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2015年2月26日木曜日

3年ぶりのNAVER本社とYLAB

■3年ぶりのNAVER本社とYLAB
 NAVER。LINEの親会社。ソウルの本社に3年ぶりに来ました。
 NAVERの社長室にわがゼミ出身のハン・ソクジュさんがいるのでレクを受けました。



韓国では検索シェア8割(Googleは3%)。売上2300億円、PV月270億。巨人です。韓国ではNAVERの検索上どう表示されるかが企業・商品にとっても政治家にとっても死活問題。そのパワーはアメリカでのGoogleの比ではありません。ハングルのデータは全部NAVERに集約するというのが対Google戦略で、巨大データセンターを作っています。

「NAVERに政府の支援はありません。逆にGoogleを規制できずNAVERは規制されています。」 
 これは日本政府による日本企業と米国企業への対応と類似してます。日韓連携を考えたいところです。

「NAVERマンガは15万人の作品応募があり、デビューできるのは200人。バリアーは低いが競争は激しい。うち7割程度が映画・ドラマ化されます。収益はNAVERは取らず全て作家に還元します。プラットフォームであって、コンテンツ事業ではないんです。」
 

 スゴい。3年前に訪れたときの驚きをブログに書きましたが、その快進撃は続いているようです。プロ、アマ、ファンのプラットフォームによるビジネス。
「スゴい! NAVERのウェブマンガ」
 http://ichiyanakamura.blogspot.kr/2011/11/naver.html

 「子会社LINEは5.6億ユーザ。
 NYにも店舗をオープン。
 PC検索からモバイルコミュニケーションへと軸を移しています。」

「日本進出から10年間、NAVERは失敗し続けました。でも、李海珍氏がオーナー創業者としてあきらめませんでした。ようやくLINEが成功しました。
 3/11でも撤退せず、李氏が日本に居残り、2-30名の開発者が家にも帰れず2-3か月集中してできたのがLINEです。」
 ふうん。

「新卒は開発者以外採用しません。
 各部署に人事権があり、給与もまちまち。
 1人採用するのに4000人の応募があったりします。
 平均年齢32歳です。」
 これは社員向け情報共有サイネージ。  


 これはデザインとIT書による素敵な図書館。
 社員3000人中デザイナーが200人で、その意向に沿うものですが、住民に開かれていて、賑わっています。
 NAVERはIT専門家と起業家を育成する教育機関NHN Nextも設立、年120人が無料で受講しているといいます。
  

 さて、以前のブログでも言及したマンガ原作者であり、メディア開拓者、そしてKMD博士課程在籍中のユン・イナンさん。そのオフィス、YLABも訪問。


 




 今ユンさん原作のマンガを映画化した「ファッションキング」が上映中なのです。 


 

 ユンさんは原作を新人マンガ家に与え、日本では紙のマンガ、韓国ではNAVERのウェブマンガを同時連載するスゴいシステムを構築しているのですが、そのモデルも一層進化してます。
 今NAVERで週5本!連載中。来年は2本が映画化されるとのこと。

 以前はユンさんがネームまで作って日本の編集者と協議していたが、今はシナリオ、ネームの専門家を入れ、作画をマンガ家に振るという分業態勢とか。
 

 タップすることでコマ送りされるスマホ向けのマンガも開発。
 スクロール、スワイプ型と違い、独特の緊張感が生まれる。
 新しい表現様式を生んでいます。

 スマホで絵コンテ、ネームをペン描きして、作家に送って描かせるんですと。
 やりとりは3年前はSkypeと言ってましたが、今は全部LINEですと。
 

韓国の王としもべの会話をLINEの対話形式で物語にする企画が大詰めとか。
 これまたイノベーティブ。
 ユンさんはKMD一のメディア・イノベーターです。

2015年2月23日月曜日

ニコニコ学会β「未来の普通の運動会」にて

■ニコニコ学会β「未来の普通の運動会」にて
 ニコニコ学会β「未来の普通の運動会」@ニコファーレに参加しました。ニコニコ学会β運動会部代表の犬飼博士さん、日本バブルサッカー協会理事長 澤田昨日さん、グラフィックデザイナー ライラ・カセムさん、KMD稲見昌彦さんと。
 http://niconicogakkai.tumblr.com/post/105281517261/1st-13-15

