2011.07.30 Sat
THE FAINAL そして望まぬ世界へ・・・
これで最終回。
無駄の伸ばす必要とかあるのかと言われたら無い。
完全な自己満足。
ただ、ひとつの世界のままに。
ついでに言ってしまえば、悠介はあれ。
でも、二年近く書いててやっぱり、あの子が愛しく思えた感じで。
以上でございます。
無駄の伸ばす必要とかあるのかと言われたら無い。
完全な自己満足。
ただ、ひとつの世界のままに。
ついでに言ってしまえば、悠介はあれ。
でも、二年近く書いててやっぱり、あの子が愛しく思えた感じで。
以上でございます。
仲間のために、闘いたい。
人間という、理屈ではなく、ある種のそれを超えたような、関係。
仲間達を、愛する人を殺さないように。
それまでは、自分が、死んでも、守るという命を粗末にするかのような、戦いがあった。
しかし、それは、幾多の激戦の中で死ねば、知世とあの世で再会できると、見ていたからだ。
しかし、生きるという目的に変わる。
それは、イエス・キリストが、知世をよみがえらせたからだ。
既に、戦う理由は無くなったが、目的は、生きる。
ただ、此れだけだ。
ヤハウェは、死に行くスサノオ、既に、戦う理由を失った、スサノオを見て、そう、思った。
しかし、スサノオは、生きるという新たな、欲望を生み出す。
仲間を守り、愛する人と生きたいから、生きる。
単純な理由であれど、立派な志ではあると、自分に言い聞かせていた。
天使たちの反乱に対して、動き出していた、危険な神。
スサノオ・・・
一時として、聖書の時代に、ヤハウェが恐れた天使。
元13大天使の一人・・・
ミカエル、そのものが、スサノオ。
生きる欲望を持った、スサノオ。
しかし、脅威では無かった。
それは、いとも容易く、撃ち砕かれる。
現れたのは、生命の核だった。
ヤハウェの力の、半分を司る、生命の根源と言う存在が、そこに存在し、
「まさか・・・生命の核・・・」
「あれこそ、最も、ヤハウェの力を使ったもの・・・」
壊してはならない。
壊してはならない、禁断モノ。
壊せば、確実に死ぬ。
ヤハウェが、破壊したことによって、それは、確実的なものとなった。
さらに、ヤハウェは、次元を突き壊した。
「あれは・・・」
「通常の空間移動とは違う・・・」
現れたのは、もう一つの世界。
「二つ目の水槽・・・マルチバース・・・」
悠介は、一つの言葉を思い出した。
一つの水槽の中に、入っているほぼ、無限に近いほどの世界の数。
世界とは一つの水槽の中に、無制限に宇宙を突っ込んだだけの、ある種の世界。
では、目の前に広がる、開けた、通常の空間移動と違うとはどういうことか。
「二つ目の水槽・・・」
二つ目の水槽その物を破壊するために、今、此処に、存在している、神・・・
「いらぬ・・・このような、世界など・・・」
冗談で通じる相手なわけが無い。
既に、生命の根源を破壊し、自らの物とした、ヤハウェは、止められなかった。
悠介たちを相手にしないのは、蟻と龍が真っ向勝負するようなものだからだ。
破壊されていく世界。
「みていることしか、できないのか・・・?」
悠介の、人間では無く仲間のために女のために戦う。
そして、何より、自分が生きるために、戦うと言う、ある種の守護と言う名の戦う理由を見出しても、目の前にいる、巨大な神そのものには、勝利することなど、できはしない。
強い志はあるだろう。
しかし、それ以上に、志以上に、目の前の敵が強大過ぎた。
スケールが違いすぎたのだ。
志、どうのこうのよりも、それ以上の恐怖。
真なる神が、そこにいる。
目の前にあるのは絶望。植え付けられたのは、絶対的な切望だった。
ただ、笑う事も、悲しむ事も、嘆く事すらも忘れる姿。そのヴィジョンは単なる、大きさにあわせたものではない。
やろうと思えば、それ以上に巨大になることすら、できるだろう。
いや、巨大という言葉の枠を越えている、そのサイズは、全ての宇宙を含めて、世界というのなら、世界一つ分がヤハウェのサイズとなる。
「ただ、それでも・・・本気じゃない。」
「ただ、そのサイズに、俺たちにあわせているだけ・・・」
「待って・・・お父様は・・・」
「あの中だよ・・・アリシアさん。」
「そんな・・・」
「事実だ・・・」
「俺たちは・・・何をすれば、いい・・・」
「何も、出来ない・・・」
あの中に、イエス・キリストもいる。
ヤハウェの核の一つとして、それは、そこに、存在している。いとも、簡単に・・・
それが、ヤハウェという、世界を作った、存在だ。
創造主が、破壊神となる。
戦うのであれば、願え・・・
生きることを。ヤハウェは、一瞬にして、全てを破壊した。
はむかうものすら、全て、無に返し、そして、開いた別の水槽の中にある世界を全て、破壊した。
「こんなに、無限に近い世界を一瞬で・・・」
「何て言う・・・力なんだい・・・」
「神だから・・・それは、当然だよ・・・」
「主や、全てを取り込んだ結果か・・・」
「まさに、ヤハウェの完全なる状態・・・」
「完全になる前でも、俺は、あいつを倒しきれなかった。」
「悠・・・」
何を言えば、わからない。
知世は、此処一番に、かけるべき、愛するものへ、かける言葉がわからなかった。
しかし、それは、この状況、絶望という名の状況の中で、的確な言葉など、見つかる筈も無かった。
最適な、言葉など、ありはしない。
全ては、無駄・・・無駄の一言によって、この、虚無の空間に流される。
何と言う。強大さ。その、巨大さも併せて、宇宙の意志なる物を砕き、そして、別世界の、ブレイディオンや、巨神に相当する物を、いとも簡単に砕いて行った。そして、強大となる。
信じられないのだろう。
あのヤハウェ=オリジンの滅ぼした世界には、生命の核ですら、生きとし生けるものが生きるためのコアすらも、破壊してしまったのだから。
それこそ、自分が死んでもいい。
本当に、自分がいなくなってもいいと考える、神の行う事。
全ての生命は、此処に、消える。
それが、いなかったように消滅し始める。
あのような悲鳴を上げないほうが、人として当然の行為なのかもしれない。
まともな人間である行為であると、言えるだろう。
否定してはならない、その事実。
「まだだ・・・・・・」
全てを失ったわけではない。
自分達が残っている限り。
悠介達が残っている限り、終わったわけではないのだ。
それでも、絶望は植え付けられたが。
「悠介?」
「俺達は・・・負ける・・・・・・」
その悠介の言葉に、誰もが頷いた。
なんのために、人が死んだ。
ここで、負ける。
その完全なる勝利を得るために、戦ってきた筈なのに、もう、勝ち目は無いと踏むのは、真なる、父なる神、自分達を創り出した神の存在。
勝てる保証など、どこにもない。
その可能性はどこにもないのだから。
絶対と呼べるものは、どこにも無いが、今、悠介の中に、完全なる死と言うものは、刻まれてしまった。
『皮肉なものだね・・・君達の戦い・・・』
勝利してきたのは、約束された出来事。
「そうか・・・どのみち、未来をいくら予期しようとも、この、運命だけは回避できなかったのね・・・」
「無駄・・・全部・・・」
「無駄だったんだね・・・兄さん・・・やっぱり、僕等のやったことは。」
「そうなる・・・」
葉子、悠矢、悠介が呟く。
陽子が蘇ってから、見てきた沢山の未来の記憶。
その中に確かに、この結末は存在していた。
ゼウスの館で見た、一つの書物。
その内容は、一番最初に人類の書いた聖書だ。
行き過ぎた未来まで書かれた聖書。
「イエス・キリスト・・・いや、ヤハウェ・・・」
『もう、良いだろう・・・私の創り出した二つの世界は、全て、破壊したのだから。』
後は、お前達だけだと、ヤハウェは言う。
『少し・・・話をしよう。』
飲み込み、悠介はただ頷く。
受け入れたヤハウェは、その答えに満足し、笑みを浮かべる。
同時に、世界は変わった。
惑星級の大きさを持つ、その、オリジンは、全ての世界を簡単に破壊することが出来る。
しかし、この世界には、まだ、
『君達は生きている・・・どうしてなんだい?』
それは、一つの答え。
答えは、
「わかっているんだろう?時間制限はあるけど、まだ、俺たちが生きられるのは・・・それに、あれの創造主だし・・・」
『ブレイディオン、エルヴェリオン、ファイザリオン、ドラグリオン・・・』
わかっていることなのだろう。
この神の中では、全ては
『ブレイディオン等は一種の、一時的な生命保護装置でもあるということか・・・』
「・・・」
「いや・・・」
「そうだね・・・」
真っ先に殺さなかった、その理由というのは・・・
「イエスの心か・・・・・・」
イエス・・・
ヤハウェの見た人間は、イエス・キリスト。
『お前の両親が・・・私に、まだ、この者達は殺すべきではないといわせるのか・・・』
ある意味では、もう一人の自分
で、あるからにして、元に戻ったものであると思っていた。
しかし、
『もとより、私が動かしていたのに、自我を持ち始めた。それは、盲執までに人を愛する君や、周りの人間・・・子を持ってしまったが故に、生まれた愛情・・・』
いかなる手法であろうとも、ただ、イエスは変わってしまった。
『好き放題やらせたのは、私のミスといえるだろうな・・・君に接しさせたことは。』
「仕方が無いだろ・・・俺は、生きたかった。最初は、目的も無く、殺されるのを見るのが嫌だから戦った。ただ、生きていくうちに、全ての人の愚かさって奴を知った。だから、絆っていう曖昧な物で今まで、いっしょに生きてきた仲間たちだけは、守って、自分も死のうと思った。」
「仲間の所に黄泉に逝きたかったか・・・」
あらわす、幻影ではない、その姿。
誰もが見たことのあるその姿。
良く、有名な画家の絵とかに描いてあるその姿だ。
イエスの姿を借りて、ヤハウェはそこにいる。
言葉の通りに。
「違う・・・仲間よりも、愛する人を失ったから・・・。」
「愛する人・・・」
「だから、死んで、その人の元へと行こうと思った・・・」
瑠璃は、一度、その言葉を聴いたことがある。
その言葉の意味。
「にいさまの悲しみ・・・」
しかし、その思いは力となって、神に相応しいのごとく。
人間。
悲しみという負の感情の中で、生まれた希望。
「それが、曖昧な形で、にいさまを強くした・・・」
「君は・・・違う?」
ティアナ・ランスター
「どうでしょう。私がどうなのかなんて・・・ただ、瑠璃がいなくなったときは、悲しかった・・・。」
「そうか・・・」
ただ、見ているのは確たる二人の愛といったところか。
そして・・・
「陽子・・・それが、本来の姿・・・か。イザナミ・・・それは母を意味する。本当に、母となったのだな・・・」
「そうね・・・あの子達を間違った道に進ませないために、苦労はしたわ。」
しかし、反乱というものはおきてしまったが、それは、ゼウスが間違いを起こしてしまったから。
「だから・・・わかるだろ?この世界を破壊するということを・・・。」
「わからないわね・・・あんたの壊そうとしているろくでもない世界で、生きていくのも、それは、一つの人間に与えられた試練なのよ。」
ろくでもない世界というのは、良くわかる。
誰もが、そうでなくても、ろくでもない世界という場所で生きてきた。
また、ろくでもない世界を作ろうとでもいうのは、どうかしている人間のやることだ。
「僕のいた世界は優しすぎた・・・人を殺した僕にしてはね。」
唯一、そうだ。
唯一楽園と呼ばれるのが、その世界という場所。
「貴方が壊したけど・・・」
「そうだね・・・唯一、美しい世界といえた・・・だが、人は、何れは、また、全てを破壊する。だから・・・」
しかし、その世界を
「僕は・・・あの世界で心が浄化されていた・・・。」
だから、
「僕は・・・お前が嫌いだ。」
それをわかっているのだ。
神とは言え、嫌いとはっきり、言う。。
優しさに満ち溢れた、あの世界を破壊するという行為は、愚考であるということをだ。
では、その世界にいる
「人間は・・・ウィルスと同じということか・・・」
「そうだ・・・有機生命体などは、ウィルスといえる。」
「勝手に決めるなよ・・・いくら、俺らの手が血で汚れているからってさ。」
血が汚れている。
その自覚というものはある。
殺してきたのだから守らなければならない。
あの世界にやってきたのだから、殺して、自らの仲間を守らなければならない。
人を殺すということに傷ついてもやらなければ滅びてしまうのは、こちらなのだと、仲間なのだと。
そう言い聞かせて
「やってきた行動を・・・俺は、間違いだとは思わない。」
「冷酷だね・・・だから、荒神に選ばれたのか。」
その通りなのかもしれないと、悠介は思う。
この男は、嘘はつかない男なのだろう。
ヤハウェは、神は嘘をつかない。
そのような世間一般常識は、本当のようだ。
悠矢は、それが気に入らない。
どこか、神と認めてしまう自分がいるからだ。
嘘をつく必要も無い訳であるが。
相手にしているのは、神話上の人間ではなく、創世の神。
本当に、自分達を作った存在であり、それを、間違いと認識し、殺そうとした神。
ある意味、世界、そのものであるといえるだろう。、
「ヤハウェ・・・あんたは・・・一度、世界に絶望した・・・それでも、希望を生むために、イエスを生んだ。しかし、それは、あんたの言う・・・」
「そうだね。」
人間。
母マリアの体内で改造を受けた胎児。
それでもなお、愛情はあったはずなのに、容赦なく、一つになった。
などと思いながら、悠矢はヤハウェという神の顔を観て、思う。
本当に気に食わない神だと。
「もう・・・やめよう。」
どうせ・・・
「君達は、死ぬのだから・・・」
「俺は知世と一緒にいたい。。。そんな世界だけで良い。贅沢は言わない。」
本当にその通りだ。
既に・・・
「生命の核たるものは、無いのだから。」
「それを見て・・・反省・・・」
「出来ないよ。人ってのは・・・そういうものよ。悠介・・・」
「解ってるさ・・・」
葉子は、反省できないと、悠介の考えを否定した。
だからといって、
「貴方の考えには・・・賛成できないのよね。あ、早々・・・この考えは、一生変わる気はないから・・・悪しからず。」
葉子は、最後にヤハウェにそう伝えると、
「ティーダ・ランスター・・・君は、どう考えている?」
「俺も、悠介君の考えと同じだ。貴方の世界の破壊を俺は、肯定できない。」
「そうか・・・残念だ。理解者になれると思ったんだが・・・な。」
「あんたの考えじゃ・・・世界は救えない。ティアナと瑠璃ちゃんに、燈也に優しい世界を作ることはできない。壊すだけじゃな。」
「兄さん・・・」
ティーダは、はっきりと言い放った。
だから、どの道
「戦うことしか選択できないってことだよ・・・」
さぁ、戦おうか。
本当の意味での、全世界の命運を賭けてさ。
「ブレイディオォォォォォォォォォォォン!!!!!!!!!!!」
悠介は叫ぶ。
それと同時に、このヤハウェの作り出した世界を破壊した。
悠介の力が、全てブレイディオンと、他の巨神と同調する。
「一つになる・・・」
「そうか・・・兄さん・・・まだ、あれが残っているか・・・」
悠矢は呟く。
あれなら、可能性は捨てきれないと。
「極神合体・・・」
「あの時は、限られた人数だった・・・でも、今、この時なら・・・ただ、足掻くことに夢中な、私らなら・・・あの時以上に、輝くことは出来る・・・!」
葉子が呟くのと同時に、四つの巨神は同時に光の球体となる。
「そうだ・・・」
「この現象・・・」
その四つの球体は一つとなって。
瑠璃とティアナは、その現象に気づく。
「何・・・?皆と一つになるの?」
「これしかない・・・無駄でも、その分、抗わせてもらう。」
「ただ、足掻くだけ・・・それだけで良い・・・」
燈也とアリシアは、それを感じた。
テスタメントとしてではない。
全ての、全ての巨神の中にいる人間達が、それを一つになると言う、同じ感覚を共有する。
そうだ。
間違っちゃいない。
あの神の言いなりになっちゃ
「生きているなら、足掻くことは罪じゃない。」
巨神の中に乗っている悠介を中心に、全ての者達は、同じ考えを持つ。
否定することなんて無い。
ここにいる生き残りの者達は、呼び覚ます。
その一つとなった、対抗できるかもしれない巨神をだ。
おきろ。
もう、戦いは始まっている。
「絶対に、生きてやる・・・!」
「良いのか?」
「ここで倒さないと・・・皆が、本当の意味で死ぬ。」
それを行うわけにはいかない。
破壊されてしまうのならば、
「駆け抜ける・・・!」
「うん。」
新たに生まれし、ブレイディオン。
その姿は、ヤハウェが破壊から何も生み出さない神であれば、ブレイディオンは破壊からまた、世界を作り上げる神といえるだろう。
とはいえ、それは、外見だけであり、現実であれば・・・
その、ブレイディオンは、現在のヤハウェの掌ほどにしかない。
「極神合体・・・!ソル・ブレイディオン・ノヴァ!」
現れし、全ての巨神が一つとなったヤハウェの前では、名ばかりの最強の姿。
過去に、侵略者から守り、全てのものを守ると約束された、最強の巨神。
神殺しの刃をブレイディオンは手に持ち、その邪神を殺すために、ブレイディオンは、この何も無い宇宙を駆け抜ける。
ヤハウェは、片手だけで、ブレイディオンを迎え撃つ。
ヤハウェは巨大だ。
しかし、その無限に等しい宇宙では、小さく見える。
何千とあるその巨体でもだ。
しかし、隠れ様の無い、この宇宙という大地であれば
「逃げても無駄だなんだよ!!!!!」
手に持つのは、神殺し・・・草薙の剣。
「行くよ・・・」
「悠の好きにしな・・・」
悪魔のような翼を展開させて迫るブレイディオンに向かって、オリジンは何もしない。
「斬・・・!」
草薙の剣と、十束剣を合せたことで、生まれる、ブレイディオンの斬撃魔術。
さらに、巨大な刃へと・・・
「片腕だけでも!」
その光の中に突っ込んで行き、もうひとつ、巨大な草薙の剣を創り出し、チェーンソー状の草薙の剣すらも、幾つ物形を持った刃を創り出す。
「悠介!!!!」
「斬る・・・!」
ヤハウェは、襲い掛かる無限に近い刃を防ぐ。
さらに、そのまま、盾を召還し悠介の斬撃を防ぐ。
すばやく、1秒に三十回位、斬りつけたものの全てふせがれる。
さらに、ブレイディオンの形勢はさらに、不利となる。
腕一本でも・・・と、思ったが、その腕事態に、弄ばれるかのように、後ろをとられたのだ。
やはり、無力化。
勢い良く、背後に向かえば、その宇宙空間ではまったく動けない・・・と、言う理屈すら、通じない相手。
オリジンは、巨大な神の腕の掌を展開させる。
それが、ブレイディオンに食らい付き、オリジンの腕は獣のような俊敏さで、その力をもって、ブレイディオンに迫る。
「くっ・・・ウォ・・・!!??」
悠介の動きが鈍い。
先ほどのバラバ=ヤハウェとの闘いで、力は完全に消費してしまっている状態で、戦っている。
満身創痍の状態なのだ。
「オメガ・ソウルディストラクション・・・!」
神の腕に掴まれているのであれば、あえて至近距離でそいつを見回せばいい。
悠介の全力を込めた光が照射される。
「ち・・・」
撃破には至らなかった。
しかし、まずい。
完全に動けなくなった。
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
先ほどの決戦での傷は、完全に癒えていないのだ。
展開されるオリジンの魔法陣。
殺られる!!
