかも…公務員が役所について批判することについてガイドラインはない。しかし、古賀さんは初めて批判した。公務員が個人として情報を発信することにどこまでが限度なのか?今までは信頼関係があったからなにもガイドラインは無い。ルールって必要ないのかな?

佐々木さん:民主党は政治主導と言いながら、政治家に専門性がないから決められるわけがない。官僚は使わないと言ったので、外から連れてくると、その人も専門家じゃなかったりと蛇行中。誰が政策を決めるのかというプロセスがなくなった。そこに出てきたのが古賀さん。

池田さん:古賀さんは名前を出しているが、匿名で批判している人はいっぱいいる。

中村:次に、意思決定の問題。復興に関する組織や団体がたくさん出来ているが、そうなると横断的に意思疎通が図れないのでは?

瀬戸さん:5月の頭に3つに整理した。生活支援、復興、原発。政治が仕切っている。役所は連携している。縦割りの喧嘩もない。

中村:早さという面ではどうだろうか。基本法案に3ヶ月かかった。阪神は一ヶ月で実行した。何が違う?

池田さん:役所に丸投げすれば良かった。阪神の時は自民党と役所の関係が安定していた。

中村:先日も亀井静香さんが「政治が死んでるんだから官僚が震災対策をやれ」と言っていたが・・。

池田さん:5年10年どうするか、電力政策の判断は政治がするべきだが、目の前のことまで口を出すと混乱する。民主党の人は霞ヶ関をライバルと思っているが、能力が無いのにそうするからますます混乱する。

佐々木さん:政治が思いつきにしか見えない。政策に落とし込んでいくプロセスが見えない。復興構想会議は哲学的で意味が無い。全体の構想に落として、政策にしていくべきなのに出来ていない。

中村:そういう面から菅さんってどうですか?

佐々木さん:根回しができてないとかではなく、有限実行すればいいだけの話、ただ実現する能力が無い。

池田さん:菅さんは政権内で完全に孤立していることが問題。変わった性格で、世間体が悪いとかあまり考えない人。

中村;政治主導、ってのはどうなんだろう。政治との連携はかつてと比べて上手くいっているの?

谷脇さん:一般論でいうと、政治はビジョンを示す、大きな方向性を示すことが大事。ステレオタイプに政治と行政に分けずに、民間も視野に。IT復興の話ではなく、政局の話になっている。被災地の話なのか、電力不足など全国的な話なのか、短期の話か、長期の話か、こんがらがってしまっていることが多い。意思決定、国や県が復興計画を作らなくてはならない。ネットでコラボして計画を作る等そういった動きが出来ると良いのでは?

瀬戸さん:ソーシャルが成熟していないからかもだが、1人の発言が大きくなったりすることもあった。テレビで一つの避難所をとりあげると余るほど物資が届くなどの問題が起こる。避難所にどの物資が足りないのか余っているのか共有するサービスがあればよかったのでは?

境さん:現地でハイテクを駆使するというのは今ひとつ現実感がない。ローテクをハイテクと組み合わせた時に爆発的に広がるのではと思う。リテラシーの問題だ。

中村;視聴者から届いた質問。「民主党政権でちゃんと仕事ができているのか」

瀬戸さん:被災者支援についてはやらなきゃ行けないことが決まっているのでやっている。

境さん:ぼく個人は、あまり変わらない。政局は混乱しているが、仕事は淡々としている。予算の提出がずれるなどリズムの乱れはあるが、淡々と仕事をしている。

中村:次の質問。「生で現地を見てきましたか?復興は可能ですか?」

谷脇さん:がれきの撤去等まだまだ初期段階の復興が遅れている部分があるが、現地のニーズもどんどん変わっていくので、それに応えて柔軟で迅速に対応していくことが必要。

境さん:復旧は無理だと思うが、復興して、前と違うものになるかも知れないが、人が住める環境になると思う。

谷脇さん:仙台市の復興計画を拝見したが、ゾーニングをして沿岸部は居住区域にしないなど、震災前と違ったまち作りになる地域もある。旧に復するわけではない。それぞれの地域の地方自治体でさまざまな復興計画が出てくるだろうが、これを尊重しながら積極的に国は支援すべき。

佐々木さん:東北は高齢者が多くIT化が進んでいないのが長い間の課題。震災後の0からスタートの復興計画にITをもっと組み込んでいく計画はあるのか?

