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2018年1月29日月曜日

ウルトラQの50年

■ウルトラQの50年

 小野俊太郎「ウルトラQの精神史」を読みました。1966年の放映から50年、総ざらえした好著。全28話、それぞれ珠玉の、多様で多角的な作品群を、テーマ別に全て分析を加えた本書は、研究素材としても一級品です。ぼくの原体験番組であり、作品と時代に対する自分の強い思いが激しく揺さぶられます。

 日曜の晩、オバQの後に始まるウルQ。7時~8時の至福。なのに、ヒーローは登場せず、人間がもがき苦しんで事件を解決する、子どもの理解を超える物語。怪獣(ペギラやガラモンやケムール人)だけでなく、動物(植物やモグラやクモ)、人(幽体離脱や1/8計画)など事案も多様でした。

 時代背景も複雑でした。東京五輪と新幹線開通を2年前に済ませ、高度成長、公害、環境破壊。世界はベトナム戦争と宇宙開発競争。それら時代の物語を背負って、TBSに集結した大人たちがたっぷりと愛情をもって練り上げた作品群。その愛情は、シナリオや映像だけでなく、それぞれの作品に用意された豊かな音楽が代表しています。

 敗戦から20年のタイミングは、戦争もまだ引きずっています。ペギラを撃退したのはゼロ戦のパイロットくずれでしたし、旧日本軍が管理していた薬品のせいで巨大化したサルの物語もあります。視聴者にとって戦争がまだ身近だったんです。

 五輪が開かれ首都高が開通した東京には、攻撃が集中します。古代植物マンモスフラワーが丸の内のビルを突き破り、ペギラは東京を凍らせ、ガラモンは東京タワーを破壊し、風船怪獣バルンガは東京のエネルギーを吸収します。(バルンガがアルベール・モリス「赤い風船」の読み替えだったとは不覚にも本書で気がつきました。)

 ウルトラQのことは、いずれゆっくり整理したいと思いつつ、本書に刺激を受けてしまったので、名作と考える5作品だけコメントして、今後のわが整理作業のきっかけにしておこうと思います。


1.「ペギラが来た!」「東京氷河期」
 あの恐ろしいペギラが東京に来ます。東京を凍らせます。でもペギラは脇役。主役は父子の二人です。ゼロ戦の名パイロットがアル中に身を落とし、泥棒を働いている。それを秋田から追って上野にたどりつく息子。濃い時代背景と物語。

 ペギラに特攻をかけて散る父親と、その遺影を抱え東北本線に乗って帰る気丈な息子。そんな番組、子ども向けじゃなくてももう見られません。なお、この父親の死は、ジャイアントロボとギロチン帝王の決戦や、五星戦隊ダイレンジャー「神風大将」の玉砕に受け継がれる日本風の決着法です。

 ペギラは東京の電波を麻痺させます。ウルトラQでは電波が重要なモチーフです。ガラモンも電波で操作されました。ケムール人は電波で退治しました。当時は電波の時代でもあったのです。


2.「ガラダマ」「ガラモンの逆襲」
 怪電波を発信する合金の隕石。それは電子頭脳であり、恐ろしいガラモンはそれに操作される肉体にすぎない。ハード・ソフト分離です。だからガラモンは複製が可能で、複数体が投入されます。モスラに次いで、東京タワーを壊します。

 隕石やガラモンを操作しているのはセミ人間。悪いです。ガラモンは恐ろしいけど、操られているので、嫌いになれません。だからウルトラマンでは小さくピグモンになって人間の味方になりました。電波管理所(電波監理局ですね)も活躍し、電波を遮断して、ガラモンは何らかの吐瀉物を吐いて死にます。

 セミ人間は、ミッションを達成しなかったため、「掟」として、味方から光線で身を焼かれて湖畔でもだえ死に。子ども番組なのに、凄惨なシーンです。子どものころ、アブラゼミやニイニイゼミをつかまえて掟・掟と火あぶりにしていたのは、子ども番組の悪影響ですすみませんでしたセミ様。


3.1/8計画」
 殺人的なラッシュアワーの過密都市東京を風刺した作品。人体を1/8にすることで住みよい地球にする夢物語。だが本当のテーマは管理社会の恐怖です。出入管理事務所が「楽園」と称する1/8世界は、私物を制限され、マイナンバーのような市民番号が与えられる無機質な空間。

 そこは元のコミュニティと遮断される隔絶社会。ユートピアが存在しない寓話は、浦島太郎の竜宮城を思わせます。それはウルトラQ「育てよ!カメ」がもっとストレートに描いた世界です。

 ただそれは、当時の情勢では、まだ続いていたブラジルやドミニカへの移民の問題と交わり、また、楽園を目指した北朝鮮への移住もまた影を落とす物語でした。
 ぼくはこの年始、サンノゼの日本人コミュニティを訪れ、大戦時に日系人が隔離された地域の理不尽な史実を伺い、その光景が本作品とダブリました。


4.「カネゴンの繭」
 子どもが変身する等身大の怪獣は、腹をすかせてべそをかくだけの情けなさ。だけど友だちは相変わらず多く絆も強い。対する敵はブルドーザーで宅地を造成する大人ども。コミュニティを守る子どもと、開発・経済の大人の争いを、その融合した怪獣の視点で描く名作。

 純真な子どもと、大人びたカネの亡者とが融合したカネゴンは、現代人が否定できない醜悪でコミカルな存在として、ヒューマンな支持を得た怪獣。それが「繭」から生まれるという自然感が素敵。カネや開発という現代に対し、怪しい「神」の古びたお告げで事態を解決するストーリーも見事。

 神(ばばあ)のお告げを実現させて子どもコミュニティが勝つカタストロフに酔っていたら、人間に戻った金男の自宅では、両親がカネゴンに変身していたニヒルなオチに、子ども心に深いショックを受けたことを、子どもたちが軽快に行進したくなるテーマ曲とともに記憶しています。

