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2014年12月29日月曜日

100年前を振り返ってみる。

■100年前を振り返ってみる。
 第一次世界大戦の勃発から100年。この1世紀を振り返る書をいくつか手に取りました。
 

海野弘「1914年」。

 1世紀前の出来事と今はどうつながっているのかを問います。一次大戦の勃発、宝塚歌劇の誕生、モダンアートの発展、相対性理論と量子論。経済と戦闘技術を掘り下げるのが通常のアプローチと考えますが、宝塚、婦人参政権、モダンアートに章を割いているバランスは新鮮といえば新鮮です。

 一次大戦から戦争は軍事力より経済力の問題となったとの指摘があります。それは総力戦であり、軍隊だけでなく全国民が巻き込まれる戦争に変質したということです。だから最終戦にすべきだったのですが、人類はそうはしませんでした。

 ケインズはヴェルサイユ講和条約によって、戦争で破壊された社会がさらに破壊されると見たといいます。ドイツを追い込むことによるその後の破局を予想していたのでしょう。一次大戦の終戦は終戦ではなかったと。

 リチェルソンはインテリジェンスとスパイ活動が20世紀で最も大きく変化した分野としている、との記述があります。インテリジェンス要員は20世紀初めには数千人でしたが、今や数百万人に達します。逆に二次大戦後、外交文書の公開は限定的になったといいます。冷戦が発生し、東西の実質的な戦争が続いたからです。

 他方、一次大戦を機にラジオが進展し、マスメディアの出現と受け手たる大衆が登場したと本書はみています。海軍の無線機を巡るシーメンス事件も1914年。軍事技術と情報技術を読み解くことが100年前も今もポイントだと思います。

 100年を経て、冷戦は終結し、ITが普及し、21世紀も既に1/10を過ぎました。振り返りが今のわれわれに与えてくれるものは何か。いや、われわれは十分に振り返っているのか。類書に手を伸ばす気にさせられました。



井上寿一「第一次世界大戦と日本」。

 外交、軍事、政治、経済、社会、文化という章立てがぼく好みであります。SV構文の短文で点描のように描くリズムも好みです。

 大正時代はバブル経済崩壊後の失われた20年と共通する経済停滞であり、二大政党制の確立に至る政治システムの模索段階。経済的な国際協調を基調とする時代で、大衆が消費社会を支えた、とします。
 百年後の今と重なります。その後の歴史を踏まえると、考えることが多い。なお、大衆の登場に重きを置くのは「1914年」と共通します。ネットによる大衆のエンパワーメントは、「これから」を読み解くための主要項目です。
 
 一次大戦で日本海軍が地中海へ出かけて活躍する模様も、国際連盟で「国際会議屋」が大活躍し、日本の地位向上に貢献した様子も面白く描かれています。では、軍事・外交が弱まった今の日本が国際舞台で活躍するには、経済か、文化か。今の日本が海外に示すプレゼンスをどう評価すればいいでしょう。

 原首相の政治指導、加藤外相の海軍統制、幣原外交によって、日本は軍縮交渉に参加・妥結したとあります。世界大戦という「総力戦」の悲惨さを踏まえ、平和と協調路線に転換したのです。しかしそのころから総力戦=経済戦=支那資源へと陸軍が向かったのは、必然だったのでしょうか。

 一次大戦後、欧州の専制政治は終わり、民主主義が広がり、日本も政党政治となりました。それがその後、簡単に崩れたのはなぜでしょうか。結局、一次大戦は終結していなかったということでしょうか。終結のさせかた(ベルサイユ体制)が悪すぎたということでしょうか。

 1930年、ロンドン軍縮条約に妥結しながら、翌年、満州事変が勃発します。「国民世論は急角度で満洲事変支持に転換した」。大衆社会に移行していた日本が戦争に進んだ責任は(少なくとも一端は)大衆にあります。軍部が・戦争が悪い一辺倒のドラマを見るたび、ぼくには違和感があります。

 在カナダの「帰化した日本人」が参政権を求め義勇兵として欧州大戦に参加し、その多くが死んだといいます。日本国内には義勇兵への賛否両論があったといいます。当時、自分はその海外同胞の悲壮な行動をどう考えたでしょう。無謀だと思ったでしょうか。痛快と見たでしょうか。



(戦前戦中の朝鮮半島のかたがたが、日本国民として戦争に参加し、中には軍幹部となったかたもいて、戦地では日本人以上に勇猛果敢に戦ったひとも多いという。それは日本人として認めさせるための悲痛な行為でもあったのだろう。それに先立つ海外の日本人の行動を、当時ぼくはどう受け止めただろう。今はどう受け止めるべきだろう。)

 9月1日の関東大震災後、三越は10月12日に、高島屋は10月15日に再開した、とあります。同年、小学校の教科書に偉人ダーウィンが登場したそうです。天皇は現人神ではなくなっていたわけです。同時の人たちは、いまわれわれが思い描く以上に、強く、俐発だったのでしょう。

ワルデマール・アベグ「100年前の世界一周」。
 100年前の旅人による世界の写真と文。日本編がすばらしく美しい。
 100年前を特集した書によれば、当時の日本は列強に伍す勢いを示し、国際舞台でも活躍を見せているのですが、海外から眺めれば、やはりまだ極東の、異質な文化をもつ、実に珍しい国でありました。そのギャップがエネルギーを生み、焦りを生んだ、のかもしれません。

2014年12月25日木曜日

JMOOC「ポップパワー」開講!