 稲見さんとともに立ち上げた「超人スポーツ委員会」のプロモーションを兼ねて、ぼくがプレゼンした内容を貼り付けておきます。


 2020年、新しいスポーツを開発しよう。
 2020年といえばウルトラQで肉体の退化したケムール人が地球人の若い肉体を奪いに来た。われわれはデジタルで肉体をウルトラに強化しておく必要がある。時間がない。なのに遅いんです。

 アップルやサムソンはウェアラブルデバイスを作ってもういろんなことができるとおっしゃる。
 でも、んなこたあ47年前、ジャイアントロボで草間大作少年U7がギロチン帝王に立ち向かっていたんです。それぐらいとっとと作ってくれ。
 マルクス・レームさん。ドイツ人。陸上ドイツ選手権で、義足で8m24cmの世界記録を叩きだした。健常者に勝った。義足だからということでチューリヒの欧州選手権代表から漏れました。
 でもそれは、2020東京ではパラリンピックのほうがオリンピックより高得点になることの号砲でしょう。義手・義足の人になりたい、と思っても、いいじゃないですか。
 ぼくは子どものころ、004になりたかった。アルベルト・ハインリヒになりたかった。彼もドイツ人。目は照準器。右手はマシンガン。左手は手裏剣。あこがれても、いいじゃないですか。
 みんなもそうでしょう。幼いころ、草むらで、手の先から何か出ないか、とやってみたでしょう。こいつらパリにいたやつらですが、彼らだって、何か出したいでしょう。実現しようよ。

 われわれは身体の拡張を願ってきました。手足を拡張しようとして、杖、義足、浮き輪、船ができて、クルマができて、飛行機ができて、ロケットができて、遠く速く行けるようになりました。
 視聴覚を拡張したくて、めがね、補聴器、スピーカー、電話ができて、テレビができて、インターネットができて、遠く速くコミュニケーションできるようになりました。
 外へ外へと身体は拡張したが、その技術を身体に引き戻すことで、ぼくらの拡張した身体とは何なのか、それが問われています。前に進みましょう。超人になりましょう。超人スポーツを作りましょう。



  そのためには何が必要か。技術を開発しなければならない。デザインの力を結集しなければならない。大プロジェクトを運営するマネジメント力も必要。社会としてどこまで許されるのか、ルールや政策も必要。これらの総合力が問われる。
 それだけではだめ。お金が必要。お金をください。

 実践してくれる選手、プレイヤーが大事。
 参加してもりあげてくれるみんなが大事。ニコニコのみんな。
 それをやれる場所が必要。
 つまり、それらすべて。プラットフォームを作る。みなさんの力を合わせて、PFを作りましょう。


 ぼくの専門は場作り。場を実現したい。で、2つプロジェクトを始めました。
 1つが超人スポーツ委員会。10月10日、まずは超人スポーツ委員会を発足しました。

 共同代表は稲見さん、暦本さん、ぼくの3人。そしてVR、ロボティクス、脳科学、スポーツ科学、ゲーム、この分野を代表する科学者が集って新しいスポーツを開発します。これから産業界や政府を巻き込んでいきます。

 もう一つ、別のプロジェクト。デジタル・コンテンツの街を作る計画を始めました。東京港区・竹芝地区 東京都のもつ1.5haの場を活かして、テクノロジーとデザインとビジネスの集積地を作る計画です。2020年会場の向かい、港のある場に2019年オープン—そこで超人オリンピックも開催したい。
 ここは国家戦略特区でもあるので、「超人特区」に指定してもらいましょう。これまでやっちゃいかんとされているようなことを、やりましょう。すると、大人には叱られます。叱られたら、ぼくが謝ります。力を集結させて、東京から、世界に未来を発信しましょう。

2015年2月19日木曜日

プログラミング学習「PEG」

■プログラミング学習「PEG」
 CANVAS×Googleのプログラミング学習普及プロジェクト「PEG」。 成果発表会が東大で開かれました。
 CANVAS石戸奈々子理事長の報告をメモします。


 CANVASのワークショップコレクションは10万人が参加する世界最大の子ども創作イベントに成長しました。
 創作系ワークショップを各地で12年続けています。
 プログラミングは最も人気がなかったのですが、この2年で最も人気のあるものとなりました。

 プログラミングが注目されるようになったのは、中学の技術家庭科で必修となったり、政府・成長戦略で推進が明記されたりしたことが背景にあります。
 英・韓・フィンランドなど初等教育で必修化する国が表れたり、米オバマ大統領が全員にプログラミングをと宣言したりしたことも刺激となりました。