 造成前の多摩ニュータウンや下北沢の商店街などが登場するカネゴン、加根田金男の自宅、あの繭のあったおうちは、慶應義塾大学村井純教授の実家です。自分ちでカネゴンが撮影されていたなんて。ヒゲオヤジが逆立ちしても実現しない夢。村井さんには会うたびにその話を伺っております。

(村井先生ちでは少年ジェットや忍者部隊月光の撮影も行われたそうです。最年少だった月光少年はやかんでスタッフの水くみなどもしていたそうです。彼がカカカカと投げる手裏剣は、TBSのスタッフが一個ずつ貼り付けてコマ撮りして、カカカカとした現場を村井先生は目撃していたそうです。うらやましいけど夢つぶれるわ~)


5.2020年の挑戦」
 本書も最後に本作品を切り出して論じているとおり、今なお現在に多くを語りかける名作。肉体の衰えたケムール人(星人ではない)が、2020年から1966年の地球人の肉体を奪いに来る。

 目の前で突然人が消えてなくなるネガ・ポジ反転の映像。怖かった。パトカーに追われても、奇怪なケムール人は不気味な声を発してゆっくりと走って逃げ去る夜。怖かった。5才児だったぼくが長年、怖い記憶として刻んでいたシーンです。

 Xチャンネル光波を東京タワーから発し、ケムール人は頭からぴゅっぴゅっと液体を発して死にます。ペギラやガラモンにやられた東京タワーが活躍します。でもそれで終わりではない。事件を解決した刑事がまさかの消失に遭い、エンディング。物語は続くのです。

 2020年の高齢化社会はケムール人の住む社会です。若い肉体を奪わなくて済むよう、肉体を取り戻さねば。それが50年前からのメッセージでしょう。

 2020Techで人体を拡張する「超人スポーツ」。ぼくは超スポの説明のたびに、「2020年の挑戦」をモチーフにしています。

2018年1月25日木曜日

超ヒマ社会のススメ3:何足のわらじをはきますか?

■超ヒマ社会のススメ3:何足のわらじをはきますか?

 超ヒマ社会。働き方と遊び方に革命を起こそう。
 汎用AIが登場すれば、人口の1割しか働かなくて済む。今の仕事の9割をAIやロボットが受け持ってくれる。それによってむしろ生産は高まる。その果実を分配し、ベーシックインカムで暮らす。そんな未来がほの見えます。

 超ヒマ社会のススメ2:キリギリスはAIアリのマネジメントを
  http://ichiyanakamura.blogspot.jp/2018/01/ai.html

 ただ、人口の1割だけが働いて、9割が遊んでいる、という姿は想定しづらい。ほとんどの人がちょっとだけ、ちょっとずつ働いている、ってことになるんじゃないですかね。それも、働いているんだか遊んでるんだか判然としない、そして結構忙しくしている、って感じじゃないですかね。
 産業革命から近代、現代に至り、機械化が進み、自動化が進み、便利になり、効率的になりました。移動もコミュニケーションも自在となりました。野良仕事や単純手作業からはかなり解放されました。それでヒマになりました。で、ぼくたちはボヤ~っとしている、ってことはなく、逆に、とってもあくせくしています。忙しいです。仕事も遊びも暮らしもスピードアップしております。
 AIが仕事を奪ってくれて、ぼくらは彼らに仕事を委ねてやり、だからといってボヤ~っとすることは多分なくて、代わりの仕事がわらわらと生まれてくるし、空いた時間にすべきことがエンタメにしろ創作にしろ恋愛にしろ、ぎっしり現れてくるし、まぁ忙しいはずです。

 東京大学先端科学技術研究センターの檜山敦講師は、複数人で1人分の仕事を行う「モザイク型就労」を提案し、時間を組み合わせるタイムシェアリング就労、遠隔操作ロボットやVRによる遠隔就労、複数人のスキルを組み合わせるバーチャル人材合成の3種類を唱えています。同感です。
 汎用AIを待たずとも、これはシェアリングエコノミーの文脈で実施すべきことです。シェアエコはデジタル化・スマート化の帰結。経済規模は2013年には世界$150億だったものが2025年には$3300億に成長すると見込まれています。
 そして、家(Airbnb)やクルマ(Uber)のような大きなモノを共有する事業から始まり、自転車や服のような小さなモノもシェアされるようになりました。でも、時間やスキルといった誰でも持っているものを共有するほうが無限の可能性があり、ビジネスとしても大きくなるでしょう。

 ぼくも参加した政府「シェアリングエコノミー会議」の成果として、昨年、シェアリングエコノミー協会が自主規制ルールを作り、適合するシェアエコサービスの認証制度を始めました。その第一次認証の顔ぶれの多くは子育てや家事など人の時間やスキルをシェアするモデル。そう、これが本命です。
 個人ができること・やりたいことのスキルリストと時間割を作って、モジュールとして提供する。それをシェアリングサービスで共有する。それらモジュールをモザイク状に組み合わせて仕事を設計する。これです。

 デジタル化・スマート化の帰結はそれだけではありません。
 都心回帰が進むと同時に、移動社会になります。速水健朗「東京どこに住む?」は、圏外から都心部への集中が進み、移動すること、場所を変えることが大事な能力になっていることを説きます。リチャード・フロリダ「クリエイティブ都市論」も社会的な階層の移動と地理的流動性は密接に関わり、移動する能力の有無によって人生の可能性が大きく左右されることを示唆します。
 これはITが人と人の間の直接的コンタクトの需要を生み、スマホの普及で近い距離の価値が高まった効果でもあります。「遠さ」を克服する通信が「近さ」を際立たせる。身近なコミュニティとコミュニケーションがネットで重みを持ち、リアルな場に固まって過ごしつつ、それら場の間を移動し続ける。
 政策論としては、通信政策(5Gなどデジタル基盤の整備)、都市政策(地方再生・分散の逆の、都市集中政策)、社会保障政策(ベーシックインカム)、教育政策(リカレント教育を支える規制緩和と教育情報化)といった項目が浮かびます。