「まだ・・・!!」
防ぎ、反撃に出る。
そう思ったときだ。
「スペリオル・フィールド・・・!」
瑠璃が自らの力を使い、それを防ぐ。
これによって、悠介の力が消費されることは無い。
基本的に消費される力は、悠介の力とその魔術の所有者の力。
過去は、搭乗している全ての人間の魔力を均等に消費されることで、その問題を開放してきたが、その状態では、出力は7割程度しか出せない。
今回は、その全ての負担が悠介にかかっているのだ。
本来の出力を出すために。
勝利を物にするために・・・
無限に等しい悠介だから、出来ること。
だが、それを、ヤハウェ・・・
さっきのソウルセイヴァーの闘いで使い果たした状態に近くなっている。
死力を尽くして戦わなければならないこと、そして、悠介のこだわりというものだ。
「にいさまは、私たちの力を使わすぎです・・・自分一人で、抗っているなど、思いこみもいい加減になさい!!」
「瑠璃・・・?」
瑠璃からの激・・・それは、兄を愛しているからこそだろう。
兄と、そして、何より、最愛のティアナ・ランスターと添い遂げたい覚悟がある。
ティアナの子を産み、そして、生きたいと思う。
心配ではないといえば、嘘だ。
生き残れると言う・・・
「わかったよ・・・瑠璃の・・・言う通りにする・・・」
「僕たちがいることもね・・・」
「わたしたちも、抗いたいだけなんだから・・・」
このブレイディオンを動かせるのは、悠介のみだ。
故に、他の者たちは、精いっぱいの抗いを見せる中で、それが、悠介の力となる。
「天照大神陽輝展開・・・」
十束剣を本来の姿とし、奴を迎え撃つ。
神の腕を振り払い、その広大な無の世界の中を悠介は逃走する。
見つけられるのはすぐだろうが、1秒の時間稼ぎになる。
おそらく、悠介には、その少しの時間稼ぎで充分なのだ。
敵を倒すことが出来るのであれば、ジョーカーとしての、全ての神の力をフルに使うしかない。
「絶対に、生きる・・・!!」
それは、自分が今、最も、自分のしたいこと。
「悠介!!」
叫ぶことによって、ネクサスが展開される。
「これも、もっていけ!!」
「あと、これも!!」
クロス・ミラージュ、そして、マキシマムと言う名のプレシア・テスタロッサの創りし、殺しのデバイス。
その二つを融合させることによって、荒神の持つ剣が生まれる。
スサノオの持ちし、より、神聖なる草薙の剣となる。
この場合、デバイスの持ち主である二人には、魔力を使うことによって、同時消費となる。
ダメージは、全て悠介へと。
「あのティアの魔術を応用することくらい・・・」
「持っていきな・・・悠介。」
「あぁ・・・」
受け取った時点で、敵は目の前へと現れる。
時間の稼ぎは終了。
しかし、それと同時に
「「ワルキューレ!!!!!!!!」」
現れるワルキューレの娘たちと同じ数の巨神達。
ブリュンヒルデを含む、9人達のワルキューレ。
「アタック・・・!!」
悠介の掛け声と同時に動き出す。
「動け・・・・・・!!」
いや、それはすぐに消滅した。
「んな!!?」
「ちょっと、ワルキューレが簡単に消滅するなんて・・・!!」
「神だから・・・やっぱり・・・」
最初の一体が消失。
しかし、それで良い。
ヤハウェの腹部の球体から照射される漆黒の球体。
それは、
「まさか・・・・・・」
「ブラックホールのようなもの・・・・・・ね。」
ティアナは、悟る。
その行動、そして、
「あんなもので・・・消滅できるものは・・・・・・」
「僕達を殺す・・・?いや、それでも・・・遊ばれてるのか・・・?」
森羅万象であるのであれば、全ては、通じない。
亜光速レベルで動き出すブラックホールをよけながら、悠介は、ブレイディオンの拳に力を挿入する。
草薙の剣をマウントし・・・
「砕く・・・!!」
球体の部分に、拳を、炸裂させるも、敵を破壊することは出来ない。
ワルキューレを全て破壊し、神の腕で捕らえる。
「はいってくるな・・・」
「悠介!?」
神は、心理的にヴィヴィオに接触しようとしている。
しかし、それは本の一瞬のこと。
うちなるスサノオの防衛本能がそれを防ぎだす。
「なんて事をするの・・・さ・・・?」
息を切らす。
戦わなければ。
そう思ったときだった。
至近距離で、先ほどの、言うなれば、ブラックホールノヴァをその身に、体全体に、食らう。
「っっっっ・・・・・・!」
痛い・・・
痛い・・・
痛い・・・
「痛いな・・・・・・」
それでも、
「大丈夫・・・まだ、足掻ける。」
眠りにつきそうな、力によって、眠りにつきそうな自分を鼓舞するためだけの言葉。
ブレイディオンに、アマテラスとツクヨミが輝きだす。
アマテラスとして、ツクヨミとしての力を得たブレイディオンが、新たな光を手に入れるとき、
「さぁ・・・来い・・・・・・」
現れよ、
「我らが神の子供たちよ・・・!」
ジョーカーたる、悠介が呼び出した時、それを使うのは、多紀理毘売命、市寸島比売命、多岐都比売命、正勝吾勝勝速日天之忍穂耳命、天之菩卑能命、天津日子根命、活津日子根命、熊野久須毘命、阿治志貴高日子根神、いや、数え切れないほどの、八百万のスサノオの子とされる、神々達・・・
あの前世の世界でスサノオが産み落とした、神々。
そのとき、オリジンの肩のパネルのようなものが光りだす。
「そうやってぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!」
放出された漆黒の光を、ブレイディオンの背中にあるアマテラスとツクヨミの光輪で、それを相殺する。
「喰らい尽くす・・・!」
その放出される光は、漆黒の光を消して、逆に、それを食らわせる。
先に出現した神達をオリジンに与えさせる。
「抗う人間を・・・そのような、醜い光で消せると思うな・・・・・・!」
草薙の剣の一振りが、神々を動きに合わさる。
「凄い・・・だが、しかし・・・!」
出せる分の神は出した。
さらに、巨大な魔法陣を発生させ、ティアナのフルクロスを召喚し、フルクロスを背に配置し、巨大なブースターのように変化させ、高機動形態となり、牙突のように、草薙の剣を構え、ブースター部分にたまっていた光の粒子が勢い良く放出され、ブレイディオンは一気に加速した。
そのまま、魔法陣の中に突き抜けるのと同時に悠介は、白銀に輝き、ヤハウェめがけて、突入する。
「一気に!」
「コアのみを貫く気か・・・!?しかし・・・」
ヤハウェの創り出した障壁を無限に近いの神によって破壊。
「しかし・・・所詮は、コピー・・・!!」
「だと思ったか!?」
ティアナの場合は、自らを弾丸としたもの。
悠介の場合は、同じだ。
しかし、絶対的に違うものがある。
それは、弾丸が悠介の斬撃と言うことだ。
悠介は、その刃に、全力をこめる。
それで、全てを終わらせるつもりだ。
コアを狙い、ヤハウェを滅ぼすつもりなのだ。
そのアマテラスとツクヨミの光を帯びた刃は、一気にオリジンに迫る。
「滅・・・・・・!」
悠介の、永遠の終わりを意味するその言葉。
力の構造は単純でありながらも、言葉の意味を持って、悠介のもてる力を使っているがゆえに、その威力は、別次元に通じるまでの穴をあけるほどの威力を持つ。
複合神としてのその力・・・
極限にまで。
「・・・?」
「決まった・・・・・・?」
全てが、黒い灰と化すそのヤハウェの姿。
しかし、それはすぐに一つになる。
「・・・」
「私は、倒せない。人は私が創った。創造主に足掻く姿・・・それは、ある種の可能性だろう。しかし・・・」
「・・・・・・!?」
黄金色に輝く、ヤハウェのその姿。
「せめて、苦しまずに・・・」
それは、
「さらばだ・・・」
「ちっ・・・・・・!!」
悠介は、それをギリギリで、受け止めるが・・・やはり、無意味だ。
「っっっっっっっっ!!!!!!!!!!!」
「壊れてしまえ・・・閉じこもる揺り篭から。」
刃が折れるのと同時に、悠介はギリギリで、受け流すも、上半身一帯にダメージを受けてしまう。
「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!」
全身を思いっきり刃で刺されたようなような、真っ二つになりそうな感覚が襲ってきた。
悲鳴をあげることしか出来ない。
しかし、今戦えるのは、悠介しかしない。
残酷なことに・・・だ。
「まだ・・・僕も、エルヴェリオンを動かす事ができるなら・・・!」
燈也がマキシマムをセットし、
「君は、まだ、死んじゃいけないから・・・」
だから・・・
「知世さんって、言ったね?」
「えぇ・・・」
「彼を、足掻ける状態に・・・出きるかな?それまで、僕が、時間を稼ぐ・・・」
「全ては・・・貴方がたしだい・・・」
「了解だ・・・」
悠介を無理矢理、コクピットから外し、自らがそこに居座る。
だが、いかんせん、ヤハウェの前では、弱い。
だが、それだけで充分だった。
すでに、動いているだけでも奇跡といえるこの状況で、燈也は自らも足掻く事に手を貸すことのできる喜びと、全てを行う事で。
「此処で死ぬのなら・・・・・・!」
全力で、魔法陣を展開し、ヤハウェにそれを向ける。
しかし、それは、徒労に終わった。
それでも、やらなければならないことがある。
「いえ・・・燈也・・・私もいるわ。」
「オネエチャンもね?」
「俺もだ・・・」
アリシア、ティーダ・・・
四人の力だけで・・・
「さぁ・・・消えてもらおう。」
燈也は、目を瞑り全ては神として存在する無限光を・・・放出する。
魔法陣が、レイディーンの元に現れ始める。
レイディーンの胸部の漆黒の球体から、10個のセフィラをエフェソスに向けて召喚された。
それは、燈也の有り余る、神の力の核。
「抗うだけ・・・抗う・・・!!」
「テスタメントとしての、全ての力を使う!!」
「燈也さん!?」
「やるさ・・・倒せないだろうけど・・・!」
燈也は叫ぶ。
己の全ては真実を。
行うのは、二人の究極なる魔術。
迎えよ・・・
ジェネシック・・・
「「アーマゲドン・・・」」
ケテル、コクマー、ビナー、ケセド、ゲブナー、ティファレト、ネツァク、ホド、イェソト、マルクト・・・10のセフィラが、エフェソスを囲うように、動き、展開される。
「アイン」
「ソフ」
「オウル・・・!」
「ゴスペル・・・!!」
過去に降臨された神が、全ての世界をリセットする為に、起こした光のように。
全てを、抹消する為に、時空間を全て、このエフェソスが止まっている時空間を全て無限光が、今、降り注ぐ。
無限光の放つ福音と共に・・・10のセフィラがエフェソスを囲み、無限光の福音が、エフェソスの存在自体を、消していく。
アイン・ソフ・オウル・・・無限光の神となって、初めて出来る・・・エフェソスの、存在を許さないかのように。
一度両手をあわせ、離したときに、両の掌の間から、草薙の剣が、そして、あの時、スサノオに渡された、セフィロトデバイスが出現する。
二つのデバイスが、融合し、マキシマム・セフィロトタイプが此処に、完成し、夥しいほどの、この世界を全て輝かすほどの光が放出される。
「ジェネシック・スペリオル・ゴスペル・・・!!」
二つの福音。
ジェネシック・スペリオルゴスペルと、アイン・ソフ・オウルゴスペル・・・二つの、福音が無の世界に、色をつけるかのように、広がりだし、最後の審判の歌を呼ぶ。
その、存在を許さない。
逆行され、崩壊される、ヤハウェを包んでいた空間の崩壊。
燈也の右腕に、光の球体が、出現する。
其れを、臆する事無く、燈也は握りつぶした。
同時に、ヤハウェが、崩壊した。
「終わり・・・・・・?」
「いや・・・此れで、倒されても・・・」
神は、今、此処に舞い降りる。
輝く永遠の中で、時間と空間の果てに・・・
ヤハウェは、崩壊を迎えた。
様に、見えた。
「やっぱりか・・・」
「アレだけ・・・やったのに・・・」
悠介は、こんなものと戦っていたのか。
それでも、耐えなければ、ならない。
悠介の代わりに・・・
「「マキシマム・・・ジェネシック・・・タイフォォォォオォォォン!!!!!!!」」
強制退去される前に、宇宙を貫く一筋の光、それは、燈也とすずかの全力を込めた一撃。
しかし、
「化け物だ・・・」
撃破は出来ない・・・
刃は、ブレイディオンを傷つけ、左肩を切り落とす。
すでに動こうにも、動けない。
だが、まだ・・・右が残っている。
「もう・・・いいでんです・・・戦うのは、俺だけで・・・!!」
「悠介君、ダメ・・・それは、ダメだよ・・・」
「こういうときは、僕のような人間から、先に逝くべきだから・・・」
「・・・」
「先に逝く・・・」
消えかかる、燈也とアリシア。
もう、肉体そのものが、消えかかっている。
「お父様!?」
「私もすずかの心を利用して、燈也に近づいたものね・・・」
「すずかが俺を愛そうとするたびに姉さんが、いたんだな・・・」
「えぇ・・・やっぱり、燈也は・・・私が愛したいもの。」
「因果応報だよ。瑠璃・・・」
「え・・・?」
「僕が9歳のころ・・・似たようなことをした報いでもある・・・巻き込んで、悪かった・・・」
「私も
「いいえ・・・」
「まだよ・・・!!」
「消えない・・・?」
「どうして・・・?!?」
ブレイディオンに装備されているその翼とオルクスの鎧。
それは、亜種の融合が生んだ副産物。
それゆえに、それらがダメージを受ける時は、オルクスと翼の主がダメージを受けることとなる。
それに絶えている人間はいる。
当事者である陽子と悠矢が、自らの力を削って、それを行っていた。
自分が、どうなろうとも、邪神の翼を広げて、その漆黒に輝く翼から、破壊の光が、降り注ぐ。
「今の悠介が信じられる仲間なのでしょう!?」
「だから、俺は・・・!!」
「それで、戦える訳が・・・!!」
満身創痍
防ぎ様の無い出血。
「君は、今は、やすまなければならない・・・!」
「知世さん、兄さんを・・・!!」
「解ってるわ・・・!!」
「ソルスペリオルノヴァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!!!」
なけなしの力を振り絞って、マキシマム・セフィロトへと再び変形させ、6の魔方陣を召還し、そこから、ジェネシックタイフォーンの閃光が放出される。
ただ、今まで、何もできなかった、この分を。
「此処で、返そう・・・!」
燈也、その技に全てを賭ける。
しかし、うまくはいかない。
全て、
「解ってはいる・・・」
「それでも、抗いたい。」
だから
「まだっ!」
跡形も無く。
ヤハウェの腕が、形態変化を遂げる。
いや、ヤハウェが敬意を表して、変化させたのだ。
全体的に漆黒に創り出す。
禍禍しき、その姿は、誰もが恐怖する。
「だから、どうしたと!!!!」
「瑠璃!?」
父と、母を追い出し、娘が乗り出した。
本の数十秒でしか叩けないのなら、その間に片をつける。
それに動いたのが、瑠璃だ。
今、ここで、殺されるわけには行かない。
なら、ダメージを受けていない自分が、ここで動く。
「まだ・・・・私は!」
贄ノ神月をチェーンソーブレードに変化させ、出来るだけ巨大にし、その刃を回しながら、進化したヤハウェに一気に駆け寄り、コアを、そのチェーンソーで切断しようとするも、それはすぐに折れる。
邪神の牙につかまりながらも、その満身創痍であるブレイディオンを良く動かしている。
余ったパーツで、左足を犠牲にしながらも、
「デッド・ディストラクション・オウル・・・・・・・・・!」
無理やり、ヤハウェにしがみつき、広域殲滅魔法を使用。
だが、
「・・・冗談・・・きついわ・・・」
腹部を、その剣で貫かれていた。
悠介が治るまで繋ぐ。
しかし、
「時間のようね・・・」
強制退去・・・
ジョーカーであるはずだが、それでも、まだ、小さすぎた。
この状態のブレイディオンを完全に操ることが出来るのは悠介。
それ以外に一応でも操ることが出来るのは各巨神のパイロットのみ。
しかし、その時間は完全に生命が消えかける前までに限られている。
「ティア・・・!!繋いで!!!!!!」
「解ってる!!!!!」
瑠璃と共に戦い、それによって、魔力は消費しているものの、何とかなる。
自身の体が消えるくらい、もたせて
「見せる!!!!!!まだ、伝えてないのよ!!!!!!!瑠璃に!!!!!!!」
そして
「もう、失いたくないの!!!!!!!!!」
ネクサス・ノア・ミラージュをツイングラムにして、迎え撃つ。
「フォーススペリオルビースト・・・!!」
四つの巨大な魔法陣が、光の巨神の前に出現する。
ティアナはそこに向かって、レオンをそれぞれの魔法陣に向かって撃ち放つ。
それと同時に、光の翼竜と、光の獅子、光の朱雀、光の玄武が飛び出し、オリジンに向かっていく。
その光の獣とともに、ティアナは天空を駆ける。
「アカシックブレイカー!!!」
ティアナは目の前に、魔法陣を創り出し、一気にその中へと突っ込んだ。
ティアナ・・・いや、それと光の巨神は白銀の炎に、包まれる。
巨大な剣・・・二つをフェニックスの翼のように展開。
その姿は、正に鳳凰の様な姿。
「死んでしまえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!!!!!!!!」
ティアナの絶叫が、宇宙に響き、それと同時にヤハウェを貫こうとする。
「ぐっ!!??」
ヒットはしたが、逆に翼は崩壊し、陽子にダメージが、来る。
「これと同時に・・・今は、距離を取って!!!!!!!」
「いや・・・僕が行く。」
「悠也!?」
「兄さんは、そこで見てろ・・・」
動き出す。
剣聖。
すでに、あの中に、誰がいようとも、ここで・・・終わらせる。
もとより、ドラグリオンが、燈也達より前に選んでいた男だ。
時間稼ぎくらいなら、
「僕だってできる。」
だから
「ごめん・・・アイナ。向こうで・・・」
最初で最後に、神にその刃を向ける。
愛するものを滅ぼした神に・・・
この男は、後悔に駆られる前に、
「生命の呪縛を解き放つ・・・!!」
太刀をその手に持ち、ヤハウェの攻撃を紙一重で防ぐ。
すでに神業と呼べるほどの力。
敵が、勢いをつけたとき、一歩下がり始めた。
「隙を見せたね・・・」
ここぞとばかりに、悠也は、太刀に魔力を挿入し、一気に振り下ろす。
動かずに、敵を倒す。
その剣の遠距離攻撃こそ、
「牙波・・・」
しかし、それで敵を倒せないのはわかっている。
太陽と月の太刀
「終末へ・・・」
だから・・・
「これでいい・・・」
全ての力を使い、
「ここで、僕達の全てを!!!!!」
駆ける。
「悠矢・・・あなたとともに・・・」
ここで、殲滅させる。
悠介の手間は、取らせない。
陽子の力、悠矢の力が合わさり、
「斬ッッッッッ!!!!!」
夥しい宇宙を貫く刃の光となった金色の光線が照射される。
破壊
「威力は本物だろうけど・・・」
本当は、