  PEGは、5000個のラズベリーパイを用いて、1年で2.5万人の子どもにプログラミングを体験させます。
 既に学校など90施設と連携し、2万人まで到達しました。
 本年度中に目標の2.5万人は達成するでしょう。

 1人1台で実践している品川の公立校などもあります。
 指導者の研修を1000人に対し実施しています。
 札幌から沖縄まで12地域で実践しています。
 広がりを見せているところです。

  プログラミング「を」学ばせたいのではありません。
 プログラミング「で」表現したり、創作したり、問題解決したりする。
 その力をつけてもらいたい。

 ただ、プログラミング学習は、これからがスタートだと考えています。


 

 石戸さんの報告は以上。
 なお、こういう活動は東大で行うことが多くて、慶應ではやらないんですけど、東大のほうが快く受け容れてくれるからなんです。
 よりオープンかつ柔軟にできる場を竹芝CiPで用意したいと思います。

2015年2月16日月曜日

知財本部 集中と中長期

■知財本部 集中と中長期

 知財本部 2014年末会合。
 内閣総辞職の閣議と3次安倍内閣組閣とのわずかな合間に、山口大臣、平副大臣、松本政務官に出席いただき開催。集中検討課題と中長期課題とを議論しました。

 山口大臣から冒頭宣言、「人材育成、地方創生、海外展開に力を入れる。」よろしくどうぞ。
 知財本部にて集中検討するテーマと、中長期テーマとを話し合いました。

 まず、集中検討テーマ。産業財産権分野では「知財紛争処理」と「地方の産学連携・中小企業支援」、コンテンツ分野では「アーカイブ」と「海外展開」となりました。

瀬尾さん:アーカイブと海外展開とあるが、海外展開のためにもアーカイブのシステムを連携させるべき。情報発信と地方創生をもつなぐ大きなメタのビジョンが必要。

角川さん:無体化していくデータを国民がネットワークで利活用できるようにする施策が重要。権利者情報のメタデータを整備せよ。

井上さん:アーカイブには経済効果を生みにくいものもある。資金手当をする上でもその評価指標が重要。

喜連川さん:日本ではコンテンツが狭い意味に閉じ込められている。ITの変化を踏まえ、そのとらえかたも捉え直すことが必要。


 次に、中長期テーマ。「知財人財育成」と「次世代知財システム」の2点となります。後者は角川さんと進めてきた「IP2.0」の議論を政府に持ち込みます。

荒井さん:知財は第二世代に移行。政策・制度も改良より革新を。コンプラが厳しいが、IT関係は大半がグレイ。それを実行できる環境が必要。

瀬尾さん:世界基準に適合するのも1つだが、日本発で特殊化するのも選択肢。地方創生から海外展開の一気通貫は日本型モデルになる。2020年の五輪というベンチマークを活かそう。

喜連川さん:コンピュータが論文を書き、人間が査読することが現実となっているが、そのプログラムは人間が書いている。知財とは何か、の原点に立ち戻る時期。

みなさん、的確なことをおっしゃる。

 IP2.0にはぼくも関わっていたので、コメントしたいこと多々あれど、座長なので控えていました。
 IP2.0は民間が議論を先取りし、過激な意見をぶつけあったもの。それを政府がすくいあげて政策論にするというのは意義のあるモデルと考えます。

 コンテンツ分野は大きなステージの転換期にあります。この20年、デジタル化(PC、ネット、コンテンツ)が進められ、この5年はスマート化(スマホ、クラウド、ソーシャル)の対応でした。その次が来ます。
 それはインテリジェント、IoT、ビッグデータ等に代表される環境変化で、それはコンテンツの定義にも制度や政策にも問い直しを求めます。

 デジタルからスマートへの過程で、政策対象となるコンテンツも、エンタメビジネスから「誰でも作る情報」へと広がりました。それがさらに機械が作る情報やビッグデータにも広がります。
 従来は特許や著作権が行政の対象でした。知財をいかに守るか、がデーマでした。これからは、知財をいかに生産して、蓄積して、利活用するのかが中心になります。