 もっと重要なのは労働政策。モジュール的に働く第一歩は、兼業を認めること。いや兼業を推奨することが求められます。二足のわらじをはく、副業を認めることは産業界にも兆しが見えています。今後は3足、4足のわらじがデフォになるでしょう。
 ぼくは以前、官僚というブラックな職業で、残業200時間休みなしなんて日々を送っておりましたが、脱出してからは何が本業なのか不明確な、たくさんのわらじ暮らしです。大学の教員、企業の役員、社団やコンソーシアムなど公共団体の代表、政府の委員など、職業としても4種あって、モジュール的です。
 しかも仕事と称し、ライブにでかけたり、飲み会を催したり、はたから見れば遊んでるわけで。この文章を綴ってるこの時間にしたって、仕事っぽい中味を書いてるっぽいけれど、原稿料を稼ぐわけでもなく、はたから見れば遊んでるわけで。
 まぁそんなかんじになっていくのかな、と。ぼくは役所を出て20年、もうすっかりこんなかんじに慣れてしまって、戻れないのですけれど、みんなも慣れれば、そんなかんじかな、と。


 1月7日付け日経新聞 文化欄に鷲田清一先生の「いくつもの時間」という素敵な随筆がありました。人はいろんな時間を多層的に生きるポリクロニックな存在。日々の暮らしにもう一つの時間が大切で、時間に「あそび」の幅をもたせたい、と。
 人の内にはさまざまに異なる時間が流れていて、ゆたかに生きるというのは、それぞれの時間に悲鳴をあげさせないこと。時間はいくつも持ったほうがよくて、交替ででもいいが、できれば同時並行がいい。超ヒマ社会での心得は、そういうことでしょう。

 鷲田先生、ぼくの中学高校大学の先輩、今度そのあたりの心得、指南を受けに伺いたく存じます。

[参考]

「総選挙後の課題、シニアの労働参加はAIがカギ」

2018年1月22日月曜日

「京都のおねだん」

「京都のおねだん」
大野裕之著「京都のおねだん」。
舞妓や仕出し、着物や稽古事などの秘められた値段を明かす情報本、と思いきや、縦横無尽にポップで深い京文化論でした。知らない話、なつかしい話、満載。いくつかメモします。

京都は地下水脈が豊かで、その軟水が豆腐や酒や西陣織を育てているが、それを守るため地下鉄建設が遅れ、大阪の2.6倍のコストがかかった。
(なるほど、掘ると遺跡が出る、だけではなかったんや。)

1962年、全国の同業組合の名称を巡り、京都の「寿司」、江戸の「鮨」、大阪の「鮓」でバトルとなり、結果「すし」組合になった。
(3つとも違う食べもんですしなぁ。)


梶井基次郎が檸檬を買った八百卯はもうなくなっているが、檸檬を置いた丸善は再開した。
(いまの丸善さんの檸檬置き場。これが大爆発することになっています。)

京都では豆腐も菓子も値段も饅頭もみな頭に「お」がつく。
(ひさうちみちおさんが別の本で、おしっこもおならも「お」がつくけど、うんこはつかないので、京都では「うんこさん」と呼ぶ、と書いてた。)

京都は常に新しい音楽を生んできた。京都大学西部講堂はザッパ、XTC、ポリスなどが公演した。
(ぼく一部 当事者なんで、この記述はうれしい。)

京大は変な先生が多い。「校舎の上から答案を撒いて最初に地上に着いたものに満点を与える森毅先生」。
(ぼくの時の試験は「屋上から見えるものを書け」。たしか大文字山は合格で、京都タワーは落第とちごたかな。)

(化学の試験、「石炭からアルコールを得る方法を述べよ」で、「石炭売ってアルコール買う」が正解やったんもあったな。)

折田先生像。正史、ハリボテ史、いずれもクリエイティブです。


本書に出てくるカルトビデオレンタル屋「ふや町映画タウン」。こっそり行ってきました。
この映像ラインナップは・・・世界の中でもここしかないでしょうね。今度、腰を据えて来ます。

「京都のおねだん」著者の大野裕之さんはチャップリン研究の第一人者で、京都国際映画祭でも「チャップリン特集」を組み、プロデュース+登壇いただきました。
今後とも京都国際映画祭をよろしくお願いします。

2018年1月18日木曜日

超ヒマ社会のススメ2:キリギリスはAIアリのマネジメントを

■超ヒマ社会のススメ2:キリギリスはAIアリのマネジメントを

 ソフトバンクは学生のエントリーシートの評価にAIを使っているそうです。AIが就活の面接官を務める日も近いそうです。疲れないし、公平だし、バラツキもない。
 ニコニコ動画に書き込まれるネガティブコメントの削除にはAIが使われているそうです。ドワンゴはディープラーニングを使って年1億円以上の人件費削減効果を上げているそうです。
 特定の仕事ではAIが既に人に置き換わり始めました。