「こいつで倒すつもりだったよ。」
しかし、
「だめ・・・だったか・・・」
強いとは言え、撃破はできず。
「神か・・・」
あまりの力に、苦称するしか無い。
「強い・・・」
流石に絶望が見える・・・
ティーダにも、アリシアにも。
だが、
「ゆっくりしている暇は無い・・・か?」
気付けば、右肩に激痛が走る。
「そ、そんな!?」
だが、右肩は消滅。
そして、強制退去・・・
「御免・・・」
「うぅん・・・大丈夫・・・って、言いたいけど・・・」
誰も、動きたくても動けない。
ティーダも、アリシアも、何も、出せない。
刻、一刻と迫るヤハウェ。
そのヤハウェが怖いということが解る。
それが、恐い。
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!」
瑠璃が、発狂する・・・
この状態を・・・
折角・・・折角・・・あえたのに。
来るな来るな来るな来るな来るな来るな来るな来るな来るな来るな来るな来るな来るな来るな来るな来るな・・・
誰もが精神は恐怖で満たされ、徐々に震える。
意識の消えた、悠介の前に・・・知世はただ、呟くだけだった。
「終わりか・・・?」
ブレイディオンの中で、月の女神・・・
知世の治癒を受けながら、間に合わなかったのかと、癒される中で、悠介は、足掻くのも此処までかと、諦めた時だった。
悠介の目の回りが、白一色に変わり始める。
亜空間へと・・・
終わったのかと、ただ、もう、訪れた運命を受け入れるための覚悟は出来ていた。
だから、このまま、受け入れようと思ったときだ。
「諦めた。もう・・・」
座り込んでいる。
立てない・・・し
かし、それで、良い。
ただ、諦める。
「何故・・・?」
「ブレイディオン・・・?そっか・・・此処は、まだ・・・あの世じゃないか・・・。」
見える光の意思は、ただ、悠介に問い掛ける。
「何故・・・?生きるのでは・・・?」
「相手は、お前の創造主でもある。ブレイディオン・・・その、最終形態でもある、この形態でも、敗北に近い状態になった。」
だから、
「この敗北は・・・もう・・・意味のない物となった。だから、良い。」
だから・・
・「もう・・・やめた・・・人間は・・・いや、神人でも、もう、勝てない。」
所詮は、神に創られた、存在であると、認識した結果である。
完全なる、敗北は此処で・・・
神には勝てない。
御伽噺でも、神話上の神でもなく、紛れも無く、その世界、神話、人間を作り出した創造主なのだから。
もう、勝機は無い。
全ては、神の掌の中に・・・
悠介にも、全ての人間にも、それはわかっていた。
相手にして、その異常な戦闘力を改めて、その力量を知る。
勝てる訳が、無いと。
まだ、腕一つも切り落としていない。
「殺せない。創造主は・・・」
スサノオとしての、全ての力を出したとしても、自らの神人としての全ての力を出したとしても、勝利することは出来なかった。
「まだ・・・手はあるかもしれないのに?」
「どこに?」
ある種、出すべきものは、全て出した。
そして、世界は、また、一つに戻るだけ。
もう、後は、何も残らない。
また、宇宙すら、何も存在していない世界に戻るだけ・・・
「まだ・・・終わってないよ・・・?」
「もう、終わらせてほしい。」
「いや、終わらせよう。」
「神は怒る・・・人は、勝手すぎた・・・」
「それでも、僕達は・・・生きたい・・・?」
「死ぬ前から気付いてたんだよ・・・愚かなことだって。」
それを、解っているから、選ばれた。
解っているからこそ・・・彼等は・・・自分達で、イエスの導きと共に、優しい世界を作ろうとしていた。
「犠牲になった人たちのことを胸に刻み・・・」
新しい世界を、作ろうとしたわけか。
殺された人々は、
「愚かで、人の命をなんとも思わない、今の神より、悪魔より恐ろしい存在かもしれないのに・・・何故、思った・・・」
「元は・・・同じ人だから・・・」
だから・・・
人は、優しくなれると。
その犠牲の上で、優しい世界を作ると誓った矢先の出来事だった。
破壊・・・
「まだ・・・終わってない・・・私たちのために・・・」
「イエス?」
ブレイディオンの中に、現れるのはイエスの声・・・
死んだはずの存在が、そこにいた。
「消えた中に・・・それは、いたから・・・」
「消えた中?」
「今の私達は、ヤハウェの中で一つになった状態・・・」
「そして、ブレイディオンを通して、貴方に中継している。」
消えて行った者たちの、声が流れ始める。
「貴方は、まだ、終わってはいない。」
「ヤハウェの中で、全てを見た。」
何を見たと言うのか。
「何故、ヤハウェの中にいる私ガ・・・此れを行っているのか・・・」
リンディ・ハラオウン・・・
「ヤハウェの中にいる、イエス・キリスト達が反乱をおこしているから・・・」
高町桃子・・・
「そして、伝えてほしいと言われている・・・」
プレシア・テスタロッサ・・・
「ブレイディオン、エルヴェリオン、ファイザリオン、ドラグリオンは・・・」
エリス・ハラオウン・・・
「ヤハウェのアンチシステム・・・」
セレス・ハラオウン・・・
「貴方が、最終形態だと思っている、その形態は、仮初・・・」
イクス・テスタロッサ・・・
「目覚めるべきは、真の姿だ・・・」
クロノ・ハラオウン・・・
「身勝手な人によって、また、そうなった時・・・現れるもの・・・」
コロナ・ティミル・・・
「真の姿!?」
「そんなもの、存在しない・・・!!」
あまりに、危険だったから。
彼等は、人を愛した。
人を愛した結果、ヤハウェは蘇ると確信した・・・
「あったとしても、勝てる保証は・・・!!」
無いかもしれない
しかも、言うには勝率というものが跳ね上がる。
かつて愛した人間たちのために残した、真の姿。
良心とでも言うべきか。
ブレイディオン達の真の姿は・・・ヤハウェの映し鏡・・・ヤハウェの心と逆のものでもある。
今、近い、このブレイディオンの状態から、更なる状態へと
「貴方が・・・導かなければならない・・・」
憐・ヴィオラ・・・
「俺たちは、魂だけだから・・・」
クロノ・ハーヴェイ・・・
でも、もう・・・
「勝手なことであるとは解っている・・・しかし、戦ってほしい・・・」
「私達の分まで・・・・・・」
嘆願
「もう一度、イエス様が残してくれた皆で、優しい世界を作るために・・・」
「私達の代わりに新しい世界を創って・・・」
「わかったよ・・・やればいいんだろ!!あんたたちのためじゃない・・・仲間と、知世のためだけだ!!」
口でそう言うものの、怯え腰になっている。
一度、折れた心は、そう、すぐに再生する訳が無い。
犠牲の上で、新たに成り立つ世界。
それもありだと思っている。
それを創るのなら優しくなるのなら、協力したい。
だが、それでも、神に対しての恐怖が、悠介の全員を蛇のように、いや、霧が覆いこむかのように、囲っている。
諦めて・・・全てを終わりに・・・したいと思っているのに、一つの欲望が渦を巻く。
「全てを・・・受け入れることに・・・したのに・・・」
「怖い・・・?怖いよね・・・」
「怖いよ・・・悠介・・・」
「知世・・・?」
「貴方といっしょなら・・・死んでも良いって、思ってるのに・・・」
「俺だって・・・そうだ・・・」
だけど、
「今も、こうして・・・死にたいって思ってるのに・・・」
諦めたと思ったのに・・・
どうして・・・
「死にたいと思うほど、生きたいって・・・思う?!あんな、化物に、神に勝てる訳がないというのに!!」
悠介は、叫ぶ。
ただ、叫ぶ。
何に、関しても、諦めているのに、ただ、生きたいと思う感情だけが・・・
「ならば、願えばいい。生きたいと・・・」
「願った所で、何になるんだよ・・・!!願って、願っただけで、生きられれば・・・俺は、とっくに・・・とっくに・・・ブレイディオン!!俺は、行きたい!!でも、人は、人は、生きたいと願っても、死ぬ前には、死ぬんだよ!!願いを言っても、敵わないんだよ!!」
違う。
「正義兄さんや、皆と、違う・・・!!俺は、強がってるだけで、力があっても、臆病者で!!違うんだ・・・!!」
かつての、仲間たちの中の名前を呼びながら・・・
「それでも・・・!!約束しよう・・・!!生きると言う願いを・・・だから、願うのだ・・・!!」
「無理だ・・・」
「生きるのだろう・・・?」
「無理なんだよ・・・」
「生きろ!!」
「悠介・・・」
「生きて・・・・・・!!」
「俺は、もう・・・無理だ・・・!!」
「諦めるな・・・・・・!!!」
「っ・・・?」
目の前にいるのは、かつての仲間達だった。
そこにいた。
皆、死んだもの達だった。あの戦いの中で、皆、死んだ。
「悠・・・!!」
魂となって、語りかける存在。
「皆・・・?」
「どうして、諦めるの・・・?」
「お前らしいけど・・・死ぬんだったら、お前一人で死ねよ。知世さんを巻き込むな。馬鹿。」
「んなっ・・・!!」
何のために、
「自分の命を投げ捨ててまで、お前を生き返らせたか、考えろっての。」
「悠介は、馬鹿だから・・・」
「誰が、馬鹿だよ・・・!!」
「やっと、立てた。」
「え・・・?」
「しっかりと・・・」
「正義・・・兄さん・・・?」
「立ってから、考えろよ。」
「大丈夫だよ。死んだら、会おうぜ?またさ。」
でも、
「此処で、諦めて死んで、あの世に来るのは、絶対にゆるさね。」
そんな・・・
「何のために、お前に・・・ブレイディオンを託したのかも、意味がなくなるしな。」
だから、
「また、全力で戦ってこい。」
「死ぬのに?」
「だから・・・昔から、そうだったな。諦めやがって。」
「あんたは、ヒーローのように・・・」
「ばーか。神人はヒーローじゃねーの。」
何のために・・・
「あのお嬢ちゃん達が、イエスが、助言を与えたのか。解ってるだろ?」
「でも・・・」
「ヤハウェを殺せば、生命の核はまた、ヤハウェ自身が取り込まれ・・・世界を存続させて、一つの世界にお前達は生き残る事ができる。」
「でも・・・」
「でもじゃない!お前は、力が強い!!大丈夫。仲間、いるんだろ?一人じゃないんだろ?諦めるのは、一人になった時でいいんだよ」
「正義さん・・・」
「ほら・・・悠介は馬鹿だし・・・」
「だからっ・・・!!」
「立てた・・・まだ、生きてる。そして、生きることを望め。」
「大丈夫だよ。」
仲間がいる。
「とにかく、行け!」
「出来ますかね・・・?」
「できる・・・だろ?たぶんな。」
「・・・」
だから、
「もう一度、全力で戦って、死んだら、帰ってこい!!そのときだけ、迎えに来てやる・・・!!」
それに、
「お前が諦めから、立ち直った時は・・・誰よりも、強い。」
「そんな・・・」
「はぁ・・・昔は、直情馬鹿だったのに、一度、生き返ってから、無駄に考えて・・・今は、直情馬鹿になって、生きると願えばいいんだよ・・・!!」
だから・・・
「生きると願って、戦え!!悠介!!」
「は・・・」
「此れだけ、言ってもダメか?!」
「相変わらず・・・強引だった・・・」
「当然だ。何のために、お前を送り出したか・・・」
「でも・・・」
「大丈夫・・・みたいですから・・・」
笑えるなら、
「余裕・・・ありますよね。」
「あぁ。」
「もう一度・・・やってみます。」
「ん・・・ずっと、見といてやる。」
「はい・・・」
「悠介。希望は、お前と仲間と、ブレイディオン達と、俺たちの中にある。」
正義が、悠介の背中を押す。
触れられて、何故だか、その気持ちに余裕が出る。
失いかけていた、生きたいと願う希望が、また、蘇った。
希望・・・
生きると願え・・・
「諦めるな・・・」
だから、
「逝ってこい・・・・・・!」
死
「行ってきます・・・なんて、言うと思ったのかよ!!ふざけんなよ!!いまさら、俺に偉そうに説教たれて!!ふざけんな!!いまさら、俺に説教すんなよ!!いまさら、助けてさ!!消えろ・・・!!俺の前から消えろ!!」
かつての仲間の否定。
悠介は仲間の魂をかき消す。
「あんたが仕掛けた・・・この世界は・・・」
「おや・・・しかし、イエスは確かに驚いたが・・・もう、私の中だ。」
「何でこんなことをした?!」
「暖かさの中で殺そうと思った。一つの慈悲だ。」
「一つの・・・」
「しかし、否定しようとしたところで、あれだね。本心は生きたいんだね。」
「ふざけた台詞回し・・・」
囚われの神は何も出来ない。
ただ、何かがあるわけではない。
破壊神は真なる神の前で何も出来ない。
真なる神は破壊することなど出来ない。
「神・・・違う・・・」
「我はスサノオ?」
かつてのスサノオ。
そして、破壊。
迎えたものはツクヨミ。
アマテラスの存在を許さずに。
そして・・・
そして・・・
そして・・・
「知世・・・」
手を差し伸ばせば掴むのは神の演出ではなく悠介が求めた結果。
あぁ・・・
知世・・・
我の愛する女よ。
真なる神の演出を振り払い愛する者を呼び寄せる。
父なる神はなぜか見ているだけだった。
余裕というものがあるのか。
だから、見過ごした。
だから、また・・・
現実へと
「いや・・・」
恐怖におびえ、
「悠介・・・」
全てに怯え
「お願い・・・」
全てを
「いえ、私を・・・」
さぁ
「助けて・・・」
全く、
「悠介は悠介のままでいいの。」
そっと、包み込むように抱きしめながら。
「悠介は悠介のまま・・・」
「たぶん・・・大丈夫。」
動かしたのは単純なこと。
愛する人への思い
失われていない、ブレイディオンの腕は軽く、敵の攻撃をいなした。
「望め・・・大丈夫。ただ、単純に愛する人と生きたいと願いながら、生きろ・・・!うん・・・まだ、望める・・・」
「遅いよ・・・」
「御免・・・」
知世は悠介を強く抱きしめて、そのまま頭をゆっくりなでる。
ゆっくりと。
「目が違う・・・」
「ただ、願うだけ・・・余計な事は考えずに、馬鹿になるくらい、生きろ。だって・・・」
「馬鹿になって、生きることを望め・・・か・・・俺が俺のままでって・・・そういうことで、良いんだよね。」
「うん・・・悠・・・戦える?悠介・・・」
「最後に・・・やってみる。」
ヤハウェ、その意味から、ある種、抗う事が愚かでも・・・・
「抗いたい・・・いや、生きたい!!!
無駄に考えるな・・・!
悠介の願いは、それを、ブレイディオンに与える。
「最後だ!!!!!!!」
「やらせは・・・!!!!!!!」
「生きる・・・!!大好きな人と・・・!!」
ヤハウェの、たくさんの人達を破壊した魔術の魔方陣がブレイディオンを覆う。
さらに、貫かれる。
が、効きはしない。
その衝撃破は、純粋な願いを力に変えたブレイディオンを貫けない。
「生きたい!!生きることを、貫きたい!!」
ブレイディオンを中心に発光する光の柱
変われ。
そして、生きるために、強くなれ。
倒せ。
生きることを邪魔する、あいつを。
純粋に願いを叶える、その者の名こそ、本来の姿なり。
恐れるな。
生きることを・・・
今全てが一つとなって生きることが純粋な願いが力となって、誕生する最強の巨神。
「何も考えずに生きることを望む・・・か・・・」
「今まで、したことも、殺したことすら忘れて・・・純粋に生きることを・・・」
「私は、もう、ただ・・・生きる・・・」
「ティアと一緒に、愛する人と、私は生きたい・・・」
「お母さんや、フェイト、なのはの分まで・・・」
「瑠璃と一緒に・・・生きたい。」
「生きる・・・悠介と一緒に・・・」
「絶対に・・・知世と、仲間と一緒に俺達が生き残る・・・!」
悠介が最後に生きる希望を呟いた時、全ての物の、願いが一つになる時、究極の巨神が生まれる。
「パラディーゾ・オメガ・ラグナディオン!」
それは、究極にして、αであり、Ωである。
神の集まる場所として、世界が他者によって終焉を迎えられる時に現れる。
究極の巨神・・・
搭乗者たちの願いと完全なる融合をして、その強さは、正に、願いと言うαから始り、究極であるΩの象徴といえるだろう。
「まさか・・・!!!」
「そうだ・・・四体の巨神・・・草薙の剣・・・」
「私と悠介、全ての願いの力・・・私たちの力が一つになる時!!!!!」
「生まれる終焉の巨神!!!!!!!!!!」
それが、
「パラディーゾ・オメガ・ラグナディオンだ!!!!!!!!!」
「ふざけるな!!私の希望を、私の計画を、そんなもので終わらせるつもりか!!!!」
「ここで、終わらせるつもりだ!」
光の翼は、その宇宙を覆うほどに、美しい広がりを見せる。
両腕の手の甲から、生まれる剣。
それを、進化した、ヤハウェを殺すために。
「エンド・ゴッドヘイト・・・バプティスム!」
ヤハウェの放つ、崩壊光。
これをもってすれば
「かつての私・・・それは!」
「それが・・・どうした。今、やっと解ったんだ・・・破壊して、そのままにするより・・・破壊されても・・・好きな人と生きたいって・・・!!」
ゆっくりと、動き出す。
その巨神、正に神のごとく。
「お前は・・・ただ、破壊だけを望んだ・・・生きる者達の願いを踏み弄って・・・それが、お前の神の罪だ。」
「それの、なにが、罪だと言うのか・・・?人は・・・醜い。」
「確かに、そうかもしれない・・・ただ、あそこまで人間は減って、やっと、殺し合い、軽蔑しあう醜さに気付いたんだ・・・イエスの生かした人間達を殺す必要は無かった筈だ・・・!放っておいて、良かったんだよ!!」
人は・・・
「並行世界から、連れ出された人間達は、ブレイディオンとイエスを通して、俺に教えてくれたんだ。その、行為の愚かさに・・・だから、犠牲の上で優しい世界を作ろうとしたのに・・・・・・!!あんたは!!代わりに、優しい世界を創る・・・」
「それでもだ!!」
「二度と、あのような、大虐殺が起きないように・・・あそこに選ばれた人たちは手を取り合うことを選んだのに!!」
「それでも、人はぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」
「残酷って、言えるのは解ってるさ!!!あんな世界を見せつけられたらな!!」
ヤハウェはその腕を展開するものの、触れたとたんに、腕は粒子となって消滅する。
全てを無効化にする力。
それでも、虚構粒子を取り込んで、一つになる力。
すぐさま、再生される。
ラグナディオンの大きさは、ヤハウェと同等。
ヤハウェに合わせて大きさも変わるだろう。
ヤハウェと対等にある。
抗うと、生きると言う願いと、そして、悠介たちの願いが、具現化された状態で、そこに存在している・・・ヤハウェの写し鏡とも言われる、その存在。
「簡単に滅ばない・・・!」
「人の願いを得た!」
「この、ラグナディオンは・・・!!」
二つの刀、天叢雲剣と天羽々斬が、全ての力と純粋な願いと共に融合する。
その刃、真に宇宙全てを切り裂くほどの巨大也
「破邪神天殺・・・!」
「そのような物で・・・!!!!」