 知財本部での中長期テーマの議論はしばし時間をかけて進めます。おたのしみに。

2015年2月12日木曜日

デジタル十大ニュース2014

■デジタル十大ニュース2014
 デジタル十大ニュース2014、投票結果が出ました。  
 総数10109票の投票、ありがとうございました。(  )は票数。

1位  LINEで決闘:「決闘罪」が適用される(1471)
 LINEネタ強し。LINEは濃密なコミュニティを作り、決闘をしやすくするメディア。スマホとソーシャルがコミュニケーションとコミュニティを変える。しかし120年前の死んだ法律を適用せざるを得ないほど、社会が対応できていない。

2位  論文コピペ発覚で大問題~STAP細胞はあります~(973)
 コピーというデジタルのメリットが悪用され、炎上というデメリットが問題を暴くという、デジタルの功罪が逆転した大事件。早稲田では過去の博士論文を改めてチェックさせられていると教授たちがボヤいています。

3位 プログラミング教育 本格化(766)
 「よみかきプログラミング」-- 石戸奈々子さんの名言。

4位 ウェアラブル機器続々:GlassやらWatchやら(645)
 15年前のブームが改めて再燃。技術はあったが、ネットやスマホという「スマート」の15年の社会定着を待つ必要があった。問題は技術ではなく、スタイルやデザイン。

5位 非実在小4、どうして解散するんですか?を問う(637)
 先の衆院選で国政のネット選挙は2回めだったのだが、全く盛り上がらず、炎上しただけでした。

6位 3Dプリンター事件:銃とかわいせつなものとか(581)
 モノがネット流通し、モノがコンテンツになる。既存の法律に触れる事態も現れているが、モノを著作権としてどうとらえるのか、新たな制度問題も浮き上がらせます。

7位 ベネッセ個人情報流出(522)
 受けたとされるジャストシステムもどちらもDiTTの理事なので心苦しいのですが、教育業界のデジタル対応が本格化したゆえに起きた事件として、胸と歴史に刻もうと思います。

8位 ロボットPepper登場。ロボットペットも復活。(503)
 Pepper君の中味のやりとりソフトはCANVAS出身でKMDで博士号を取った高橋くんが吉本興業に入社して作っております。

9位 角川ドワンゴ統合(502)
 ぜひカドカワンゴという社名に変更いただきたい。

10位 mixi モンストで大復活!(468)
 社外取締役として、ぼくは論評を控えます。


 妖怪ウオッチ、アナ雪、ビットコイン、SIMフリー、YouTuberらが惜しくも圏外に。


 今回で4年目です。

 最初の2011年はスマート革命を示すものでした。マルチデバイス、クラウドネットワーク、ソーシャルサービスのネタで埋め尽くされました。
http://ichiyanakamura.blogspot.jp/2012/01/2011_14.html
 


 2012年は、スマートの明暗を示しました。スマートテレビ、LINE、ビッグデータ、といった次の市場が見えた一方、ガチャ、炎上、家電の落ち込みといった影も見えました。
http://ichiyanakamura.blogspot.jp/2013/01/2012_26.html

 2013年は、3Dプリンターやウェアラブルなど、ビヨンド・スマートの台頭が明確に。併せて、4K8Kやタブレット教育など明るい話題も増えてきました。
http://ichiyanakamura.blogspot.jp/2014/02/2013.html

 そして今回。どう読みますか。
 LINE決闘、論文コピペ、プログラミング教育といった上位は、スマート化が定着して、社会構造が次のステージに移ったことを感じさせます。ウェアラブル、3Dプリンター犯罪、ロボットは、ビヨンド・スマートが台頭から本格化への移行を予感させます。
 3年前は、スマート革命の勢いにドキドキしたものですが、3年で早くも次なる波の勢いにワクワクしています。
 やっぱ、デジタルは、面白い。
 今年はどうでしょう。

2015年2月9日月曜日

知財本部、新ラウンド

■知財本部、新ラウンド

 政府・知財本部、コンテンツ会議の新ラウンドが始まりました。引き続き、吉本興業大崎社長、角川歴彦さん川上量生さん、久夛良木健さん、竹宮恵子さん、レコ協斉藤会長、松竹迫本社長、ニッポン放送重村会長、写真著作権協会瀬尾さんらとともに議論をして参ります。

 まずはアーカイブの件から。
 文科省「アーカイブ推進のためのデータベースを構築している。メディア芸術デジタル・アーカイブ事業で基礎データを作成していく。既にマンガは単行本25万冊・雑誌12万冊、アニメ9000タイトル、ゲーム35000件の基礎データを作成した。」
 経産省「テレビ映画、アニメキャラ等海外向けポータルJAPACONはレコ協斉藤さんが会長、瀬尾さんが主査。これとの連携を強化する。」
 力こぶが込められています。
 国立国会図書館のアーカイブ化は、平成21年度の補正予算127億円と著作権法改正のセットで進みました。日本をアーカイブ大国にするには、こうしたパンチの効いた取組をもう5ラウンドぐらいやらなきゃいけません。