 AIには特化型(専門型)と汎用型があります。197080年代のAI研究は専門家AI、エキスパートシステムの開発が中心テーマでした。ディープラーニングでAIがブームを迎えた昨今ですが、既存のAIはみなこの特化・専門型です。なので、人の仕事が置き換えられるのも、仕事の定義が明確な専門家の領域からということになりそう。◯◯家、◯◯士、◯◯師、◯◯イスト、という肩書のところに入り込む。
 汎用型のAIが実現するのはまだ先のこと。となると、汎用屋は強い。何でも屋。よろず屋。キレイに言えばジェネラリストです。企画、調整、営業、実行を一とおりこなす人。環境が変わっても、それに応じて仕事の中味を変えていける人。「お手伝いさん」というのは案外、強いかもしれません。子守り、掃除、洗濯、料理、何にでも対応できるというのは。
 ぼくはもともと官僚でした。官僚はジェネラリストの代表です。1・2年ごとに配属が変わり、変わったとたん、担当する分野の制度も業界事情も技術も徹底的に勉強して、1か月もすれば専門家然としていなければなりません。地方に赴任したり海外に飛ばされたりもします。変化への対応力が前提とされている仕事です。AI時代にはこれも強いモデルでしょう。

 ただ、いずれ汎用AIも実現するでしょう。AIが人の能力を超えるシンギュラリティは2045年とする説もあれば、2030年には汎用AIが実現するという見通しもあります。ぼくにはそれを見通すことはできませんが、生きている間にその瞬間を迎えられるのではないかという期待はあります。
 汎用AIが登場すれば、今の人の仕事はかなり奪われるでしょう。駒澤大学井上智洋准教授は、人間に残されるのはCクリエイティビティ(創造性)、Mマネジメント、HホスピタリティのCMHという「人間くさい仕事」だとし、それら職種の現従事者数から推計して、汎用AIの登場により、人口の1割、1000万人しか働かない未来となると予言します。
(井上さんは汎用AIを導入することで成長率は高まり、その導入いかんが国の成長率を左右すると説きます。同意します。政策としてはAI開発政策よりもAI利用政策が重みを持ち、そのためには労働政策やAI知財政策が大切になります。が、この話は長くなるので改めて。そして、その社会を成立させるためにも、ベーシックインカムによる新たな再分配政策が重要と井上さんは説きます。ぼくもこれに同意しますが、この話も長くなるので改めて。)

 超ヒマ社会が到来します。もちろんヒマになっても、暇つぶしのために人は仕事することでしょう。その仕事で報酬を得られなくても、生産に寄与する行為を続けることでしょう。本人が仕事と思っていても周りからみれば遊んでいる、そんなことを大勢がすることでしょう。
 そしてもちろん、本気の遊びが重みを持ちます。娯楽やスポーツ、恋愛や食事。芸術活動、創作活動。勉強や学習もそうですね。従来の仕事、報酬を得るための苦行ではない全てのことに9割のエネルギーが注がれることになります。
 政府は「働き方革命」を旗頭に据えています。柔軟な働き方を許すことは、モジュール的に時間やスキルをシェアする「スマート」な仕組みです。でもAI化による超ヒマ社会を見据えるなら、働き方革命より「遊び方革命」を起こさなければ。どう真剣に遊ぶのか。どうクリエイティブに暇つぶしするのか。「男子一生の仕事」に代わる、「男女一生の遊び」とは何か。

 働いて働いて働いて冬を越すアリはAIが担います。ぼくらは芸術に打ち込むキリギリスとなり、AIアリを働かさなければなりません。
 あれは確か小学校4年生でした。国語の教科書「アリとキリギリス」の文末に、キリギリスはなぜそうなってしまったのでしょう、1. 食べ物がなくなったから、2. 遊んでばかりいたから、という設問があり、それを学級で討論しました。
 クラスが真っ二つに分かれ(ぼくは2.のグループでした)、激しい意見の応酬となり、だんだんヒートアップ、挙句、殴り合いに発展しました。放置していた女性の先生は、授業の終わりにひとこと「どっちも正解です」。なんやねん、それ早よ言えいうねん。鼻血出してるヤツもおるやないか。
 あれから半世紀近く。今になって思うに、回答の選択肢が足りない。3. アリをマネジメントする能力がなかったから。これが正解となります。



[参考]

「AIが面接官 就活学生「公平、細やか」」

「ドワンゴ川上会長単独インタビュー「僕らがディープラーニングで狙うもの」」

AIが雇用を変え、働き方を変え、社会を変える 全人口の1割しか働かない未来の幸福論とは」




※イラスト:ピョコタン画伯

2018年1月15日月曜日

10人に小さな発見を与えれば1000万人が動き出す

■10人に小さな発見を与えれば1000万人が動き出す

 山口哲一さん著「10人に小さな発見を与えれば1000万人が動き出す」。
 コンテンツとITのプロデューサにして、なんつーベタなタイトルですか。
 と思いつつ読むと、音楽、テレビ、書籍、ニュース、IoTを横断して、コンテンツとデジタルとのこれからを解く。コンテンツからテクノロジーを見るという視線が同じなので、ぼくには読みやすい本です。


 音楽はCD中心の市場。TVはNHK民放体制による非ネット囲い込みビジネス。書籍はマンガが中心。新聞は1000万部もの部数の宅配網。日本のコンテンツは特殊なガラパゴスです。

 これを活性化するため、山口さんはコンテンツ系起業家支援の「Start Me Up Awards」を主催しておられる。ぼくも協力しています。デジタル特区CiPとの連携も強めたいと考えています。

 そんな業界の中でも、山口さんは特に音楽とITとの乖離を懸念します。日本での音楽とITとの乖離は、米オースティンのイベント、サウス・バイ・サウスウエスト(SXSW)が30年かけてインディーズ音楽からIT系へと進化・拡大してきたのを見ると危機感が募ります。

 かつてソニーがCBSを買い、東芝とEMIが一体化するなど、ハードとソフトは蜜月でやってきました。AppleもGoogleもAmazomも、ハード+コンテンツで覇を競います。ところがいま日本は録音録画補償金を巡り音楽業界とメーカが裁判で対立。互いに余裕がありません。