金色に輝く、その巨大な刀・・・
さぁ、全てを終わらせろ。
「まだ・・・!!」
振り払う。
純粋に・・・
ルーン文字で描かれた、一つの刃を、ヤハウェは展開させ、破邪神天殺と対抗するために、それを振りかざした。
今の、その、ラグナディオンの力を誰よりも、ヤハウェが知っている。
それこそ、かつての、天使を創った時に自らが生み出したもう一人の自分。
力も、何もかもが自分と同じであるがゆえに、一度、封印した存在。
天使は言わば、自分と同一人物といってもいい存在である。
そのオリジナルこそが、この目の前にいるラグナディオン・・・
それは、数人の力と純粋な願いを力に変えるという能力を持ち合わせて、今、ヤハウェの目の前に対立している。
この、広大な何も無い、宇宙すらない空間の中で戦う。
いや、空間と呼べるのか、曖昧なそれの中に。
ただ、歪な物が・・・
「俺たちだけでも・・・!!」
運命を砕く。
絶対に、死ぬと言う運命を。
「生命のリミットが・・・消えた・・・?」
「そうか・・・僕たちの生きたいと言う願いが、確かに、生命核なしで生きられる・・・それが、具現化された。」
神と同等であるが故に願いを叶える機械
ヤハウェの映し鏡・・・
そう、呼ばれている理由。
キッと目が輝いた時、未来・・・
悠介たちの未来を切り開くために、飛翔するための翼が具現化され、ラグナディオンが、顔を上げた瞬間に、ラグナディオンの瞳から光線が放たれる。
その光は、この虚空の空間を切り開く一閃にも感じられるほどの威力だった。
そして、新たに、宇宙を創世させるほどの、力。
一瞬で、ヤハウェが姿を消し、その後ろに現れた時、ヤハウェの腹部が貫通している事に気付く。
「なるほど・・・しかし・・・」
「あんたを、この剣で・・・ぶった切らなきゃ・・・意味のないことくらい、解ってる・・・!!」
その合図と共に、ラグナディオンとヤハウェはは超光速に達しUFOのような物理法則上はありえない動きを取りながら、ぶつかり合った。
何も無い空間で、神であるからか、その光の筋を創り出しながら、一つ一つ、何かが、出来上がり始めていった。
超光速と言う枠さえも突き破り、更なる速さの壁をも超え、ぶつかり、そして、傷つく。
しかし、それでも、正面で両の手を重ねあわせる。
そして、ゆっくり、開くのと同時に強大な力が生まれ始めた。
巨大なエネルギーの創世と、それと同時に、ラグナディオンの胸部の中心にある神玉が反応し、蒼世の光を生み出しながら、前へ・・・前へと、力強く、そして、速く放出する。
それを防ぐ事が、間に合わないと踏んだ、ヤハウェは天使を生み出し、デコイとして、それを活用しながら、かすかに、恐れていた。
ラグナディオンを・・・
「まだ・・・!!」
あらゆる、全ての世界法則など、無視して動き出す、この二体の神はただ、己の存続を賭けて、戦う。そこから、新たに、世界を創り出している事も関わらず。
いや、一度、作り出した世界が、再生していたのだ。紀元前から、おぞましい時間の速さで、新たに、世界は、創り出され、そして、壊される。
神の戦いによって・・・
「うぉぉぉぉおぉぉぉおぉぉ!!!!!!!!!!!!」
刃は、お互いを切り裂き、全てが無視され、ただ、傷つく。
そこに、単なる技など、意味は無い。
この場合は、普通の人間である場合は、斬る事以上に最大の攻撃を持つ技など、存在しないのだ。
こういう、斬り合いは・・・
その、斬る瞬間の刹那に、技を出せばある種の、勝利は喫するが。
ヤハウェが、速い。
一瞬の判断で、悠介の心臓の鼓動は、敗北を喫するのかと考えた瞬間に、次の手を打ち、位賭けたのと同時に、ヤハウェの刃を砕いた。
さらに、ヤハウェはフィニッシュのためのコクピット目掛けてブローを叩き込もうとしたが、至近距離で、ラグナディオンは眼球から光を撃ち放った。
さらに、両腕にエネルギーをためて、瞬時に撃ち放つと同時に、ヤハウェの顔半分は、消滅する。
さらに、胸部は打ち付けられ、全体に、再度創り出され、崩壊しかける世界に、強大な衝撃を与えるのと同時に、世界が消滅する。
翼は、その、強大な刃に姿を変えて・・・
一つの刃と合体し、さらに、強化された二刀の刃が生み出された。
「桜花爛漫・・・」
悠介の技と言う技を全て詰め込んだ、一つの技が全てに注ぎ込まれる。
発せられていない技という技の斬激が繰り返される
「鬼!!」
破壊
「神!!」
破壊
「無!!」
破壊
「冥!!」
破壊
「零!!」
破壊
「破!!」
破壊
「斬!!」
破壊・・・
鬼神無冥零破斬・・・
そして、最後に、
「無限斬・・・!!!!!」
破壊と創造が繰り返される。
世界は創られ、破壊される。
これを、何度、繰り返したことだろう。
「強さか・・・此れが。」
最後の無限斬を、喰らいそのまま、消滅するヤハウェ・・・
そして、今までのダメージが、今になって、ラグナディオンに全て、廻って来る。
消滅するのを見届けた瞬間に、体全体が軋む音がし、顔を包んでいたマスクが割れ、ラグナディオンの素顔が露になった。
全ての身体は傷ついているものの、まだ、五体満足であるが故に、生きられる。
しかし、悠介の体が傷つき、体のありとあらゆる部分から鮮血が吹き出た。
「悠・・・!!」
「大丈夫・・・まだ・・・」
しかし、動く事は、辛うじてできる。
それに、
「奴は・・・まだ・・・」
「馬鹿な・・・」
「いや、事実だよ・・・燈也さん・・・」
それで、消滅する筈だった。
しかし、
「流石は・・・もう一人の私よ・・・ラグナディオン・・・そして、それを意のままに操る、浦島悠介・・・」
「まさか・・・」
しかし、ヤハウェもボロボロの状態だった。
それでも、ヤハウェは、
「強さか・・・私自身が、生きたいと願う。」
そして、
「私が・・・蘇る。」
より、強く。
より、力強く、ある種の神というイメージからより、神秘さから重装甲の無骨さを感じさせる、ヤハウェが爆誕した。
「ヤハウェ・・・!!!」
「ラグナディオン・・・」
マッシブさから、来る一発、一発の拳から放たれる、超激破が動けないラグナディオンの体を破壊していく。
「此処までか・・・!?」
重装甲であるが故に、しかも、超光速の拳がラグナディオンに休ませる暇を与えない。
しかし、それでも、
「ウォォォォオォォォオォォォォオ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
荒鬼神咆哮・・・悠介の咆哮が、送られる超光速の拳を全て、消滅させて、まだ、戦えると・・・叫ぶ。
「ウォォォォオォォオォォォオォ!!!!!!!!!!」
マッシブなヤハウェは、追加装甲のような物から姿を変化させ始めた。
一瞬のうちに、闘士のような姿から、また、神秘という言葉が相応しい外見となり、悠介は刃を振るいながら、敵を殺そうと再び動き出そうとしたが、目の前にいる、ヤハウェは斬った。
しかし、そこに、ヤハウェはいない。
それどころか、ヤハウェは増殖し始めていた。
「ウォォォォォォォォォォォ!!!!!!!!!!!」
二本の刃の柄を繋げ、上空で超光速に回し斬激の刃がヤハウェの全てを切り壊した時、
「がっっっっっ!!!!!!」
何かにつかまれた感覚。
ふと、視線を向けた先には
「ヤハウェ・・・!!」
異常に巨大なヤハウェがラグナディオンを掴み、自らの中に取り入れようとした。
ヤハウェに握られるたびに、ヤハウェに吸収されていく感覚を覚える。
此処で、終わりか?
いや、
「死にたくない・・・!!」
ヤハウェに捕らえられ、ヤハウェの体の中に入り全ての絶望を、人の醜さを再び、その身に受け始めた。
入り込んでくる、人、人、人の黒いもの・・・
異様なり。
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」
ヤハウェの見せる、悠介への地獄。
地獄が、此処に、存在している。
自分の中に人が入り、人の醜いヴィジョンを映し、そして、発狂させる。
何度も何度も、人の黒色部分、最も、邪悪な部分を・・・数ある邪悪な部分を全て、植え付けられる。
精神が、崩壊しそうになる中で、何とか・・・
自我を保とうとする。
自我を・・・
崩れる事無く、自我を。
口から、直接、黒い液体をぶち込まれるように・・・
自らの皮膚が醜く、黒く歪み、そして、自由が聞かなくなる。
阿鼻叫喚、一種の地獄と見てもいいだろう。
精神が脆い悠介には、これ以上にきつい地獄は存在しない。
体の中に、徐々に、人の黒いものが入り込み、悠介にヴィジョンを見せる。
人の犯してきた、過ち、人の醜さ、そして、人の最も、邪悪な部分。
心が、汚れていく。
「はははは・・・」
死ね・・・死ね・・・死ね・・・死ね・・・人間の邪悪さが悠介の頭の中で渦を巻き、破裂しそうになる。
心が、怪我されていく。
悠介の心が蝕まれる。
その世界で、悠介は嘔吐しながら、眼球を見開き、異様な頭痛に、心臓麻痺に陥りそうなほどの衝撃が来る。
蝕まれるな。しかし、悠介の言葉とは裏腹に、望まぬ形で、全てが侵食される。しね・・・
しね・・・
しね・・・
黒い何かに、そう、言われる。
侵食されながら、黒くなった、自分の体に、侵食されて、そう、言われる。
何も出来ない。
完全に、自分の空間は乗っ取られている。
スサノオ形態にすら、なることも出来ずに、人の黒さを、その身に押し付けられ、侵食され、そして、精神を欠き殺すという地獄・・・
その、地獄の中でも、まだ、生気は失っていなかった。
超高層ビルから、何度も、落とされたかのような痛みが精神を襲うというのに、まだ、生きる。
それでも、まだ、死なない、死ねないと、悪あがきをする。
まだ・・・
まだだと、悠介の生きたいと言う願いは生き続ける。
辛うじて、言う事の聞かない手を伸ばした先には、何も無い。
誰もいない。
それでも、求める。
人を・・・
大事な、愛する人を。
手に纏わりつく、黒いものを、体全身が覆おうと仕様とも、それでも、眼球だけは、大切な人を求める。
その姿は、痛々しく重いながらも、それでも、希望だけを、願いを見据えている。
「知世・・・知世・・・知世・・・!!!!!!!!」
呼ぶが、人はでてこない。
神の慈悲たる演出の終わり。
この空間の中で、悠介を支えているのは、人という枠を越えた、仲間という存在の絆が、あるだろう。
それにつけ込み、ヤハウェは仲間が自分を殺すヴィジョンを送り出した。
燈也に、アルフに、悠矢に、陽子に、
「やめろぉぉおぉぉぉぉ!!!!!!」
ティアナに、瑠璃に殺される。
そして、目の前にいるのは、
「知世・・・!?」
お前まで、俺を殺すのか。
歪み、悠介だったものは、鬼となり、周りにいる仲間を殺した。かつての仲間を殺す。
砕く。
そして、食う。
鬼と化す。
既に、人としての理性を崩す。
全てを殺し、喰らいつくし、殺す・・・
殺す・・・
殺す・・・
かつて、愛したものでさえ、殺した。
なぜ、望んでいるのか。
悠介が、その愛するものを手にかけた瞬間、一瞬、動きが止まった。
何を、している。
腕を止め、貫いた愛する人の体を見る。
「ウォォォォオォォオォォォオォォオォォ!!!!!!!!!!!!!!!」
哀しみの雄叫びからか、鬼は咆哮を上げ、全てを破壊する。
何故、このようなことをした。
誰が・・・誰が・・・何故・・・殺した瞬間、全てが、元に戻る。
黒かった皮膚も、元の人間のものに戻り、完全な、人間の姿に戻ってしまう。
そして、死んだ知世を見て、ただ、笑うしかなかった。
何を、しているのだと。
涙が流れる。
絶望・・・与えられた、絶望が、悠介を自分の殻へと追い込んでいく。
もう、嫌だ。
どうして・・・
ここまで・・・
絶望。
目の前にあるのは、絶望だ。
絶望に染まり、
「そんな・・・そんな・・・そんな・・・」
ヤハウェの中に、ヤハウェに取り込まれようとした瞬間、知世の体から金色の魂のようなものが出現し、悠介に触れた。
「っ・・・!?」
「大丈夫・・・まだ・・・」
愛しているから。
生きている。
「幻影だもの。」
キス・・・
知世が悠介に口付けを交わした瞬間、ラグナディオンのコクピットに戻る。
「・・・・・・・・・!?」
「愛の力の前では・・・ね?」
「あぁ・・・・・・」
そこが、どこか、確認した。
完全に、取り込まれてはいない。
しかし、知世と悠介以外の周りの人間は、悠介と同じ地獄を見ていた。
「生きてる・・・」
「まだ、完全に侵食はされていないわ・・・」
「うん・・・」
まだ・・・
「此処から、出る・・・」
違和感のようなものに気づく。
必要以上に、自分に甘えているからだ。
ふるえている。
今まで以上に、恐怖を感じているようにも見える。
自分以上に、何かを見た。
ある程度の力を出せば、忘れることができる。
戻ってくれば・・・
しかし、悠介は、未だに知世を求めているように震えている
「悠・・・?」
「大丈夫・・・」
「大丈夫じゃないよ・・・悠・・・」
まだ、囚われている仲間たちの顔を見れば、落ち着くが、それ以上に、視界から自分が消えることで、恐怖を感じ取る。
体の震えが止まらない。
知世はただ、優しく、悠を抱きしめることしかできなかった。
何を言えば、良いのかわからない状態。
見てきた地獄は、自分のみたものより、恐ろしかったのか。
しかし、このままだと・・・
本当に・・・
自滅する。
自滅してしまう。
「どうすればいい?私は、悠に対して、なにが出来るの?」
「後ろから・・・後ろ・・・から・・・抱きしめていれば・・・良い・・・」
「それで良いのね?」
「うん・・・」
「私が、ずっと、あなたを抱きしめているわ・・・」
「僕たちも、いる・・・・・・」
「大丈夫よ・・・・・・」
「あなたたち・・・・・・」
地獄から、解放された。
いや、
「解放してくれたわ・・・・・・悠介の・・・・・・」
「おにいさまの、昔の仲間が・・・・・・」
「正義さん達・・・・・・が・・・か・・・・・・」
嘘だ。
演出だ・・・
敵など関係無い。
人よりも神人
そう思いながら、ただ、求めていたのは愛する人と仲間
ただ、求めているのは愛する者と・・・
「悠介くん・・・?」
燈也が、その異変に気づく。
精神面が、歪んで、いや、かなり、乱れている悠介がそこにいる。
「乱れているの・・・この子は・・・」
身体全体が、全てを、震えが悠介自身を拘束する。
辺りが、血のようにどす黒い空間・・・
「動けないのか・・・・・・?」
しかし、責めることなど、できない。
「大丈夫・・・・・・です・・・・・・」
地獄から、解放はされた。
しかし、それは、後遺症として、未だに悠介を蝕んでいる。
「後、少しだけ・・・時間を・・・」
「うん・・・」
「知世・・・」
「なぁに?」
「絶対に・・・離れないで・・・」
「うん・・・」
共有できる。
安らぎ・・・
今は、ただ、愛する人に抱かれるままに、全てを忘れよ。
「やれるの・・・?悠介・・・」
「あぁ・・・アルフ・・・出来る・・・今は・・・」
ただ、やれると、暗示をかけて、今、せめて、愛するものに抱かれる事が、今、一番落ち着ける場所。
そこで、ゆっくりと、自分に暗示をかけることができると・・・
「ずっといて・・・」
「うん・・・」
「いないと・・・怖いんだ・・・」
「大丈夫だ・・・」
自分に、そっと言い聞かせるだけで良い。
一種の、無の境地まで、自分を追い詰め、今、此処に・・・
「行く・・・!!」
巨大な破邪神天殺を振るうが、上手く、振れない。振るのが怖くなっているのだ。
此れでも、たりないというのかと、叫ぶかのように、絶望に陥っていた。
「ダメ・・・だったのか・・・?」
「受けた絶望の塊が違いすぎる・・・・・・」
「たりないのか・・・?」
そう・・・
「足りないな。浦島悠介・・・」
「ヤハウェ・・・!?」
声だけが、聞こえる。
与えたのは、
「絶対的な恐怖だ。勝ては、しないよ。」
超えることも・・・
ヤハウェと人間の恐怖に取り付かれた悠介には為す術も無い。
そして
「消えるといい・・・もう、終わりだ・・・お前達で・・・」
全て、消した。
光の巨人も何もかも。
「私は消えない・・・」
「何・・・?」
「愛してる悠介と、悠介があんたに立ち向かう勇気がある限り・・・!!」
それでも、そんな言葉でも、悠介はただ、震えるだけだった。
「何故、そこまで信じられる。」
「悠を、誰よりも愛してるから!!」
知世は、恥ずかしげも無く、真剣に、ヤハウェに告げる。
誰よりも、愛しているからこそ、そう、告げることができる。
「私が、ずっと、傍にいる!!二人で、一人・・・はじめて・・・私たちは、強くなれる・・・!」
その言葉に、何かを、悠介は何かを思い出した。
「強く・・・?」
「なれるわ・・・ずっと、私と一緒にいるのだから・・・」
いつも、
依存させておいて良かった。
誰が裏切ろうとも誰に裏切られようとも、自分がそばにいる。
自分だけ・・・
自分だけ・・・
自分だけという想い。
自分が一番、誰以上にもお前を愛していると言う行為、思想、表現・・・
すべてを思いのままに悠介にぶつけてきたもの。
此処にいる人間の誰よりも与えつけた愛情が悠介を包み込み、愛しだす。
その思いが悠介の行動理由の全て。
生きていく理由の全て。
知世だけが悠介の全て。
「一緒だったでしょ?」
「そうだった・・・」
何があろうとも、隣には必ず、知世がいてくれたことを思い出す。
ずっと、一緒にいてくれる。
そして、今も、また、仲間がいた。
「悠は私がいないとだめね・・・?」
「にいさま・・・」
「そうだよ・・・浦島悠介は、いつも、知世を中心に仲間がいてくれたから。」
だから、
「強くもなれて、知世が完全な弱点になってた・・・」
傍にいる強さと弱さを兼ね備えた、二人が、此処にいる。
だから・・・
「また・・・強くなれる・・・!!」
これ以上に・・・
そして、また・・・
「一秒前の自分より・・・!!」
ゆっくりと、顔をあげて、ヤハウェを見た。
改めて、確認する。
知世が自分を抱きしめてくれている。
どす黒い空間の中で、一歩、動き出す。
「突き放されて・・・改めて、俺は、自分が弱い人間と思い知らされた・・・」
ただ、それでも・・・
「今は、知世がいる・・・!!」
迷宮の中に閉じ込められた気分だった。
しかし、今は、それが・・・
違う。
解放された気分だった。
強く熱く駆けろ響け・・・
自分の願い・・・!!
この願いよ、届け・・・!!
フィールドを打ち破り、全てを凌駕するために、動き出す。
破邪神天殺・・・
神を殺そうとも、
「生きる・・・・・・!!!」
切り裂く
「うぉぉぉおぉぉぉぉおぉぉぉぉ!!!!!!!!!」
刃は、これ以上に無い輝きを放ち、ヤハウェの創りだした、いや、ヤハウェの空間を全て破壊し、ヤハウェの体からラグナディオンが脱出した。
「変われ・・・!!今、奴と戦えるうちに・・・・・・!!」
届け・・・!!
