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2016年1月28日木曜日

ネットで音楽の接し方はどう変わったの?(後)

■ネットで音楽の接し方はどう変わったの?(後)

 「音楽のコミュニケーション化」。これに関し、ぼくとの共著「日本のポップパワー」を記した小野打恵さんは、「あらゆるコンテンツのビジネスがコミュニケーション化して行く中で、デジタル化、ネットワーク化のインフラが重要であり、音楽は日本人も先導して、「コミュニケーション化」を進めてきた」と言います。
 
 例えば、カラオケ。いまはエクシングと第一興商がリードするカラオケのビジネスモデルはデジタル化、ネットワーク化による「コミュニケーション化」。

 DJ、DTM、ボカロに至る動きもそう。アナログレコードをスクラッチ等で再生「演奏」=二次創作するDJから、DTMによるデジタル音楽へ。そしてデジタル音楽からボカロへという動きは日本が本場。さらにこれは、音楽を聴いて楽しむ文化から、踊って楽しむ、創って楽しむ参加型の文化への変化であり、コミュニケーション化と言い換えられましょう。

 さらに、モバイル化。ソニーのウォークマンから生まれ、ガラケー向け着うたフルまでは、日本がリードしてきたモバイル端末での音楽利用です。

「今、iOSに席巻されているように見えますが、ガラ携初期に打ち込み入力で個々のユーザ−が着うたを鳴らせるようにした、その楽しみ方をあらゆる家電等のボイス&ミュージックに入れていけば新しい市場が開けるように思います。」(小野打さん)

 こうした音楽の消費、音楽への接近、音楽への参加に関する変化は、もちろん、音楽の制作やビジネスを激変させます。

 日本の市場はアメリカと並ぶ世界ツートップを維持しているものの、先行きは不透明。音楽への支出が激減したとゼミ生が言うように、CD売上は激減し、ガラケー向け着うたで盛り上がった市場もスマホで終了、ストリーミング以後の市場はまだ見えません。ミュージシャンが食えない、音楽の質が保てないという声はひんぱんに聞きます。

 音楽が映像やゲームの部品化し、音楽としての売上が見えにくくなっている面もあります。コンテンツのデジタル化とネット流通により、コンテンツ間の障壁がなくなりました。かつては、文字ならデバイスは新聞・書籍・雑誌、音声ならデバイスはラジオ・レコード・CD。動画なら映画・テレビ・ビデオ・DVDでした。

 「コンテンツがデジタル化し、例えばニコ動を流れるボカロ楽曲は、もはや音楽なのか、動画なのか、文字なのか区別が出来なくなりました。また、ラジオをラジオで聴いたり、音楽をCDプレーヤーからスピーカーを通して聞く機会も減ったと思います。」(ある学生)

 他方、ライブやフェスは元気で、コンテンツ=バーチャルから参加型=リアルへの重心移動が進んでいるのは周知のとおりです。

 ところがこれに関しても厳しい観察があります。ぼくのゼミには日本を代表するイベント運営会社の役員がいるのですが、彼女は「ライブイベント、コンサートの数はこの何年かで確実に増えました。しかしレコード会社がPRとして赤字の補填をしてくれていた頃と違い、現在はライブで確実に黒字にしなければなりません。よって一つ一つのライブの制作の予算は昔より厳しくなりました。」と言うのです。

 ネットやソーシャルメディアによるアーティストとリスナーとのエンゲージメント、ファン同士のコミュニティの深化は、音楽のビジネス構造を変えるだけでなく、アーティストの姿勢や表現活動も変化させるでしょう。

 デジタル化によって、曲単位のスキップや頭出しができるようになったので、つまみ食い聴きが普通になり、サビ頭が流行りました。技術は音楽の表現自体を変えます。ネット化、ソーシャル化によって、ますます変わることでしょう。AIは音楽の自動生成、自動演奏をも促します。


 ちょいと学生たちと議論しただけで、かように盛り上がる。これが音楽の魅力でもあります。
 新しい技術によって、近くなった。接し方は多様になり、共有と参加が増えた。音楽を提供する側は、ライブや映像との融合を進めつつも環境は厳しくなっている。

 ラフにまとめるとこんなところですが、今後、多様化、共有・参加、融合という路線どういう方向を進むのか。光は見えるのか。影は闇を増すのか。
 ネットが普及し始めたころ、こんなことを業界のかたがたとよく論じていました。ストリーミングの勃興で、状況はまた変わります。改めて深掘りしてみよう、と思いました。

2016年1月25日月曜日

ネットで音楽の接し方はどう変わったの?(中)

■ネットで音楽の接し方はどう変わったの?(中)

 80年代に生まれたデジタル世代、90年代に生まれたネット世代は、CD以降、iPod以降、ケータイ以降、ネット以降、の音楽をどう聴いてきたのでしょう。ぼくのような60年代生まれのアナログ野郎とどう違うのでしょう。

 ぼくのゼミには2000年代生まれのソーシャル世代はまだいませんが、デジタル・ネット世代は大勢いるので、音楽との関わりの変化について聞いてみました。

 彼らの体験はほぼ共通しています。90年代後半にレンタルCDからMDに録音し、2000年ごろからはNapsterにmp3プレイヤー、それからiPodとiTunes、さらにはYouTubeとスマホに移り、今ストリーミングを試している、といいます。

 それで、接し方はどう変わったのか。まず、アルバム単位から曲単位になったと言います。というより、アルバムという概念がありません。「ジャケ買い」もなくなったそうです。音楽を買う頻度と金額は激減したとも言います。
 
 系統的に聴く、という感覚もなさそう。ぼくらは系譜で追っていました。ストーンズを学んでツェッペリンやグラムに行き、煮詰まってパンク、みたいな。だけど彼らは、全ての系譜、全ての歴史が洋モノも和モノも同時・水平に手に入っていて、大御所もストリートもフラットで、自分が接し得た、これイイよね、というものをフラットに聴く。全体像や相関を知っていないと不安という貧しいぼくらと違って、実にうらやましい。
 
 全員が音楽との距離が「近くなった」と言います。音楽との関わりは「深くなった」という人もいれば、「カジュアル化した」というやつもいます。好きなアーティストをどんどん深掘りして、同じジャンルの曲を追い求めるようになったという人がいる一方、タダでAKBと嵐ばかり聴くとか、聴き放題でラジオ的に流すだけになったというやつもいるのです。
 
 多様化ですね。アーティスト主義のひとは今もCD派で、サブスクリプションは不要というし、多くの音楽を求める人は新しいサービスに飛びつくし、そもそも聴かない人も、キュレーションやバイラルメディアで音楽に接する機会が増えた、という。

 決定的な変化をもたらすのは、デバイスよりもSNSのようです。
 楽曲やミュージシャンを知る機会、接する機会が増えた。友だちやフォローしている人の好みをシェアすることで、アーティストについて広く知るようになった。
 CD、MD、iPadまでは音楽に無関心だったが、SNSで初めて聴くようになり、ライブにも出かけるようになったという者もいます。情報の共有と拡散で音楽に接近して、それがリアルの場に足を運ぶまでになっているのです。
 
 デバイスが変わっても、聴き方も距離も変わらないけれど、音楽が媒介するコミュニケーションが大きく変わったという人もいます。

 「音源がCDやカセットテープという物理的に縛られたデバイスからオンライン上にデータとして解き放たれたことにより、土地や時間を問わず多くの人にリーチするようになり、体験をもっと広い範囲の人と共有できるようになりました。ベルリンのライブハウスでヨーロッパ中から集まった日本語出来ない現地ファンと一緒に日本語で紅を合唱するとは、LPレコードとしても発売されていた1988年には誰も思わなかったことかと思います。」(ある学生)