■JMOOC「ポップパワー」開講!
 2015年2月、オンライン無料講座「ポップパワー」を開講します。
 募集は以下で行っております。
 https://lms.gacco.org/courses/gacco/ga026/2015_03/about

 おためし映像はこちら。
 https://www.youtube.com/watch?v=wGQHxc60s6o&feature=youtu.be

 デジタル技術が切り拓く世界の産業、文化、社会、政策を考える講座です。
 デジタル社会、メディア政策、クールジャパン、デジタルキッズの 4分野からITとコンテンツの持つパワーをどのように最大化するかを考え、実際に「つくる」ことを目的とします。
 講義の内容は平易です。高校生が受講してもわかるようにします。
 この講座の特徴は、「つくる」こと。
•    アプリの企画をつくる
•    メディアのサービスや商品をつくる
•    街づくりのアイディアをつくる
•    教材や授業のプランをつくる
 といったお題が出され、その企画を提出することが求められます。そのうちイケてるものを集めたプレゼン大会を2015年春に開催、産業界・官界のかたがたの前で発表してもらい、スポンサーを見つけます。実際にアイディアを実現することを目標とします。
 講座をリアルプロジェクトに結びつける。できるといいね!をやります。
 タダですんで、お気軽にどうぞ。

講座内容
 本コースでは、デジタル技術が切り拓く世界の産業、文化、社会、政策を考えます。デジタル社会、メディア政策、クールジャパン、デジタルキッズの 4分野からITとコンテンツの持つパワーをどのように最大化するかを考え、実際に「つくる」ことを目的とします。
 キーワードは、メディア、デジタル、技術、 文化、ビジネス、コミュニティ、ネットワーク、コンテンツ、教育、クリエイティビティ。日本のことを通して世界のことを考え、世界からみた日本のことを考えます。
 受講を通じ、新しいアプリやサービス、商品を企画します。企画の内容が優秀な受講者のうち、希望者については、講義終了後に開催されるプレゼン大会にてスポンサーを前に発表し、そこでスポンサーを獲得。実際にアイディアを実現することを目標とします。
第1週:日本型デジタル社会 

第2週:メディア政策
第3週:クールジャパン
第4週:デジタルキッズ

(この講座は、一般社団法人日本 オープンオンライン教育推進協議会(以下JMOOC)公認の、日本初の大規模公開オンライン講座(MOOC)提供サイト「gacco(ガッコ)」(http://gacco.org/)にて開催するものです。)

2014年12月22日月曜日

新・教育情報化ステイトメント

■新・教育情報化ステイトメント

 教育情報化ステイトメントを発出しました。
 教育情報化を前進させるための新しい提言です。
 http://mirainomanabi.net/

 参考までに全文を下記にも貼り付けておきます。

 有識者、自治体の首長、国会議員など100名を超えるかたがたの合意、署名をいただきました。
 飯泉嘉門さん猪子寿之さん大崎洋さん角川歴彦さん川上量生さん季里さん國領二郎さん佐々木俊尚さん白河桃子さん孫正義さん田中孝司さん夏野剛さん藤田晋さん松原聡さん水口哲也さん村上憲郎さん茂木健一郎さん・・・大勢のみなさん、心強い限りです。

 教育情報化ステイトメントは、2012年6月に一度とりまとめたことがあります。
1.    デジタル教科書を正規の教科書とするための制度改正
2.    情報端末/無線ネット/デジタル教科書を配備する予算の確保
3.    教育情報化計画の策定と実行
の3項目でした。その解説はこちらに記しました。
「ボールは蹴ってみるもんだ。」
 http://ichiyanakamura.blogspot.jp/2012/09/blog-post.html

