2022.04.30 Sat
SECOND FLIGHT
「たたんだ、翼を今すぐ広げて-……」
と、少し、昔のアニメの主題歌を唄いながら……
「涙は弄べるほど、余裕がないー」
と、棒読みスタイルで、暗くなった夜道から、やっと我が家に帰ってきた。
「ほら、早く入ろう。」
同居人の声が鼓膜に響く。
同居人は鍵を使って、まるで自分はショックを受けてませんとでも言うかのように入り込む。
「はぁぁぁぁぁぁぁ……」
部屋に戻れば大きなため息を吐くのは、20の若者の特権ともいえる。
その分、年を取ったからだ。大人になればなるほど、社会のしがらみのうざさなんてものを纏えるようになって、そうなると、ある程度、こういうことは許されていくのだから。
口の中から吐き出される空気は、どこか、肉体から水分が抜けていく気分とは、こういうものなのだろうとなんとなく感じている。ぐったりとしながら、自宅に辿り着くと手荷物をすべて手放して、冷蔵庫からビールを取り出して、意味なく天井を見上げてぼーっとしてしまう。
例え、となりの同居人がいようともだ。
何をしようとしたんだっけ。
互いに酒を肉体に入れることが許されるようになった年齢。
ただただ、包み込まれるような虚無感と言うのは、一種のアイドルの卒業式のようにも思える。
「いやぁ、綺麗だったね。」
「んー、そうだね。それに、お似合いだった。」
ただ、ただ、楽しい結婚式だったというのに、それでも、どこか、あの場所にいたある程度の人は虚無感的なものを覚えていたのではないのだろうかと谷崎景とか、その周りの少女達を見ていると、そういうことを思う。
何せ、彼女は、誰のものにもならないと思っていたから。
寧ろ、木崎江利花と、どれだけ仲が良くても、そこまで行くことはないだろうとか、そういう身勝手なことを考えていた自分がいた。
無いと思っていたけど、それでも、やはり、彼女とは、そういう関係になったのかと言うのは、一種の敗北感に近い。思えば、木崎江利花には、あのピアノやバイオリンを弾いた姿を見た時から負けっぱなしな感じがする。
そして、彼女の傍にいる明日小路は、常に、それに並んで共に未来に走っているような気がする。
「本当、見栄を張っちゃうところ、可愛いよね。」
「バ、バカ……」
「小路ちゃんにギターを聞かせるとか、そういう練習をした時と同じ。」
フフッと、悪戯っぽく笑う。
「私も、ショックだったよ。やっぱり、やっぱり……ね。」
蛇森生静は同居人のカミングアウトに思わず口をあわあわさせた。言葉にした本人が自覚をしてしまったからなのか、慰めるつもりが、本心に気づいて少々、瞼に涙をためているのが解る。ぐらっと来る意識に振り回されて肉体から神経が抜けていくように、ただただ翻弄されていく。
戸鹿野舞衣の浮かべる表情。
「バカ……」
「切なさをはぐらかすのには、慣れていたんだけどね……」
「じゃぁ、こんな時だけ波が止められないのは……」
やはり、思うのだ。
明日小路と言う存在の大きさを……
もし、男と結婚していれば、ある程度の割切り刃で来ただろう。
しかし、彼女の運命を共に歩むことを選んだのは、木崎江利花。女として、同級生として、そして、小路に片思いしていた女としての三重の嫉妬……
「ごめん。生静を見てれば、どうにかなると思ったけど……」
思えば、生で感情を出している彼女の姿を見て、心を誤魔化すような嘘は付けなくなっていた。
ときは戻らない。
だからこそ……
小さな溜息を互いの心で感じて……
輝く二人は夢を見て、畳んだ翼に、南風を向けて……
と、少し、昔のアニメの主題歌を唄いながら……
「涙は弄べるほど、余裕がないー」
と、棒読みスタイルで、暗くなった夜道から、やっと我が家に帰ってきた。
「ほら、早く入ろう。」
同居人の声が鼓膜に響く。
同居人は鍵を使って、まるで自分はショックを受けてませんとでも言うかのように入り込む。
「はぁぁぁぁぁぁぁ……」
部屋に戻れば大きなため息を吐くのは、20の若者の特権ともいえる。
その分、年を取ったからだ。大人になればなるほど、社会のしがらみのうざさなんてものを纏えるようになって、そうなると、ある程度、こういうことは許されていくのだから。
口の中から吐き出される空気は、どこか、肉体から水分が抜けていく気分とは、こういうものなのだろうとなんとなく感じている。ぐったりとしながら、自宅に辿り着くと手荷物をすべて手放して、冷蔵庫からビールを取り出して、意味なく天井を見上げてぼーっとしてしまう。
例え、となりの同居人がいようともだ。
何をしようとしたんだっけ。
互いに酒を肉体に入れることが許されるようになった年齢。
ただただ、包み込まれるような虚無感と言うのは、一種のアイドルの卒業式のようにも思える。
「いやぁ、綺麗だったね。」
「んー、そうだね。それに、お似合いだった。」
ただ、ただ、楽しい結婚式だったというのに、それでも、どこか、あの場所にいたある程度の人は虚無感的なものを覚えていたのではないのだろうかと谷崎景とか、その周りの少女達を見ていると、そういうことを思う。
何せ、彼女は、誰のものにもならないと思っていたから。
寧ろ、木崎江利花と、どれだけ仲が良くても、そこまで行くことはないだろうとか、そういう身勝手なことを考えていた自分がいた。
無いと思っていたけど、それでも、やはり、彼女とは、そういう関係になったのかと言うのは、一種の敗北感に近い。思えば、木崎江利花には、あのピアノやバイオリンを弾いた姿を見た時から負けっぱなしな感じがする。
そして、彼女の傍にいる明日小路は、常に、それに並んで共に未来に走っているような気がする。
「本当、見栄を張っちゃうところ、可愛いよね。」
「バ、バカ……」
「小路ちゃんにギターを聞かせるとか、そういう練習をした時と同じ。」
フフッと、悪戯っぽく笑う。
「私も、ショックだったよ。やっぱり、やっぱり……ね。」
蛇森生静は同居人のカミングアウトに思わず口をあわあわさせた。言葉にした本人が自覚をしてしまったからなのか、慰めるつもりが、本心に気づいて少々、瞼に涙をためているのが解る。ぐらっと来る意識に振り回されて肉体から神経が抜けていくように、ただただ翻弄されていく。
戸鹿野舞衣の浮かべる表情。
「バカ……」
「切なさをはぐらかすのには、慣れていたんだけどね……」
「じゃぁ、こんな時だけ波が止められないのは……」
やはり、思うのだ。
明日小路と言う存在の大きさを……
もし、男と結婚していれば、ある程度の割切り刃で来ただろう。
しかし、彼女の運命を共に歩むことを選んだのは、木崎江利花。女として、同級生として、そして、小路に片思いしていた女としての三重の嫉妬……
「ごめん。生静を見てれば、どうにかなると思ったけど……」
思えば、生で感情を出している彼女の姿を見て、心を誤魔化すような嘘は付けなくなっていた。
ときは戻らない。
だからこそ……
小さな溜息を互いの心で感じて……
輝く二人は夢を見て、畳んだ翼に、南風を向けて……
| 適度なSS(黒歴史置場?) | 00:00 | comments:2 | trackbacks:0 | TOP↑