 問題は、民間が自主的に進めつつも手の薄い分野。
 久夛良木さん「CESAでゲーム・アーカイブの議論が始まった。データ・資料も散逸しつつある中、ゲーム・アーカイブへの取組が重要。」
 久夛良木さんの活動に頭がさがります。ぼくも汗をかきたい。政府も手伝って!
 重村さん「放送コンテンツも消滅する。どの程度残っているかの実態も不明。政府内でのリーダーシップが必要。」
 関西テレビ「どてらい男捜索プロジェクト」なんて、涙ぐましいですもんね。
 NHK木田さん「NHKアーカイブ85万本はあと4年でデジタル化するが、公開できる著作権処理は10年で1%。あと1000年かかる。」
 やばいです。
 瀬尾さん「アーカイブは個々には進んでいるが、全体を統括するセクターが不明。これはネットワーク・システム。統合策が重要。」 
 ということです。同時に瀬尾さんは「著作権、法改正は一つのツールに過ぎず、契約やシステムなどを含む総合的な政策を考えるべき。」とおっしゃる。強く同意します。

 ビッグデータについて。
 知財本部「10月、政府は1万件以上のデータセットを自由利用できるよう対応。国に著作権があるものは商用利用を含め二次利用を可能とした。」
 知財本部「パーソナルデータ利用促進と個人情報・プライバシー保護の両立策を図る個人情報保護法などの法改正を準備中。」
 がんばってくれています。一方、教育情報化は文科省がデジタル教科書を正規化するための課題を整理中といいます。そんな整理はもうできていると思いますが、これについては話し始めるとイラつくので、別途。

 次にクールジャパン=海外対策。
 経産省「海賊版対策として、中国政府との対話・協力を推進中。マンガ・アニメ・ゲームに関し、削除、正規版への誘導、普及啓発の3本柱で進めている。」
 仕事しています。かように各省の海外展開策の説明を受けたのですが、外務省はドラえもん、進撃の巨人、コスプレによる外交事例、経産省はちびまる子ちゃんとガンダム。日本政府、今やそんなかんじです。
 施策の手段としては、総務省:BEAJ、aRma。外務省:国際交流基金。経産省:JETRO、J-LOP、コ・フェスタ、クールジャパン機構。かなり充実してきました。メニューは揃いました。見える成果を示したいところです。

 なお、韓流ドラマの海外競争力に関し、その輸出先の多くは日本であり、その資金を元にアジア展開しているという事実を共有すべきとの指摘がありました。こうした戦略論を平場でたたかわせることが日本は苦手。
 すると、ローカライズ策として、海外の小さい会社を買収して多言語翻訳会社を作るというアイディアが挙げられました。こういう項目を掘り下げてみたいと考えます。こういうのは、夜、密室ですべきかもしれません。

 ところで文化庁が日本映画の振興に8.5億円/年をかけている報告もあったのですが、ぼくは座長なので黙ってますけど、個人的には今なぜ映画振興なのか、腑に落ちないところがあります。映画振興に8.5億円かけるより、コミケ、ニコ超会議、ゲームアーカイブに突っ込むほうが効果的ではと思ったりするから。問題は、そっち側の人たちはそんな支援いらん、とおっしゃることですが。
 つまり、政策予算をつぎ込むとしても、どの分野に、何の目的で投じるのか。コンテンツ制作もあれば、流通インフラもあれば、人材育成もある。その整理とコンセンサスはない、と言いますか、ひとり財務省が差配しているわけです。
 こうした中、「コンテンツ策の成果をデータ分析しろ」との正論が多数挙げられています。そうなのです。しかも、施策にいくら費やしたからこうなったという分析が難しい分野なんですよね。産業政策だけでなく、文化政策であり、外部効果が大きいので。ここは政府に頼るだけでなく、それこそ学界の知見を求めたいところです。

2015年2月6日金曜日

CiP協議会、会員を募集します。(下)

