■リヨンの街角から
この町、路地が多いです。トラブールというんです。重い扉を押して建物に入ると、狭い小路。奥には数平米の吹き抜け空間と、作業場と、塔。そして向こうの道へと抜けます。かつて絹織物の職人たちが、巻物を濡らさずに運び、しかもデザインを盗まれぬよう知財管理の工夫として設けたそうです。
19世紀には蚕の病気が広まり、日本の生糸と蚕が大量に入ってきたとか。逆にフランス人技師が日本に招かれて富岡製糸場が造られたとか。そうして互いに世界遺産になっているのですね。
ガダーニュ博物館には絹をまとう文楽の人形が威容を誇っていました。
もちろん、さすがヨーロッパというデザインにもでくわします。
窓の少ない壁一面に描かれただまし絵。リヨンの古い建物は、表向き窓が少ないのですが、裏側に回ると窓が多い。昔、ぜいたく税として、窓に税がかけられていたんですと。
だからですね。外は粗末にしておいて、中に入ると空間を備えて、窓から光を取り込む。それは京町家の造りです。路地が多くて絹織物の産地とあれば西陣を想います。ローヌ川とソーヌ川が合流して、川が町の中心を貫く、そんな点も京都を想わせます。
町を川がヨコに区切って、中之島(シテ島)があって、通天閣(エッフェル塔)がある点でパリは大阪だと思っておりました。リヨンは京都です。フルヴィエールの丘、円形劇場が遺るとおり、フランスがガリア地方だった時代の都がリヨンなのです。人口もほぼ同じ。
なのに姉妹都市は横浜なんですよね。
ぜいたく税のような政策は、町の姿も変容させます。でも、より直接的に町をプロデュースして注目を集めているのが「コンパクトシティ」。中心市街地への集中を促し、公共交通機関を充実させたエコな都市のモデルとして、リヨンはバルセロナやビルバオなどと並び、国際的な注目を浴びています。
世界遺産の旧市街の古い建造物と好対照に、ローヌ川とソーヌ川の交わるあたりには過激な建築物が並びます。
街を縫うトラムはそのデザインで世界に知られます。そしてトロリーバスとメトロ。エコな公共交通機関が面的に整備されていて、車が少ないというのもコンパクトシティの条件。
EVカーシェアリングもあります。電力をIT管理するスマートシティの実験も進められています。東芝が主導で進めている、そう、福山雅治さんがCMで伝えているプロジェクトです。
そうそう、リヨンの空港はサン・テグジュペリ空港って言うんです。スキなんですね、サン・テグジュペリ。ぼくがパリに住んでいたころ出回ったこの50フラン札。星の王子さまが小さくたたずむ。使うのが惜しかった。今は使えないのが惜しい。 パリの空港はシャルル・ド・ゴール。軍人にして英雄。さしずめ東郷平八郎元帥。日本に東郷平八郎空港はできそうにないですね。東郷ビールはフィンランドのものだし。サン・テグジュペリに当たるのは誰でしょう。愛されたアーティストであり、郵便飛行士。手に職のある芸術家。医者でもあった手塚治虫か。手塚治虫空港ならできるかね。
ぼくにとってリヨンのハイライトはリュミエールさんのおうち。映画の発明から120年になります。フランス語で光、その兄弟がここで最初の映画「リュミエール工場の一日」を撮りました。おかげさまで映像の20世紀を経て、スマートの21世紀に突入しています。
でもリヨンのメトロで観察していると、スマホより読書率のほうが高い。にわかにデジタルの軍門にはくだらない。フランスは。訪れたころ、あちこちの店が「8月は休み」と閉めていました。営みが変わらない。
もう一つ、リヨンのハイライトは、リヨン美術館カフェにあるデュフィの壁画。でも、デュフィのことは長くなるので、別途。
で、まぁリヨンですから美食ということですが、安い食堂に入れば仔牛の頭とか肝臓とか胸腺とか、素敵なメニューがある。腎臓を頼んでみたら、グロ注意、1個まるごとニョロンと現れた。この上なく粗野にして繊細、ゴツくてクサくて、たまりません。
日本語でジンゾウ、英語でキドニー。どちらも濁音だけど、フランス語でロニョン。愛くるしいね。またこれを食べに参ります。