 山口さんは、人の定義は「ホモ・コネクシャス」つまりネットにつながっている動物だとします。なるほど。ぼくをSXSWに呼んで「ヒューマニティの拡張」というお題で一席設けてくれたのは、このことだったんですね。今わかりました。
 
 SXSWに呼ばれたぼくは、ヒューマニティの拡張とかけて「超人スポーツ」と解きました。そのココロは。AIとロボットでヒマになる人類に残されるものはスポーツで、それら技術に人類が求めるのは身体と精神の拡張だから。

 そして本書は、次はウェアラブルだと期待しています。ぼくも期待し続けているんですが、これも課題はコンテンツですね。


 最後に「コンテンツの価値は経済性だけでは測れない」「音楽が人を救ってもCDアルバムは3000円」と問いかけます。そう、そこが今日的なテーマです。

 技術でコンテンツは生産も流通も消費も爆発的に量的な拡大をみせました。だが産業としては縮小傾向です。ではコンテンツの価値は下がっているのか?いや、量的爆発に伴い、世の中での重要性も増している。だがそれを測るすべがまだありません。

 ITの価値をGDPで測ることへの異議をMITブリニョルフソン教授らも唱えています。総務省でもその疑問に応えるべく手法の開発に(たぶん世界で初めて)取り組んでいます。ただ納得のいく結論を得るのは簡単ではありません。


 コンテンツと技術。この近くて遠い「と」が問題。MITメディアラボが属する学科はArt&Science。この「&」が問題。しばし問いかけ続けましょう。

2018年1月11日木曜日

超ヒマ社会のススメ1:つつがある人生を

■超ヒマ社会のススメ1:つつがある人生を

 デジタル化の20年、スマート化の10年。
 それは軽工業・重工業に次ぐ情報産業を興し、第3次産業革命を形作りました。いや、その波は産業の域をはるかに超えて、万人に情報の共有と発信の果実を与え、文化革命と情報民主革命をもたらしました。グーテンベルク活版印刷から560年。人類に書物を流通させた技術に匹敵する、1000年に一度の事象です。

 そして次の波、AI/IoTが押し寄せます。
 デジタル・スマートの、すなわちITの、地続きの連続波です。しかし、これは本質的に異なるものです。横揺れと縦揺れの差、と言ってもいい。破壊力が違います。
 スマートは人と人のコミュニケーションでした。AI/IoTはモノとモノが交信する。モノがAIで知性を持つ。機械が人の能力を上回る。人類が到達したことのない地平に誘うものです。これを第4次産業革命と称すむきもありますが、日本政府が唱えるSociety5.0、つまり狩猟・農耕・工業・情報に次ぐ第5次文明と捉えるほうが揺れの規模を等身大で描けます。

 バーチャル空間を開拓したデジタルは、MITメディアラボ創設者ネグロポンテ教授がいうAtom to Bitでした。その空間を実社会に反射させるAI/IoTは、逆運動のBit to Atomです。
 デジタルを支配したのは50年前に唱えられた「ムーアの法則」でした。それは、「半導体の集積率は18か月で2倍になる」、つまりいつまでにどうなるかが予め見えている「予見可能」な半世紀だったということ。
 しかし、AIが深層の自習を超高速で繰り返し、人の能力を超えるシンギュラリティがほの見えてきました。機械の能力が半導体レイヤから知能レイヤによって規定されるようになり、そこには支配法がありません。「予見不可能」な世界への突入です。それは、変化することが必定の世、ということでもあります。

 予見不可能。変化必定。不安定ですよねぇ。不安ですよねぇ。よすがはありますかね。
 AIは創造性に難があるとの評判です。NTTデータ経営研究所が2017年7月に発表した調査によれば、オフィスワーカーは「創造的な仕事は引き続き人が担う」と考えているとのことです。ちょいと楽観的。ただ、創造性と言っても、1を10にする創造もあれば、10100にする創造もあります。白地に黒字を書いたり、赤を青に変えたりする創造もあります。AIにできることだってあるでしょう。
 作曲したり映像を制作したりするAIも既に登場しています。AIによる創作物の権利をどう扱うか、政府・知財本部でも2年がかりで専門的な議論を進めており、AIがクリエイティブであることは了解事項になっています。

 とはいえ、問題を発見すること、意味のある空想をすること、人々が了解するビジョンを描くこと、そのような、モデル化や学習が難しくて人の心理と寄り添うべき創造はAIには苦手でしょう。
 そうした時代に対応する能力って何を学んで習得すればいいんですかね。駒澤大学井上智洋准教授は、哲学、コンピュータ・サイエンス(CS)、経済学の3つを勧めます。問題は何か・どう思考するかを蓄積した哲学、問題の解決を論理的に組み立てるCS、現実事象をモデル化して解法を考える経済学。
 ぼくがかじった経済学はさほど役立ちそうにありませんが、前2者は賛同。哲学はAIには不得手っぽい。AIを使いこなすご主人には、その素養が欲しい。そしてCSAIの原理を知る上でも必須。日本はCSをプログラミング教育と狭義に解釈しがちですけど、大事なのはCSSTEMSTEAMと言い換えも可。予見不可能な世において、どう社会が変動しても対応できるようにするための、スキル以前の基礎的な血肉として欲しい素養です。

 子どもたちはプログラミングで備えます。CSの一部をなすプログラミング教育が小学校で必修化されるのは大歓迎。これからの世代に必要な体力を身につけよう。プログラミング教育の拡充はぼくも15年にわたり取り組んできたものであり、今後も官民の連携策を講じてまいります。
 一方、大人、社会人は予見不可能な社会、変化必定の世に、再教育・学び直し=リカレント教育で備えなければなりません。自分を変化させるための学習です。ITのリカレント教育の受け皿=専門職大学として、ぼくは「i大」を作ります。プログラミングとリカレント、いずれも自分の仕事です。