 それから2年経っての新提言。教育情報化は進展を始めましたが、それが故により悩ましい課題も明らかになってきました。そこで、5項目の提言をまとめたものです。
 
1「教育のIT化に向けた環境整備 4ヵ年計画」の実行
 政府は本年「教育のIT化に向けた環境整備 4ヵ年計画」を定め、地方自治体に対し、地方交付税での財政措置として、4年間の総額6,712億円を手当しています。
 しかしこの資金は、交付税の性格上、執行は自治体に委ねられ、多くの割合が本来目的である教育情報化に当てられていないという実態があります。
 自治体の中には既に1人1台の達成に向けて措置している地域もあり、子どもたちの学習環境の地域間格差も既に拡大しています。
 仮に4ヵ年計画が全て措置されたとしても、2017年末時点で情報端末1台当たり3.6人と1人1台にはほど遠く、さらなる強力な推進が必要です。したがって、まずこの計画を早期に達成し、さらに前進を期すべきです。

2 教員のICT活用指導力の向上に向けた取組の実施
 教員のICT活用力、それによる指導力がネックだとの声も聞きます。その人的資源の向上策は重要課題。
 これは文科省が要求している予算項目でもあり、その獲得を求めるものです。

3 教材流通のクラウド基盤とネットワークの整備
 教材の不足も課題です。教員が作るものを含め、教材を共有・流通させるクラウドの基盤と、そのためのネットワークの整備も求められます。
 こちらは総務省の要求項目に対応しています。

4 学校での安定した無線通信環境の確立
 上記ハード・ソフトを整備しても残るであろう難問が学校現場のwifiとブロードバンドによる通信環境。結局はこれが壁となって立ちはだかることになるでしょう。
 これはおカネがかかります。タブレットや教材の整備よりも、大きな資金が必要になります。それを全て国や自治体に求めるのも現実的ではありません。
 これは民間も努力すべき事項でしょう。学校の通信環境のスペックを上げ、将来も見込む長期的な投資として資金を投ずる必要があると考えます。

5 教育情報化を進めるための制度整備の実現
 そして、従来から求めているデジタル教科書正規化のための法制度の整備です。法的位置づけ、検定制度との関係、著作権制度との整合といった課題を解決し、法的問題を解消することを求めます。

 ハード(1)、ヒト(2)、ソフト(3)、カネ(4)、ワク(5)の上記5項目。

 それぞれ主な名宛人は、自治体(1)、文科省(2)、総務省(3)、民間(4)、国会(5)です。

 その全ての項目を、全てのプレイヤーによって、進めること。その総合対策が求められます。

 2015年は、みんなで、この総合対策を推進してまいりたく、ご協力のほどお願い致します。


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教育情報化ステイトメント2014

 ネットワーク化する国際社会の中で日本がさらに発展するためには、「人財立国」しかありません。教育の情報化がその決め手です。

 政府は2013年6月の閣議決定「世界最先端IT国家創造宣言」において、2010 年代中に、1人1台の情報端末配備はじめ、教育環境のICT化を実現することとしています。
 同時に政府は、地方自治体に対し、地方交付税での財政措置として、4年間の総額6,712億円を手当しています。
 しかし、この「教育のIT化に向けた環境整備 4ヵ年計画」は、交付税の性格上、執行は自治体に委ねられ、多くの割合が本来目的である教育情報化に当てられていないという実態があります。
 自治体の中には既に1人1台の達成に向けて措置している地域もあり、子どもたちの学習環境の地域間格差も既に拡大しています。
 仮に4ヵ年計画が全て措置されたとしても、2017年末時点で情報端末1台当たり3.6人と1人1台にはほど遠く、さらなる強力な推進が必要です。したがって、まずこの計画を早期に達成し、さらに前進を期すべきです。

 また、全国でICTを活用した教育が行われるためには、教員のICT活用指導力を高める取組を強化するとともに、端末の種類を問わずに豊富なデジタル教材が利用できるよう、クラウドを活用した教材流通基盤とネットワークを整備すべきです。学校現場での安定した無線LAN等の通信環境を確立することも必要です。デジタル教科書を正規教科書とするための法整備など、教育情報化を進めるための制度整備も求められます。

 地方自治体が4ヵ年計画を自ら実行するとともに、国、企業、学校など関係者が連携して全国の教育情報化の速度を高めることとし、下記5点の推進を宣言します。 

1「教育のIT化に向けた環境整備 4ヵ年計画」の実行
2 教員のICT活用指導力の向上に向けた取組の実施
3 教材流通のクラウド基盤とネットワークの整備
4 学校での安定した無線通信環境の確立
5 教育情報化を進めるための制度整備の実現


参考

◯世界最先端 IT 国家創造宣言  平成25年6月14日
 教育環境自体の IT 化
 学校の高速ブロードバンド接続、1人1台の情報端末配備、電子黒板や無線 LAN環境の整備、デジタル教科書・教材の活用等、初等教育段階から教育環境自体の IT化を進め、児童生徒等の学力の向上と IT リテラシーの向上を図る。
 あわせて、教える側の教師が、児童生徒の発達段階に応じた IT 教育が実施できるよう、IT 活用指導モデルの構築や IT 活用指導力の向上を図る。そのため、指導案や教材など教師が活用可能なデータベースを構築し、府省の既存の子供向けページも教材等として整理し、積極的に活用する。また、企業や民間団体などにも協力を呼びかけ、教育用のデジタル教材の充実を図る。
 これらの取組により、2010 年代中には、全ての小学校、中学校、高等学校、特別支援学校で教育環境の IT 化を実現するとともに、学校と家庭がシームレスでつながる教育・学習環境を構築する。