 「音楽とコミュニケーション」がポイントです。それは、音楽というコンテンツを軸として、コミュニケーションとコミュニティが活性化するソーシャルな現象。
 アーティストとファンとのエンゲージメントと、ファン同士の絆を強めるという、音楽の「消費」から音楽の「共有・参加」への移行とも言えましょう。


(つづく)

2016年1月23日土曜日

澤昭裕さんの思い出

■澤昭裕さんの思い出

 エネルギー政策の第一人者、ぼくが尊敬する政策のプロ、澤昭裕さんが1月16日、膵臓癌で亡くなりました。

 冷静で現実的な政策を打ち出し続ける方でした。エネルギー政策の腰が定まらない我が国にとって、痛い損失です。ぼくも大きな指標を失います。
 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%BE%A4%E6%98%AD%E8%A3%95

 澤さんが今年の正月「私の提言 ―総集編―」とするエネルギー政策総まとめを示し、しばし身を引くというので、ちょっと気になっていたんですが、まさかの出来事でした。
 http://ieei.or.jp/2016/01/sawa-akihiro-blog160104/

 澤さんの功績については、池田信夫さんのブログや、
「澤昭裕さんへの最後の手紙」
 http://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/51968925.html

 石井孝明さんのVlogでも語られているとおりです。
「澤昭裕さんを悼む」
 http://agora-web.jp/archives/1667405.html

 エネルギー政策についてぼくには語れるほどの知見がありませんが、澤さんとのことは記録しておきたい。


 ぼくが郵政省で「電気通信基盤充実法」の担当補佐として通産省と協議した1991年、カウンターパートとして現れたのが電子政策課の補佐、澤昭裕さんです。年次でいうとぼくの3つ上。霞が関での3つ違いは二等兵と伍長ないし軍曹の開きがあります。その威圧感たるや。
 通産・郵政戦争と呼ばれる縄張り争いが収まっていないころ。新法を作って通産省と折衝するというのは死地に赴く覚悟でして、ぼくはこの上なく緊張しました。
 澤さんをヘッドとし、片瀬裕文さん(現 通商政策局長)、宗像直子さん(現 総理大臣秘書官)ら強いメンバーを相手に夜を徹する折衝を二週間ほど続けるのですが、ぼくの事前の緊張など覚悟のうちに入らないと涙ながらに痛感させられるほど、それはそれは厳しく対応してもらいました。いやぁ厳しかった。
 折衝、協議、説得、調整を経て、最後はここが落とし所、という覚書を結んで両省は決着。最後に「オレってリーズナブルやろ。」と澤さんが見せられた人懐こい笑顔が忘れられません。
 仕事ってのは、こうするのか、ということを教えてもらいました。ぼくの血肉になりました。役人になって何年もたった後のことですが、これを経てぼくはようやくプロとしてやっていけるかもしれないという自信を得ました。

 その後、ぼくは3年連続で郵政省の法案を通産省と折衝する担当となりました。その間、澤さんは、コンピュータやソフト等に対する政府予算の道を開くため、戦時中の通産・郵政が休戦協定を結んで共同要求する作戦を立てられました。
 「両省で要求したら大蔵省も飲むで。」という話を持ちかけられた時は、ぼくとは水準の違うダイナミックな政策を作る人がいるもんだと改めて感心しました。郵政省内をどう調整したかは覚えていませんが、結果としてこの予算は実現。研究機関等へのデジタル投資が拡充しました。
 その予算の恩恵を受けることになる筑波大学の江崎玲於奈学長に呼ばれ、随分ホメられました。先生、勘違いです。ぼくの手柄じゃないんです。説明に難儀しました。

 1997年、ぼくは官房総務課の補佐として省庁再編を担当しました。橋本行革の省庁再編案として、郵政省解体が明記されることになりました。負け戦が確定しました。巻き返し策を練らなければなりません。
 省内の議論は3分されました。1)通産省に引き取ってもらい産業通信省になる。2)運輸省と合体して運輸通信省になる。3)総務省を作る案に乗って潜り込む。
 1)産業通信省は通信・放送行政を産業政策とするもの。2)運輸通信省はインフラ政策として逓信省の復活を目論むもの。3)総務省は産業・インフラなど全てを含む独立した行政領域と考えるものです。
 省内にとどまらず、自民党を含む大騒動になりました。当時の事務次官ら幹部は通産省に期待を寄せました。通産省は機能を強化して経産省となる勝ち戦が決定、気分はよくなっているだろう。とはいえ、通産省の意向は不明。おまえ極秘で探ってこいと指示されたぼくは、澤さんに聞きに行きました。
 「通信放送だけならもらうけど、郵政事業も連れてくるいうのは☓☓☓☓(某宗教団体の名前)を抱えるようなもの。絶対ムリ」と即答。そのまま郵政省幹部たちに伝えたところ「われわれは☓☓☓☓(某宗教団体の名前)か・・・」と絶句して、あきらめることになりました。
 結果、総務省に入ることで政治決着しました。今もその形には批判がありますが、当時の中のひとにとっては、最善の決着だったと思います。ぼく自身はそこで役所を辞めることになりましたけど。

(ところで、解体される郵政省を総務省に移行させるための秘密チームをそのころ省内に作り、SMAPと名付けました。
 でも、SMAP=Strategy group of Ministry Anticipated for Post and telecomとかなんとかつけたのはボスに却下されました。Speed Message Action Power と変えたら承認されました。)

 役所を出てアメリカに行ってぶらぶらしていたぼくに、日本から声をかけてくれたのが経済産業研究所(RIETI)です。澤さんが研究部長として作られた組織です。青木昌彦所長、池田信夫さんらの誘いで、ぼくも上席研究員として参加することになりました。
 今にして思えば、経産省の組織に郵政出身のぼくを招き入れるのは、澤さんの腕力なくしてはムリだったんじゃないでしょうか。
 一方、澤さんは東大に転出して、政策研究とともに大学改革にも当たられます。その後、21世紀政策研究所やアジア太平洋研究所等で骨太のエネルギー政策を発信し続けられました。プロだなぁと思って眺めておりました。
 少し前、日米のIT企業がもめている案件の仲裁に入ってやってくれという依頼を受けたのが澤さんとの最後になりました。通産省人脈で来た仕事をぼくに振ってくるのも澤さんらしいや、と思って受けました。受けたら大変な話でしたw

 経済産業研究所で目指した「第二霞が関」の梁山泊構想は曲折あって道半ばです。また復活させんといかんよね、という澤さんとの話も途切れてしまいました。
 政策屋としてぼくは足元にも及びません。まだ目標にし続けます。澤昭裕さん、ありがとうございました。合掌。

2016年1月21日木曜日

ネットで音楽の接し方はどう変わったの?(前)

■ネットで音楽の接し方はどう変わったの?(前)
  東独・ドレスデン郊外にあるピルニッツ宮殿。庭で男がギターでトレモロを奏でる。「アルハンブラ宮殿の思い出」です。スペインのコスタ・デル・ソルにあるアルハンブラとこことは何の関係もありません。が、この曲には足が止まります。小学校低学年のころ、サントリーのTVCM、オールドだっただろうか、この曲が流れていました。いつかこれを弾いてみたいと思いました。

 中1でガットギターを手にしました。中2、NHK教育テレビの荘村清志さん「ギターを弾こう」を貪り観ました。だけどアルハンブラしか練習せず、何とか弾けるようになり、クラシックギターはそれっきりです。

 そんなことはいい。Spotify上陸など音楽のネットサービスが賑やかな今、ぼくのようなアナログ野郎がどんな音楽体験をして、今のデジタル野郎がどんな体験をしているのか。デジタルは、音楽体験をどう変えるのか。3回に分けて考えてみたい。