 変化し続ける社会ですから、変化への対応力が重要となります。変化に対応した場数が値打ちを持ちそうです。どれだけ多くの仕事を経たか。どれだけの波乱を経たか。どれだけ転換したか。どれだけ移動したか。どれだけ泣き笑いしたか。
 役所や大企業で定年を迎えるかたが「つつがない職業人生でした」とあいさつして花束を受け取る。もうそれでは立ち行かない。「つつがある」人生が推奨されます。変化に次ぐ変化で波乱万丈でございました、が花束です。
 「変化を楽しむ覚悟」が最も大切。思ってもみない変化、来い、の心構え。

 前述のNTTデータ経営研究所調査によれば、AIなどが人間の仕事を代替することに対し、オフィスワーカーの59.4%、約6割が期待するなどポジティブな反応とのことです。案外みんなAIによる予見不可能で変化必定の社会に対する心構えができているのね。
 そんな世の中、心待ちにしましょう。



[参考]
「日本人は「人工知能に仕事を奪われること」を楽しみにしている」

「「AIと共存する力」を養う3つの学問とは?」

2018年1月8日月曜日

ぼくの10か条

■ぼくの10か条

 この歳になって大学にいると、「教育信条を教えてくれ」「学生に指南する人生の指針は」「若い人へのメッセージを」といったリクエストを受けます。ぼくは他人さまに向かってエラそうに指導できる者ではないので、いつも言葉を濁しています。

 ただ、では「自分」に課している「決めごと」を教えてくれという要望をいただきました。ふむ、ぼくがぼくに諭していることであればいくつかあります。参考になるかは存じませんが、整理してみます。

 オリジナリティはありません。誰かが言っていた、書いていたことをふるいにかけるうち、ぼくの中に残った小石たちです。


1. 作れ
・評論家やコンサルになるより、自分が主体の仕事。兼好より道元。
・まずは作る。小さなモノでも大きなコトでも。
・Imagine & Realize。想像して、創造する。

2. できる方法を考えろ
・できない理由を考えるのは時間のムダ。これからどうするかのみを考える。
・たられば より きっと。
・WhatよりHow。アイディアは1、実現が9。

3. 一番になれ
・その仕事に成功すれば世界一になれるものだけを手がける。
・Think Big Go Punk。

4. ほめろ
・いいものを見極める。世の中のすばらしいもの全てをほめる時間は人生にはない。
・世の中の99%はダメなものであり、それをけなしている時間は全くない。
・批判する対象は、権力者はじめ自分より強い相手のみとする。

5. 先に手を出せ
・条件が揃うのを待つ前に、叱られても先に動く。
・いつもボールは相手が持つ状態にする。
・この世でいちばん肝心なのはステキなタイミング。

6. 数字を伴え
・裏付けを自らに課せ。1段落に1データ。
・ポイントは3つまでに絞る。
・長文は恥。

7. 1枚にしろ
・エラい相手は紙をめくらない。
・パワポは1ページに10文字まで。
・遠くを向いて、ゆっくり話す。

8. まずハイと言え
・まず受け容れてみる。拒否はたいてい後でもできる。
・否定する言葉、行動、人をできるだけ遠ざける。否定文を減らす。

9. オモロい方を選べ
・選択に迷ったら、どちらがオモロいかを自問する。
・自分にとってオモロいものだけの人生に近づける。
・安寧より刺激。

10. 新しい方を選べ
・選択に迷ったら、後から来た方を選ぶ。その後の成長が期待できるから。
・後悔のない選択はない。

2018年1月4日木曜日

日本は「終わった国」なのか

■日本は「終わった国」なのか

オーソン・ウェルズが「第三の男」で発するセリフ。
「スイス500年の平和が何を生んだ?鳩時計だよ」。

映画の舞台、ウィーンで、ふと考え込みました。

MITメディアラボ創設者のニコラス・ネグロポンテが「終わった国」(finished country)とつぶやいたことがあります。15年ほど前、スイスのことを指して。ふとした話の流れで発したセリフですが、強く残っています。

ネグポンの言う「終わった国」は、長い歴史のうちに成熟はしたけれど、現代になってさしたるイノベーションもなく、沈んだわけではないが輝きを失った、という意味でしょう。
彼は若いころスイスの学校にも行っていたから、情を込めてのセリフだと思います。


世界経済フォーラムの世界競争力報告書によれば、2017年の競争力でスイスは9年連続で1位。だから決して終わってはいないのでしょう。彼が終わったと呼んだのは、経済だけでなく政治・社会・文化を含む総合面でのプレゼンス低下を指したのではあるまいか。

でもぼくの耳には、日本を刺しているように響きました。
デジタル化に乗り遅れ、終わりつつある。
停滞し、沈んでいる。
1985年にメディアラボを創設した際、多くの資金を日本企業に頼ったネグポンも、2000年ごろの日本をそう見ていたに違いないので。

昨年ぼくが訪問したのは、オーストリアとスイス。そしてアメリカ、オランダ、フランス、キューバ、シンガポール、マレーシア、台湾、韓国の10か国。
くるりと巡っただけでも、勢いのある国、ない国、濃淡がありました。

ネグポンが「終わった国」とつぶやいた当時、アメリカはネットバブル崩壊後なれど鼻息は荒かった。9.11で東側が落ち込んでも、シリコンバレーは元気。リーマンショックでまた東が沈んでも西は強気。
今年訪れた西海岸は、スマートからIoT/AIへの脱皮にギラギラしていました。

アジアもまた元気。シンガポールやマレーシア・イスカンダルは開発途上。台湾も韓国も政治ネタでよたよたしていましたが、若いエネルギーの高まりがありました。
キューバもそう。アメリカとの国交回復で、しばらく「終わっていた」国がまた始まるという熱気に満ちていました。