 ◯教育のIT化に向けた環境整備 4ヵ年計画   骨子
  1)すべての普通教室に電子黒板・デジタル教科書・学習者用ソフトウェア等の整備
  2)教育用コンピュータ1台当たり児童生徒数3.6人の実現
  3)校内の無線LAN整備
  4)ICT支援員の配置

2014年12月19日金曜日

デジタル十大ニュース2014 投票開始

■デジタル十大ニュース2014 投票開始

 デジタル十大ニュース2014の投票を開始しました。
 今年は例年より重要事件が多く、ノミネートは20件。

・日米通信政策動く:SIMフリーとT-Mobile USAの合併中断
・ウェアラブル機器続々:GlassやらWatchやら
・ロボットPepper登場。ロボットペットも復活。
・プロジェクションマッピング流行
・プログラミング教育 本格化
・角川ドワンゴ統合
・妖怪ウォッチ大ヒット
・3DCGアニメ映画大ヒット~洋はアナ雪・邦はドラ~
・mixi モンストで大復活!
・YouTuber大躍進
・ビットコイン狂騒曲
・米女優100人のプライベート写真iCloudから流出
・ベネッセ個人情報流出
・特定個人情報保護委員会設置と特定秘密保護法施行
・パソコン遠隔操作事件 ースマホ埋めて逮捕ー
・3Dプリンター事件:銃とかわいせつなものとか
・LINE詐欺横行。対処方法も話題に。
・論文コピペ発覚で大問題~STAP細胞はあります~
・非実在小4、どうして解散するんですか?を問う
・LINEで決闘:「決闘罪」が適用される

選りすぐりです。ほかにもXPサポート終了とかiPhone6とかいろいろあったんですが、惜しくも決勝に残れず。

投票はこちらから。
 http://bit.ly/12x2jQk

ノミネート事件のNAVERまとめもあります。ご参考まで。
 http://matome.naver.jp/odai/2141843305745371501

東京まりんが 勝手解説をしてくれてます! ご参考まで。
(前編)
 https://www.youtube.com/watch?v=KEhrZfOSbzY&feature=youtu.be
(後編)
 https://www.youtube.com/watch?v=4ZiLvQQ9vHs&feature=youtu.be

結果は来年2月6日(金)赤坂にて開催の「デジタル新年会」で発表します。


250名程度のデジタル、コンテンツ、IT業界のパーティー。

こちらへのご参加も受け付けております。
 
 http://digital-signage.jp/event/


ちなみに、過去3年の十大ニュースは以下のとおりです。

◯デジタル十大ニュース2013
 http://ichiyanakamura.blogspot.jp/2014/02/2013.html

1位 バルス祭り 14万tweet 世界記録塗りかえる

2位 特定秘密保護法とNSA通信傍受

3位 3Dプリンター低価格化で身近に

4位 オープンデータ進展

5位 冷蔵庫に入る若者たち~炎上相次ぐ

6位 ホリエモン出所

7位 あまちゃん・半沢直樹、テレビの底力

8位 4K8K/Hybridcast次世代テレビに期待感

9位 大阪市・荒川区・武雄市が2015年度までに子どもにタブレット配布

10位 ウェアラブル・コンピュータ時代到来か


◯デジタル十大ニュース2012

 http://ichiyanakamura.blogspot.com/2013/01/2012_26.html



1位 どないしてん日本家電産業
2位 LINE8000万人、無料通話ソーシャルサービス戦国時代へ

3位 違法ダウンロード刑罰化

4位 コンプガチャ問題

5位 炎上大国ニッポン:市長も社長も教育長も

6位 ソーシャルなデモ多発:原発やら反日やら

7位 遠隔操作ウィルスで警察手玉に取られる

8位 アノニマス大暴れ!ACTAとか霞ヶ浦とか

9位 スマートテレビ始動:放送、通信、メーカーの本格対応

10位 ビッグデータは宝の山?