谷脇さん:自治体の持っていたイントラネットも損壊したので、こうしたインフラの復旧はもとより、今回の震災の経験を踏まえて、自治体システムのクラウド化、カルテの電子化や遠隔医療の導入などソフト面にも力を入れる必要がある。また、こうしたプロジェクトの推進を行う人材も不足していると思われるので、国として人材面での支援も必要だろう。

佐々木さん:情報格差も大きな問題。各避難所にITリテラシーが高い人が居るか居ないかで大きな差が生まれている。一人いればamazonのほしいものリストで物資を手に入れられる。ITが使えなければ欲しいものが手に入らないで困るという状況になっている。

谷脇さん:リテラシーの問題は重要だが、だからと言って、東北地方のお年寄りにスマートフォンを使いこなせるようになれというのは現実的に難しい。お年寄りが使いやすいような端末やサービスの在り方についても考えていかなければならない。

(つづく)

2011年9月15日木曜日

役立つサイネージ


■Net  役立つサイネージ

 デジタルサイネージは、広告やエンタテイメントのメディアというだけでなく、「役立つ」メディアとしての機能がクローズアップされるようになりました。金融機関での経済情報、駅での運行情報、行政機関による催し案内、学校での授業や就職情報、企業オフィス内での業務スケジュール。むしろこちらのほうがメディアとしては本来の役目になっていくでしょう。
 特に震災後、節電でブラックアウトしたサイネージ以外のディスプレイはみな地震速報、交通情報、電力使用状況など、街行く人々に安心と安全を届けるべく奮闘しました。改めてサイネージの公益性が認識されたわけです。

 いくつか紹介しましょう。
 東京・湯島天満宮。菅原道真公を祀る合格祈願のメッカ。2月の梅まつりの時分ともなれば、境内に絵馬があふれます。そこに登場したのがビジョン「杜の囁き」。産経新聞社が運営。周辺の案内図と46インチのディスプレイが屋根付きの東屋風たたずまいでコンテンツを発信しています。
 平時には神社のPRや四季の祭事などを表示していましたが、震災後は別バージョン。一時は節電対策でストップしていたのですが、「役立とう」ということで間を置かず再開、大震災ニュース、計画停電スケジュール、それに伴うJRや私鉄、地下鉄の運行情報、電話やネットを使った安否確認方法の紹介などを流しています。新聞社サイネージの面目躍如ですね。
 東京大神宮にも「杜の囁き」があります。こちらは大判52インチのモニター一面。ぼくが春まだ自粛ムード一色だったころに訪れたときには義援金のお知らせ、伝言ダイヤル、震災ニュースが流されていて、参拝客がじっと読み込んでいました。役立ってます。
 産経新聞社は鶴岡八幡宮、神田明神への設置を進め、さらに全国の神社へと広げていく計画だそうです。

 大手町・丸ノ内・有楽町をネットワークする「Marunouchi Vision」。32インチから166インチのモニター80か所でこの地域23万人のビジネスピープルに情報を届けています。ここではNHKや共同通信社など各メディアとあらかじめ取り決めておき、緊急時には即時、緊急情報を提供できるシステムとなっています。今回の震災でも、10分後にはNHKに切り換えたといいます。そして、帰宅困難となった数多くの人たちのため、いつもより時間を延長し、朝までNHKを上映したそうです。消すのではなく、あえて灯をともすのがサイネージの役割。安心・安全のメディアなのです。

 冒頭示したとおり、平時から「役立っている」サイネージはたくさんあります。あと一つ、病院でのサイネージを紹介しておきます。
 平均すると40分以上の待ち時間が発生するという病院。メディアコンテンツファクトリーは、全国750の病院待合室にコンテンツを配信。休診・診療時間や薬の飲み方などの医療・健康情報を流しています。
 商品案内もありますが、補聴器に関連する耳の知識だったり、特定保健用食品に関連するコレステロールの啓発だったり、オーラルケア商品に関連する歯周病の予防策だったりと、コンテンツには工夫がなされています。

 平時にも、有事にも、「役立てる」メディアとなるよう、進化を促していきたい。
 デジタルサイネージは、きっとそうなってくれると信じます。

2011年9月12日月曜日

IT復興円卓会議ニコ生「行政」-1/4


■Net  IT復興円卓会議ニコ生「行政」-1/4
 IT復興円卓会議。IT復興策のニコニコ生放送を6回シリーズでお届けすることになりました。
729日が第一回。ぼくが代表を務める社団法人 融合研究所@赤坂から、「行政」をテーマに総務省 谷脇さん/内閣府被災者生活支援 瀬戸さん/経産省 境さん/佐々木俊尚さん/池田信夫さんというメンバーで話しました。
その模様をKMD竹内愛さん(復興アイちゃん)がログってくれたので、4回に分けて記しておきます。
(今後、IT復興円卓会議の模様を月曜シリーズでお届けします。)
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中村:第一回と言いましたが、実は2回目。地震から一月後の413日に慶應の三田キャンパスで同名のイベントを行いました。政治・行政、産業界、NPO、メディア、学界など50名が集まって議論。
まとめた提言を政府に提出したり、民主党の政調に持って行ったりしました。提言は3点。
・ITの基盤を整備すること
・情報を生産し世界に発信すること
・情報リテラシーを高め利用を促進すること
それから3ヶ月。事態は好転するどころか混迷を増しています。振り返ってみます。