かつての大国はどうか。

フランスは大統領が替わり、AIやスタートアップにずいぶん熱心。イギリスなきEUを主導する鼻息で、終わらねえぞ風を吹かせています。

かつて世界の海を制したオランダ、江戸時代には西洋で唯一日本と交わっていた国も、終わったかのように見えて、世界最大の農業輸出国、ユニリーバ、フィリップス、ハイネケンなど有力企業もひしめき、実は老獪に生きています。


やはり問題は日本です。
IoTAIはものづくり力を発揮するチャンス再来、高齢化や災害などの課題先進国としてのチャンスも見出せるのですが、科学技術で改革をといった機運は薄い。
アメリカを追ったりアジアと共進したり、フランスやオランダのように老獪に振る舞ったりする意思も弱い。

まぁそこそこ食えてて、安全で心地よいですから、このまま終わっていく安楽死もさほど怖くないのかもしれません。
だけど隣の国がミサイルぶっぱなして、目を覚ませって言ってるのは、日本が終わっちゃうと周りも面白くないってことじゃないでしょうか。

北野武監督「キッズ・リターン」ラストシーン。
「オレたちもう終わっちゃったのかなぁ?」「バカヤロー、まだ始まっちゃいねえよ!」。


ですよね。
今年もよろしく。

2018年1月1日月曜日

反省、2017年。展望、2018年。

■反省、2017年。展望、2018年。
 賀正 でございます。
 2013 年頭所感
 2014 年頭所感 
 2017 年頭所感

 いつものとおり、2018年を始めるに当たって、2017年を振り返ります。 「City」「Cool」「Convergence」3本柱のプロジェクトです。


1 CITY
 Pop & Techの街づくりをするプロジェクトです。

1) CiP 

  港区竹芝にデジタル・コンテンツ産業集積特区を作る「CiP」。Pop &Tech 特区CiP。社団法人「CiP協議会」を設立し、2020年度の街開きに向け進んでいます。
 通信、放送、IT、音楽、アニメ、ゲーム、お笑い、広告、商社、VC、学校など60社・団体が参加し、内閣官房、内閣府、総務省、経産省など政府とも連携しています。
 国家戦略特区として総理大臣の認定を受けており、テストベッドを構築します。既にアーティストコモンズ、サイネージ実験、世界オタク研究所等のプロジェクトが走っています。
 2018年はCiPファンドを立ち上げ、起業支援の柱を立てます。StartMeUpAwardなどの起業支援・ビジネスマッチングの取組も強化するとともに、「i大」のサテライト誘致などによる「超学校」構想を進めます。
 京都・福岡・沖縄等の都市、スタンフォード大学、ロンドン大学、マレーシア・イマジニアリング研究所、韓国政府・コンテンツ振興院など海外との連携も強化します。

2) i大
 ICTの専門職大学「i大」を2020年に設立し、ぼくが学長に就くことになりました。
 ICTビジネス英語の徹底教育、全員インターンの実践教育、オンライン重視。
 学生が全員入社する会社を設立し、学生が全員起業する環境に整備します。
 第一線の経営者など100名程度のプロを客員教授として迎えます。
 本校舎は東京都墨田区、スカイツリーの近くに新設します。ポップ&テック特区の竹芝CiPにサテライトを置きます。
 国家戦略特区を活かします。教育特区の指定も目指します。
 自分としての集大成、新たな挑戦です。

◯協力を表明している企業(2017.12現在、順不同)
 NTTdocomo、ソフトバンク、KDDI、ドワンゴ、GREE、mixi、セガ、teamLab、面白法人カヤック、NEC、富士通、パナソニック、シスコシステムズ、SAP、TBS、吉本興業、東北新社、エボラブルアジア、花王、CANVAS、Schoo、浜野製作所、ジャパンマルチメディア放送(FM東京)、デロイトトーマツベンチャーサポート、墨田区

3) 超人スポーツ
 身体と技術を融合させ、人機一体の新しいスポーツを開発する「超人スポーツ」。稲見昌彦さんとぼくが共同代表、南澤孝太さんが専務理事として社団法人「超人スポーツ協会」を運営しています。
 2020年の超人スポーツ世界大会に向け、新スポーツの開発・普及を進めています。国体会場であった岩手県とも連携して、岩手ご当地超人スポーツの開発も行いました。DeNAと連携した「超野球」プロジェクトや、TBSによるドローンレース選手権の開催など、企業とタッグを組んでの開発・ビジネス展開も進めています。2018年2月には第2回超人スポーツゲームズを開催する予定です。
 国際展開も進めます。7月にはオランダ・デルフトで競技会を計画しています。
http://superhuman-sports.org/


2 COOL
 ポップカルチャーの世界展開やコンテンツの開発を進めるプロジェクトです。

1) 京都国際映画祭
 吉本興業が主導する「映画もアートもその他もぜんぶ」のイベント、実行委員長を務めています。京都の街を広く使い、映画人もアーティストも芸人も学生も子どもも観光客も参加する、他のどこにもない祭典にしていきます。先輩格の沖縄国際映画祭との連携も深めてまいります。

2) 世界オタク研究所
 国際オタクイベント協会IOEAとCiPが連携し、世界オタク研究所を設立する構想を進めています。世界各地で開催されるオタク系イベントの動員数は年2000万人にのぼるそうです。そのエンジンたる各国の研究者による総本山を創る。経産省の支援を得て進めています。今年中に設立する計画です。

3) Artist Commons
 アーティストに固有のIDを付与し、コンテンツやグッズ、ライブ等の情報を展開しやすいようにするプロジェクト「Artist Commons」を音楽業界と進めています。
 政府クールジャパン戦略にも明記され、CiPをベースに展開しています。経済産業省の支援を得て、データベース作りをスタートさせました。