「俺達の未来を、此処で、つなぐために・・・!!」
今、
「この、チャンスを逃さない・・・!!」
「悠介くん・・・!!持っていけ!!」
「託します!!」
「全てを!!」
「私のも!!」
「にいさま!!」
「悠介!!」
「あたしのも!!」
「兄さん・・・!!全てを・・・!!」
改めて悠介の思いに対して奮起した。
それで、それで良い。
改めて、全ての力をふるいだし、限界の底まで、弾きだし、悠介に力を与える。
「そんな、馬鹿なことが・・・!!!」
駆ける。
破壊神・・・
人を生かすための破壊神。
生きると言う名のオーラを、今までにない以上のオーラをその身に宿し、再び、今、こうして全ての傷は癒され、ラグナディオンはまた、姿を変える。
「インフィニティー・・・オメガ・・・ラグナディオン・・・!!」
その姿。
「無限の終焉を・・・貴様にぃぃぃぃいぃぃぃ・・・!!!!!」
ヤハウェが刃をふるい、全て、勝利したかと思われた、ガ。
ラグナディオンのマスクが破壊されただけだった。
その素顔が、露になる・・・
しかし、それが、どうしたと言うのか。
「願いよ・・・届け!!!」
光が、光が集まる。
崩壊された、無限の世界の中で。
光を帯びた、刃はより、巨大に・・・巨大な物へと。
「バカな・・・・・・!?いや、これが、生きたいと思う・・・あの子らの希望・・・!?私は・・・私は・・・!!」
「永遠の終焉を与えてやる・・・・・・」
その刃を、ヤハウェに向かって、振り下ろす。
「終・焉・斬!!!!!」
ヤハウェは真っ二つとなる。
その中で、ヤハウェは見た。
「あれが・・・希望・・・?生きようとする願い!?」
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
「しかし、後悔するだろう・・・そこまで・・・生きていても・・・君は・・・」
「あぁ・・・俺は・・・・・・俺は、此処にいる・・・・・・俺たちだけで・・・・・・」
「しかし、それは・・・君が思う形にはならないだろう・・・あいつは、優しいから・・・。」
「あいつ・・・?」
「信じられることができなくなったら・・・いや・・・すまなかった・・・」
「何を・・・!?」
刃を振り下ろした時に、ヤハウェは全て消えた。
そこに、何も無いように。
「ここには、何も無い・・・」
静かな宇宙が、そこにある。
「失われたわけではない・・・」
だから、
「戻そう・・・」
「イエス?」
ヤハウェの残骸とも呼べるコアのようなもの。
その光に、全員が目を閉じた時、目の前に広がっているのは、
「ミッド・・・チルダ・・・?」
「何故・・・・・・」
「そうか・・・これが、あいつの言ってた力か・・・」
「奇跡が・・・起きた。」
「奇跡・・・?望まぬ未来だろ・・・?」
「あの時の謝罪は・・・・・・」
そういうことか。
全員、生きていた。
「ははは・・・何故・・・」
マルチバース・・・全ての世界の復活。
それと同時に、イエスが姿を現した。
ラグナディオンを封印し、泡状に包まれた全ての世界を見て、そこに、イエスがおり、さらに、何人かの人間が、存在していた。
「全ての行い・・・これは、私のおける今の力が行ったもの・・・しかし、私の父が消した生命の核で、全ての人間はまた、姿を消す・・・」
「何をするつもりだ・・・」
「私は、また、人間を信じてみようと思う・・・」
フッと、優しく笑って、イエスは再び世界に目を移した。
「何で!?何が、あった!!」
「生きようと思う、力と願いを見た。」
「それだけで・・・?」
「あぁ。だから。」
じゃぁ、あんたが・・・
「あんたが、世界を導いてくれよ・・・!!また、選ばれた世界のように!!」
「君達が、輝けるのなら・・・全ての人はまた、輝ける。その可能性を・・・」
「そんなことはっ・・・!!あんたが、導く世界で、生きようって・・・」
こんなときに聖書のような聖人のような性格になったイエスを悠介は呪った。
「すまない。私が・・・」
止めることが出来ればと。
「しかし、もう一度、あの輝きを信じたいと思ったのだ。」
中にある慈悲を取り戻したイエスの行うこと。
これは、ヤハウェの仕掛けた罠でもあった。
全てにおいて何もかもを取り戻したかのごとく。
ヤハウェの悠介へのささやかな復讐・・・ある種の、第二の自分とするための行動か。
「何で・・・・・・」
俺は・・・
俺は・・・
「人が、恐い・・・」
人が・・・
それが、ヤハウェの詫びた理由。
人に仲間と呼べる人間以外の・・・
「人間を・・・」
何故、そうなったのか。
取り込んだときに見せた人間の黒さ。
「それが、原因か・・・」
人間のおぞましさを見た結果・・・
悠介は、仲間以外の人間を信じられなくなった・・・
「そんな・・・・・・」
「悠は・・・・・・」
与えられてしまった。
絶対的な不信感。
一つ、一つ、絶対的な不振と言う物はあるものの、完全なる対人恐怖症に近い。
一部の人間しか信じられない。
虐めを受けた子供のような。
「何で・・・」
ある種、望んでいない結末か。
「空しいな・・・!!」
「そんな世界に・・・そんな世界に・・・」
「やってくれたな・・・」
「今更、その意味を知っても遅い・・・。」
「いらないヤハウェの・・・」
「置き土産か・・・」
「父のしたことか・・・」
こればかりは、ぬぐえるものではなかった。
「それは、人が越えなければならないものか・・・」
「父の与えた恐怖は、私が消そう・・・」
触れるだけ。
かつて、皮膚病の女性を直したように、黒い恐怖は消える。
しかし、植えつけられた恐怖は・・・
自分で、なんとかするしかない・・・
見せられた不信感は、あまりにも大きかった。
「すまない・・・としか、言えない・・・」
「もう・・・良い・・・」
「もう・・・」
「それで良い・・・」
「それで・・・・・・」
「本当に?」
「うん・・・」
虚構の顔を浮かべながら、悠介はイエスに告げた。
「くそ・・・」
「どうしようか・・・」
「生きてやるさ・・・今回も。」
「すまないとしか・・・言いようがない・・・」
悠介の何とも言えない表情に、イエスは、何もできなかった。
そして、知世がまた、悠介を抱きしめる。
優しく・・・
優しく・・・
こうするだけで・・・
「一緒にいるよ・・・。」
「あぁ・・・」
「ずっと・・・」
生きている実感。
ただ、今は、それを実感するだけで良い。
「それで良い・・・」
「もう、未来のことは・・・」
「考えるだけで怖い。」
そうね。
イエスは、ただ、二人を見ていた。
「さて・・・時間が無い・・・」
再び、全ての人は・・・
消えてしまうから。
消滅させようと。
もう、それは、無意味な物となる。
「どうせ・・・」
「また・・・」
「そうなると・・・」
「解っているさ・・・」
「逃れられないころくらい・・・」
「受け入れる・・・」
「知世と・・・一緒に・・・」
向かう・・・
「時間は無い・・・」
「そう・・・」
「私の前にいる諸君等に・・・送る物がある・・・」
それは・・・
ある種の、世界の監視者になるための物であると言っても良い。
ティーダ、アリシア、燈也、アルフ、ティアナ、瑠璃、知世。
そして、悠介は持っている。
しかし、此処にいる8人以外は、もっていない物。
「テスタメントの力・・・」
ティアナは、それを思った。
「世界の監視者か・・・」
「かつての、自分のように・・・」
此処にいる、数千人の人間に・・・
「数千人か・・・」
テスタメントと化した全ての人間。
彼らは、元ある世界に戻る。
この無限に広がるアナザースペースに。
一人ひとりが、テスタメントと化し、元の世界へと送られる。
「ティア。」
「瑠璃・・・」
イエスが認めた、優しい人たち。
今後は、その世界に、監視するだけの存在となるのか。
「統治するそんざいになるか・・・・・・」
「全ては、人次第・・・」
「ある種の、危険防止装置か・・・」
「そう言うことになるな・・・」
人が、これ以上、無意識に何かを破壊すれば。
また、残酷なことを行えば。
今回の意味を理解できなかった物は、ある意味で、自分がもう一人のヤハウェとなる。
世界を作りかえる・・・
もう・・・それで、良いだろう・・・
ダメになれば、今後は自分たちが、また、ヤハウェになろうとしても・・・
「僕達に、人を裁く権利は無い・・・」
しかし・・・
「裁きたくはなるわね。」
「どう誓うか・・・それは、皆にゆだねる。」
「お父様・・・」
「そして、二度と、人間が愚かなことをしないように・・・この戦いの記憶を・・・」
全員に・・・
戦の愚かさと、そして、人間の傲慢さ。
ぽんっと、イエスは、アリシアの頭を撫でながら、優しい父親の笑みを浮かべながら、プレシアと燈也に頭を下げ、ここから消える。
「生命の核になったのか・・・」
結局は、勝利したけど・・・・
世界を救った形にはなったけど・・・
「また、滅ぼすかもしれないのね・・・今度は、人が・・・・・・」
「それを止めるための私達・・・なのかな・・・」
戦いが終わったから、しかし、まだ、戦いは完全に終わらない。
終わらせることができない。
「さて、悠矢・・・心配だわ・・・」
「そっか・・・アイナのこと、忘れてた・・・」
「そうそう・・・」
そう、言いながら、陽子は猫の王の姿に変化する
「待ってください・・・」
アリシアが未練がありそうな声をあげて、向かおうとする陽子を止める。
「なぁに?」
「私のお母さんを・・・連れて行ってくださいませんか?」
「お姉ちゃん?」
「・・・」
アリシア・テスタロッサとて、家族と一緒に暮らしたい。
ただ、今は燈也とアリシアは見極めるための存在
折角、全てが終わったのだから、一緒に・・・これから、一つになれるから…いつでもなれる。
だから、これから見るべきものを見届けた後に新たにそちらへと向かう。
「燈也・・・」
「解っている。最も危険な世界の監視が必要だ。」
「そう・・・ね。お父様のように、全てがそうなるわけではないのだから・・・」
それは、管理局が暴走するかもしれないと言う危険性の考慮と言うものの、今のところ、次元、マルチベースを唯一、時間制限があるとはいえ自在に通る技術がある世界。
それを見守るための、ミッドチルダにいるテスタメントとしての役割。
「燈也は、それをしたいの?」
「そうだね・・・ママ・・・僕は、そうなったときの抑止力が僕達だから。役目が終わったら・・・一緒に暮らして良いよね?」
「燈也は・・・バカみたいに、正義感を持ったわね・・・」
「力を持った人間の役割・・・」
「燈也がこないなら・・・私は・・・」
「姉さんと一緒に見極めたとき・・・・・・」
「私もただ、見極めるだけ。」
「ならば、それまで役割が終わるまでプレシア・テスタロッサは私の世界へご案内しましょう。」
「お願いします。猫の王よ・・・」
「ママを・・・頼みます。」
「当然よ。」
プレシアは、そっと、アリシアの方に触れて、燈也の自由意思に任せようと思った。
「あなたの我儘・・・と、思っていい?燈也、アリシア。」
「うん・・・ママ・・・」
「やることが、終わったら・・・皆と、一緒にそっちに行く。」
「解りました・・・」
「早く、おいで。」
「はい・・・」
プレシアは、陽子に促され、駆け足で寄った。
「ティーダ兄さんは、どうするの?」
「え、と・・・考えてなかった・・・」
ただ、ティーダは、ティアナの為に戦い、主の命に従い、そして、強大な力をふるってきただけではあるのだが、もう、それを行うことも無い。
ある種、無用の長物とでも言うべきだろうか。
「やること・・・無いなぁ・・・」
「一緒に来ないか?」
「燈也・・・?」
「そうするのが、楽ね・・・」
「まぁ、ある程度、身分を隠せば何とか・・・」
「ま、まぁ・・」
「それに、久しぶりに兄さんがいるんだし・・・」
「う、うん・・・?」
「妹孝行しなさい・・・迷惑をかけてきたんだから・・・」
「悪くは・・・ないか。」
利害の一致と言う訳ではないが、たんに、ティアナに弱い兄の姿と言うのが、目の前にあるのかもしれない。
その、少し、弱い部分は、ある種の本来の柵や、役目、命令、主と言う形から解放された、ティーダ・ランスターの姿であるのかもしれない。
絶対に、争いを起こさせない世界の中で、猫の妖精と化した、一人のイザナミだった者。
「悠介・・・私の力を持って行きなさい。」
「え・・・?」
「あ、僕のオルクスの力もね。」
「どうして・・・?」
「不要な物だから。もう、ね・・・」
「あぁ・・・」
悠介はその世界に行くことはできない。
向こうへと向かう、仲間の数が少ないから、もう、戦いには解放されても良いとは思うだろう。
ただ、それでも、まだ、全ての世界の人間を簡単に、信じられると言う訳でも無く、少しでも、仲間がたくさんいる世界にいたいと言う、自分でもよくわからない考え。
しかし、自分でもよくわからない考えと言う物が、ある種、今の悠介を支えていると言っても良い。
それが、彼のアイデンティティを保つためであるのなら何も言うまい。
ただ、悠介もやることが終わったら、向こうに向かう。
もとより、人の進化と言う物も、見届けられない物でもあるが。
戦いから、何を得た・・・
全てが終わり、一部、後味の悪いものとなった。
渡す物を渡、そして、連れていく者たちを連れて、陽子は悠矢を連れて、自分を作り出した世界へと向かい、姿を消し、そして、この世界から消えた。
悠介達が下りるべき世界は、ミッドチルダと言う時空管理局と言う、これからの世界、最も、恐れるべき力がある存在と言えるかもしれんない。
「降りてきた・・・そして・・・俺は・・・何をすればいい・・・」
ただ、終わった後は、どうすればよかったのかなど、考える余裕を作る暇など、無かった。
「管理局にいらっしゃい・・・」
「暴走する前の管理局を止めるための手段・・・としてですか?」
あるだろうが、暮らしていくには働くしか無い。
今は、それに従う事にした。
例え、その奥に、野心が有ろうと・・・無かろうと。
「貴方に、悪い思いはさせるつもりは無いわ・・・」
そして、
「勿論・・・此処にいる、私達全員にもね。」
テスタメント全員の保護のように聞こえるだろう。
いや、それが、一つのリンディの狙いであるのだが。
リンディの背中にくっついている、高町桃子と言う存在に関しては、対して気にする事はなかったが、テスタメントとしての力に関しては悠介はどこか、恐れているような、それほどに強大なものを感じていた。
「食わせてくれるか?あんたの世界で・・・?」
「えぇ。当然よ。」
どの道、行く世界など、無い。
故郷に変える気すらも・・・
ただ、知世といるためであるのなら。
何処の世界でも、同じではないのか。
如何せん、信じられるのはテスタメントと言う存在であると言えるだろう。
そして、仲間が、妹や身内もいるから。
悠介の中では仲間と言うのは、信じられない人間とは違う、それを超越した絆をもった存在なのだろう。
矛盾・・・
今、彼は、その自覚など、もってはいない。
矛盾など考えると、今の悠介は自己崩壊を起こしてしまうことだってあるかもしれない。
「しかし、それでも・・・生きられるなら・・・生きられるなら、文句はないか・・・」
「良いの・・・?」
「それしか・・・無いだろう・・・」
生きるために。
ただ、それだけのために、管理局に残る。
悠介は、人の中で生きる決意をする。
これから、如何なる世界になろうとも・・・
そうならなければならないと、思っていた。
「辛いと思うことはあると思うけど・・・」
「えェ・・・」
解ってます。
終章
改めて、ミッドチルダと言う世界に降り立つ。
調子良く、神人達を迎える民衆達を見て、ただ、調子のいい存在としか見ることが出来なかった。
記憶に残っているからとは言え、何れは、風化してしまう記憶となってしまうのだろう。
そうなれば、魔術師以上に強い力を持つ、神人はどう、見られるのだろうか。
降り立った大地に対して迎える民たちは、そのことを知っている。
しかし、一時の感情に流され、歓喜する連中に対して、不快の色を隠せない。
自分の視界から、消えろ・・・
消えて、いなくなれ。
次第に、自身の感情が、そういう負の思いに埋め尽くされていく。
「管理局・・・破壊したいな・・・」
ふと、呟く言葉には絶対的な不信感がある。
地上に降り立ち、改めて踏みしめる大地は、違和感があり、これが、人間のすむ大地なのかと絶望すら覚えるほどの感触の悪さだった。
改めて、あの土地が如何に人間に適していたのかを実感できた。
エデンの園と言う名の、楽園・・・
コンクリートで舗装された、この道、そして、並ぶ無機質の建築物に対して、破壊したい衝動に駆られる。
拘束される事は無かった。
その理由としては、英雄として扱う事ではあるが、英雄として祭り上げ、宣伝したいと言う、ある種、今回の事件で無能ともいえる醜態を見せつけたための、支持率の回復である事くらいは、見え透いている。
全てを戻して、そして、全ての人の記憶に止められた、それを悠介はただ、ただ、あるのは、こうして見せ付けられたのは、今、こうして生き返させられた人と言う生物の無神経さとでも言うべきだろうか。
何れ、自分達を危険分子として扱う日も近いのかもしれないと、うわ言のように、思っていた。
もし、そうなれば、このミッドチルダに反逆するくらいの破壊するくらいの個人戦力は持っているから。
いや、それを解っているから・・・
「それを分かっているから、祭り上げるのか?」
「どうだろうね。僕達をどうするかなんて・・・怖いんじゃないかな。」
見の状態。
ある程度、見極めれば、強く出ると判断した。
「触らぬ神に祟りなし・・・ですか。」
「そう言う事さ。」
ある種、神と同等の存在でもある。
神と人類の戦争になるのであれば、今、一番、人を殺すのは悠介であるかもしれない。
過去に何人、人を殺したかなど覚えてもいない。
イエスの前に戦った存在はアダマから創られた楽園から追放された人間
同じ人間だと知ったとき悠介は人を殺した。
そして、ラグナディオンを駆ったときも人を殺した感覚が悠介にあった。
その記憶が神に見放された人間の中間接的にある。
その強大な力を恐れて、人は、ただ、その戦いに勝利した彼等を今は、賛美し、そして、英雄としての称号を送る。
しかし、今は、それで良い。
利用するだけ、利用できるのだから。
「終わらせたいですね・・・此れで・・・」
「人類は・・・愚かだから・・・どうだろうね。まぁ、やることは、一つでしょ。」
「人が戦い、奢り始めたら、俺たちが全部を滅ぼす・・・」
「それも、あるね・・・ま、出きれば、管理局側の正義って奴に従わないと。」
「給料、もらえませんからね。」
「そうだねぇ・・・食べていくためには、何とかしないと。」
管理局主催で行う神からの独立戦争を勝利に導いた英雄として、扱われた、彼等はその式に出ることを辞退した。
「神からの独立か・・・よく、言ったもんだ・・・」
「私達としては・・・後味が悪すぎてるけどね・・・」
しかし、生きる為に、謝礼金だけは受け取ったらしいが。
「そだね・・・金が無いと、何も出来ないし。」
「奴等の言う独立戦争に勝っておきながら、随分と安い賃金でしたけどね。」
「そうねー・・・」
俗に言う、神からの独立戦争が終わってから、数日が過ぎても、メディアはテスタメント達を英雄と捕らえていた。
この事件を美化しすぎて、絶対的な正義は此方にあると勝手に報道する、マスコミの悪い癖が表れていた。
こぞって、似非専門家達は、この戦争に対する正当性を視聴し、神を絶対的な悪として扱われた。
しかし、ヤハウェの心情を読み取れば。
「マスゴミ・・・」
人間を滅ぼしたくなるのも、解らなくは無いが。
自分勝手な正義の主張に、苛立ちを覚え、人間にたしする不信感が募るもの、無理は無かった。
数日経ってから、同じテスタメントである、美綴華鏡という人物に出会う。
その中で、悠介はかつて、異次元生物に支配されていた別の地球・・・
そこには、必死に生きる者達が数多くいながら、管理局が危険と判断しただけで、アルカンシェルを数発、撃ち込んだと言う実態を知る。
それによって、より環境が悪化し、生きていたものは死を迎え、終わりを迎えた。
侵略と捉えられても、間違いが無いがゆえに管理局と戦うための準備と言うものも、行っていた。
確かに、そのような実態は管理局に合ったが、
「上の人間は、ただの暴走だといってたようだね。」
「こんな世界だと、ぶっ壊したくなるね・・・」
「えぇ・・・本当に。」
人とは、何か。
「悠介・・・?」
それでも、人はなれる。
この現状に・・・
ただ、批判を家のテレビの前でしか言う事の出来ない、悠介は・・・