 被災地に行って撮ってきた写真をスタジオに飾ってあります。がれきの山。これを片付けるだけでも途方にくれる。そして原発の事故。ダブルで世界中に衝撃を与えました。今も津波・原発で避難生活を送っている人がたくさんいます。
 政府はどうだったか。経済産業省は西山さんは情報発信をしていたが、それは十分だったのか。そして菅さんのリーダーシップが問われています。芸術とも思える粘り腰を発揮しています。6月末の両院議員総会でもいつ辞めるのかの問いが与党から上がっていました。松本復興相の騒動もありました。政府のガバナンスの問題です。7月13日に菅さんは「脱原発」を宣言。しかし2日後には「あれは個人の意見」と発言。前代未聞です。

 一方、政府は仕事もしています。報道によれば、官僚主導で
・復興復旧の総額23兆円
13兆円を2015年度までに計上
・原資として歳出削減3兆円
・法人・所得増税と税外収入で10兆円
・復興特区を導入
という内容の「復興基本方針」がまとまりそうだとのことです。

 今日のテーマは「行政」。次回以降、2「メディア」、3「通信」、4「ソーシャル」、5「NPO・社会貢献」、6「総括」を予定しています。最後は政治への提言も行いたい。

中村:今の政治の情勢や現状をどう見る?

佐々木さん:いろんなことやっていて成果は出ていると思うが、ブランドデザインが一度も提示されていないのが一番問題。行政は目の前にある仕事を片付けていく。政治はブランドデザインを提示すべき。わかりやすい政策を五月雨式に出しても一体何がやりたいのか分からない。メディアも問題で福島の原発よりも復興が大事なのに原発ばかり。あとは政局の話で、被災地がどうなっているのか分からない状況はヤバい。

池田さん:先週、霞ヶ関の人と話したが、どうしていいのか分からない状態だった。役所は政府が方針を出してくれたら動けるが、政局が定まらないのでその話ばかりになる。阪神大震災は役所に丸投げで良い結果。今回は政治指導で役所を邪魔をしている印象。

中村:ここで視聴者にアンケートを取ってみよう。「被災地に行ったことあるか、ないか?」
→ ある 11.8%   ない 88.2%

中村:政府担当者は被災地に入り込んで仕事をしているが、それぞれどんな政策を?

瀬戸さん:被災者生活支援チームで震災1週間後から7月中旬まで活動していた。各省から130名くらい集まって、体育館で24時間体制で活動。物資の支援、交通、医療、自衛隊など。ホットラインを設けて各県とやりとりを行っていた。

谷脇さん:総務省で情報通信のインフラを担当。「情報がライフラインだった」と被災地の多くの方から言われた。燃料が乏しい中で家族を探して避難所を回ったが避難者名簿のデジタル化・ネットワーク化ができておらず、大変な苦労。物資の需給マッチングなど大変。阪神淡路大震災の時は、携帯電話が普及し始めた段階だったので通じたが、固定電話は通じなかった。携帯は今回は普及していたものの通じなかった。こうした反省を政策に生かしたい。

境さん:入省時は電力担当だったが、今は違う。(西山さんはどうしてるの?)西山さんはテレビで見る方が多い。自分は電力消費量のデータの開示くらいしかできなかったので、反省している。

中村:いま最大の課題は何?原発のせいで被災地支援の初動が身動きとれなかったということもあるのでは?

瀬戸さん:被災地支援では物資の支援と道路の整備とやることが明確だったのでスムーズだった。今後の課題は、被災地に仕事を確保すること。高齢者の孤独死。仮設住宅は、かつてのコミュニティから離れて入っているのでコミュニケーションがとりづらい。子どもの心のケアも重要。

谷脇さん:今回の震災の特徴として被害が広域にわたっている点が挙げられる。地震に対する対策はかなり講じられていたものの、津波は想定の範囲を超えた規模だった。発災直後においては衛星回線が役に立った。日本における災害対策は基礎自治体が主になっているが、今回は自治体機能そのものが失われてしまった。自治体機能の再立ち上げのためには、行政情報のバックアップが必要であり、そのためにもクラウドコンピューティングが有効だという点が明らかになった。また、非常時の法律の運用の在り方として、個人情報保護法の運用が障害となる場合があったと聞く。

境さん:現地で職が回るように産業基盤をつくる。電力需要をどうするかが長期にわたって重要。産業も傷ついたし、行政も傷つき、混乱している。うまく連携しながら東北の機能を復活させていきたい。

中村:省内で原発問題はどうとらえられているの?