この町、路地が多いです。トラブールというんです。重い扉を押して建物に入ると、狭い小路。奥には数平米の吹き抜け空間と、作業場と、塔。そして向こうの道へと抜けます。かつて絹織物の職人たちが、巻物を濡らさずに運び、しかもデザインを盗まれぬよう知財管理の工夫として設けたそうです。
19世紀には蚕の病気が広まり、日本の生糸と蚕が大量に入ってきたとか。逆にフランス人技師が日本に招かれて富岡製糸場が造られたとか。そうして互いに世界遺産になっているのですね。
ガダーニュ博物館には絹をまとう文楽の人形が威容を誇っていました。
もちろん、さすがヨーロッパというデザインにもでくわします。
窓の少ない壁一面に描かれただまし絵。リヨンの古い建物は、表向き窓が少ないのですが、裏側に回ると窓が多い。昔、ぜいたく税として、窓に税がかけられていたんですと。
だからですね。外は粗末にしておいて、中に入ると空間を備えて、窓から光を取り込む。それは京町家の造りです。路地が多くて絹織物の産地とあれば西陣を想います。ローヌ川とソーヌ川が合流して、川が町の中心を貫く、そんな点も京都を想わせます。
町を川がヨコに区切って、中之島(シテ島)があって、通天閣(エッフェル塔)がある点でパリは大阪だと思っておりました。リヨンは京都です。フルヴィエールの丘、円形劇場が遺るとおり、フランスがガリア地方だった時代の都がリヨンなのです。人口もほぼ同じ。
なのに姉妹都市は横浜なんですよね。
ぜいたく税のような政策は、町の姿も変容させます。でも、より直接的に町をプロデュースして注目を集めているのが「コンパクトシティ」。中心市街地への集中を促し、公共交通機関を充実させたエコな都市のモデルとして、リヨンはバルセロナやビルバオなどと並び、国際的な注目を浴びています。
世界遺産の旧市街の古い建造物と好対照に、ローヌ川とソーヌ川の交わるあたりには過激な建築物が並びます。
街を縫うトラムはそのデザインで世界に知られます。そしてトロリーバスとメトロ。エコな公共交通機関が面的に整備されていて、車が少ないというのもコンパクトシティの条件。
EVカーシェアリングもあります。電力をIT管理するスマートシティの実験も進められています。東芝が主導で進めている、そう、福山雅治さんがCMで伝えているプロジェクトです。
そうそう、リヨンの空港はサン・テグジュペリ空港って言うんです。スキなんですね、サン・テグジュペリ。ぼくがパリに住んでいたころ出回ったこの50フラン札。星の王子さまが小さくたたずむ。使うのが惜しかった。今は使えないのが惜しい。 パリの空港はシャルル・ド・ゴール。軍人にして英雄。さしずめ東郷平八郎元帥。日本に東郷平八郎空港はできそうにないですね。東郷ビールはフィンランドのものだし。サン・テグジュペリに当たるのは誰でしょう。愛されたアーティストであり、郵便飛行士。手に職のある芸術家。医者でもあった手塚治虫か。手塚治虫空港ならできるかね。
ぼくにとってリヨンのハイライトはリュミエールさんのおうち。映画の発明から120年になります。フランス語で光、その兄弟がここで最初の映画「リュミエール工場の一日」を撮りました。おかげさまで映像の20世紀を経て、スマートの21世紀に突入しています。
でもリヨンのメトロで観察していると、スマホより読書率のほうが高い。にわかにデジタルの軍門にはくだらない。フランスは。訪れたころ、あちこちの店が「8月は休み」と閉めていました。営みが変わらない。
もう一つ、リヨンのハイライトは、リヨン美術館カフェにあるデュフィの壁画。でも、デュフィのことは長くなるので、別途。
で、まぁリヨンですから美食ということですが、安い食堂に入れば仔牛の頭とか肝臓とか胸腺とか、素敵なメニューがある。腎臓を頼んでみたら、グロ注意、1個まるごとニョロンと現れた。この上なく粗野にして繊細、ゴツくてクサくて、たまりません。
日本語でジンゾウ、英語でキドニー。どちらも濁音だけど、フランス語でロニョン。愛くるしいね。またこれを食べに参ります。