◯デジタル十大ニュース2011
 
http://ichiyanakamura.blogspot.com/2012/01/2011_14.html



1位 スマートフォン急激に普及 上半期出荷台数は1000万台超

2位 スティーブジョブズ氏死去

3位 復旧作業や安否確認にソーシャルサービスが活躍

4位 通信・放送融合法制が施行

5位 震災後 TVのネット配信が一時実現

6位 facebookの加入者 日本で1000万人突破

7位 タブレット端末 各メーカーから出揃う

8位  地デジ、被災三県除き整備完了

9位 DeNA野球参入に楽天が反対

10位 サイバー攻撃相次ぐ

2014年12月18日木曜日

もしもしにっぽん:絵文字

■もしもしにっぽん:絵文字

 きゃりーぱみゅぱみゅさん主演の「もしもしにっぽん」。
 http://www.jibtv.com/programs/moshimoshinippon/
 ICHIYA’s POP EYE、「絵文字」の巻。

 スマートフォンで、絵文字って使ってます?

 ハートのマーク、音符、動物、顔の表情。いろんなマークがあって楽しいよね。
 日本では、インターネットが登場した当初から、絵文字が盛んに使われてきました。そして、顔文字も発達した。

 たとえば、これは、笑っている表情を表しています。    
 (^_^)  
 西洋で使われている顔文字で、笑いの表情はこれでしょう?
 :-)
 日本の顔文字は顔が正面を向いているけど、西洋のは横向き。日本の顔文字は目の形で感情を表現するのに対して、西洋の顔文字は口で表現をします。
 いろんな表情を見てみましょう。
 とてもうれしい表情。手を挙げています。
 \(^▽^)/
 大勢の人がもっと喜んでいます。
 \(≧∇≦)/\(≧∇≦)/\(≧∇≦)/\(≧∇≦)/
 泣いています。両目から、涙が流れています。
 (T_T)
 怒っています。目が怖い。
 \(*`∧´)/
 大勢が怒っています。口の形が不満を表しています。
 ヾ(`ε´)ノヾ(`ε´)ノヾ(`ε´)ノヾ(`ε´)ノ
 謝っています。頭を下げて、両手をついています。
 m(_ _)m

 日本は文字情報以外の表現が豊かです。昔から絵文字を文字の代わりに使ってきました。それぞれの家には家紋というマークがあって、それをコミュニケーションに使ってきました。1000年前には、服の色の組み合わせでその日の感情を表すという、色のコミュニケーションもあったといいます。
 擬音語や擬態語の数がとても多いのも特徴。ニコニコ、は喜んでいる表情を表す。ドキドキ、は緊張している様子を表す。ハラハラ、は心配している様子。イライラ、は怒っている様子。
文字や言語という論理的なものではない、記号のような非論理的なものを使ったコミュニケーションが豊かです。

 それが発達したものが、「スタンプ」です。LINEというスマートフォンのアプリケーションでは、スタンプとよばれる絵文字が盛んに使われています。笑ったり、怒ったり、驚いたりするキャラクターの絵を使ってコミュニケーションがされています。スタンプだけで、つまり全く文字を使わないコミュニケーションが成立しています。日本の生んだLINEというサービスは世界5億人が使っていて、日本風のコミュニケーションが広がっているのです。
 LINEのスタンプを自分で作って売るサービスも始まって、わずか1か月の間に1万セットを超えるスタンプが登録されたといいます。自分で絵を作って、自分で表現する時代になってきましたね。
 文字が発明されたのは何千年も前のこと。グーテンベルクが活版印刷を発明してから560年になります。それほど長い間、人類は文字でコミュニケーションしてきました。だけど、これからは、絵でコミュニケーションするようになるのでしょうか。
 どう思います?

2014年12月15日月曜日

小学生に反転授業は可能か?

■小学生に反転授業は可能か?

 デジタル教科書教材協議会 DiTT が「小学生に反転授業は可能か?」というシンポを開きました。反転授業。タブレットなどで映像で予習して、授業は議論したり応用問題に取り組んだりする。家で予習、学校で復習。学校で習って家で宿題で復習する授業を「反転」するからそう呼ばれてるんですね。もとは英語のflipped classroomの直訳なんですけど、それが日本でも少しずつ高等教育で実態が現れてきたというんで、先駆者の方々に「それって小学校でもイケるの?」というお話を伺ったんです。
 国内で最初に反転授業を導入した宮城県富谷町立東向陽台小学校の佐藤靖泰さんと、今年度から反転授業の実施を開始した武雄市教育監で武内小校長の代田昭久さん。場所は東京大学。ニコ生中継したところ、1万5千名のかたにご覧いただきました。
 
 佐藤先生は、一人一台のタブレット端末を使わせつつ、電子黒板やプロジェクタで授業を進めたそうです。でも、生徒が家で映像を見るために、映像コンテンツを一台一台、手入力されたんですと。ネット一斉配信ができなかったんですね。いやあ、そりゃ大変だ。
 反転授業をやってみて、保護者からは、「先生の授業が保護者も見ることができて役立った」という声があったそうです。子どもだけじゃなくて、保護者も学校の授業に参加することができる。学校が地域に開かれる。これは一つの大事な効果ですよね。
 子どもからは、「人の考えにつられずに自分の意見を言えるようになった」とか、「家で予習をするクセがついた」といった声。まあそうでしょうね。その上で佐藤先生は、「この授業スタイルは、授業デザイン力や子どもを把握する力などを教師につきつける」といいます。導入するにも覚悟が要ります。動画を自作するコストなど、教員の負担増は厳しい課題です。