境さん:電力に関わった経験があるかどうかでとらえ方が違う。関わった人は、自分がどうにか出来たかもしれないと反省しているかもしれない。関わってないひとは違う会社の出来事のように思っているかも。

中村:原子力安全保安院の分離は?

境さん:有りだと思う。個人としては新体制を考えて行かなくてはならないと思う。

佐々木さん:電力使用のオープン化について役所の方で乗り越えなければならない壁はあったのか?

境さん:東京電力に公開しろとあの段階で言えるのかどうか?と考えた。修羅場なので、普通に事業者に言っても難しいだろうと。だが、情報をオープン化して、みんなでいじりながら便利な方法を探すしか無い。

佐々木さん:役所はどういう立場なの?

境さん:「お願い」です。経団連に生活に必要な情報をオープンにしてと、「お願い」した。

中村:権力関係ではなく?

境さん:権力関係はない(特に商務情報政策局としては電気事業法を所管しているわけではない)ので、あくまでお願いです。東電は初めは混乱していたが、できることはやろうと気持ちの切り替えは早かったように感じている。

(つづく)

2011年9月11日日曜日

911の少し後に。

■911の少し後に。

 2001年9月11日。ボストンからニューヨークに向かう旅客機が起こした事件。その朝、ボストンからニューヨークに自動車で向かったぼくが遭遇したことを、少し後に投稿した文章を改めてここに転載します。記憶をとどめておくために。十年たって、何か変わったのでしょうか。


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  ニューヨークを訪れている。eコマースに関する会議だ。商取引に関するミーティングがビジネスの中心地たるニューヨーク を会場とするのは合理的である。ラボのeMarketというeコマース関連コンソーシアムには金融関係者が多く、ニューヨークで出張会議を開くこともあ る。
IT は西海岸シリコンバレーを中心に開発されてきたが、その軸は東に移動している。技術を開発する段階から、それを利用するステージに移行したためだ。ITは 普及につれて、テクノロジーからアプリケーションやコンテンツに話題が移る。ビジネスや金融やアートの集積地にITのパワーが移行するのは、ITが進化し ていることを示す。浸透し、利用されることで、新たな技術に対する要求が起こり、そのサイクルが次の進化を促す。
そのニューヨークは、夢想だにしない災厄に見舞われた。2001年9月11日。その日の早朝も私はクルマでニューヨークに向かっていた。マンハッタンに入る橋で、ここから先には進めないと告げられ事件を知った。30分はやければ、テロの現場あたりにいたことになる。
それからカーラジオで状況を聞きながらボストンに戻り、テレビで画面を見た。覚悟をして見たのだが、それでも衝撃は大きかった。アメリカは時間帯からしてリアルタイムに映像を見た人はそう多くない。日本の方がリアルタイム性が高く、ショックが強かったかもしれない。
当初、テレビは衝突やビル崩壊の模様を繰り返した。大勢の人がビデオカメラを携える時代になり、いくつもの角度からの生々しいアマチュア映像が流される ことになった。戦闘が始まってからは、闇夜の閃光が繰り返し放映された。戦場では、暗視カメラとウェアラブル・コンピュータを装備した兵士が敵地の映像を 衛星経由で指令本部に伝えていた。メディアの技術は、事態に深く加担する。
 

 世界貿易センター崩壊の数日後、メディアラボで全員集会が開かれた。身の回りの人たちは、惨禍に巻き込まれた知人が多いこともあり、衝撃は大きい。押し黙る。泣く。こぶしを握りしめる。天を仰ぐ。祈る。歌う。抱きあう。
この事態をどうとらえるべきか。テロの防止や世界平和、あるいは多元社会の構築に対しデジタル技術が果たす役割は何か。身近なコミュニティをケアすることや、情報を共有することの大切さは不変か。
デジタルは、バーチャルなコミュニティを形成していくこと、その上で人々が価値を共有していくことを可能とする。それがデジタルのコアだが、同時にそれ は大学が果たすべきプラットフォーム機能でもある。多元的なコミュニティの形成と価値の共有に向けて、大学はいかに作用すべきか。そのようなことが話し合 われ、私もともに考えた。
アメリカを象徴するインターネットは、資本主義を強化し、民主主義を進展させる。それらは、近代の進化主義を延長するものでもある。ネットは価値観や美 意識を刺激することによって、近代を超克する力を持つはずなのだが、その近代なるものはテロ一発で揺らぐほど脆いものでもある。
メディアは世界をつなぐ。ネットは地球を小さくする。「この十年、世界はどんどん狭くなってきた。針の先ほどにまで小さくなった。ところが、9月11日から、また世界はとても広いと認識されるようになった。」(ネグロポンテ)  