既に、この、世界になれていた。
それでも、人間不信は治らなかったが。
此処に、数ヶ月すんで解った。
この世界の仕組み、理。
そして、醜さというものすら。
慣れているにもかかわらず、いや、慣れている筈であったのに。
触れようとすると、内なる声のようなものが再生される。
それは、ある種の、被害妄想と同じようなものであった。
しかし、それでも、悠介の頭の中に響く声は、醜いと一周したくなるほどの、気持ち悪さ。
「鬱病・・・聞いてる・・・?悠介君・・・」
「あ、はい・・・・・・」
鬱病・・・
シャマルに、そう、診断結果を貰った、悠介はただ、自身の結果をそう、受け止めるくらいにしか出来なかった。
「大丈夫?」
「ごめん・・・」
「良いからさ。」
それも、妻としての役割であると、知世はそう自覚していた。
妻として、夫を支えるという仕事につき、そして、今を生きる。
圧し掛かりすぎた、人間の感情と言う醜さに押し潰されメンタル部分の弱さが諸に出た悠介にとって、自分の不甲斐無さに苛立つ事しかできなかった。
連日、変わらない報道をテレビで鑑賞しながら、知世の用意した食事を口に運び、ゆっくりしながら、凄し、そして、寝る。
求めた生活は、此れだったのかと、自分に問い掛ける。
此れで、良い筈が無いと解っていながらも、精神と身体は動かなかった。
「今は、何もしたくないのよ。」
「何も・・・したくない・・・?」
「何か、きっかけがあれば、悠も動きたくなるわ。何もしたくないと思うほど、もう、これ以上に無いほど、悠は戦った・・・」
だから、今は、休む時間であると。
そう言って、優しくしてくれる愛する人の肩を借りながら、眠りにつく。
それも、悠介の日常の一つ。
「大丈夫・・・私が、いるから。」
眠る、悠介の頭を撫でながら・・・
夢の中に眠りにつく悠介を見ながら・・・
今、この享受できる幸せを感じていた。
人間という、理屈ではなく、ある種のそれを超えたような、関係。
仲間達を、愛する人を殺さないように。
それまでは、自分が、死んでも、守るという命を粗末にするかのような、戦いがあった。
しかし、それは、幾多の激戦の中で死ねば、知世とあの世で再会できると、見ていたからだ。
しかし、生きるという目的に変わる。
それは、イエス・キリストが、知世をよみがえらせたからだ。
既に、戦う理由は無くなったが、目的は、生きる。
ただ、此れだけだ。
ヤハウェは、死に行くスサノオ、既に、戦う理由を失った、スサノオを見て、そう、思った。
しかし、スサノオは、生きるという新たな、欲望を生み出す。
仲間を守り、愛する人と生きたいから、生きる。
単純な理由であれど、立派な志ではあると、自分に言い聞かせていた。
天使たちの反乱に対して、動き出していた、危険な神。
スサノオ・・・
一時として、聖書の時代に、ヤハウェが恐れた天使。
元13大天使の一人・・・
ミカエル、そのものが、スサノオ。
生きる欲望を持った、スサノオ。
しかし、脅威では無かった。
それは、いとも容易く、撃ち砕かれる。
現れたのは、生命の核だった。
ヤハウェの力の、半分を司る、生命の根源と言う存在が、そこに存在し、
「まさか・・・生命の核・・・」
「あれこそ、最も、ヤハウェの力を使ったもの・・・」
壊してはならない。
壊してはならない、禁断モノ。
壊せば、確実に死ぬ。
ヤハウェが、破壊したことによって、それは、確実的なものとなった。
さらに、ヤハウェは、次元を突き壊した。
「あれは・・・」
「通常の空間移動とは違う・・・」
現れたのは、もう一つの世界。
「二つ目の水槽・・・マルチバース・・・」
悠介は、一つの言葉を思い出した。
一つの水槽の中に、入っているほぼ、無限に近いほどの世界の数。
世界とは一つの水槽の中に、無制限に宇宙を突っ込んだだけの、ある種の世界。
では、目の前に広がる、開けた、通常の空間移動と違うとはどういうことか。
「二つ目の水槽・・・」
二つ目の水槽その物を破壊するために、今、此処に、存在している、神・・・
「いらぬ・・・このような、世界など・・・」
冗談で通じる相手なわけが無い。
既に、生命の根源を破壊し、自らの物とした、ヤハウェは、止められなかった。
悠介たちを相手にしないのは、蟻と龍が真っ向勝負するようなものだからだ。
破壊されていく世界。
「みていることしか、できないのか・・・?」
悠介の、人間では無く仲間のために女のために戦う。
そして、何より、自分が生きるために、戦うと言う、ある種の守護と言う名の戦う理由を見出しても、目の前にいる、巨大な神そのものには、勝利することなど、できはしない。
強い志はあるだろう。
しかし、それ以上に、志以上に、目の前の敵が強大過ぎた。
スケールが違いすぎたのだ。
志、どうのこうのよりも、それ以上の恐怖。
真なる神が、そこにいる。
目の前にあるのは絶望。植え付けられたのは、絶対的な切望だった。
ただ、笑う事も、悲しむ事も、嘆く事すらも忘れる姿。そのヴィジョンは単なる、大きさにあわせたものではない。
やろうと思えば、それ以上に巨大になることすら、できるだろう。
いや、巨大という言葉の枠を越えている、そのサイズは、全ての宇宙を含めて、世界というのなら、世界一つ分がヤハウェのサイズとなる。
「ただ、それでも・・・本気じゃない。」
「ただ、そのサイズに、俺たちにあわせているだけ・・・」
「待って・・・お父様は・・・」
「あの中だよ・・・アリシアさん。」
「そんな・・・」
「事実だ・・・」
「俺たちは・・・何をすれば、いい・・・」
「何も、出来ない・・・」
あの中に、イエス・キリストもいる。
ヤハウェの核の一つとして、それは、そこに、存在している。いとも、簡単に・・・
それが、ヤハウェという、世界を作った、存在だ。
創造主が、破壊神となる。
戦うのであれば、願え・・・
生きることを。ヤハウェは、一瞬にして、全てを破壊した。
はむかうものすら、全て、無に返し、そして、開いた別の水槽の中にある世界を全て、破壊した。
「こんなに、無限に近い世界を一瞬で・・・」
「何て言う・・・力なんだい・・・」
「神だから・・・それは、当然だよ・・・」
「主や、全てを取り込んだ結果か・・・」
「まさに、ヤハウェの完全なる状態・・・」
「完全になる前でも、俺は、あいつを倒しきれなかった。」
「悠・・・」
何を言えば、わからない。
知世は、此処一番に、かけるべき、愛するものへ、かける言葉がわからなかった。
しかし、それは、この状況、絶望という名の状況の中で、的確な言葉など、見つかる筈も無かった。
最適な、言葉など、ありはしない。
全ては、無駄・・・無駄の一言によって、この、虚無の空間に流される。
何と言う。強大さ。その、巨大さも併せて、宇宙の意志なる物を砕き、そして、別世界の、ブレイディオンや、巨神に相当する物を、いとも簡単に砕いて行った。そして、強大となる。
信じられないのだろう。
あのヤハウェ=オリジンの滅ぼした世界には、生命の核ですら、生きとし生けるものが生きるためのコアすらも、破壊してしまったのだから。
それこそ、自分が死んでもいい。
本当に、自分がいなくなってもいいと考える、神の行う事。
全ての生命は、此処に、消える。
それが、いなかったように消滅し始める。
あのような悲鳴を上げないほうが、人として当然の行為なのかもしれない。
まともな人間である行為であると、言えるだろう。
否定してはならない、その事実。
「まだだ・・・・・・」
全てを失ったわけではない。
自分達が残っている限り。
悠介達が残っている限り、終わったわけではないのだ。
それでも、絶望は植え付けられたが。
「悠介?」
「俺達は・・・負ける・・・・・・」
その悠介の言葉に、誰もが頷いた。
なんのために、人が死んだ。
ここで、負ける。
その完全なる勝利を得るために、戦ってきた筈なのに、もう、勝ち目は無いと踏むのは、真なる、父なる神、自分達を創り出した神の存在。
勝てる保証など、どこにもない。
その可能性はどこにもないのだから。
絶対と呼べるものは、どこにも無いが、今、悠介の中に、完全なる死と言うものは、刻まれてしまった。
『皮肉なものだね・・・君達の戦い・・・』
勝利してきたのは、約束された出来事。
「そうか・・・どのみち、未来をいくら予期しようとも、この、運命だけは回避できなかったのね・・・」
「無駄・・・全部・・・」
「無駄だったんだね・・・兄さん・・・やっぱり、僕等のやったことは。」
「そうなる・・・」
葉子、悠矢、悠介が呟く。
陽子が蘇ってから、見てきた沢山の未来の記憶。
その中に確かに、この結末は存在していた。
ゼウスの館で見た、一つの書物。
その内容は、一番最初に人類の書いた聖書だ。
行き過ぎた未来まで書かれた聖書。
「イエス・キリスト・・・いや、ヤハウェ・・・」
『もう、良いだろう・・・私の創り出した二つの世界は、全て、破壊したのだから。』
後は、お前達だけだと、ヤハウェは言う。
『少し・・・話をしよう。』
飲み込み、悠介はただ頷く。
受け入れたヤハウェは、その答えに満足し、笑みを浮かべる。
同時に、世界は変わった。
惑星級の大きさを持つ、その、オリジンは、全ての世界を簡単に破壊することが出来る。
しかし、この世界には、まだ、
『君達は生きている・・・どうしてなんだい?』
それは、一つの答え。
答えは、
「わかっているんだろう?時間制限はあるけど、まだ、俺たちが生きられるのは・・・それに、あれの創造主だし・・・」
『ブレイディオン、エルヴェリオン、ファイザリオン、ドラグリオン・・・』
わかっていることなのだろう。
この神の中では、全ては
『ブレイディオン等は一種の、一時的な生命保護装置でもあるということか・・・』
「・・・」
「いや・・・」
「そうだね・・・」
真っ先に殺さなかった、その理由というのは・・・
「イエスの心か・・・・・・」
イエス・・・
ヤハウェの見た人間は、イエス・キリスト。
『お前の両親が・・・私に、まだ、この者達は殺すべきではないといわせるのか・・・』
ある意味では、もう一人の自分
で、あるからにして、元に戻ったものであると思っていた。
しかし、
『もとより、私が動かしていたのに、自我を持ち始めた。それは、盲執までに人を愛する君や、周りの人間・・・子を持ってしまったが故に、生まれた愛情・・・』
いかなる手法であろうとも、ただ、イエスは変わってしまった。
『好き放題やらせたのは、私のミスといえるだろうな・・・君に接しさせたことは。』
「仕方が無いだろ・・・俺は、生きたかった。最初は、目的も無く、殺されるのを見るのが嫌だから戦った。ただ、生きていくうちに、全ての人の愚かさって奴を知った。だから、絆っていう曖昧な物で今まで、いっしょに生きてきた仲間たちだけは、守って、自分も死のうと思った。」
「仲間の所に黄泉に逝きたかったか・・・」
あらわす、幻影ではない、その姿。
誰もが見たことのあるその姿。
良く、有名な画家の絵とかに描いてあるその姿だ。
イエスの姿を借りて、ヤハウェはそこにいる。
言葉の通りに。
「違う・・・仲間よりも、愛する人を失ったから・・・。」
「愛する人・・・」
「だから、死んで、その人の元へと行こうと思った・・・」
瑠璃は、一度、その言葉を聴いたことがある。
その言葉の意味。
「にいさまの悲しみ・・・」
しかし、その思いは力となって、神に相応しいのごとく。
人間。
悲しみという負の感情の中で、生まれた希望。
「それが、曖昧な形で、にいさまを強くした・・・」
「君は・・・違う?」
ティアナ・ランスター
「どうでしょう。私がどうなのかなんて・・・ただ、瑠璃がいなくなったときは、悲しかった・・・。」
「そうか・・・」
ただ、見ているのは確たる二人の愛といったところか。
そして・・・
「陽子・・・それが、本来の姿・・・か。イザナミ・・・それは母を意味する。本当に、母となったのだな・・・」
「そうね・・・あの子達を間違った道に進ませないために、苦労はしたわ。」
しかし、反乱というものはおきてしまったが、それは、ゼウスが間違いを起こしてしまったから。
「だから・・・わかるだろ?この世界を破壊するということを・・・。」
「わからないわね・・・あんたの壊そうとしているろくでもない世界で、生きていくのも、それは、一つの人間に与えられた試練なのよ。」
ろくでもない世界というのは、良くわかる。
誰もが、そうでなくても、ろくでもない世界という場所で生きてきた。
また、ろくでもない世界を作ろうとでもいうのは、どうかしている人間のやることだ。
「僕のいた世界は優しすぎた・・・人を殺した僕にしてはね。」
唯一、そうだ。
唯一楽園と呼ばれるのが、その世界という場所。
「貴方が壊したけど・・・」
「そうだね・・・唯一、美しい世界といえた・・・だが、人は、何れは、また、全てを破壊する。だから・・・」
しかし、その世界を
「僕は・・・あの世界で心が浄化されていた・・・。」
だから、
「僕は・・・お前が嫌いだ。」
それをわかっているのだ。
神とは言え、嫌いとはっきり、言う。。
優しさに満ち溢れた、あの世界を破壊するという行為は、愚考であるということをだ。
では、その世界にいる
「人間は・・・ウィルスと同じということか・・・」
「そうだ・・・有機生命体などは、ウィルスといえる。」
「勝手に決めるなよ・・・いくら、俺らの手が血で汚れているからってさ。」
血が汚れている。
その自覚というものはある。
殺してきたのだから守らなければならない。
あの世界にやってきたのだから、殺して、自らの仲間を守らなければならない。
人を殺すということに傷ついてもやらなければ滅びてしまうのは、こちらなのだと、仲間なのだと。
そう言い聞かせて
「やってきた行動を・・・俺は、間違いだとは思わない。」
「冷酷だね・・・だから、荒神に選ばれたのか。」
その通りなのかもしれないと、悠介は思う。
この男は、嘘はつかない男なのだろう。
ヤハウェは、神は嘘をつかない。
そのような世間一般常識は、本当のようだ。
悠矢は、それが気に入らない。
どこか、神と認めてしまう自分がいるからだ。
嘘をつく必要も無い訳であるが。
相手にしているのは、神話上の人間ではなく、創世の神。
本当に、自分達を作った存在であり、それを、間違いと認識し、殺そうとした神。
ある意味、世界、そのものであるといえるだろう。、
「ヤハウェ・・・あんたは・・・一度、世界に絶望した・・・それでも、希望を生むために、イエスを生んだ。しかし、それは、あんたの言う・・・」
「そうだね。」
人間。
母マリアの体内で改造を受けた胎児。
それでもなお、愛情はあったはずなのに、容赦なく、一つになった。
などと思いながら、悠矢はヤハウェという神の顔を観て、思う。
本当に気に食わない神だと。
「もう・・・やめよう。」
どうせ・・・
「君達は、死ぬのだから・・・」
「俺は知世と一緒にいたい。。。そんな世界だけで良い。贅沢は言わない。」
本当にその通りだ。
既に・・・
「生命の核たるものは、無いのだから。」
「それを見て・・・反省・・・」
「出来ないよ。人ってのは・・・そういうものよ。悠介・・・」
「解ってるさ・・・」
葉子は、反省できないと、悠介の考えを否定した。
だからといって、
「貴方の考えには・・・賛成できないのよね。あ、早々・・・この考えは、一生変わる気はないから・・・悪しからず。」
葉子は、最後にヤハウェにそう伝えると、
「ティーダ・ランスター・・・君は、どう考えている?」
「俺も、悠介君の考えと同じだ。貴方の世界の破壊を俺は、肯定できない。」
「そうか・・・残念だ。理解者になれると思ったんだが・・・な。」
「あんたの考えじゃ・・・世界は救えない。ティアナと瑠璃ちゃんに、燈也に優しい世界を作ることはできない。壊すだけじゃな。」
「兄さん・・・」
ティーダは、はっきりと言い放った。
だから、どの道
「戦うことしか選択できないってことだよ・・・」
さぁ、戦おうか。
本当の意味での、全世界の命運を賭けてさ。
「ブレイディオォォォォォォォォォォォン!!!!!!!!!!!」
悠介は叫ぶ。
それと同時に、このヤハウェの作り出した世界を破壊した。
悠介の力が、全てブレイディオンと、他の巨神と同調する。
「一つになる・・・」
「そうか・・・兄さん・・・まだ、あれが残っているか・・・」
悠矢は呟く。
あれなら、可能性は捨てきれないと。
「極神合体・・・」
「あの時は、限られた人数だった・・・でも、今、この時なら・・・ただ、足掻くことに夢中な、私らなら・・・あの時以上に、輝くことは出来る・・・!」
葉子が呟くのと同時に、四つの巨神は同時に光の球体となる。
「そうだ・・・」
「この現象・・・」
その四つの球体は一つとなって。
瑠璃とティアナは、その現象に気づく。
「何・・・?皆と一つになるの?」
「これしかない・・・無駄でも、その分、抗わせてもらう。」
「ただ、足掻くだけ・・・それだけで良い・・・」
燈也とアリシアは、それを感じた。
テスタメントとしてではない。
全ての、全ての巨神の中にいる人間達が、それを一つになると言う、同じ感覚を共有する。
そうだ。
間違っちゃいない。
あの神の言いなりになっちゃ
「生きているなら、足掻くことは罪じゃない。」
巨神の中に乗っている悠介を中心に、全ての者達は、同じ考えを持つ。
否定することなんて無い。
ここにいる生き残りの者達は、呼び覚ます。
その一つとなった、対抗できるかもしれない巨神をだ。
おきろ。
もう、戦いは始まっている。
「絶対に、生きてやる・・・!」
「良いのか?」
「ここで倒さないと・・・皆が、本当の意味で死ぬ。」
それを行うわけにはいかない。
破壊されてしまうのならば、
「駆け抜ける・・・!」
「うん。」
新たに生まれし、ブレイディオン。
その姿は、ヤハウェが破壊から何も生み出さない神であれば、ブレイディオンは破壊からまた、世界を作り上げる神といえるだろう。
とはいえ、それは、外見だけであり、現実であれば・・・
その、ブレイディオンは、現在のヤハウェの掌ほどにしかない。
「極神合体・・・!ソル・ブレイディオン・ノヴァ!」
現れし、全ての巨神が一つとなったヤハウェの前では、名ばかりの最強の姿。
過去に、侵略者から守り、全てのものを守ると約束された、最強の巨神。
神殺しの刃をブレイディオンは手に持ち、その邪神を殺すために、ブレイディオンは、この何も無い宇宙を駆け抜ける。
ヤハウェは、片手だけで、ブレイディオンを迎え撃つ。
ヤハウェは巨大だ。
しかし、その無限に等しい宇宙では、小さく見える。
何千とあるその巨体でもだ。
しかし、隠れ様の無い、この宇宙という大地であれば
「逃げても無駄だなんだよ!!!!!」
手に持つのは、神殺し・・・草薙の剣。
「行くよ・・・」
「悠の好きにしな・・・」
悪魔のような翼を展開させて迫るブレイディオンに向かって、オリジンは何もしない。
「斬・・・!」
草薙の剣と、十束剣を合せたことで、生まれる、ブレイディオンの斬撃魔術。
さらに、巨大な刃へと・・・
「片腕だけでも!」
その光の中に突っ込んで行き、もうひとつ、巨大な草薙の剣を創り出し、チェーンソー状の草薙の剣すらも、幾つ物形を持った刃を創り出す。
「悠介!!!!」
「斬る・・・!」
ヤハウェは、襲い掛かる無限に近い刃を防ぐ。
さらに、そのまま、盾を召還し悠介の斬撃を防ぐ。
すばやく、1秒に三十回位、斬りつけたものの全てふせがれる。
さらに、ブレイディオンの形勢はさらに、不利となる。
腕一本でも・・・と、思ったが、その腕事態に、弄ばれるかのように、後ろをとられたのだ。
やはり、無力化。
勢い良く、背後に向かえば、その宇宙空間ではまったく動けない・・・と、言う理屈すら、通じない相手。
オリジンは、巨大な神の腕の掌を展開させる。
それが、ブレイディオンに食らい付き、オリジンの腕は獣のような俊敏さで、その力をもって、ブレイディオンに迫る。
「くっ・・・ウォ・・・!!??」
悠介の動きが鈍い。
先ほどのバラバ=ヤハウェとの闘いで、力は完全に消費してしまっている状態で、戦っている。
満身創痍の状態なのだ。
「オメガ・ソウルディストラクション・・・!」
神の腕に掴まれているのであれば、あえて至近距離でそいつを見回せばいい。
悠介の全力を込めた光が照射される。
「ち・・・」
撃破には至らなかった。
しかし、まずい。
完全に動けなくなった。
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
先ほどの決戦での傷は、完全に癒えていないのだ。
展開されるオリジンの魔法陣。
殺られる!!