 ぼくはどんなアナログ音楽体験をしてきたのか。誰も興味がないと思うので、小文字にしておきます。



 ラジオ。九死に一生を得た交通事故での入院中、隣の部屋がつけていたラジオで「帰って来たヨッパライ」が繰り返し流れていた。オラは死んじまっただ、というのを貪り聴いた。小1。
 テレビ。オバケのQ太郎以降70年頃までのアニソンがだいたい歌えるのも、GSや昭和歌謡を歌えるのもテレビのおかげ。AMとテレビが音楽への入口だった。

 レコード。小6のとき、近所の兄ちゃんがグランドファンクレイルロードの後楽園ライブとCCRのベスト盤をくれた。洋楽はそこから入った。その2枚を元に友だちからビートルズや岡林信康やストーンズや加川良やツェッペリンを借りて、広がる。

 中2、家に8トラが来た。ソフトは軍歌と60年代前半までの演歌と映画サントラの3本だけだった。音がビヨンビヨンになるまで聴いた。
 中2、FM大阪で荒井由実2枚目「ミスリム」の発売に度肝を抜かれた。岡林信康のバックで弾いていた細野晴臣さんという人のベース。入口はFMになっていた。

 高2、河原町二条にできた古着屋でかかったセックスピストルズ「アナーキー・イン・ザ・UK」に度肝を抜かれた。何か自分に近いものが来た、と思った。

 大学でもレコードの流通は音楽消費の柱だった。同級生の下宿で夜通し聴いたPhewのシングル盤「終曲」。川上先輩(Dr.Kyon)の部屋で聴いたタンゴ藤沢嵐子「CAMINITO」。西部講堂の裏でコンチネンタル・キッズの しのやんが聞かせてくれたブリジット・フォンテーヌ「ラジオのように」。どれもぼくの人生を変えた。

 テープ。レコードよりエアチェックや録音テープの交換が増えた。高校の後輩が貸してくれたP-MODELにうずいた。自分も何か動かなあかん、と思った。発売間近、初代ウォークマンを京都のソニー販売店で聴いて、飛び上がった。常に持ち歩く初めての機械になった。

 大学に入ると、ライブが音楽の入口となった。ローザルクセンブルクのどんとが教えてくれて大阪に見に行った少年ナイフ。京大教養キャンパスで見た町田町蔵のINU。ふらりと同志社をたずねて見た ほぶらきん。いつも寝転がってラッパふいてる近藤等則先輩。余録ながら、西部講堂でのポリス事件もあった。

 80年代に入り、貸レコード屋が登場。興奮して梅田に通った。レコードのダビングと知人間の流通に拍車がかかった。カラオケが普及し、世間ではこんな歌が流行っているのか、ということを、酒場で共有することにもなった。



 そこまでが、アナログ。上京し、就職したとたん、音楽はデジタルに変身します。
 CD、MD,iPod。Napster、iTunes、YouTube、DVD、スペシャ。着メロ、着うた、着うたフル。そしてサブスクリプション。Spotify、AWA、LINE MUSIC、Apple music、Google Play Music・・・。

 ぼくは音楽を大量消費して、携帯するようになりました。映像との接点も増えました。だからといって、音楽との距離や深みがさほど変わったわけではありません。関わりができあがり、凝り固まっていたからでしょう。

 そのあたり、デジタル世代、ネット世代はどうなのでしょう。サブスクリプションの登場をどう占えばよいでしょう。
 このあたりは、ウチの学生どもに後ほどじっくり聞いてみましょう。
(つづく)

2016年1月18日月曜日

通信・放送の融合から10年

■通信・放送の融合から10年

 通信・放送の融合。政府として始めて議論の俎上に上ったのは1992年電気通信審議会。そして実態として動いたのは今から10年前のことでした。
 2005年にライブドアや楽天が放送局の買収工作を見せ、2006年初頭のCESで米IT企業が一斉に映像配信ビジネスへの参入を宣言。メディア構造転換が待ったなしとなりました。

 当時、竹中平蔵総務大臣が松原聡東洋大学教授を座長に「通信・放送の在り方に関する懇談会」、いわゆる竹中懇・松原懇を開催し、その示す方向が通信・放送業界に激震を与えました。小泉総理の腕力も手伝い、それが政府与党合意、骨太の方針となって第一次安倍政権へと引き継がれます。
http://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/policyreports/chousa/tsushin_hosou/pdf/060606_saisyuu.pdf

 それから10年です。 
 
 議論の始まる2006年2月、ぼくは日経経済教室に「通信と放送 融合を探る 世界に先駆け日本型を」と題して寄稿しました。通信と放送の二分法を抜本的に改め、伝送路の区分を撤廃することを提案するものです。

 「コンテンツの規律も、通信と放送という単純な区分より、消費者保護、プライバシー保護などきめ細かい多元的な社会要請に応える仕組みが必要。」
「電気通信事業法や放送法といったタテの規律を、無線・有線伝送路法とサービス・コンテンツ法のようなヨコの仕組みに再編するなど、世界に先駆けて「日本型」の法体系を構築すべきである。」

 当時、こんな具合にあれこれ提案し、オモテ・ウラで調整を重ねました。ぼくの立場は規制緩和一辺倒だったのですが、誤解もされ、規制強化だと叩かれたり、仕事を干されたりもしました。


 でも、その後5年で通信・放送法制度はヨコ割りレイヤ型へと抜本改正がなされ、規制緩和も行われました。おおむね願っていた方向に進みました。

 ただ、その成果が上がっているとは言えません。本格的な融合サービスが現れ、利用者が恩恵を受けるのはまだこれから。AppleやGoogleの映像ビジネス参入に驚いて10年。今なおNetflixの上陸に驚いての変化を待たねばならないのでしょうか。

 さて、昔の資料を整理していたら、10年前の元旦に書いたペーパーを見つけました。政府での本格議論が始まる前に綴ったもの。世間に出せなかった個人メモですが、座興までに貼り付けておきます。

 1~4までの通信・放送法制は、少しはその方向に進みました。5と6の特殊法人制度は手つかず。ぼくは今は、7のデジタル著作権に関する議論を知財本部で進めています。8の子どもに関しては、デジタル教科書の整備を進めています。10の文化省設置は、今もお題目だけ唱えています。
 10年たって、進んだような、何も進んでいないような、です。


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□メディア法制改造大綱
2006.1.1

 メディア環境は、思想・表現の自由はもちろん、生存権や参政権などの基本的人権を保障する手段であり、かつ、産業・文化・福祉・国防等のための基盤となる。これを旨としつつ、デジタル技術の進歩、20世紀型メディアの普及の進展、メディア市場競争状況の変化その他の環境変化を踏まえ、国民が情報の生産、流通及び消費を円滑に行うことができるようメディア法制を再構成する。
 「通信・放送の二分法」に立脚した「事業・提供者行政」を基本としつつ特殊法人という「公的機関」を主軸に据えている現行制度の枠組みを改め、「メディア融合・レイヤ別制度」、「役務・利用行政」、「官民分担明確化」へと移行する。

1. 公衆電気通信法
○    事業及び事業者行政を役務及び利用行政に改め、通信・放送共通のアクセス面の法制として、通信・放送ネットワークに関する公正・適正利用の確保、接続・ユニバーサルアクセスの確保、番号管理等に関する法律を策定する。これに伴い電気通信事業法を廃止する。

2. デジタル放送法
○    放送法、有線テレビジョン放送法、電気通信役務利用放送法を廃止し、電気通信役務利用放送法のスキームを基礎とする新しい放送法を構成する。公衆直接受信要件を満たし番組規制を受け容れるものとして認定を受けた者に著作権法及び電波法上の特典を付与する。なお、これを含むコンテンツ規制は、児童ポルノ法、風営法その他の法律との役割分担を図り多元的な規律体系とする。