 地上には色んな人がいる。色んな暮らしがある。色んな考えがある。そのあたりまえのことを、また見つめ直さなければならない。デジタルは人々を連結する。それは始まりにすぎない。人類が価値を分かち合うようになるまで、道ははるかに遠い。
 

 気を取り直そう。私が9月11日にニューヨークに向かったのは、近代美術館MoMAを訪れるためだった。半年ぶりのはずだった。半年前に訪れたときは、 「明日の職場コンセプトと技術展」が行われていた。ロボカップを主宰する北野宏明さんがロボットのあるオフィスを展示していた。
そこではジョン前田とジョー・パラディソによる共同作品「アトモスフィア」も展示されていた。壁いちめんのスクリーンで時間と情報をナビゲートするシス テムだ。リボンのような形で流れる何層にも複雑に入り組んだコラージュを手元のナビゲーターでダイナミックに眼前に展開して、操ったり引きだしたりする。
そのふくよかなインターフェースは、スカッと抑えた色彩ともあいまって、環境として美しく、ウィンドウやフォルダという普段使っているインターフェースの観念を陳腐にしてくれる。固定観念を美しく打ち崩すこと。そうして未来を再デザインすることが大切だ。
その翌日、ニューヨーク・トイショーが開会した。世界のおもちゃ関係者が集う恒例の大イベントである。その冒頭、マイク・ホーリーが基調講演に立った。私のほかにも数名のメディアラボ関係者が会場に姿を見せていた。
その中でホーリーは、カンボジアに学校を造り、コンピュータを贈る活動を紹介した。こどもたちが学習し、創造力をはぐくむために彼が力を入れているプロ ジェクトだ。併せて、京都のこどもセンターCAMPの構想についてもPRしてくれた。ニューヨークはマスメディアの中心地でもある。大がかりなプロジェク トをPRするには最適の地だ。
世界のこどもたちのクリエイティビティをつなぐことによって未来は再デザインされる。近代文明のメッカ、ニューヨークで講演を聴きながら、そう考えた。そして、その半年後の惨劇によって、そのことを繰り返し考えるようになった。
 

 遠いけれど、道はある。事件のあと、なお傷跡が生々しい現場を幾度もながめながら、これからの遠い道のりに晴れやかな光がさすことを信じる。

2011年9月8日木曜日

未来のデジタルサイネージ

 デジタルサイネージコンソーシアムのシステム部会が制作した映像クリップ「未来のデジタルサイネージ」。改めてご紹介します。

 作ってしばらく間があるのに、なぜいま改めて?
 それは、「未来」ととらえていたイメージが、既に2つの面で現実の方向に動き出したことがハッキリしてきたからです。「役立つ」と「つながる」の2面です。

 映像でも強調されます。広告、エンタテイメントだけではない「役立つ」サイネージの特性。
 災害緊急情報を表示するサイネージ。地震情報、交通機関情報が街角で得られます。3/11後、実際に各地のサイネージがこうした機能を果たしました。もちろんこのビデオは震災の前に作られたもの。コンソーシアムとしては、サイネージの公益的な側面を強く認識していたわけです。
 バス停で電車の遅延情報が表示されるシステムも紹介されています。現実にも東京メトロの改札口や金沢のバス停など、運行情報をお知らせするタイプが増えていますね。
 迷子さがしサービスでは、迷子をさがすおかあさんが子どもの情報をサイネージに発信、サイネージを頼ってきた子どもとご対面。親も子もサイネージを外出時、いざという時のよりどころとしてとらえている様子が描かれています。
 頼られるサイネージでありたい。
 
 また、映像で紹介されるシステムは「つながる」ことで威力を発揮するタイプ。インターネット、モバイルシステムとしてコンテンツもユーザの個人情報もつながることで、屋内・屋内の情報空間が豊かになるという方向性です。
 アキハバラでの買い物は、ケータイと連携し、サイネージに個人情報が発信されることでユーザに適切な情報が届きます。テーブルがディスプレイになっているレストランでも、ケータイからの個人情報を受け取ったシステムがダイエット中の客に低カロリーメニューを薦めてきます。
 デートをしている時、街の3Dディスプレイに現れたミュージシャンが呼びかけてくれるのも、個人情報がクラウドから届いているからで、彼氏の手のひらに優しい言葉が投影されるのも、事前に彼女が送っておいたメッセージが街のシステムに流れてくるからですね。

 未来を待たずとも、技術的にはほとんどもう出来ています。テーブルディスプレイも、手のひらメッセージ表示も。ケータイ連動もコンソーシアムの調査研究会で研究や検証してきました。京都の甘味処の前を通ると自分たちが和服に変身するARのシステムも既にあります。いずれも日本が世界に先駆けて開発し、市場に投入しているものです。それらを「つなぐ」ブロードバンドも、モバイルネットワークも、日本は他国を凌駕する状況です。