 代田先生。武雄市では市内全11小学校で70名の先生が参加し、600回の反転授業が行われているそうです。6年生の算数の授業で聞いたところ、授業がわかった94%:わからない6%。全国アンケートでは、わかった80%:わからない20%。普段の授業より反転のほうが楽しい、は70%。変わらない・楽しくないは30%だそうです。有意の効果ですよね。
 武雄市の反転授業は、そう呼ばず、「スマイル学習」と呼んでいます。当初、この授業を導入しようとしたところ、保護者から「家で私が教えるなんてムリ!」という反応があったとか。その誤解は、「反転」というネーミングにあるんじゃないか?ということで、呼び名を先生から募集して、「スマイル」に落ち着いたんですと。
 取り組む目的は3つ。子どもが「意欲」的に取り組める。教員が子どもの実態を「把握」する。授業では問題解決「能力」を育てる。意欲・把握・能力ですね。その成果は上がっているんでしょう。これまで受動的だった子どもたちがより主体的になる。教師が講義形式から協働学習へとスタイルを変える。その方向も出ているようです。
 ただ、課題は山積。どの教科でどの程度、実施するのか。動画コンテンツは誰がどう作るのか。授業内容をどのように評価するのか。これはわれわれも協力して、一つ一つ明らかにしていきたい。
 
 デジタル教科書教材協議会DiTTを設立して4年。子どもに一人一台のコンピュータをと唱えてきましたが、「パソコン売りたいだけだろ」「ネット業者の手先」「中村伊知哉は電子工作員」といった批判を受けてきました。
 そのたび、授業が変わるんです、教わるから学ぶに変わるんです、と説明してきたものの、迫力に欠けていました。でも、やっとその実態や成果が学校現場に現れてきた。語るべきひとたちが現れてきたと思います。
 彼らは課題を抱えています。反転授業によって、先生の「負担感」が重くなる。コストもかかる。保護者が急速なデジタル化に不安を抱く。そうした課題を解消するのは、もはや政府の仕事ではありません。学校・自治体、そしてぼくたち民間の関係者、みんなで解いていくしかない。
 佐藤先生「日本の先生はみんながんばっている。それが成果となるよう、広げていきたい。」代田先生「文科省の問題ではなく、それぞれの学校にたまっている成果を活かす。いい先生とはどんな先生か。それを考えて、広げていきたい。」そのとおり。こんなイベントに時間を割いて参加し、ニコ生を見ている多くの先生は、いい先生です。

 文科省は教育情報化4ヵ年計画を立てました。現在、6.5人に1台のコンピュータを一人1台にするのは大変です。文科省はそのための予算6712億円を用意し、年1678億円でこれを進めます。2017年度末には、これによって3.6人に1台まで進みます。一人1台には達しませんが、まずこれを経ないことには始まりません。
 でも、この予算は「地方交付税」として自治体に配分されているものでして、ヒモつきではないので、それを使うかどうかは自治体任せなのです。これが道路や橋に化けたりしているんですよ。国としては措置済み。でも地域のニーズが低ければ使われない。
 武雄市、東京都荒川区、大阪市など、首長の馬力で教育情報化を進める地域は、予算はあるから進みます。そうでない地域は予算はあるけど進みません。つまり今、格差がハッキリ現れる状況になってきているんです。全国の自治体、全国の首長がどう認識するか、で道が別れるんです。 

 今回、2地域による反転授業=IT授業の実態を教えてもらいました。こうした実例、こうした成果をいかに全国に伝播させるか。これがぼくらの仕事です。

2014年12月11日木曜日

IT政策の動向と展望 3.日本のIT政策 10の論点

■IT政策の動向と展望 3.日本のIT政策 10の論点

 スタンフォード大学と共同開催の「IT政策研究会」にぼくが提出したペーパー「IT政策の動向と展望」の第3項、「日本のIT政策 10の論点」です。極めて乱暴ですが、こうした論点を掘り下げて、何が大事なアジェンダで、どの方向に進めていくべきかを研究会の中で論じていきたいと考えます。



 上記の問題意識を下敷きにしつつ、現在の日本のIT政策に照らして、今後の政策アジェンダを決めるために重要となる10の論点を抽出してみる。これらに対し方向性を議論し、早急に結論づけることが求められる。
 