3. 電波法改正法
○ 帯域免許を導入するとともに、個人利用以外はMVNOを基本とする。放送は電気通信役務利用放送法スキームを基本とするが、(有線も含め)ハード・ソフト一致型のビジネスも認める。この場合、通信役務の提供義務は外すものの、その特典に見合う電波利用料を徴収する。

4. 有線電気通信法改正法
○    電気通信事業法及び有線テレビジョン放送法がカバーする有線インフラ規制(技術基準その他インフラに求められる要件)を移管し、電波法と同程度のレイヤを扱う法律とする。

5. 日本電信電話株式会社法廃止法
○    NTTを完全民営化する。特殊法人たるNTTに求められているユニバーサルサービス確保と研究開発の要請は、それぞれ他の法律で手当てする。通信主権の確保については、国家危機管理法制ないし有線電気通信法・電波法にて措置を講ずる。

6. 日本放送株式会社法
○    NHKをハード・ソフト分離し、ハード(伝送路)部門は通信会社として独立させ、公衆電気通信法、有線電気通信法、電波法の規律を適用。その電波を活用し、ハード・ソフト分離での地上波デジタルテレビ局の新規参入を実現する。NHKのソフト部門のうち、受信料でまかなう領域は引き続き特殊法人とするが株式会社化し根拠法を独立させる。この特殊法人には番組アーカイブのインターネット開放を義務づける。

7. デジタル著作権法
○    登録を受けたデジタル情報を対象とし、P2P推進など、情報の共有、流通及び消費を円滑化するための措置を講ずる著作権法の特例法を策定する。

8. 子どもデジタル法
○ 子どもが最先端のデジタル技術を安全にかつ安心して享受・利用できるよう環境整備するための法律を策定する。

9. 情報通信研究開発法
○    NTT及びNHKの研究開発組織、情報通信研究開発機構、ATRその他の関係機構を統合・再編成するとともに、産学連携を推進する措置を講ずる。

10. 文化省設置法
○    文化庁に総務省テレコム2局、同行政管理局(e-gov)、経済産業省商務情報流通局の関連部局を統合した官庁を置く。官庁の増加を防ぐため、経済産業省と農林水産省を統合し、農商務省とする。

2016年1月15日金曜日

携帯料金値下げ騒動が終わりましたね

■携帯料金値下げ騒動が終わりましたね

 携帯電話料金の引下げを巡る総務省の議論が年末に終了した模様で。ぼくは4点を感じました。
 1) 政治の鶴の一声が10兆円市場の構造を左右し得ることを改めて示した。
 2) 規制緩和30年の蓄積は安易な規制介入を許さず、行政も自制的だった。
 3) 今回の結果が通信の産業と消費者にどう作用するかは今後の注視が重要。
 4) MVNO活性化など競争環境整備はまだ途上であり、本丸の政策展開は持ち越し。

 昔このあたり役所で担当していたんですが、今はすっかり門外漢で、関連の会議にも参加していません。今回の騒動の途中、現役プロ官僚に「どうすんの?」って聞いたことはあるけど、向こうからアドバイスを求められることはありません。でも業界からは「どういうこと?」という質問も来るので、門外漢としての感想を書いておきます。

 本件は料金政策という通信政策の本丸であり、プロの領域。ぼくはアマの官邸が介入したのをどう収めるのかな、という観点で眺めていました。その点、総務省は大人になったなぁというのが感想です。

 今の総務省トップは通信自由化・電電民営化を断行したメンバーです。規制緩和や制度変更のリアリティを知り抜いていて、安定感があります。むしろ、この議論に引っ張りだされたタスクフォースの新美座長や業界のかたがたのほうが大変だったんじゃないですかね。

 発端は官邸。2015年9月、安倍総理が高市総務大臣に携帯電話料金の引き下げを指示。これに対し総務省は「ICTサービス安心・安全研究会」の下にタスクフォースを設置し、10月から12月まで5回開催して結論へ。審議会等ではない軽いフォーメーションで、年内というスピード感でサクッと終えました。

 総理指示の理由は、携帯電話の家計に占める割合が上昇していることでした。しかし日本の料金は米英などと比べると安い。映画やゲームなどコンテンツ利用がスマホから行われて、携帯支出が増加するのは当然。結果、携帯料金が下がり通信業界が冷えることに対する逆アベノミクス効果の方が心配。政治パフォーマンスにしてもスジ悪の指示だとぼくは感じました。

 しかも、通信自由化30年の節目に出された指示です。通信政策は規制緩和優等生として、参入規制、外資規制、料金規制をいち早く撤廃してきた。それが通信のインフラ整備、産業と利用の活性化をもたらした。料金への再介入はそれに逆行する政策であり、思いつきでできる仕事ではありません。

 だから、もし昔ぼくがこれを担当させられたら、「官邸は何言ってるんだ」とばかり、反論ペーパーとか作ってたんじゃないかな。でも今回、総務省はそんなことはせず、すぐにフォーメーション組んで、騒ぎを落ち着かせるべく議論し、それなりの結論を得たと考えます。

 さて、総務省会議では、料金を下げて家計支出を抑えるというより、ユーザー間の料金の公平性を求める議論になりました。1)ライトユーザー向け料金プランを作ること、2)端末販売を適正化すること、3)MVNOの低廉化・多様化を通じた競争促進の3点が結論となりました。

 1)料金プラン作りは業界への「要請」。2)端末販売も法規制などが俎上に上ったものの、ガイドラインでの要請に落ち着きそうです。このあたりは、業界ともすりあわせた上で、ハレーションの起きない決着が図られたと見ます。

 ただし、この部分は、今回の決着で市場がどう動くのか不透明であり、ひとまずは市場を監視する、という措置でいいんでしょう。

 3)MVNOを通じた競争促進は従来から取り組んでいる政策で、これを進めるというのが総務省としての本丸。ここは道半ばであり、今後も力を入れるべき分野。総務省としてはここを強調するんでしょう。

 こういうのって、政治の圧力、キャリアの立場、MVNO等のビジネス、利用者の利害など、損得勘定が渦巻き、政策の経緯や学術的な正当性などもあって、満点の解答はありません。その中でどう収めるか、がプロに問われる。ぼくは及第点をつけます。

 裏側では、官邸対策、与党対策、業界対策、マスコミ対策、学界対策などなど、オモテに出ていない色んな動きがあった、いや、今もあるでしょう。官邸指示で始まった騒動を、次の行政につなげようとしているんじゃないかな。官僚諸君は。

 逆に見れば、首相官邸は、1円もコストをかけず、一声で行政を動かし、10兆円業界をあわてさせ、利用者に値下げを期待させ、とりあえず早期に結論を得ました。この政権は、大したものだと思います。安保法、首相談話、TPP、軽減税率、日韓合意。官邸一強の年でしたね。

 正直この件は、ぼくは現役官僚や通信キャリアなどと深い議論をしておらず外野からの感想なので、改めて認識を聞いてこようと思います。  
 てことでまた。

2016年1月14日木曜日

デジタル十大ニュース2015 投票開始

■デジタル十大ニュース2015 投票開始

 