「まだ・・・!!」
防ぎ、反撃に出る。
そう思ったときだ。
「スペリオル・フィールド・・・!」
瑠璃が自らの力を使い、それを防ぐ。
これによって、悠介の力が消費されることは無い。
基本的に消費される力は、悠介の力とその魔術の所有者の力。
過去は、搭乗している全ての人間の魔力を均等に消費されることで、その問題を開放してきたが、その状態では、出力は7割程度しか出せない。
今回は、その全ての負担が悠介にかかっているのだ。
本来の出力を出すために。
勝利を物にするために・・・
無限に等しい悠介だから、出来ること。
だが、それを、ヤハウェ・・・
さっきのソウルセイヴァーの闘いで使い果たした状態に近くなっている。
死力を尽くして戦わなければならないこと、そして、悠介のこだわりというものだ。
「にいさまは、私たちの力を使わすぎです・・・自分一人で、抗っているなど、思いこみもいい加減になさい!!」
「瑠璃・・・?」
瑠璃からの激・・・それは、兄を愛しているからこそだろう。
兄と、そして、何より、最愛のティアナ・ランスターと添い遂げたい覚悟がある。
ティアナの子を産み、そして、生きたいと思う。
心配ではないといえば、嘘だ。
生き残れると言う・・・
「わかったよ・・・瑠璃の・・・言う通りにする・・・」
「僕たちがいることもね・・・」
「わたしたちも、抗いたいだけなんだから・・・」
このブレイディオンを動かせるのは、悠介のみだ。
故に、他の者たちは、精いっぱいの抗いを見せる中で、それが、悠介の力となる。
「天照大神陽輝展開・・・」
十束剣を本来の姿とし、奴を迎え撃つ。
神の腕を振り払い、その広大な無の世界の中を悠介は逃走する。
見つけられるのはすぐだろうが、1秒の時間稼ぎになる。
おそらく、悠介には、その少しの時間稼ぎで充分なのだ。
敵を倒すことが出来るのであれば、ジョーカーとしての、全ての神の力をフルに使うしかない。
「絶対に、生きる・・・!!」
それは、自分が今、最も、自分のしたいこと。
「悠介!!」
叫ぶことによって、ネクサスが展開される。
「これも、もっていけ!!」
「あと、これも!!」
クロス・ミラージュ、そして、マキシマムと言う名のプレシア・テスタロッサの創りし、殺しのデバイス。
その二つを融合させることによって、荒神の持つ剣が生まれる。
スサノオの持ちし、より、神聖なる草薙の剣となる。
この場合、デバイスの持ち主である二人には、魔力を使うことによって、同時消費となる。
ダメージは、全て悠介へと。
「あのティアの魔術を応用することくらい・・・」
「持っていきな・・・悠介。」
「あぁ・・・」
受け取った時点で、敵は目の前へと現れる。
時間の稼ぎは終了。
しかし、それと同時に
「「ワルキューレ!!!!!!!!」」
現れるワルキューレの娘たちと同じ数の巨神達。
ブリュンヒルデを含む、9人達のワルキューレ。
「アタック・・・!!」
悠介の掛け声と同時に動き出す。
「動け・・・・・・!!」
いや、それはすぐに消滅した。
「んな!!?」
「ちょっと、ワルキューレが簡単に消滅するなんて・・・!!」
「神だから・・・やっぱり・・・」
最初の一体が消失。
しかし、それで良い。
ヤハウェの腹部の球体から照射される漆黒の球体。
それは、
「まさか・・・・・・」
「ブラックホールのようなもの・・・・・・ね。」
ティアナは、悟る。
その行動、そして、
「あんなもので・・・消滅できるものは・・・・・・」
「僕達を殺す・・・?いや、それでも・・・遊ばれてるのか・・・?」
森羅万象であるのであれば、全ては、通じない。
亜光速レベルで動き出すブラックホールをよけながら、悠介は、ブレイディオンの拳に力を挿入する。
草薙の剣をマウントし・・・
「砕く・・・!!」
球体の部分に、拳を、炸裂させるも、敵を破壊することは出来ない。
ワルキューレを全て破壊し、神の腕で捕らえる。
「はいってくるな・・・」
「悠介!?」
神は、心理的にヴィヴィオに接触しようとしている。
しかし、それは本の一瞬のこと。
うちなるスサノオの防衛本能がそれを防ぎだす。
「なんて事をするの・・・さ・・・?」
息を切らす。
戦わなければ。
そう思ったときだった。
至近距離で、先ほどの、言うなれば、ブラックホールノヴァをその身に、体全体に、食らう。
「っっっっ・・・・・・!」
痛い・・・
痛い・・・
痛い・・・
「痛いな・・・・・・」
それでも、
「大丈夫・・・まだ、足掻ける。」
眠りにつきそうな、力によって、眠りにつきそうな自分を鼓舞するためだけの言葉。
ブレイディオンに、アマテラスとツクヨミが輝きだす。
アマテラスとして、ツクヨミとしての力を得たブレイディオンが、新たな光を手に入れるとき、
「さぁ・・・来い・・・・・・」
現れよ、
「我らが神の子供たちよ・・・!」
ジョーカーたる、悠介が呼び出した時、それを使うのは、多紀理毘売命、市寸島比売命、多岐都比売命、正勝吾勝勝速日天之忍穂耳命、天之菩卑能命、天津日子根命、活津日子根命、熊野久須毘命、阿治志貴高日子根神、いや、数え切れないほどの、八百万のスサノオの子とされる、神々達・・・
あの前世の世界でスサノオが産み落とした、神々。
そのとき、オリジンの肩のパネルのようなものが光りだす。
「そうやってぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!」
放出された漆黒の光を、ブレイディオンの背中にあるアマテラスとツクヨミの光輪で、それを相殺する。
「喰らい尽くす・・・!」
その放出される光は、漆黒の光を消して、逆に、それを食らわせる。
先に出現した神達をオリジンに与えさせる。
「抗う人間を・・・そのような、醜い光で消せると思うな・・・・・・!」
草薙の剣の一振りが、神々を動きに合わさる。
「凄い・・・だが、しかし・・・!」
出せる分の神は出した。
さらに、巨大な魔法陣を発生させ、ティアナのフルクロスを召喚し、フルクロスを背に配置し、巨大なブースターのように変化させ、高機動形態となり、牙突のように、草薙の剣を構え、ブースター部分にたまっていた光の粒子が勢い良く放出され、ブレイディオンは一気に加速した。
そのまま、魔法陣の中に突き抜けるのと同時に悠介は、白銀に輝き、ヤハウェめがけて、突入する。
「一気に!」
「コアのみを貫く気か・・・!?しかし・・・」
ヤハウェの創り出した障壁を無限に近いの神によって破壊。
「しかし・・・所詮は、コピー・・・!!」
「だと思ったか!?」
ティアナの場合は、自らを弾丸としたもの。
悠介の場合は、同じだ。
しかし、絶対的に違うものがある。
それは、弾丸が悠介の斬撃と言うことだ。
悠介は、その刃に、全力をこめる。
それで、全てを終わらせるつもりだ。
コアを狙い、ヤハウェを滅ぼすつもりなのだ。
そのアマテラスとツクヨミの光を帯びた刃は、一気にオリジンに迫る。
「滅・・・・・・!」
悠介の、永遠の終わりを意味するその言葉。
力の構造は単純でありながらも、言葉の意味を持って、悠介のもてる力を使っているがゆえに、その威力は、別次元に通じるまでの穴をあけるほどの威力を持つ。
複合神としてのその力・・・
極限にまで。
「・・・?」
「決まった・・・・・・?」
全てが、黒い灰と化すそのヤハウェの姿。
しかし、それはすぐに一つになる。
「・・・」
「私は、倒せない。人は私が創った。創造主に足掻く姿・・・それは、ある種の可能性だろう。しかし・・・」
「・・・・・・!?」
黄金色に輝く、ヤハウェのその姿。
「せめて、苦しまずに・・・」
それは、
「さらばだ・・・」
「ちっ・・・・・・!!」
悠介は、それをギリギリで、受け止めるが・・・やはり、無意味だ。
「っっっっっっっっ!!!!!!!!!!!」
「壊れてしまえ・・・閉じこもる揺り篭から。」
刃が折れるのと同時に、悠介はギリギリで、受け流すも、上半身一帯にダメージを受けてしまう。
「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!」
全身を思いっきり刃で刺されたようなような、真っ二つになりそうな感覚が襲ってきた。
悲鳴をあげることしか出来ない。
しかし、今戦えるのは、悠介しかしない。
残酷なことに・・・だ。
「まだ・・・僕も、エルヴェリオンを動かす事ができるなら・・・!」
燈也がマキシマムをセットし、
「君は、まだ、死んじゃいけないから・・・」
だから・・・
「知世さんって、言ったね?」
「えぇ・・・」
「彼を、足掻ける状態に・・・出きるかな?それまで、僕が、時間を稼ぐ・・・」
「全ては・・・貴方がたしだい・・・」
「了解だ・・・」
悠介を無理矢理、コクピットから外し、自らがそこに居座る。
だが、いかんせん、ヤハウェの前では、弱い。
だが、それだけで充分だった。
すでに、動いているだけでも奇跡といえるこの状況で、燈也は自らも足掻く事に手を貸すことのできる喜びと、全てを行う事で。
「此処で死ぬのなら・・・・・・!」
全力で、魔法陣を展開し、ヤハウェにそれを向ける。
しかし、それは、徒労に終わった。
それでも、やらなければならないことがある。
「いえ・・・燈也・・・私もいるわ。」
「オネエチャンもね?」
「俺もだ・・・」
アリシア、ティーダ・・・
四人の力だけで・・・
「さぁ・・・消えてもらおう。」
燈也は、目を瞑り全ては神として存在する無限光を・・・放出する。
魔法陣が、レイディーンの元に現れ始める。
レイディーンの胸部の漆黒の球体から、10個のセフィラをエフェソスに向けて召喚された。
それは、燈也の有り余る、神の力の核。
「抗うだけ・・・抗う・・・!!」
「テスタメントとしての、全ての力を使う!!」
「燈也さん!?」
「やるさ・・・倒せないだろうけど・・・!」
燈也は叫ぶ。
己の全ては真実を。
行うのは、二人の究極なる魔術。
迎えよ・・・
ジェネシック・・・
「「アーマゲドン・・・」」
ケテル、コクマー、ビナー、ケセド、ゲブナー、ティファレト、ネツァク、ホド、イェソト、マルクト・・・10のセフィラが、エフェソスを囲うように、動き、展開される。
「アイン」
「ソフ」
「オウル・・・!」
「ゴスペル・・・!!」
過去に降臨された神が、全ての世界をリセットする為に、起こした光のように。
全てを、抹消する為に、時空間を全て、このエフェソスが止まっている時空間を全て無限光が、今、降り注ぐ。
無限光の放つ福音と共に・・・10のセフィラがエフェソスを囲み、無限光の福音が、エフェソスの存在自体を、消していく。
アイン・ソフ・オウル・・・無限光の神となって、初めて出来る・・・エフェソスの、存在を許さないかのように。
一度両手をあわせ、離したときに、両の掌の間から、草薙の剣が、そして、あの時、スサノオに渡された、セフィロトデバイスが出現する。
二つのデバイスが、融合し、マキシマム・セフィロトタイプが此処に、完成し、夥しいほどの、この世界を全て輝かすほどの光が放出される。
「ジェネシック・スペリオル・ゴスペル・・・!!」
二つの福音。
ジェネシック・スペリオルゴスペルと、アイン・ソフ・オウルゴスペル・・・二つの、福音が無の世界に、色をつけるかのように、広がりだし、最後の審判の歌を呼ぶ。
その、存在を許さない。
逆行され、崩壊される、ヤハウェを包んでいた空間の崩壊。
燈也の右腕に、光の球体が、出現する。
其れを、臆する事無く、燈也は握りつぶした。
同時に、ヤハウェが、崩壊した。
「終わり・・・・・・?」
「いや・・・此れで、倒されても・・・」
神は、今、此処に舞い降りる。
輝く永遠の中で、時間と空間の果てに・・・
ヤハウェは、崩壊を迎えた。
様に、見えた。
「やっぱりか・・・」
「アレだけ・・・やったのに・・・」
悠介は、こんなものと戦っていたのか。
それでも、耐えなければ、ならない。
悠介の代わりに・・・
「「マキシマム・・・ジェネシック・・・タイフォォォォオォォォン!!!!!!!」」
強制退去される前に、宇宙を貫く一筋の光、それは、燈也とすずかの全力を込めた一撃。
しかし、
「化け物だ・・・」
撃破は出来ない・・・
刃は、ブレイディオンを傷つけ、左肩を切り落とす。
すでに動こうにも、動けない。
だが、まだ・・・右が残っている。
「もう・・・いいでんです・・・戦うのは、俺だけで・・・!!」
「悠介君、ダメ・・・それは、ダメだよ・・・」
「こういうときは、僕のような人間から、先に逝くべきだから・・・」
「・・・」
「先に逝く・・・」
消えかかる、燈也とアリシア。
もう、肉体そのものが、消えかかっている。
「お父様!?」
「私もすずかの心を利用して、燈也に近づいたものね・・・」
「すずかが俺を愛そうとするたびに姉さんが、いたんだな・・・」
「えぇ・・・やっぱり、燈也は・・・私が愛したいもの。」
「因果応報だよ。瑠璃・・・」
「え・・・?」
「僕が9歳のころ・・・似たようなことをした報いでもある・・・巻き込んで、悪かった・・・」
「私も
「いいえ・・・」
「まだよ・・・!!」
「消えない・・・?」
「どうして・・・?!?」
ブレイディオンに装備されているその翼とオルクスの鎧。
それは、亜種の融合が生んだ副産物。
それゆえに、それらがダメージを受ける時は、オルクスと翼の主がダメージを受けることとなる。
それに絶えている人間はいる。
当事者である陽子と悠矢が、自らの力を削って、それを行っていた。
自分が、どうなろうとも、邪神の翼を広げて、その漆黒に輝く翼から、破壊の光が、降り注ぐ。
「今の悠介が信じられる仲間なのでしょう!?」
「だから、俺は・・・!!」
「それで、戦える訳が・・・!!」
満身創痍
防ぎ様の無い出血。
「君は、今は、やすまなければならない・・・!」
「知世さん、兄さんを・・・!!」
「解ってるわ・・・!!」
「ソルスペリオルノヴァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!!!」
なけなしの力を振り絞って、マキシマム・セフィロトへと再び変形させ、6の魔方陣を召還し、そこから、ジェネシックタイフォーンの閃光が放出される。
ただ、今まで、何もできなかった、この分を。
「此処で、返そう・・・!」
燈也、その技に全てを賭ける。
しかし、うまくはいかない。
全て、
「解ってはいる・・・」
「それでも、抗いたい。」
だから
「まだっ!」
跡形も無く。
ヤハウェの腕が、形態変化を遂げる。
いや、ヤハウェが敬意を表して、変化させたのだ。
全体的に漆黒に創り出す。
禍禍しき、その姿は、誰もが恐怖する。
「だから、どうしたと!!!!」
「瑠璃!?」
父と、母を追い出し、娘が乗り出した。
本の数十秒でしか叩けないのなら、その間に片をつける。
それに動いたのが、瑠璃だ。
今、ここで、殺されるわけには行かない。
なら、ダメージを受けていない自分が、ここで動く。
「まだ・・・・私は!」
贄ノ神月をチェーンソーブレードに変化させ、出来るだけ巨大にし、その刃を回しながら、進化したヤハウェに一気に駆け寄り、コアを、そのチェーンソーで切断しようとするも、それはすぐに折れる。
邪神の牙につかまりながらも、その満身創痍であるブレイディオンを良く動かしている。
余ったパーツで、左足を犠牲にしながらも、
「デッド・ディストラクション・オウル・・・・・・・・・!」
無理やり、ヤハウェにしがみつき、広域殲滅魔法を使用。
だが、
「・・・冗談・・・きついわ・・・」
腹部を、その剣で貫かれていた。
悠介が治るまで繋ぐ。
しかし、
「時間のようね・・・」
強制退去・・・
ジョーカーであるはずだが、それでも、まだ、小さすぎた。
この状態のブレイディオンを完全に操ることが出来るのは悠介。
それ以外に一応でも操ることが出来るのは各巨神のパイロットのみ。
しかし、その時間は完全に生命が消えかける前までに限られている。
「ティア・・・!!繋いで!!!!!!」
「解ってる!!!!!」
瑠璃と共に戦い、それによって、魔力は消費しているものの、何とかなる。
自身の体が消えるくらい、もたせて
「見せる!!!!!!まだ、伝えてないのよ!!!!!!!瑠璃に!!!!!!!」
そして
「もう、失いたくないの!!!!!!!!!」
ネクサス・ノア・ミラージュをツイングラムにして、迎え撃つ。
「フォーススペリオルビースト・・・!!」
四つの巨大な魔法陣が、光の巨神の前に出現する。
ティアナはそこに向かって、レオンをそれぞれの魔法陣に向かって撃ち放つ。
それと同時に、光の翼竜と、光の獅子、光の朱雀、光の玄武が飛び出し、オリジンに向かっていく。
その光の獣とともに、ティアナは天空を駆ける。
「アカシックブレイカー!!!」
ティアナは目の前に、魔法陣を創り出し、一気にその中へと突っ込んだ。
ティアナ・・・いや、それと光の巨神は白銀の炎に、包まれる。
巨大な剣・・・二つをフェニックスの翼のように展開。
その姿は、正に鳳凰の様な姿。
「死んでしまえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!!!!!!!!」
ティアナの絶叫が、宇宙に響き、それと同時にヤハウェを貫こうとする。
「ぐっ!!??」
ヒットはしたが、逆に翼は崩壊し、陽子にダメージが、来る。
「これと同時に・・・今は、距離を取って!!!!!!!」
「いや・・・僕が行く。」
「悠也!?」
「兄さんは、そこで見てろ・・・」
動き出す。
剣聖。
すでに、あの中に、誰がいようとも、ここで・・・終わらせる。
もとより、ドラグリオンが、燈也達より前に選んでいた男だ。
時間稼ぎくらいなら、
「僕だってできる。」
だから
「ごめん・・・アイナ。向こうで・・・」
最初で最後に、神にその刃を向ける。
愛するものを滅ぼした神に・・・
この男は、後悔に駆られる前に、
「生命の呪縛を解き放つ・・・!!」
太刀をその手に持ち、ヤハウェの攻撃を紙一重で防ぐ。
すでに神業と呼べるほどの力。
敵が、勢いをつけたとき、一歩下がり始めた。
「隙を見せたね・・・」
ここぞとばかりに、悠也は、太刀に魔力を挿入し、一気に振り下ろす。
動かずに、敵を倒す。
その剣の遠距離攻撃こそ、
「牙波・・・」
しかし、それで敵を倒せないのはわかっている。
太陽と月の太刀
「終末へ・・・」
だから・・・
「これでいい・・・」
全ての力を使い、
「ここで、僕達の全てを!!!!!」
駆ける。
「悠矢・・・あなたとともに・・・」
ここで、殲滅させる。
悠介の手間は、取らせない。
陽子の力、悠矢の力が合わさり、
「斬ッッッッッ!!!!!」
夥しい宇宙を貫く刃の光となった金色の光線が照射される。
破壊
「威力は本物だろうけど・・・」
本当は、
「こいつで倒すつもりだったよ。」
しかし、
「だめ・・・だったか・・・」
強いとは言え、撃破はできず。
「神か・・・」
あまりの力に、苦称するしか無い。
「強い・・・」
流石に絶望が見える・・・
ティーダにも、アリシアにも。
だが、
「ゆっくりしている暇は無い・・・か?」
気付けば、右肩に激痛が走る。
「そ、そんな!?」
だが、右肩は消滅。
そして、強制退去・・・
「御免・・・」
「うぅん・・・大丈夫・・・って、言いたいけど・・・」
誰も、動きたくても動けない。
ティーダも、アリシアも、何も、出せない。
刻、一刻と迫るヤハウェ。
そのヤハウェが怖いということが解る。
それが、恐い。
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!」
瑠璃が、発狂する・・・
この状態を・・・