 未来に向けて必要なのは、サービスとコンテンツの開発。そしてそれらのビジネスモデルを構築すること。そして「普及」させることです。
 それは、すぐ目の前に来ていると思います。
 日本型のサイネージモデルを作り上げて、全国をユビキタス空間に彩るとともに、世界に羽ばたいていく。そんな未来を夢想しています。

2011年9月5日月曜日

ポリシープロジェクト2011秋


Buenos ポリシープロジェクト2011秋

ぼくがKMD×融合研究所×CANVASで進めているリアルプロジェクト「ポリシープロジェクト」(ポリプロ)の状況を報告致します。
ポリプロは「メディア融合」「デジタルキッズ」「ポップパワー」のネット×キッズ×ポップ3サブプロジェクトから成ります。
デジタルサイネージコンソーシアムやデジタル教科書教材協議会(DiTT)のような企業コンソーシアムを通じて活動したり、NPOCANVAS」や株式会社デジタルえほんをベースに展開したり、個別案件によりさまざまな形式を採ります。
個別企業との契約による研究開発もあります。

1 メディア融合

 1) デジタルサイネージ
   6月のデジタルサイネージジャパンは来場13万人、業界初の白書を刊行。
    会員数160社。
   電車、病院などのサイネージに子どもたちのコンテンツを配信するプロジェクトを開始。

 2) IPDC
  スマートTV研究会」をスタート。
   放送、通信、メーカ、SNSなど。随時会員拡大中。
 
 3) IT復興円卓会議
   ニコ生6回シリーズを開始。第一回「行政」、第二回「メディア」を実施済。
   中村・菊池+佐々木俊尚さんに毎回ゲスト3~4人を迎えて討論。

2 デジタルキッズ

 1) リアルキッズ
   来年2月のワークショップコレクションに向け企画開始。
   キッズサミットを開催すべくスタンフォード大学などに打診。
   慶應日吉、三田、東大、早稲田などで定期ワークショップを展開。
   児童館、保育園などでのワークショップも定着。
   韓国でも出張ワークショップを実施。
   吉本興業とのシリーズ「おもしろかし子 大作戦」も実施中。

 2) デジタル教科書(DiTT
   DiTT会員120社。
   業界としてビジョンと提言をまとめ政府と協議。
   全国の先生コミュニティTECCECJAPETとの共同で8月スタート。
   実験準備:この秋スタート。詳細設計中。
   東芝情報機器、ピアソン桐原のリーダーシップのもと、
   ジャストシステム、NECCSK、マイクロソフトらがWGを運営。
   クアルコムとルネサンス高校のスマホ授業など個別案件にも協力。
   DiTT EXPOを計画中。プレ企画として東大・京大・慶應3元学長シンポを開催。

 3) デジタルえほん
   ゲーム、SNS企業らのエンジニア陣と、アーティスト・作家陣とのコミュニティを形成。
   ダイヤモンド社、DNPらとそれぞれコンテンツを制作し販売の予定。
   自主制作の作品も秋から順次市場投入。

3 ポップパワー

 1) Sync Music Japan
   音楽制作者連盟らとMySpaceでのJ-Pop配信を実施。
   フランスのテレビ曲向け番組クリップを学生が制作中。まもなく完パケ納入予定。

 2) Tokyo Tomorrow
   東京を音楽で元気にする活動のバックヤード。
   子どもワークショップも実施。

 3) 知財マネジメント講座
   KMD×TCPLの共同開発講座を9/3から8日間16講座開催。

2011年9月3日土曜日

デジタルサイネージ白書 序


Net デジタルサイネージ白書 序
  このたびデジタルサイネージコンソーシアムが業界初の白書「デジタルサイネージ白書」を刊行しました。
 そこに序文を寄せましたので掲載しておきます。
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 デジタルサイネージコンソーシアムが発足して4年になります。
 発足当初は、電子看板、OOH、さまざまな呼び方がありましたが、日本ではほぼ「デジタルサイネージ」という呼称に統一された感があります。
 ディスプレイ、ネットワーク、コンテンツの3要素からなるこの新しいメディアが一大産業になる。テレビ、パソコン、ケータイに次ぐ第4のメディアに発展する。街の中を、ビルの中を、都市空間を埋め尽くすユビキタス環境を実現する。そう夢を描いて活動を進めてきたものが、そろそろ現実味を帯びてきたと感じています。
 少し前まで、あそこにサイネージができた、ここにもディスプレイが置かれた、といった一つ一つがニュースとなっていましたが、今や都会ではサイネージのない場所を探す方が難しくなってきています。
 しかもブロードバンド大国たる日本のサイネージは、高速回線で連結し、街を行くひとびとに一方的に情報を与えるだけでなく双方向・インタラクティブに使われるメディアへと進化しています。ディスプレイを製造する「技術力」も、サイネージ向けのポップなコンテンツを産み出す「文化力」も兼ね備え、日本は総合力で世界をリードする条件も満たしています。