 デジタル十大ニュース2015の投票を開始しました。

 昨年も重要事件が多く、ノミネートは20件。


・ネットが暴いた五輪ロゴパクリ問題
・首相官邸にドローン落下ですぐ規制
・Apple、Google、AWA、LINE、サブスクリプション本格化
・ ISIS、日本の回答は萌えキャラとクソコラ
・マイナンバー制度開始
・Netflix日本上陸
・Apple Watch発売
・DSにWii、任天堂岩田社長が逝去
・オンライン学習サービス、いよいよ本格化
・自動運転、グーグル、アップルなどの覇者争い
・ VW、不正ソフト利用で排ガス規制逃れ
・ ペヤングvsゴキブリ、販売停止と復活劇
・AI・IoT狂想曲
・在京民放5局の配信サービス「TVer」スタート
・保護期間延長と非親告罪化、TPPで著作権法大改正へ
・ネットで火事をリアル配信、ネットも家も大炎上
・MVNO格安SIM躍進なるも首相値下げ指示
・モンスト、モバイルゲーム売り上げ世界一に。
・サイネージ搭載、山手線新型車輛E235系運用開始
・Channnel4K、ケーブル4K放送開始

ありますねぇ。

投票はこちらから。


 http://bit.ly/1NZERic
 

結果は来年2月19日(金)赤坂にて開催の「デジタル新年会」で発表します。
250名程度のデジタル、コンテンツ、IT業界のパーティー。
こちらへのご参加も受け付けております。
  

 http://www.digital-signage.jp/event/


 


ちなみに、過去4年の十大ニュースは以下のとおりです。

◯デジタル十大ニュース2014


 http://ichiyanakamura.blogspot.jp/2015/02/2014.html
1位  LINEで決闘:「決闘罪」が適用される(1471)


2位  論文コピペ発覚で大問題~STAP細胞はあります~(973)

3位 プログラミング教育 本格化(766)

4位 ウェアラブル機器続々:GlassやらWatchやら(645)

5位 非実在小4、どうして解散するんですか?を問う(637)

6位 3Dプリンター事件:銃とかわいせつなものとか(581)

7位 ベネッセ個人情報流出(522)

8位 ロボットPepper登場。ロボットペットも復活。(503)

9位 角川ドワンゴ統合(502)

10位 mixi モンストで大復活!(468)
   
  総数10109票。(  )は票数。


◯デジタル十大ニュース2013


 http://ichiyanakamura.blogspot.jp/2014/02/2013.html


1位 バルス祭り 14万tweet 世界記録塗りかえる

2位 特定秘密保護法とNSA通信傍受

3位 3Dプリンター低価格化で身近に

4位 オープンデータ進展

5位 冷蔵庫に入る若者たち~炎上相次ぐ

6位 ホリエモン出所

7位 あまちゃん・半沢直樹、テレビの底力

8位 4K8K/Hybridcast次世代テレビに期待感

9位 大阪市・荒川区・武雄市が2015年度までに子どもにタブレット配布

10位 ウェアラブル・コンピュータ時代到来か


◯デジタル十大ニュース2012


 http://ichiyanakamura.blogspot.com/2013/01/2012_26.html
1位 どないしてん日本家電産業

2位 LINE8000万人、無料通話ソーシャルサービス戦国時代へ

3位 違法ダウンロード刑罰化

4位 コンプガチャ問題

5位 炎上大国ニッポン:市長も社長も教育長も

6位 ソーシャルなデモ多発:原発やら反日やら

7位 遠隔操作ウィルスで警察手玉に取られる

8位 アノニマス大暴れ!ACTAとか霞ヶ浦とか

9位 スマートテレビ始動:放送、通信、メーカーの本格対応

10位 ビッグデータは宝の山?


 


◯デジタル十大ニュース2011

 http://ichiyanakamura.blogspot.com/2012/01/2011_14.html


1位 スマートフォン急激に普及 上半期出荷台数は1000万台超

2位 スティーブジョブズ氏死去

3位 復旧作業や安否確認にソーシャルサービスが活躍

4位 通信・放送融合法制が施行

5位 震災後 TVのネット配信が一時実現

6位 facebookの加入者 日本で1000万人突破

7位 タブレット端末 各メーカーから出揃う

8位  地デジ、被災三県除き整備完了

9位 DeNA野球参入に楽天が反対

10位 サイバー攻撃相次ぐ


2016年1月12日火曜日

コンテンツ・デジタル集積特区、CiP宣言—5

■コンテンツ・デジタル集積特区、CiP宣言—5

 東京港区のベイエリア、竹芝地区にデジタル・コンテンツの街を創る構想、CiP(Contents Innovation Program)。発足に当たっての宣言、ラスト。


5) ビジネス拠点と政府連携

 起業支援及びビジネスマッチングは、理事・会員の意向とアイディアに負うところ大である。CiPは業界横断のコミュニティであるから、情報交換や連携活動を通じたビジネスの生成が本来期待されるアウトプットだ。まずはそのコミュニティ機能を活発にする。

 その上で、起業支援に関して、CiPとしてプログラムを形成し、資金の出し手と起業家とのマッチングを行うことが考えられる。

 既に、クールジャパン機構、産業革新機構はじめ政府系の資金セクターのほか、金融機関や民間ファンドとの意見交換を始めている。コンテンツやIT分野への投資に積極的な事業会社やエンジェルとも検討を進めている段階だ。CiPとしてファンドを組成することもあり得る。

 ビジネスマッチングでも、サロンやイベント、分科会などでの交流だけでなく、具体的なプログラムを形成する。例えば現在、日本動画協会が中心となって、アニメ業界と他の業界とのマッチング策を進めている。こうした活動をCiPとも連動して広げたい。


 これら活動は政府・自治体とも連携を図りたい。そこで現在、首相官邸、内閣官房知財本部、総務省、経産省、東京都等と連携策について意見交換を行って。取り分け、竹芝地区は国家戦略特区として位置づけられており、政府に知恵とアイディアを寄せて、これまで日本では実行不可能であったプロジェクトを遂行したい。

 特区のアイディアとしては、例えば著作権特区として、この場であれば蓄積・公開できるアーカイブやマーケットができないだろうか。あるいは電波特区として、通信・放送融合実験ができないか。サイネージ特区として、屋外表示規制を解除し、区域一面の大規模な映像表現ができないか。ドローン特区での大規模ドローンレース、ロボット特区での自動運行、超人スポーツ特区でのサイボーグ対戦。全て実施してみたい。

 なお、韓国は政府が「コンテンツ・コリア・ラボ」を設立し、コンテンツの人材育成から起業支援までを国費で実施している。一方、CiPは産学連携の構想であり、現時点では資金面で政府の支援は予定されていない。プロジェクトベースで財政措置を要するものがあれば検討することとする。


 CiPは、これら全てを行うための場である。1.5haの都有地に39階の業務棟を建設し、ラボや教室、ホール、スタジオといった8,000㎡の共同施設を設ける計画だ。このうち800㎡はCiP協議会が利用するコミュニティゾーンも用意する。これとは別に、現在もあるイベントスペース「産業貿易センター」も存続する。その上にオフィスが置かれる。

 エリアの完成は2019年度。プロジェクト開始から5年の期間がある。その間、CiP協議会は精力的にプロジェクトを進める。2015年から活動を始め、2019年度に街開き、2020年の東京オリンピック・パラリンピックで内外に発信する。

 街開き後は、内外のプレイヤーを集結し、研究開発機構も整え、国際的な拠点として注目を集める場としたい。

2016年1月11日月曜日

コンテンツ・デジタル集積特区、CiP宣言—4

■コンテンツ・デジタル集積特区、CiP宣言—4

 東京港区のベイエリア、竹芝地区にデジタル・コンテンツの街を創る構想、CiP(Contents Innovation Program)。発足に当たっての宣言、その4。CiPの研究と教育について。


4) 研究開発と人材育成

 研究開発は、CiP協議会の理事・会員の提案に基づいてテーマを設定する。ただ、協議会設立前の現時点において、既に10件程度のアイディアが寄せられている。

 例えば「超人スポーツ」。ウェアラブルやロボティクスなどの技術を駆使した新しいスポーツを開発する。誰もが超人になれる環境を整備する。CiP協議会と同時期に形成される「超人スポーツ協会」と連携する企画だ。