4) チケット流通
 mixi/フンザのチケットキャンプが騒動となっています。ぼくは2016年にその正常化を期してmixi社外取締役を辞任しましたが、1年後により深刻な形で吹き出してしまったことは残念でなりません。他方、昨年、音事協・音制連・ACPC等によるチケット転売対策「チケトレ」協議会の会長を引き受け、総務省のマイナンバーを利用した実証実験も進めています。2020年東京大会に向け環境整備を急ぎます。

5) アニメマンガビジネス
 日本動画協会「アニメビジネス・パートナーズフォーラム」。アニメ等のコンテンツ分野がパートナービジネスを開発する活動に協力しています。CiPではこれを横展開させ、出版等の分野のビジネスマッチングを進めます。
 クリエイター、教育機関、関係業界とともにマンガ・アニメ人材育成カリキュラムの策定にも携わっています。これもCiPとの連携を強化する計画です。

6) eスポーツ
 理事を務める日本eスポーツ協会JeSAはじめ3団体が合流、CESA・JOGAも協力して、新たな統合されたeスポーツの団体が設立されることになりました。これにより、公式プロ認定が行われ、消費者庁による賞金規制を受けない大会も開催されるようになり、2018年は日本のeスポーツ元年として産業化が進む展望が開けました。万歳。2024年、パリ五輪の正式種目化を目指しましょう。

7) 政府コンテンツ政策
 内閣府・知財本部では座長として、新世代知財システム、コンテンツ海外展開強化、アーカイブ利活用促進などを柱とする知財計画2017を策定。世界に先駆けてAIの知財問題に取り組みました。映画ロケ支援の会議も開催しています。
 「クールジャパン戦略推進会議」では竹芝・CiPがモデル拠点とされ、クールジャパン官民連携プラットフォームも設立されました。その活動に参加・協力していきます。
 文化審議会著作権分科会の議論にも参加し、これら議論を反映させています。

8) NHKクールジャパン
 日本のクールを発信しつづける番組、13年目に入ります。BSを代表する長寿番組になりました。2017年は「カバン」、「フィギュア」、「宅配」、「冷たい麺」、「少女漫画」、「日本発スポーツ」の巻に参加しました。


3 CONVERGENCE
 メディア融合や新メディア開発を進めるプロジェクトです。

1) デジタルサイネージ
 「デジタルサイネージコンソーシアム」設立10年。今年6月には展示会デジタルサイネージジャパンも10年を迎えます。2020年に向け、多言語・防災おもてなしサイネージとが国家課題と位置づけられ、総務省2020年ICT懇談会の場で方策づくりが続いています。これを推し進めます。総務省の実証実験にもCiPとして参加・協力しています。

2) 4K8Kパブリックビューイング
 4K8Kはじめ超高精細映像パブリックビューイングの施設整備も総務省が推進しています。その推進母体として、2016年「映像配信高度化機構」を設立、ぼくが理事長に就きました。NHK、NTT、NTV、スカパーJSAT、ソニーなどによって、実証開発や普及促進に努めています。

3) IPDC/スマート放送
 放送の電波に通信技術であるIPを乗せるサービスを開発するIP Data Casting(IPDC)。代表を務める「IPDCフォーラム」とともにCiP特区でのメディア融合実験を企画しています。TFMグループが進めるVlowマルチメディア放送もCiPでの通信・放送融合実験を計画中です。民放連でぼくが座長を務めるネッド・デジタル研究会でもこれら企画を論議していきます。
http://www.ipdcforum.org/

4) オープンデータ
 オープンデータ対策を進めます。VLED(社団法人オープン&ビッグデータ活用・地方創生推進機構)に協力し、普及啓発に努めています。
http://www.opendata.gr.jp/

5) データ流通
 データ取引市場の形成はじめデータの提供・利用を進めるための社団法人「データ流通推進協議会」を設立し、理事に就任しました。内閣官房IT戦略室、総務省、経済産業省での検討を踏まえ民間として立ち上げたものです。オープンデータとともに推進します。

6) シェアリングエコノミー
 内閣官房IT戦略室の検討会議での議論を踏まえ、シェアリングエコノミー認証制度が始まりました。認証委員会に参加しています。

7) ネット炎上
 ネット炎上対策を講ずるプロジェクト。理事長を務める社団法人「ニューメディアリスク協会」とともに、事例調査、啓発教育などの活動を進めています。

8) 理研AIPセンター
 AI研究開発の日本の総本山、理研AIPセンター。コーディネイターに就任し、AI研究と社会経済をつなぎます。あれこれ仕掛けてまいります。ご協力のほどを。


4 参考 

1) デジタルキッズ
 CANVAS石戸理事長率いるデジタルキッズは強力に進んでいます。ワークショックコレクション、国際デジタルえほんフェアも開催してまいります。
 学校での必修化が政府決定されたプログラミング教育に関し、プラットフォーム「Computer Science for ALL」も拡充します。

2) デジタル教科書
 デジタル教科書も大きく動きました。文科省はデジタル教科書の制度化に動き、総務省は電波利用料の活用に踏み出すなど、DiTTが提言してきたことが実現に向かっています。超党派の国会議員による教育ICT議連も「教育情報化推進基本法」の策定に動き、DiTTも後押ししています。
 これを受け、DiTTは社団法人化し、プログラミング教育、情報リテラシー教育、教育のAI/IoT利用や教材の著作権処理などを活動に組み込み、パワーアップしています。

3) 情報リテラシー
 青少年ネット安全・安心政策が新段階を迎えています。ケータイはスマホに、SNSはtwitterやLINEに移り、対策も変化しています。政府会議の主査を務めながら対応を進化させます。

4) 企業経営

 吉本興業、スペースシャワーネットワーク、保育最大手のJPホールディングスの社外取締役を務めています。