1) 競争政策
 競争政策は有効かつ十分か。事業者行政はなお必要か。電気通信事業法の存廃条件は何か。
 

2) ユニバーサルサービス政策
 今後のユニバーサルサービスとは何か。ユニバーサル行政は必要か。
 

3) コンテンツ政策
 放送の多元性は十分か。放送とネットのコンテンツ規制は並立か一体化か。
 

4) 特殊法人管理
 NTT法の存廃条件は何か。NHKの公共性は何がどこまで求められるか。
 

5) IT政策
 IT政策は強化すべきか。全政策の中にIT利用施策を埋め込み、IT政策自体は縮小か。
 

6) 知財政策
 知財政策は強化すべきか。著作権制度はリニューアルすべきか。
 

7) 支援措置
 国家主導による技術開発、産業開発の位置づけは変化するか。
 

8) 国際
  国際と国内のルール差はどこまで正当か。TPPや技術標準のような国際ルール化は重要性を増すか。
 

9) 国家と企業
 各国制度とグローバル企業の行動とが衝突する際の調整スキームをどう講ずるか。
 

10) 行政組織
 内閣官房、総務省、経産省、文科省その他に分かれた行政組織は見直すべきか。

2014年12月8日月曜日

デュフィのこと

■デュフィのこと



 ラウル・デュフィに最初に触れたのは、たしか1983年、神戸。兵庫県立美術館に巡回してきたのを、見に行ったんです。英ポスト・パンク、The Durutti Columnという軟弱なバンドのLPレコードのジャケットに使われていた絵が気になり、その画家を知りたくて。


  
対象の線と、色、光とがズレていて、とりどりの青、とりどりの赤がちりばめられた空間構成。透明で、独特のリズム。絵画なのに、躍動している。弾けている。ぴち、ぱち、と音がする。
ほかに見たことのない線と色と光の幸せな画風に、ぼくは生まれて初めて「ああ、この画家、スキだ」と信じました。


 
それから10年後。パリ滞在の機会を得て、あちらこちらに足を運びました。オルセー、ポンピドー、オランジュリー。パリ市立近代美術館の巨大壁画「電機の精」の前には何度たたずんだことでしょう。
市街にある画廊を訪れては、大金持ちになるってのはこれを買うってことを意味する、と認識しつつ、そんな夢は遠いまま20年です。
いいんです。世界のどこかに、死蔵されずに、その幸福な絵が散らばっていれば。


 
故郷、ル・アーブルにも行きました。若いころの抑えた色彩はノルマンディーのそれですよね。
しかし、たくさん風景を描いたニースの光、町並みを描いたヴァンスの光、南仏コートダジュールの輝きがデュフィの真価を引き出しました。



ニースの海岸に、かつて「デュフィ美術館」がありました。
90年代、そこも何度か訪れました。
十年ほど前に改めて訪れたとき、それがなくなってましてね。
フランスは、大切なものがなくなったり、いらないものが現れて押し付けられたり、めんどくさい国でありまして、たいていのことには「またかい」と諦めるのですが、これには慌てまして、あちこち聞き歩き、ようやく、「ミュゼ・デ・ボザール」に移設されたことを突き止め、でもその時は閉館中で、まぁよくあることで、なんせこちとらオランジュリー美術館が工事を始めて再開まで6年も待たされたりしてますんでね、世界のどこかに散らばっていればいいんです、その数年後に改めてニースを訪れて再会。 



で、先日もまたニースを訪れまして。
「ミュゼ・デ・ボザール」です。
どこにも行かずにいてくれました。
タダだし。
パシャパシャ写真撮ってたら大きな黒服のお姉さんが近づいてきたんで、あ、フォト禁止になったのかな、と思ったら、記念写真とってくれるって言うんです。
ありがとう。幸せです。



 
そして、「リヨン美術館」ここの名物は、デュフィの壁画のあるカフェ。いや、カフェつきのデュフィ。
窓を開けて、外光を浴びたデュフィとともにたたずみ、日がな茶を飲む。
それだけで、リヨンに来る値打ちがあります。ぼくには。


 
日本にもたくさんあるんです。
宍道湖畔にある島根県立美術館には「ニースの窓辺」があります。
茨城県近代美術館にもいいのがあります。
国立西洋美術館、ブリジストン美術館、メナード美術館。
ぼくはもうだいたい行ったかな。



で、さきごろ渋谷文化村で開かれたデュフィ展をのぞいたんですが、初見の作品が多くてびっくり。あちこちに散らばっていて、まだ見てないものがたくさんあるもんです。


NHK日曜美術館がその展示会の特集を組んでいました。
ぼくは彼が色で歓びを表現しているのだと思っていました。
でも日比野克彦さんが、そうではなくて彼は色を問いかけているんだと話していました。
うん、そうかもしれません。