  「次世代デジタルサイネージ」。2020年に向けて、4K8K・多言語で、防災対応のサイネージシステムを開発して整備する。本件は総務省にて研究会が開催され、東京都も熱心な案件だ。竹芝をサイネージ特区にして、ショーケースにする案もある。

 「アーティストコモンズ」と「音楽アーカイブ」。アーチストコモンズは、アーティストにIDを付番し、コンテンツやグッズ等が流通・管理しやすいようにする音楽業界によるプロジェクト。そのためのシステムと、データベースを開発・構築し、実証実験を行う。これに連動する音楽と映像のアーカイブを、著作権特区として竹芝に置く案もある。

 「IT政策研究」。国際的なIT政策の重要アジェンダを整理し、研究するプロジェクト。本件は既に慶應義塾大学とスタンフォード大学との間で共同研究が進められ、日米の関連企業や政府・国際機関も参加している。これをCiP協議会が受け皿となって引き継ぐ。スタンフォード大学主催の「シリコンバレーモデル研究」の日本側受け皿となる案もある。


 このように、技術開発だけでなく、ビジネスモデル、政策研究、教育カリキュラム開発などさまざまなプランがある。理系の案件に加え、法律、経済、デザインその他広範なジャンルのかたがたに協力いただく。

 研究を進める中核として、慶應義塾大学メディアデザイン研究科(KMD)は竹芝に拠点を置く計画である。共同研究を進めているスタンフォード大学にも参加を期待する。国内の有力な大学及び研究機関との連携・共同研究を進める。併せて、米国、欧州、アジアの有力大学にもプロジェクトベースでの連携を働きかける。その発展形として、共同研究機構の形成を目指す。

 人材育成、教育面でも、KMDをはじめとする大学・大学院に加え、専門学校等と連携して、プロのクリエイターやプロデューサーの育成を図る。

 人材育成プロジェクトの第一弾として有望なのは、文部科学省「マンガ・アニメ人材育成事業」。各種学校、関係企業がデジタル人材育成の方策を練っており、カリキュラムの開発を進めている。CiPはその活動及び実証の場として機能したい。こうした活動を、音楽、ゲームその他のコンテンツ領域にも広げていきたい。


 CiPの行う人材育成は高等教育だけではない。子どもの表現力・創造力の高さが日本ポップカルチャーを下支えしている。その力をデジタル技術で高めることは日本にとって重要な戦略となる。

 NPO「CANVAS」は子どもの表現力・創造力を高める活動を推進しており、最近はプログラミング教育の全国展開を進めている。また、学校教育のデジタル化を進める「デジタル教科書教材協議会」(DiTT)は未来の教室の設計を手がけようとしている。CiPはこれらと連動して、初等教育からコンテンツ人材を育成する手法を構築していきたい。

(つづく)

2016年1月8日金曜日

コンテンツ・デジタル集積特区、CiP宣言—3

■コンテンツ・デジタル集積特区、CiP宣言—3
 東京港区のベイエリア、竹芝地区にデジタル・コンテンツの街を創る構想、CiP(Contents Innovation Program)。発足に当たっての宣言、その3。CiPが提供する機能について。


3) 4機能のハブ

 融合領域の産業と、教育と、文化を生む、コンパクトなクラスターを形成する。かつて◯◯バレー構想と称するプランが注目されたが、竹芝は、谷ではない。空と海である。羽田から都心に着く浜松町の地のりを活かす。海外からのみなさまをデジタルでもてなす。

 東京湾に面する広がりを活かす。東京は、海を持つ首都。アメリカも、イギリスも、フランスも、ドイツも、イタリアも、インドも、中国も、韓国も、首都に海はない。東京は、海を活かそう。港と、水辺と、海面とを活かそう。

 東京の各地域をつなぐハブになりたい。渋谷、新宿、池袋、秋葉原、銀座、内幸町、汐留、赤坂、六本木。山手線内の各拠点も音楽、ファッション、アニメ、ゲーム、広告、テレビ、さまざまな集積がある。さらに渋谷でも池袋でも、品川でも、再開発が待っている。五輪に向けて開発も進む。みなデジタルがポイントになる。それらをみなつなぐ。

 国内の有力都市をつなぐハブになりたい。コンテンツ特区の札幌、映画・マンガ・アニメ・ゲームが集積する京都、音楽とゲームに強い福岡、国際映画祭を擁する沖縄、その他いろんな町を連結するハブになりたい。

 世界の有力都市を結びたい。ボストンや西海岸の大学。ロンドンの研究所やパリのイベント。シンガポールのプロジェクト、ソウルのインキュベーション施設。全てを連結するハブになりたい。
 CiPの機能は4つ。研究開発、人材育成、起業支援、ビジネスマッチング。技術を生み出し、人を育てて、それを産業として押し出し、世界にビジネスを広げる。そこから生まれたテーマを研究する。そのサイクルを描きたい。


 開発から育成、産業化までを一気通貫で行う。この一気通貫で日本で成功したモデルの存在は知らないが、だから挑戦する。デジタル分野で研究開発から大きな産業に育ったものはある。軍事技術の研究から発生したインターネットがネットビジネスを生んだ。70年代にMITが開発したゲーム技術が日本のゲーム産業を生んだ。

 アメリカは大学が存在感を発揮している。スタンフォード大学はSUNマイクロシステムズを生み、Yahoo!を生み、Googleを生んだ。ハーバード大学の学生がマイクロソフトとfacebookを生んだ。MITからはeInkや$100パソコンが飛び出した。日本も、学に発動させたい。

 例はある。1960年、東海大学の開局したFM局がその後のFM東京になった。2008年、大阪大学と慶應義塾大学が産学連携で推進した実験プロジェクトがネットラジオのradikoとなった。こういう事案を数多く生み出したい。

 研究開発、人材育成、起業支援、ビジネスマッチングの一気通貫サイクル。とは言えCiPが目指すものは、秩序だったクリーンな場ではない。イメージを描いてみるならば、デジタルのおもちゃ箱のような「MITメディアラボ」と、NPO「CANVAS」による子どもの創作プロジェクト「ワークショップコレクション」と、西海岸の起業コミュニティ「500 startups」と、あらゆる分野の連中が交わるカオスな場である「ニコニコ超会議」。そうした機能をコンパクトに一箇所に集めて、365日動かす。集約と融合による化学反応を期待する。そのような学校、工場、そして広場を作りたい。

 CiPは、初音ミクになりたい。初音ミクは3つの要素から成り立っている。まず、ボーカロイドという技術。作詞作曲すれば専属歌手になってくれるというテクノロジー。第2にコンテンツ。16歳、158cm42kgのキャラクターのデザイン。

 そして第3は、コミュニティ。ニコニコ動画にみんなが参加して育てあげた。作詞作曲してみた。歌ってみた。演奏してみた。踊ってみた。みんなが自分の能力を持ち寄り、育てた。技術、デザイン、そして参加型コミュニティの総合力が日本の強み。これを活かしたい。


(つづく)

2016年1月7日木曜日

コンテンツ・デジタル集積特区、CiP宣言—2

■コンテンツ・デジタル集積特区、CiP宣言—2

 東京港区のベイエリア、竹芝地区にデジタル・コンテンツの街を創る構想、CiP(Contents Innovation Program)。発足に当たっての宣言、その2。CiPが対象とする分野について。


2) デジタル・コンテンツ

 マンガ、アニメ、ゲーム、そしてJ-Popに代表される日本のAV文化は、世界のポップカルチャーの一翼をなす。デジタル・コンテンツの集積拠点としては、この分野に注力することは当然だ。その制作、連携、発信の機能を充実させることは説明を要しない。