■CiP協議会、会員を募集します。(下)
 社団法人「CiP協議会」説明会メモの続きです。
 研究開発を始めます。まだテーマは決まっていません。協議会を作って、理事企業の提案に基づいて決めていきます。ただ、現時点で要望を頂いているものを挙げてみると10個ぐらいあります。技術開発やビジネスモデル、政策研究、教育カリキュラム。理系だけじゃなくて、法律、経済、デザイン、いろんなジャンルのかたがたに協力いただきます。

 3つばかり紹介しましょう。
 

1)超人スポーツ。ウェアラブルやロボティクスなどの技術を使って、キモも超人になる、というスポーツを開発します。既に超人スポーツ委員会を設立し、プロジェクトが別途立ち上がっています。その活動をここに誘致できないかと考えています。
2)次世代サイネージの開発。2020年に向けて、4K8Kで、多言語で、防災対応のサイネージシステムを開発して整備したい。今これは総務省でも研究会が開催されていて、東京都も熱心に取り組んでいるので、竹芝を特区にして、ショーケースにできないかと目論んでいます。
3)アーティストIDの研究。音楽業界がアーチスト・コモンズという活動を始めました。アーティストのIDをつけていき、コンテンツやグッズなどが流通・管理しやすいようにする。そのためのシステムと、データベースを構築したい。それと連動する音楽と映像のアーカイブを、著作権特区として竹芝に置けないものでしょうか。
 

 こうした研究を進める中核として、私の所属するKMDは竹芝に拠点を置きます。共同研究を進めているスタンフォード大学にも来てもらおうと考えています。それだけではなく、例えば東大、例えばMIT、例えばオックスフォード大学といった内外の大学や研究機関に声をかけます。いずれは共同研究機構を立ちあげたい。
 CiPの2つ目の柱、人材育成でも、大学に加えて、専門学校などと連携して、プロのクリエイターやプロデューサーの育成を図ります。同時に、NPOや学校などと連携して、初等教育のデジタル化の底上げも図ります。
 既に私のグループが文科省のマンガ・アニメ人材育成事業として、各種学校や関係企業とともにデジタル人材育成の方策を練っています。また、子どもの創造力活動をしているNPO CANVASと一緒にプログラミング教育の全国展開を進めています。これらと連動して、初等教育から高等教育までのデジタル・コンテンツ人材の育成策を講じたい。
 CiPのもう一つの柱、ビジネス支援で言えば、日本動画協会が中心となって、アニメ業界と他の業界とのビジネスマッチング策を進めています。こうした活動をCiPとも連動して広げられないかと相談しているところです。
 そのようなマンガ・アニメの人材育成やビジネスマッチングを、例えばゲーム、例えば音楽といった他のコンテンツ領域にも広げて、業界横断のコミュニティができないかと。

 産学官の官とも仲良くします。本件は総務省、経産省、文科省、内閣官房知財本部、そしてもちろん東京都のかたと相談をしています。首相官邸がこの構想に関心を持ってくれているし、既に国家戦略特区として位置づけられているので、政府にも知恵とアイディアをぶつけて、これまでできなかったようなことにも挑戦します。
 特区アイディアもあります。
 たとえば著作権特区。この場であれば蓄積・公開できるアーカイブやマーケットができないか。電波特区として、通信・放送融合実験や、ドローンレースができないか。サイネージ特区として、屋外表示規制をとっぱらって、大規模なディスプレイができないか。ロボット特区、超人スポーツ特区を作るために道交法をゆるめてもらえないか。このあたりもみんなで知恵を出したい。

 という場づくり。1.5haの都有地に39Fの業務棟ができて、8,000㎡の共同施設を設けます。ラボや教室、ホール、スタジオといった施設。90m四方だからまあまあボリュームはあるでしょう。これとは別に現在もある産業貿易センターも存続するので、イベントスペースも身近にあります。その上にオフィスが置かれます。ただし、CiPに入会することと、ここに入居することは別。CiPはコミュニティであり、この竹芝を本拠地としつつ、ビルができる前からあちこちの場所を使って活動をガンガン進めます。