 ここに来てサイネージはさらに大きな変化を示しつつあります。
 3つの「P」にまとめられるでしょう。

1. パーソナル
 モールや高級ブティック、金融機関などのハイエンドから、鉄道、商業施設などのミドルエンド、そして個人商店や一般オフィスなどのローエンドへと徐々に普及が進んできたサイネージ。屋外の大ディスプレイから屋内の小画面までをカバーする広がりをみせています。
 それが今度は一足飛びに家庭の中にも進出し始めました。デジタルフォトフレームやタブレットPCをブロードバンドにつなぎ、茶の間に情報を届けるサイネージが商用化されています。テレビ、パソコン、ケータイとは違う、24時間スイッチオンのサイネージが家の中にも居場所をみつけたのです。光ファイバーが浸透している日本が世界に先行する形でサービスを開発しつつあります。

2. パブリック
 サイネージは広告メディアとして発展することが期待されていました。しかし企業は広告媒体として使うだけではない。電車での運行情報、銀行での金利情報、ホテル入口での催し案内などはCMではなく来場者への情報サービスです。一般のオフィスでも、職員の情報共有のためにサイネージが活用されつつあります。
 学校、病院、役所でも広がっています。授業情報や就職案内をディスプレイ表示する大学。診察室への誘導、支払いや投薬の情報を画面で表示する病院。街路の画面で防災情報を流す自治体。みんなで見るサイネージはパブリックな利用から先行的に広がっていく可能性も十分にあります。
 頭打ちの広告市場6兆円よりも、企業の経営管理、教育・医療・行政の公共的な支出から市場形成を考えるほうが現実性は高いのではないか。そのような見方が急速に高まっています。

3. ポップ
 ポップカルチャーの国、日本ならではのモデルもあるでしょう。自動販売機があふれ、ガラパゴスと称されるほど特異な発展をとげたケータイ文化を持つ日本。その自販機をサイネージに変身させていき、サイネージとケータイとを結合したアプリケーションを開発させていく。日本型のモデルを構築して、海外市場を開拓することも可能ではないでしょうか。
 ゲーム機やカラオケやパチンコと連動したサイネージ。アニメキャラを登場させた目を引くコンテンツ。海外ではあまり見られないギャグ風の仕組みをもつ遊びサイネージ。楽しく発展していくことを期待させます。


 こうした中、デジタルサイネージ業界は、2011311日に発生した東北地方太平洋沖地震と、それに続く原発事故に接し、対応策を協議・検討して参りました。
 政府・関係機関とも協議しながら、業界として節電に協力しつつ、被災地及び全国で必要な情報をお届けできるよう努めて参りました。
 平時はもちろん、災害時・緊急時でも社会の役に立つメディアへとさらなる発展を目指して参ります。このような国難においてこそ力を発揮できるメディアへと成長して参りたいと考えます。

 日本は復旧から復興へ、そして新生へと立ち向かっていかなければなりません。
 デジタルサイネージがその一助となるよう祈りつつ、ここに初のデジタルサイネージ白書をお届けする次第です。

2011年9月1日木曜日

一億総びびり症


■Buenos 一億総びびり

 このところ漂う第一の問題は、専門家の不足。第二の、そしてより大きな問題は、ここ10年以上、日本に蔓延する「一億総びびり症」です。縮み指向、とも言う。まずいことが起きると、じゃやめとこ、締めてしまおう、となる安全志向。超自粛モードです。そして自縄自縛で動きが取れなくなる。そんな情勢が続いています。
 震災後、被災地以外の土地で、集まりや遊びを自粛し、下を向いて歩くのが礼儀のような空気がたちこめました。テレビのCMもしばらく自粛されていました。復興に当たってはこれが最大の敵だと考え、ぼくが会長として5月にとりまとめた知財本部コンテンツ調査会の報告では、「自粛を自粛する」という文句を数度にわたり書き込みました。空気を換えたかったのです。