 だが、2020年代のコンテンツはそれが主役であるとは限らない。

 この分野は、過去5年で様変わりした。「スマート化」である。デバイスはTV、PC、ケータイからスマホやサイネージなどを含むマルチスクリーンとなった。パッケージからネットワークへ、さらにクラウドへと移行し、世界が単一市場となった。サービスはソーシャルメディアの成長が著しい。

 コンテンツビジネスは、マルチウィンドウとクラウドでボーダレスなビジネスになり、アニメの海外配信を筆頭に、音楽のライブ展開、放送番組の輸出、そして食やファッションなどとの連携が注目を集めている。ソーシャルサービスに参加型コミュニティが形成されて、ソーシャルゲームが一大産業になり、みんながコンテンツを生み出している。 


 このマルチスクリーン、クラウド、ソーシャルという、メディアを構成するデバイス、ネットワーク、サービスの3要素が世界同時に塗り替わる波に日本は乗り遅れた。とはいえ、それを後追いするのではなく、もはや次のステージを目指さなければいけない。


 次の幕は開きつつある。

 マルチスクリーンを超える新しいデバイス環境を迎える。四角いスクリーンを超えたウェアラブル・コンピュータが一般化する。3Dプリンターにより平面ではなく立体がコンテンツになり、映像ではなくモノがコンテンツになる。M2M(Machine to Machine)、IoT(Internet of Things)が進み、クルマも家電もロボットも、すべてがつながって交信する。全てのモノにコンピュータが埋め込まれ、全てのモノがメディアになる。 

 クラウドネットワークの次世代のネットワークが構築される。5G通信網の上で、ビッグデータが共有され、そこに人工知能が組み込まれて、人を上回る仕事をネットワークがこなすようになる。街のどこにいても、自分の端末がオフの状態でも、情報が目の前を行き交うユビキタス環境となる。それはメディアが細密に埋め込まれたエコで安全な情報都市を設計することでもある。

 サービスも急伸する。従来のコンテンツやソーシャルメディアだけではない。

 Eコマースは小売全体の5%を占めるまでに成長してきたが、残り95%の領域にも広がり、生活・経済の中心となるのは間違いない。教育のかなりの部分がコンテンツ化し、医療の一部分がデジタル化される。2020年代には、年20兆円にのぼる国内教育コストの1/5程度はデジタル市場になるのではないか。医療コスト30兆円のどの程度がデジタル市場になるであろう。

 行政も然り。行政事務をコンテンツ化するオープンデータが進んでいる。地方自治体の年間の予算総額は80兆円になる。そのどの程度がデジタル化するだろうか。巨額の可能性が潜在する。コミュニケーションとコミュニティが進化し、新しいサービスが生まれ続けるだろう。 

  CiPが展望するのは、そのような時代、そのような状況だ。そうした2020年代のデバイス、ネットワーク、サービスをプロデュースしたい。

(つづく)

2016年1月4日月曜日

コンテンツ・デジタル集積特区、CiP宣言—1

■コンテンツ・デジタル集積特区、CiP宣言—1

 東京港区のベイエリア、竹芝地区にデジタル・コンテンツの街を創る構想、CiP(Contents Innovation Program)。
 東京都の土地を活用する東急不動産・鹿島建設の事業で、慶應義塾大学が企画運営に参加しています。
 推進母体となる一般社団法人「CiP協議会」を2015年春に設立し、研究開発、人材育成、起業支援、ビジネスマッチングを推進、東京オリンピック・パラリンピック直前の2019年度に街開きする計画です。
 本構想については、これまで繰り返しレポートしてきました。

・CiP協議会、会員を募集します。(上)
 http://ichiyanakamura.blogspot.jp/2015/02/cip.html

・CiP協議会、会員を募集します。(下)
 http://ichiyanakamura.blogspot.jp/2015/02/cip_6.html

・堀江さんに「今スグやれ」って言われた。
 http://ichiyanakamura.blogspot.jp/2015/02/blog-post.html

・CiP協議会、プロジェクト始動です。
 http://ichiyanakamura.blogspot.jp/2015/05/cip.html

・なぜ今CiPなのか?
 http://ichiyanakamura.blogspot.jp/2015/06/cip.html

・コンテンツ国家戦略特区、活動スタート。
 http://ichiyanakamura.blogspot.jp/2015/04/blog-post_30.html

 でも、まだ「ようわからん」という声も届くので、協議会発足に当たってぼくが書いた宣言を1)創造力とデジタル、2)デジタル・コンテンツ、3)4機能のハブ、4)研究開発と人材育成、5)ビジネス拠点と政府連携の 5日に分けて掲載します。


1) 創造力とデジタル

 富国強兵に踏み出して以降100年余、敗戦で強兵の看板を下ろした日本は、産業の発展という富国政策に邁進した。それはアジアの奇跡と称される成功を収め、1990年代初頭には、日本の国際競争力は世界一とされていた。

 しかし、その10年後には20位に急落、その後15年間、トンネルを抜け出していない。富国の看板も色あせた。だが、富国強兵後の日本もまた面目を保っている。


 文化大国としての輝きである。

 日本の流行文化=ポップカルチャーは世界中で高い人気を誇り、デジタルメディアを通じて海外に発信するコンテンツは日本の創造力を証明している。それは伝統文化や古典芸能とも地続きのものであり、戦後70年の平和主義や、311の震災時に日本社会が示した礼儀・秩序ともあいまって、トータルとして国際政治論にいう「ソフトパワー」を発揮している。

 無論、産業界が培ってきた技術力、ものづくり力が失せたわけではなく、それらハード面の力と、コンテンツなどのソフト面の力との総合力が今の日本の資源である。

 「最もクリエイティブな国はどこか」。Adobe社の先進主要国向けアンケートでは、英9%、仏11%、独12%、米26%を抑え、日本が36%と図抜けた首位を示した。同じく、「最もクリエイティブな都市は」という調査に対しては、ベルリン7%、ロンドン8%、パリ15%、NYC21%を抑え、東京が30%であった。世界は日本の、東京の創造力を認めている。


 だが、同じ調査で、「自分の国はクリエイティブか」という問いに対し、日本が圧倒的な最下位を示した。われわれは、自らの創造性を認識しておらず、その力を発揮できていないのではないか。

 50年前の東京オリンピックで、日本は復興と成長の姿を見せた。次に来るオリンピック・パラリンピックで、東京は、日本は、どのような姿を表そうとするのか。


 デジタルは次の姿を示す柱となる。人類に残されたフロンティア領域としては、宇宙・海洋、バイオ、ナノ、そしてバーチャル空間が挙げられる。中でもバーチャルを構成するデジタル分野、すなわちIT=情報技術とコンテンツ=表現は、今後も成長・発展余地が大きく、かつ、日本はその技術・表現の面では力を証明済みである。

 政府は過去10年来、コンテンツ立国及びクールジャパンを標榜し、コンテンツ産業の成長に期待してきた。マンガ、アニメ、ゲームなど海外でのポップカルチャー人気は定着した。だが、産業としては十分な成果を上げていない。この数年、コンテンツ市場は停滞しており、産業に締める海外売上比率はアメリカに比べ大きく劣る。

 デジタル・コンテンツ分野に資源を集中投下し、海外展開に力を入れるべきである。

 CiP(Contents Innovation Program)は、デジタルとコンテンツの産業集積地を東京・港区竹芝地区に構築する構想である。Cコンテンツ、iイノベーション、Pプログラム。コンテンツで社会を革新する。言い換えると、Cクリエイティブ、iイノベーティブ、Pポップ。内外から資源を集め、集中投下し、新しい産業文化を生産・発信する場となる。