 協議会は各種分科会を置いて活動する予定です。ただ、どのようなグループを作るかは、理事会員と相談して決めます。理事になってくれる企業がプロジェクトをリードして、そこに会員各社も参加する、という姿をイメージしています。
 GW前後に設立総会を開いて、すぐに勉強会や分科会をスタートします。慶應義塾大学のキャンパスはじめあちこちの場所を使ってプロジェクトを進めます。これまでも準備会として毎月さまざまな情報交換をしてきましたが、それらを続けつつ、プロジェクトに力を入れます。今年協議会を立ちあげ、19年に街開き、20年にオリンピック、その後さらにドライブをかけます。
 最後に、参加費。
 理事は年100万円、一般会員は年25万円と設定しました。
 理事は予算・事業計画を作り、運営を主導します。会員は全ての活動に参加できます。具体的には、理事はプロジェクトを提案し、グループを形成できる立場。理事の数だけプロジェクトができるイメージです。
 既にNTTdocomo、GREE、TFMなどいくつもの企業・団体から理事としての参加意向をいただいています。

 なお、社団法人の事務運営コストはビルの事業主体から資金が拠出され、ベーシックな部分はそれで回します。会費収入は全部プロジェクトに回すので、通常のコンソーシアムよりかなりお得です。
 もちろんそれはミニマムコストの話で、共同研究開発を進めるには、国の研究費を含めて、資金を調達する必要があります。起業支援などを進めるためのファンドの形成ないし既存ファンドとの連携も重要テーマです。このあたりも理事・会員と相談していきます。


 入会案内は、こちら。
 http://takeshiba.org/cip_materials/

2015年2月5日木曜日

CiP協議会、会員を募集します。(上)

■CiP協議会、会員を募集します。(上)
 いよいよ社団法人「CiP協議会」を設立します。GW前の発足を予定しています。理事・会員企業の募集を始めます。

 案内はこちらからどうぞ。
 http://takeshiba.org/cip_materials/
 

 先日開かれた事前説明会でぼくが説明したことを2回に分けてメモしておきます。



 デジタルコンテンツの産業集積地を作ります。4K8Kで5Gネットワーク向けのコンテンツ環境を作ります。エンタテイメントだけじゃなくて、教育・医療コンテンツ、コマース、ビッグデータのビジネスに焦点を当てます。
 CEATECでもCESでもハッキリしました。スマートは終わりました。15年待っていたIoTとインテリジェントが来ました。ロボティクスが来ました。クルマはスマホになるし、家電もコンピュータになります。その世界を作ります。いや、2020年には、さらにその前を作らなければいけません。

 融合領域の産業と、教育と、文化を生む、コンパクトなクラスター。なんとかバレー構想というのが日本にはたくさんありましたが、もう谷じゃない。海と空。海と空を活かして、特区を作って、技術とデザインの資源を集中投下したい。
 東京の各都市をつなぐハブになりたい。渋谷でも池袋でも、品川でも、再開発が待っています。五輪に向けて開発も進みます。みなデジタルがポイントになります。それをつなぎたい。
 コンテンツ特区の札幌、コンテンツ産業が集積する京都、国際映画祭を開く沖縄、その他いろんな町を連結するハブになりたい。
 ボストンや西海岸の大学。ロンドンの研究所やパリのイベント。シンガポールのプロジェクト、ソウルのインキュベーション施設。ぜんぶつなぐハブになりたい。

 CiPの機能は4つ。研究開発して、人を育てて、起業を支援して、そのビジネスをマッチングして、そこから生まれたテーマを研究するというサイクル。
 言い換えれば、CiPで技術が生まれて、人が育って、そこから産業界に飛び出して、世界に広がる、それを一気通貫でやりたい。

 この分野で研究開発から大きな産業に育っていったものはあります。軍事技術の研究から発生したインターネットがネットビジネスを生みました。70年代にMITが開発したゲーム技術が日本のゲーム産業を生みました。
 アメリカは大学ががんばっています。スタンフォード大学はSUNマイクロシステムズを生み、Yahoo!を生み、Googleを生みました。ハーバードの学生がMicrosoftとFacebookを生みました。MITからeInk等が飛び出しました。日本もやろうよ。
 韓国は政府がコンテンツ・コリア・ラボというのを作り、コンテンツの人材育成から起業支援まで一気通貫に行っています。政府がやってるんです。日本では民間がやります。産学連携で立ち上げます。