 この国、びびってるなぁと明確に感じたのは、姉歯問題。構造計算書偽造問題と記すべきでしょうか。地震などに対する安全性の計算を記した構造計算書を偽造していたことに始まる一連の事件です。2005年のことでした。この事件の内容はともかく、結局その後2006年、建築確認を厳格化すべく「建築基準法」が強化され、全国的に建設業が冷え込み、景気減速につながりました。これは建基法不況などと呼ばれ、2007年の経済成長率が下方修正された主な原因は建築基準法改正に基づくものだと当時の官房長官が表明するに至っています。
 同様の事態は金融でも生じました。投資家保護を重視するあまり、「金融商品取引法」で商品販売の際に過重な説明義務を課し、投資ファンドの日本離れを招いたことや、多重債務問題の解消と借り手保護を理由として「貸金業法」の規制を強化し、中小企業の資金繰りが厳しくなるという事態も発生しました。官製不況の事例です。
 医薬品をネットで売るのは危険、ということで対面販売以外で医薬品を販売することを禁止する「薬事法」の2009年改正も、ヤバいことはとりあえず締めとこう、という流れの結果なのでしょう。

 「青少年がケータイを使うのは百害あって一利なし。」2007年、福田首相の見解は、フィルタリング導入促進にとどまらず、「青少年インターネット環境整備法」の制定、そして地方自治体の条例による規制につながりました。ケータイは危険であり、使わせないのがよいという空気が漂いました。
 確かに出会い系やネットいじめなど、危ない事態も発生していました。しかし、若い世代はケータイで日々コミュニケーションを取り、楽しみ、学び、そして安全を確保している割合が圧倒的に高い。百利あって一害あり、なのです。にもかかわらず、やばいやばいと近視眼的な禁止政策でフタをしようとしたわけです。ケータイ産業という日本が強みを持っていた分野に凍え上がるほどの冷や水を浴びせました。
 食品偽装でも、2007年の赤福の消費期限や白い恋人の賞味期限などを巡り、そこまで危険か?と思えるほどヒステリックなまでの報道や消費者の対応が見られました。
 2009年のインフルエンザ流行も不思議な様相を呈しました。WHOがパンデミックであることを宣言、つまり世界的な流行とされながら、なぜか日本だけ、老若男女がみなマスクを着用する異様な光景を全国でみせ、海外からは日本はそんなに危険な状態なのかと受け止められました。

 「消費者を守る」ことを名分に法規制が強化されていきます。90年代には規制緩和を通じて産業を活性化する対策が多くの業界で採られましたが、安心・安全を求める声が上がるたび逆に過剰なルールが導入され、社会経済活動が萎縮して、かえって世の中が不安定になっている。そんな気がします。
 規制強化は、官が天下り先を増やすためだという論調もあります。それは違うでしょう。いまどき。官が動くのは、経済界やメディアの論調、それを背景とする政治の圧力がある場合です。天下り先を増やすのは、元の政策を動かす中で、ついでにチャンスがあるなら乗せてみるか、という順序です。天下り確保とか権限強化を目的として動き出すメカニズムは私が知る限りありません。日本の政府は独善で動く権限を持ち合わせていません。社会経済の要求があって初めて動けます。規制強化は社会経済全体の空気を反映したものであり、まずはその空気を問うべきだと思います。

 震災はそうした重く湿った空気のもとで発生しました。すぐさま全国的な服喪状態。祭りも飲み会も中止が相次ぎ、町内会のような震災と全く関係のない集まりでも冒頭のあいさつは被災者へのお見舞いの言葉から始まりました。
 不幸な事態を悔やみ、被災者を慮って頭を垂れることは麗しいことです。安心、安全を志向し、万全の対策を立てることは正しいことです。しかし、そのためにどれだけの社会コストをかけることが適正かということも心得ていなければ、縮こまりが進みすぎて、世間がコチコチに固まってしまいます。安心・安全にコストをかけることは今後の世界のモデルになり得ます。しかし、安心・安全すぎて身動きが取れないのは、新たな不安となります。
 マスクをすることが個々人にとって安心を増すことであったとしても、みんながマスクをしないと外出できないような空気が正常なのかどうか。景気が悪くなり、少子高齢化で国が衰え、政治も頼りにならなくなり、それからみんなが内向きに縮み始めた。成長していたころは、もっと大ざっぱで、おおらかで、不潔で、適応力や危機対応力があったと思うんです。
 不思議なのは、被災地のかたがたは冷静で、世界から賞賛が集まったように整然と事態に対処し、困難に立ち向かって行ったのに、自粛自粛自粛となったのはその他の地域だということ。当事者となれば耐性があるのに、周りが縮こまるのは、気合いを入れれば突き破れる程度の弱さ、しかしとても重たい空気が立ちこめているということなのでしょうか。

 ぼくが関わっているプロジェクトでも、地震直後にデジタルサイネージの点灯を自粛したり、デジタル教科書の推進に不安が表明されたりするのも、個別の理由の皮をむいていくと、結局「なんとなく」やめておこうよという根拠のない消極に突き当たります。
 空気を換えたい。特効薬はないかもしれません。ぼくにできることは、元気の出るプロジェクトを前に進めていくことだろうと思います。迷ったら、やってみようよ、そんな具合に。