■Buenos ホリエモン、最後の授業-2 「研究所を作りたいな」
続いて堀江さんのお話。研究所を作る提案。これはぼくも長年やりたいと思っていたこと。というか、MITでもスタンフォードでも慶應でも、それをやりたくてもがいてきたライフワークのようなもの、が堀江さんの口から出てきたので、おおっとなった次第。
中村:Google、フェースブックはアメリカの大学から出てきました。日本の大学はどうしたらいいですかね。
堀江:日本の大学は金がないですからね。できないことはないけれど、まあ、これを変えるのは大変だから、俺だったら研究所を作りたいなと思います。
中村:おお、作りましょう!
堀江:あと、大学ってまずは年齢制限がある。18歳まで入れないことになっています。飛び級がないのもおかしいですね。
中村:MITなんて、子どもみたいな人とかもいますよ。
堀江:高校とかつまんなかったですね。受験勉強だけですから。面白いことを研究できるわけでもありません。16歳になったら誰でも大学に入れることがまず必要。先生が授業をしているわけですが、そんなのは自習とか先輩に聞けよと思います。試験も要りません。
中村:ケータイでYahoo!知恵袋に聞いちゃうような人はどうでしょう!? 入試もパソコン、ネットありになると思うのですが。
堀江:いいんじゃないでしょうか。そもそも試験は面接でいい。
中村:大学の腹積もりが問われる、と。
堀江:勉強は自習でいいと思います。俺は自習しかしていません。分からないところだけを聞きにいきます。大学の授業は多少出ましたが、ほとんどの先生は自分の本に書いていることしか言わないので、本を読めばいいだけです。僕の考える研究所では研究だけする、面接で決める、年齢制限はない、というものです。中学生も入れたい。そういう形のものをつくることですね。
中村:いいなぁ。
堀江:研究開発は金がかかります。実際に自分たちで何かやると機材が必要です。ずっと寄付だけでまかなうことはできません。起業して、研究機関にお金が戻ってくる仕組みが必要です。
中村:Googleではスタート時にスタンフォードの学長が役員として入ったりもしました。
堀江:僕はIT分野なら目利きはできますよ。いい会社、投資したい会社というのはあります。グリーの田中君が会社を作った時に投資させてくれといったらダメだった。サイバーエージェントもダメでした。三木谷さんのところには10%ぐらい出資しました。
中村:それは堀江さんがダメということだったんでしょうか?
堀江:個人だったらいいですよという感じですね。僕は個人では一切投資しなかったんです。利益相反になるからです。僕は科学技術投資に特化したい。潤沢に資金を与えて、スピンアウトを進めて、研究開発投資だけでぐるぐるまわっていく研究所の感じです。戦前の理化学研究所とかはそうですね。
中村:理研。戦前、田中角栄が関わっていた機関。
堀江:東大農学部にいたビタミンBを発見した人は、ビタミン製剤を作って売っていました。理研ビタミンはそこから来ています。リコーも理化学研究所のスピンアウトです。理化学研究所があって、スピンアウトしたのが理研コンツェルンです。日本の国力増強のために事業規模を拡大していきました。その各種企業から、リコーのような世界的な企業が出ています。今でもそういう研究のシーズはいっぱいあるはずです。東大ができてないのは、それを積極的に事業化することです。
中村:なるほど。
堀江:あとは研究室に金が降りてこないことです。僕は研究者になりたかったんですが、ならなかった。
中村:なんで?
堀江:駒場寮の同室の先輩がドクターでした。ナノテクを研究していて、まだカーボンナノチューブが発見されてなかったころ、研究室に実験を見に行きました。最先端の研究室の計測コンピューターがApple2のパチモンでした。台湾製のApple2だったんです。パチモンを買ってきて、研究室で使っていたんです。天下の東大でこれか、と感じました。よっぽど金がないんだな。彼ら、二言目には科研費、科研費といいます。単年度予算なので、裏金も作ろうとします。それじゃあね・・
中村:研究所は頭の中ではもうできあがっている?
堀江:そうですね。シードマネーの話はありますが、これはぜひやらないといけない。東大とかにはできないかもしれません。ライブドア時代に科学技術系のファンドを作ったこともあります。
中村:民間の資金で投資しようとするのは意味がありますね。
堀江:これは出てからの話ですね。何十億円か集めて、そういうのを最初にバンとつくれば、頭のいいやつは東大に入らない。お前いいからうちに来いという感じです。今、研究開発投資に金が使えなくなっている。
(つづく)