 日本でも例はあります。1960年、東海大学が開局したFM局がその後のFM東京になりました。FMは大学が作ったんです。大阪大学とぼくら慶應が産学連携で作った実験プロジェクトが、ネットラジオのradikoになりました。こういうのを100個ぐらい産みたい。
 研究開発、人材育成、起業支援、ビジネスマッチングのサイクルのイメージをもう少し深堀りすると、MITメディアラボと、子どもの創作プロジェクトであるワークショップコレクションと、西海岸の500 startupsと、そして、あらゆる分野の連中が交わるカオスな場であるニコニコ超会議。こういう機能をコンパクトに一箇所に集めて、365日動かす。そういう学校であり、工場であり、広場を作りたい。
 初音ミクになりたい。
 初音ミクは3つの要素から成り立っています。ボーカロイドという技術。作詞作曲すれば専属歌手になってくれるというテクノロジー。2つ目は、コンテンツ。この16歳、158cm42kgのキャラクターのデザイン。3つ目は、コミュニティ。ニコ動にみんなが参加して育ちました。作詞作曲してみた。歌ってみた。演奏してみた。踊ってみた。みんなが自分の脳力を持ち寄って参加して育てました。この技術、デザイン、そして参加型コミュニティという日本の強みを活かしたいと考えます。 (つづく)

2015年2月2日月曜日

堀江さんに「今スグやれ」って言われた。

■堀江さんに「今スグやれ」って言われた。
 


 CiP説明会@慶應三田キャンパス。
 デジタル・コンテンツの集積地を作るに当たり、資金手当てや起業支援はどうする。
 堀江貴文さん、TokyoOtakuMode亀井さん、KDDI江幡さん、NTTドコモ秋元さんと。
 通信ネットワークと資金の出し手である通信インフラ2社、世界に情報発信する資金の受け手・亀井さん、ビジネスのてっぺんも地獄も見た堀江さん。
 リアリティーがありました。

 堀江さん収監の直前に特別授業をしてもらった際、「新しい研究所が必要だ」という話をされました。研究からビジネス、産業創生に直結する研究機関という構想にぼくも共振したのが実はCiPを考えるきっかけです。
 その時の授業の模様、ここにあります。面白いですよ。

 ホリエモン、最後の授業-1 「5勝4敗くらいかな」
 http://ichiyanakamura.blogspot.kr/2011/07/1.html

 ホリエモン、最後の授業-2 「研究所を作りたいな」
 http://ichiyanakamura.blogspot.kr/2011/07/2.html

 ホリエモン、最後の授業-3 「定住はいらない、ノマドがいい」
 http://ichiyanakamura.blogspot.kr/2011/08/3.html

 それから3年。ぼくはその構想づくりに動き始めました。堀江さんには早く感想を聞きたかったのです。
 でも今回、堀江さんにダメ出しされました。検討したりしてるんじゃなくて「今スグやれ」ってこと。学生がプレゼンしたドローンレースなんて、今スグできるし、困難な扉は叩けば開かれる、ってこと。スピードと強さ。これは肝に銘じます。てゆーか、やります。

 大学発のベンチャーが少ないのは、教員が大学という制度に縛られ、アメリカのようにリスクを取らないという話になりました。CiPの研究開発は大学のタガを外したユニット制のような仕組みを考えたい。

 NTT秋元さんは、アメリカはVCの規模が16倍でエグジット率が2倍といいます。
 亀井さんはそのアメリカで起業し、99%が海外ユーザだが、シリコンバレーも日本も環境はさほど変わらず、日本でも起業しやすいといいます。
 CiPには、シリコンバレーのコミュニティも引き寄せつつ、日本型のエコシステムを作りたい。

 ドコモはABCクッキングを買収し、auはスマホチケットのtixeeに出資するなど、戦略が違うように見えます。でも、両氏が見ている先はだいたい同じだといいます。その見えている世界に、CiPも飛び込んでいきたいな。おカネが流れてきそうだからw

 堀江さんはじめみなさん、飲み会やバーでビジネスが始まった話をされます。場というかサロンというか、それが決定的に大事ですよね。
 それ、すぐ作ろう。

 金の出し手、目利き、メンター。300人規模のものがあるといいといいます。
 それ、すぐ設計しよう。

 亀井さんがスシのくつしたを売りだしてみたらバカ受けだそうです。日本のくつした文化は海外からも注目、なのだそうで。まだまだ掘り出せてないクールがあるんですね。
 https://otakumode.com/shop/53cdb8eef9dc586052000ee4

 次に来るのは?と聞くと、「カレー」との答え。西海岸でも日本のカレーが浸透しつつあると。
 堀江さんも「刑務所カレー」を売ってるといます。
 そうなのか。CiPにカレー屋を誘致するか。
 CiPの設計、進めていきますので、引き続きご指導ください。