茂木健一郎さんは、デュフィの青は万物をつなぐものと評していました。
空も生物も家具も青で染める確固たる手法は、そうしたメッセージを含んでいるのかもしれません。
彼の絵は、ポップで、平易で、敷居が低い。
どんな解釈も笑って許してくれる間口の広さがあります。


でも彼は、マチスで絵の自由を知り、表現を解放しようとして、苦しむことになったといいます。
ワクがあるほうが楽に生きられるというのは、ぼくのような凡人には当然でも、天才もそうなんですかね。

彼が表現の枠を取り払おうとしてから自分のスタイルを確立するまでに、いろんな挑戦があったといいます。
ぼくらはその苦しみを、成長や変遷として楽しませてもらっています。総体として幸せにしてもらっています。


パリ・モンマルトルに彼のアトリエが残ってるんだそうです。知りませんでした。また行くべきところが増えてしまいました。

2014年12月5日金曜日

JASGAとCESAの合併

■JASGAとCESAの合併


 12月2日、JASGAとCESAは合併を発表致しました。
 CESAを存続法人、JASGAを消滅法人とするもので、2015年4月1日に実施されます。
 既に報じられているとおりです。

「CESA : ソーシャルゲーム協会と来年4月合併 JASGA2年で消滅へ」
 http://mantan-web.jp/2014/12/02/20141202dog00m200001000c.html
 http://news.mynavi.jp/news/2014/12/02/206/

 JASGAは2012年11月8日、一般社団法人として設立されました。当時、コンプガチャ問題などソーシャルゲームに対する不安や社会的な問題が呈される中、お客様がより安心して安全に利用できる環境を整備していくことが急務とされたのです。
 業界的にも行政的にも政治的にも厄介な状況で、火中のアッツアツの栗を拾うかたちで、ぼくが事務局長に就きました。
 そして、自主規制、啓発活動、カスタマーサポート品質の向上を3本柱として活動を続けてきました。
 そのあたりの経緯はかつて記したとおりです。

「ソーシャルゲーム協会JASGAの設立」
 http://ichiyanakamura.blogspot.jp/2012/11/jasga.html

「ぼくがJASGAの事務局長を務めることになったワケ」
 http://ichiyanakamura.blogspot.jp/2012/11/jasga_19.html

 2年が経ちました。その間、当初目論んでいたことは一定の成果を上げたと考えます。
 一方、ゲーム業界の構造は激変しました。ガラケーからスマホに主軸が移り、DeNAやGREEが主役だったプラットフォームではGoogleやAppleが大きな力を持っています。当時mixiはプラットフォーマーという位置づけでしたが、今はゲーム大手の顔のほうが目立っています。

 当初から申し上げているとおり、この業界にとっては、「安全・安心の確保」以上に、産業基盤の形成や国際競争力の強化が重要な課題です。このため、「目の前の問題を早期に片づけて、大きく成長するための運動に乗り出したい」、「新しい文化、新しい産業を形成してくれることを願いつつ」活動を続けてきました。
 
 しかし、環境が激変する中で、そうした発展策を進めるには、より大きな業界全体の対応を強化することが不可欠です。JASGAとCESAの合併は、ゲーム業界発展のため、現時点で採るべき最善の策と考えます。CESAとは発展的な合併であり、JASGAは発展的な解消です。

 ぼく自身にとっては、自分のクビを切る仕事です。たま〜に、自分のクビを切って前に進めるという仕事をすることがありますが、今回はその中でもいい仕事だったと自負します。
 2年間ありがとうございました。
 引き続き、業界へのご指導ご鞭撻をお願い致します。

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引用
【一般社団法人コンピュータエンターテインメント協会(CESA)と一般社団法人ソーシャルゲーム協会(JASGA)の合併のお知らせ】

 一般社団法人コンピュータエンターテインメント協会(会長:鵜之澤伸、以下CESA)と一般社団法人ソーシャルゲーム協会(共同会長:田中良和、守安功、以下JASGA)は、本日開催のそれぞれの社員総会において合併が承認され、以下のとおり合併することになりましたので、お知らせ致します。

1.合併の趣旨
 ゲーム産業は、従来の家庭用ゲームに加え、様々なスマートデバイスに提供されるネットワークゲーム分野の拡大と進化が著しく、これらの事業領域を広くカバーし、消費者の皆様に安心、安全で良質なコンテンツやサービスを提供し、産業の発展に寄与するため、両団体が合併することが最善との合意に至りました。

2.合併の概要
(1)合併形態
  CESAを存続法人、JASGAを消滅法人とする吸収合併。
(2)合併期日
  2015年4月1日。
(3)合併後の活動
  JASGAで行われて来た、啓発活動、カスタマーサポート向上活動については、CESAで引継ぐものとする。
(4)事務所
  事務所については移転・統合する予定である。