 だからといって、目指すはハリウッドやシリコンバレーではない。ハリウッドやシリコンバレーの強みは、超一流のアーティスト、ギーク、そしてビジネスエリートの集積だ。これに対し、日本の強みは、高度な技術力・表現力に加え、正確で勤勉な大勢の職人の存在、さらに、コミケ、ニコ動、カラオケ、コスプレ、ゆるキャラ、B級グルメなど、みんなが参加して生産し、消費される猥雑で混沌とした産業文化力である。これを活かし、増殖炉となる。


(つづく)

2016年1月1日金曜日

反省、2015年。展望、2016年。

■反省、2015年。展望、2016年。
賀正 でございます。
 2013 年頭所感
 
 http://ichiyanakamura.blogspot.jp/2013/01/20122013.html
 2014 年頭所感 
 
 http://ichiyanakamura.blogspot.jp/2014/01/20132014.html
 2015 年頭所感
 http://ichiyanakamura.blogspot.jp/2015/01/20142015.html

 いつものとおり、2016年を始めるに当たって、2015年を振り返ります。

 2014年はスマート化の仕上げに動き、ネット、キッズ、ポップの3本柱の安定化を図りました。そして2015年は構造を壊し、柱となる新機軸を立ち上げました。ネット、キッズ、ポップに代わる新しい枠組みを、「City」「Cool」「Convergence」の3本柱としました。


1 CITY

 
 デジタルの街づくりをするプロジェクトです。


1) CiP 
  港区竹芝にデジタル・コンテンツ産業集積特区を作る「CiP」。4月に一般社団法人「CiP協議会」を設立し、2019年度の街開きに向け始動しました。
 通信、放送、IT、音楽、アニメ、ゲーム、広告、商社、VC、学校など50社・団体が参加し、内閣官房など政府とも連携しています。既に国家戦略特区として総理大臣の認定を受けており、テストベッドを構築するほか、沖縄・京都等の都市、スタンフォード大学など海外との連携も強化します。
 http://takeshiba.org/

2) 超人スポーツ 
 身体と技術を融合させ、人機一体の新しいスポーツを開発する「超人スポーツ」。稲見昌彦さん・暦本純一さんとぼくが共同代表となって「超人スポーツ協会」を立ち上げました。
 超人スポーツハッカソン、超人スポーツEXPOなど、新スポーツの開発、展示、普及に向け慌ただしく活動が始まっています。 2020年には超人五種競技国際大会を開く街を整備したく存じます。
 http://superhuman-sports.org/

3) Tokyo Crazy Kawaii  
  マンガ、アニメ、ゲーム、ファッション、食、雑貨などなど、クールジャパン業界の総合力を海外に発揮するビジネス☓カルチャーイベント。NIPPONのカワイイを世界各地でローカライズしていきます。昨年はバンコク大会がテロで延期。1月に開催します。

  
 http://www.crazykawaii.com/



2 COOL

 
 ポップカルチャーの世界展開やコンテンツの開発を進めるプロジェクトです。




1) Artist Commons 
 アーティストに固有のIDを付与し、コンテンツやグッズ、ライブ等の情報を展開しやすいようにするプロジェクト「Artist Commons」を音楽業界とスタートさせました。
本件は政府クールジャパン戦略にも明記され、CiPをベースに展開します。
 http://bit.ly/1kiqzyj

2) アニメマンガビジネス 
 日本動画協会「アニメビジネス・パートナーズフォーラム」。アニメ等のコンテンツ分野がパートナービジネスを開発する活動に協力しています。文科省アニメ・マンガ人材養成事業と連携し、クリエイター、教育機関、関係業界とともに育成カリキュラムの策定にも携わっています。これもCiPとの連携を強化する計画です。
 内外のマンガ家と関連企業が集う「海外マンガフェスタ」。今年もちばてつや先生らと東京で開催しました。
 
 http://abpf.jp/
 http://kaigaimangafesta.com/

3) 沖縄/京都国際映画祭 
 吉本興業が主導する沖縄国際映画祭にて、世界のお笑い映像の収集・発信、コンテンツ取引市場の形成などを推進しています。京都国際映画祭には特別顧問・実行委員として参加。映画とアートの祭典を今後も進化させます。
 
 http://www.oimf.jp/
 http://kiff.kyoto.jp/

4) 政府コンテンツ政策 
 内閣官房・知財本部では座長として「コンテンツ及ひ周辺産業との一体的な海外展開の推進」を柱とする知財計画2015を策定。「クールジャパン戦略推進会議」では「デザイン」「コンテンツ」「食」「地方・観光」の4分野のうちぼくはコンテンツを担当しました。クールジャパン官民連携プラットフォームも設立され、その活動に参加・協力していきます。
 http://ichiyanakamura.blogspot.jp/2014/04/blog-post_17.html
 http://ichiyanakamura.blogspot.jp/2014/05/japan-night.html

5) その他
◯ もしもしにっぽん
 

 きゃりーぱみゅぱみゅ主演の「もしもしにっぽん」。NHKワールドで世界放映し、ネットでも配信するほか、国内ではBSフジでオンエアというメディア融合番組。「ICHIYA'S POP EYE」というコーナーを企画・提供。ポップな日本を英語で紹介。24回でひとまず終了です。
 
 http://www.jibtv.com/programs/moshimoshinippon/

◯ JMOOC
 ネット無料配信の講座「ポップパワー」を提供しました。受講生から実行プランを求め、それを実際に創る。新しいタイプの講座を試みました。

 http://gacco.org/


3 CONVERGENCE

 
 メディア融合や新メディア開発を進めるプロジェクトです。


1) デジタルサイネージ
 デジタルサイネージコンソーシアムを一般社団法人化しました。
 2020年に向け、多言語・防災おもてなしサイネージと、4K8K次世代サイネージの整備が国家課題と位置づけられ、総務省2020年ICT懇談会の場で方策づくりが続いています。これを推し進めます。
 http://www.digital-signage.jp/



2) IPDC/スマート放送
 放送の電波に通信技術であるIPを乗せるサービスを開発するIP Data Casting(IPDC)。CiP特区でのメディア融合実験を企画しています。TFMグループが進めるVlowマルチメディア放送もCiPでの通信・放送融合実験を計画中です。
 民放連でぼくが座長を務めるネッド・デジタル研究会でもこれら企画を論議していきます。
 http://www.ipdcforum.org/


  

3) IT政策研究会
 スタンフォード大学アジア太平洋研究センターAPARCとの共同でIT政策に関する研究を進めています。日米の政府・企業関係者とともに政策の整理をします。
  
 http://www.itpolicy-roundtable.net/

4) その他
◯ ネット炎上


 ネット炎上対策を講ずるプロジェクト。社団法人ニューメディアリスク協会とともに、事例調査、啓発教育などの活動を進めています。

 
 http://newmediarisk.org/guide/greeting
◯ オープンデータ


 オープンデータ対策を進めます。VLED(社団法人オープン&ビッグデータ活用・地方創生推進機構)に協力し、普及啓発に努めています。


 http://www.opendata.gr.jp/




4 参考 デジタルキッズ
 デジタルキッズはCANVAS石戸理事長に完全に代替わりし、発展期に入りました。
 11回目を迎えたワークショップコレクション
 http://ichiyanakamura.blogspot.jp/2015/11/2015.html
 第4回を迎えたデジタルえほんアワード
 http://ichiyanakamura.blogspot.jp/2015/12/2015.html
 いずれも順調に育っています。

 デジタル教科書も大きく動きました。文科省ではデジタル教科書の正規化に向けた検討会議が発足し、DiTTも意見を述べてきました。DiTTとしても提言「教育情報化推進法の制定を」を発出、新しい運動にコマを進めています。
 http://ichiyanakamura.blogspot.jp/2015/08/blog-post_0.html
 http://ichiyanakamura.blogspot.jp/2015/10/ditt2015.html