折角・・・折角・・・あえたのに。
来るな来るな来るな来るな来るな来るな来るな来るな来るな来るな来るな来るな来るな来るな来るな来るな・・・
誰もが精神は恐怖で満たされ、徐々に震える。
意識の消えた、悠介の前に・・・知世はただ、呟くだけだった。
「終わりか・・・?」
ブレイディオンの中で、月の女神・・・
知世の治癒を受けながら、間に合わなかったのかと、癒される中で、悠介は、足掻くのも此処までかと、諦めた時だった。
悠介の目の回りが、白一色に変わり始める。
亜空間へと・・・
終わったのかと、ただ、もう、訪れた運命を受け入れるための覚悟は出来ていた。
だから、このまま、受け入れようと思ったときだ。
「諦めた。もう・・・」
座り込んでいる。
立てない・・・し
かし、それで、良い。
ただ、諦める。
「何故・・・?」
「ブレイディオン・・・?そっか・・・此処は、まだ・・・あの世じゃないか・・・。」
見える光の意思は、ただ、悠介に問い掛ける。
「何故・・・?生きるのでは・・・?」
「相手は、お前の創造主でもある。ブレイディオン・・・その、最終形態でもある、この形態でも、敗北に近い状態になった。」
だから、
「この敗北は・・・もう・・・意味のない物となった。だから、良い。」
だから・・
・「もう・・・やめた・・・人間は・・・いや、神人でも、もう、勝てない。」
所詮は、神に創られた、存在であると、認識した結果である。
完全なる、敗北は此処で・・・
神には勝てない。
御伽噺でも、神話上の神でもなく、紛れも無く、その世界、神話、人間を作り出した創造主なのだから。
もう、勝機は無い。
全ては、神の掌の中に・・・
悠介にも、全ての人間にも、それはわかっていた。
相手にして、その異常な戦闘力を改めて、その力量を知る。
勝てる訳が、無いと。
まだ、腕一つも切り落としていない。
「殺せない。創造主は・・・」
スサノオとしての、全ての力を出したとしても、自らの神人としての全ての力を出したとしても、勝利することは出来なかった。
「まだ・・・手はあるかもしれないのに?」
「どこに?」
ある種、出すべきものは、全て出した。
そして、世界は、また、一つに戻るだけ。
もう、後は、何も残らない。
また、宇宙すら、何も存在していない世界に戻るだけ・・・
「まだ・・・終わってないよ・・・?」
「もう、終わらせてほしい。」
「いや、終わらせよう。」
「神は怒る・・・人は、勝手すぎた・・・」
「それでも、僕達は・・・生きたい・・・?」
「死ぬ前から気付いてたんだよ・・・愚かなことだって。」
それを、解っているから、選ばれた。
解っているからこそ・・・彼等は・・・自分達で、イエスの導きと共に、優しい世界を作ろうとしていた。
「犠牲になった人たちのことを胸に刻み・・・」
新しい世界を、作ろうとしたわけか。
殺された人々は、
「愚かで、人の命をなんとも思わない、今の神より、悪魔より恐ろしい存在かもしれないのに・・・何故、思った・・・」
「元は・・・同じ人だから・・・」
だから・・・
人は、優しくなれると。
その犠牲の上で、優しい世界を作ると誓った矢先の出来事だった。
破壊・・・
「まだ・・・終わってない・・・私たちのために・・・」
「イエス?」
ブレイディオンの中に、現れるのはイエスの声・・・
死んだはずの存在が、そこにいた。
「消えた中に・・・それは、いたから・・・」
「消えた中?」
「今の私達は、ヤハウェの中で一つになった状態・・・」
「そして、ブレイディオンを通して、貴方に中継している。」
消えて行った者たちの、声が流れ始める。
「貴方は、まだ、終わってはいない。」
「ヤハウェの中で、全てを見た。」
何を見たと言うのか。
「何故、ヤハウェの中にいる私ガ・・・此れを行っているのか・・・」
リンディ・ハラオウン・・・
「ヤハウェの中にいる、イエス・キリスト達が反乱をおこしているから・・・」
高町桃子・・・
「そして、伝えてほしいと言われている・・・」
プレシア・テスタロッサ・・・
「ブレイディオン、エルヴェリオン、ファイザリオン、ドラグリオンは・・・」
エリス・ハラオウン・・・
「ヤハウェのアンチシステム・・・」
セレス・ハラオウン・・・
「貴方が、最終形態だと思っている、その形態は、仮初・・・」
イクス・テスタロッサ・・・
「目覚めるべきは、真の姿だ・・・」
クロノ・ハラオウン・・・
「身勝手な人によって、また、そうなった時・・・現れるもの・・・」
コロナ・ティミル・・・
「真の姿!?」
「そんなもの、存在しない・・・!!」
あまりに、危険だったから。
彼等は、人を愛した。
人を愛した結果、ヤハウェは蘇ると確信した・・・
「あったとしても、勝てる保証は・・・!!」
無いかもしれない
しかも、言うには勝率というものが跳ね上がる。
かつて愛した人間たちのために残した、真の姿。
良心とでも言うべきか。
ブレイディオン達の真の姿は・・・ヤハウェの映し鏡・・・ヤハウェの心と逆のものでもある。
今、近い、このブレイディオンの状態から、更なる状態へと
「貴方が・・・導かなければならない・・・」
憐・ヴィオラ・・・
「俺たちは、魂だけだから・・・」
クロノ・ハーヴェイ・・・
でも、もう・・・
「勝手なことであるとは解っている・・・しかし、戦ってほしい・・・」
「私達の分まで・・・・・・」
嘆願
「もう一度、イエス様が残してくれた皆で、優しい世界を作るために・・・」
「私達の代わりに新しい世界を創って・・・」
「わかったよ・・・やればいいんだろ!!あんたたちのためじゃない・・・仲間と、知世のためだけだ!!」
口でそう言うものの、怯え腰になっている。
一度、折れた心は、そう、すぐに再生する訳が無い。
犠牲の上で、新たに成り立つ世界。
それもありだと思っている。
それを創るのなら優しくなるのなら、協力したい。
だが、それでも、神に対しての恐怖が、悠介の全員を蛇のように、いや、霧が覆いこむかのように、囲っている。
諦めて・・・全てを終わりに・・・したいと思っているのに、一つの欲望が渦を巻く。
「全てを・・・受け入れることに・・・したのに・・・」
「怖い・・・?怖いよね・・・」
「怖いよ・・・悠介・・・」
「知世・・・?」
「貴方といっしょなら・・・死んでも良いって、思ってるのに・・・」
「俺だって・・・そうだ・・・」
だけど、
「今も、こうして・・・死にたいって思ってるのに・・・」
諦めたと思ったのに・・・
どうして・・・
「死にたいと思うほど、生きたいって・・・思う?!あんな、化物に、神に勝てる訳がないというのに!!」
悠介は、叫ぶ。
ただ、叫ぶ。
何に、関しても、諦めているのに、ただ、生きたいと思う感情だけが・・・
「ならば、願えばいい。生きたいと・・・」
「願った所で、何になるんだよ・・・!!願って、願っただけで、生きられれば・・・俺は、とっくに・・・とっくに・・・ブレイディオン!!俺は、行きたい!!でも、人は、人は、生きたいと願っても、死ぬ前には、死ぬんだよ!!願いを言っても、敵わないんだよ!!」
違う。
「正義兄さんや、皆と、違う・・・!!俺は、強がってるだけで、力があっても、臆病者で!!違うんだ・・・!!」
かつての、仲間たちの中の名前を呼びながら・・・
「それでも・・・!!約束しよう・・・!!生きると言う願いを・・・だから、願うのだ・・・!!」
「無理だ・・・」
「生きるのだろう・・・?」
「無理なんだよ・・・」
「生きろ!!」
「悠介・・・」
「生きて・・・・・・!!」
「俺は、もう・・・無理だ・・・!!」
「諦めるな・・・・・・!!!」
「っ・・・?」
目の前にいるのは、かつての仲間達だった。
そこにいた。
皆、死んだもの達だった。あの戦いの中で、皆、死んだ。
「悠・・・!!」
魂となって、語りかける存在。
「皆・・・?」
「どうして、諦めるの・・・?」
「お前らしいけど・・・死ぬんだったら、お前一人で死ねよ。知世さんを巻き込むな。馬鹿。」
「んなっ・・・!!」
何のために、
「自分の命を投げ捨ててまで、お前を生き返らせたか、考えろっての。」
「悠介は、馬鹿だから・・・」
「誰が、馬鹿だよ・・・!!」
「やっと、立てた。」
「え・・・?」
「しっかりと・・・」
「正義・・・兄さん・・・?」
「立ってから、考えろよ。」
「大丈夫だよ。死んだら、会おうぜ?またさ。」
でも、
「此処で、諦めて死んで、あの世に来るのは、絶対にゆるさね。」
そんな・・・
「何のために、お前に・・・ブレイディオンを託したのかも、意味がなくなるしな。」
だから、
「また、全力で戦ってこい。」
「死ぬのに?」
「だから・・・昔から、そうだったな。諦めやがって。」
「あんたは、ヒーローのように・・・」
「ばーか。神人はヒーローじゃねーの。」
何のために・・・
「あのお嬢ちゃん達が、イエスが、助言を与えたのか。解ってるだろ?」
「でも・・・」
「ヤハウェを殺せば、生命の核はまた、ヤハウェ自身が取り込まれ・・・世界を存続させて、一つの世界にお前達は生き残る事ができる。」
「でも・・・」
「でもじゃない!お前は、力が強い!!大丈夫。仲間、いるんだろ?一人じゃないんだろ?諦めるのは、一人になった時でいいんだよ」
「正義さん・・・」
「ほら・・・悠介は馬鹿だし・・・」
「だからっ・・・!!」
「立てた・・・まだ、生きてる。そして、生きることを望め。」
「大丈夫だよ。」
仲間がいる。
「とにかく、行け!」
「出来ますかね・・・?」
「できる・・・だろ?たぶんな。」
「・・・」
だから、
「もう一度、全力で戦って、死んだら、帰ってこい!!そのときだけ、迎えに来てやる・・・!!」
それに、
「お前が諦めから、立ち直った時は・・・誰よりも、強い。」
「そんな・・・」
「はぁ・・・昔は、直情馬鹿だったのに、一度、生き返ってから、無駄に考えて・・・今は、直情馬鹿になって、生きると願えばいいんだよ・・・!!」
だから・・・
「生きると願って、戦え!!悠介!!」
「は・・・」
「此れだけ、言ってもダメか?!」
「相変わらず・・・強引だった・・・」
「当然だ。何のために、お前を送り出したか・・・」
「でも・・・」
「大丈夫・・・みたいですから・・・」
笑えるなら、
「余裕・・・ありますよね。」
「あぁ。」
「もう一度・・・やってみます。」
「ん・・・ずっと、見といてやる。」
「はい・・・」
「悠介。希望は、お前と仲間と、ブレイディオン達と、俺たちの中にある。」
正義が、悠介の背中を押す。
触れられて、何故だか、その気持ちに余裕が出る。
失いかけていた、生きたいと願う希望が、また、蘇った。
希望・・・
生きると願え・・・
「諦めるな・・・」
だから、
「逝ってこい・・・・・・!」
死
「行ってきます・・・なんて、言うと思ったのかよ!!ふざけんなよ!!いまさら、俺に偉そうに説教たれて!!ふざけんな!!いまさら、俺に説教すんなよ!!いまさら、助けてさ!!消えろ・・・!!俺の前から消えろ!!」
かつての仲間の否定。
悠介は仲間の魂をかき消す。
「あんたが仕掛けた・・・この世界は・・・」
「おや・・・しかし、イエスは確かに驚いたが・・・もう、私の中だ。」
「何でこんなことをした?!」
「暖かさの中で殺そうと思った。一つの慈悲だ。」
「一つの・・・」
「しかし、否定しようとしたところで、あれだね。本心は生きたいんだね。」
「ふざけた台詞回し・・・」
囚われの神は何も出来ない。
ただ、何かがあるわけではない。
破壊神は真なる神の前で何も出来ない。
真なる神は破壊することなど出来ない。
「神・・・違う・・・」
「我はスサノオ?」
かつてのスサノオ。
そして、破壊。
迎えたものはツクヨミ。
アマテラスの存在を許さずに。
そして・・・
そして・・・
そして・・・
「知世・・・」
手を差し伸ばせば掴むのは神の演出ではなく悠介が求めた結果。
あぁ・・・
知世・・・
我の愛する女よ。
真なる神の演出を振り払い愛する者を呼び寄せる。
父なる神はなぜか見ているだけだった。
余裕というものがあるのか。
だから、見過ごした。
だから、また・・・
現実へと
「いや・・・」
恐怖におびえ、
「悠介・・・」
全てに怯え
「お願い・・・」
全てを
「いえ、私を・・・」
さぁ
「助けて・・・」
全く、
「悠介は悠介のままでいいの。」
そっと、包み込むように抱きしめながら。
「悠介は悠介のまま・・・」
「たぶん・・・大丈夫。」
動かしたのは単純なこと。
愛する人への思い
失われていない、ブレイディオンの腕は軽く、敵の攻撃をいなした。
「望め・・・大丈夫。ただ、単純に愛する人と生きたいと願いながら、生きろ・・・!うん・・・まだ、望める・・・」
「遅いよ・・・」
「御免・・・」
知世は悠介を強く抱きしめて、そのまま頭をゆっくりなでる。
ゆっくりと。
「目が違う・・・」
「ただ、願うだけ・・・余計な事は考えずに、馬鹿になるくらい、生きろ。だって・・・」
「馬鹿になって、生きることを望め・・・か・・・俺が俺のままでって・・・そういうことで、良いんだよね。」
「うん・・・悠・・・戦える?悠介・・・」
「最後に・・・やってみる。」
ヤハウェ、その意味から、ある種、抗う事が愚かでも・・・・
「抗いたい・・・いや、生きたい!!!
無駄に考えるな・・・!
悠介の願いは、それを、ブレイディオンに与える。
「最後だ!!!!!!!」
「やらせは・・・!!!!!!!」
「生きる・・・!!大好きな人と・・・!!」
ヤハウェの、たくさんの人達を破壊した魔術の魔方陣がブレイディオンを覆う。
さらに、貫かれる。
が、効きはしない。
その衝撃破は、純粋な願いを力に変えたブレイディオンを貫けない。
「生きたい!!生きることを、貫きたい!!」
ブレイディオンを中心に発光する光の柱
変われ。
そして、生きるために、強くなれ。
倒せ。
生きることを邪魔する、あいつを。
純粋に願いを叶える、その者の名こそ、本来の姿なり。
恐れるな。
生きることを・・・
今全てが一つとなって生きることが純粋な願いが力となって、誕生する最強の巨神。
「何も考えずに生きることを望む・・・か・・・」
「今まで、したことも、殺したことすら忘れて・・・純粋に生きることを・・・」
「私は、もう、ただ・・・生きる・・・」
「ティアと一緒に、愛する人と、私は生きたい・・・」
「お母さんや、フェイト、なのはの分まで・・・」
「瑠璃と一緒に・・・生きたい。」
「生きる・・・悠介と一緒に・・・」
「絶対に・・・知世と、仲間と一緒に俺達が生き残る・・・!」
悠介が最後に生きる希望を呟いた時、全ての物の、願いが一つになる時、究極の巨神が生まれる。
「パラディーゾ・オメガ・ラグナディオン!」
それは、究極にして、αであり、Ωである。
神の集まる場所として、世界が他者によって終焉を迎えられる時に現れる。
究極の巨神・・・
搭乗者たちの願いと完全なる融合をして、その強さは、正に、願いと言うαから始り、究極であるΩの象徴といえるだろう。
「まさか・・・!!!」
「そうだ・・・四体の巨神・・・草薙の剣・・・」
「私と悠介、全ての願いの力・・・私たちの力が一つになる時!!!!!」
「生まれる終焉の巨神!!!!!!!!!!」
それが、
「パラディーゾ・オメガ・ラグナディオンだ!!!!!!!!!」
「ふざけるな!!私の希望を、私の計画を、そんなもので終わらせるつもりか!!!!」
「ここで、終わらせるつもりだ!」
光の翼は、その宇宙を覆うほどに、美しい広がりを見せる。
両腕の手の甲から、生まれる剣。
それを、進化した、ヤハウェを殺すために。
「エンド・ゴッドヘイト・・・バプティスム!」
ヤハウェの放つ、崩壊光。
これをもってすれば
「かつての私・・・それは!」
「それが・・・どうした。今、やっと解ったんだ・・・破壊して、そのままにするより・・・破壊されても・・・好きな人と生きたいって・・・!!」
ゆっくりと、動き出す。
その巨神、正に神のごとく。
「お前は・・・ただ、破壊だけを望んだ・・・生きる者達の願いを踏み弄って・・・それが、お前の神の罪だ。」
「それの、なにが、罪だと言うのか・・・?人は・・・醜い。」
「確かに、そうかもしれない・・・ただ、あそこまで人間は減って、やっと、殺し合い、軽蔑しあう醜さに気付いたんだ・・・イエスの生かした人間達を殺す必要は無かった筈だ・・・!放っておいて、良かったんだよ!!」
人は・・・
「並行世界から、連れ出された人間達は、ブレイディオンとイエスを通して、俺に教えてくれたんだ。その、行為の愚かさに・・・だから、犠牲の上で優しい世界を作ろうとしたのに・・・・・・!!あんたは!!代わりに、優しい世界を創る・・・」
「それでもだ!!」
「二度と、あのような、大虐殺が起きないように・・・あそこに選ばれた人たちは手を取り合うことを選んだのに!!」
「それでも、人はぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」
「残酷って、言えるのは解ってるさ!!!あんな世界を見せつけられたらな!!」
ヤハウェはその腕を展開するものの、触れたとたんに、腕は粒子となって消滅する。
全てを無効化にする力。
それでも、虚構粒子を取り込んで、一つになる力。
すぐさま、再生される。
ラグナディオンの大きさは、ヤハウェと同等。
ヤハウェに合わせて大きさも変わるだろう。
ヤハウェと対等にある。
抗うと、生きると言う願いと、そして、悠介たちの願いが、具現化された状態で、そこに存在している・・・ヤハウェの写し鏡とも言われる、その存在。
「簡単に滅ばない・・・!」
「人の願いを得た!」
「この、ラグナディオンは・・・!!」
二つの刀、天叢雲剣と天羽々斬が、全ての力と純粋な願いと共に融合する。
その刃、真に宇宙全てを切り裂くほどの巨大也
「破邪神天殺・・・!」
「そのような物で・・・!!!!」
金色に輝く、その巨大な刀・・・
さぁ、全てを終わらせろ。
「まだ・・・!!」
振り払う。
純粋に・・・
ルーン文字で描かれた、一つの刃を、ヤハウェは展開させ、破邪神天殺と対抗するために、それを振りかざした。
今の、その、ラグナディオンの力を誰よりも、ヤハウェが知っている。
それこそ、かつての、天使を創った時に自らが生み出したもう一人の自分。
力も、何もかもが自分と同じであるがゆえに、一度、封印した存在。
天使は言わば、自分と同一人物といってもいい存在である。
そのオリジナルこそが、この目の前にいるラグナディオン・・・
それは、数人の力と純粋な願いを力に変えるという能力を持ち合わせて、今、ヤハウェの目の前に対立している。
この、広大な何も無い、宇宙すらない空間の中で戦う。
いや、空間と呼べるのか、曖昧なそれの中に。
ただ、歪な物が・・・
「俺たちだけでも・・・!!」
運命を砕く。
絶対に、死ぬと言う運命を。
「生命のリミットが・・・消えた・・・?」
「そうか・・・僕たちの生きたいと言う願いが、確かに、生命核なしで生きられる・・・それが、具現化された。」
神と同等であるが故に願いを叶える機械
ヤハウェの映し鏡・・・
そう、呼ばれている理由。
キッと目が輝いた時、未来・・・
悠介たちの未来を切り開くために、飛翔するための翼が具現化され、ラグナディオンが、顔を上げた瞬間に、ラグナディオンの瞳から光線が放たれる。
その光は、この虚空の空間を切り開く一閃にも感じられるほどの威力だった。
そして、新たに、宇宙を創世させるほどの、力。
一瞬で、ヤハウェが姿を消し、その後ろに現れた時、ヤハウェの腹部が貫通している事に気付く。
「なるほど・・・しかし・・・」
「あんたを、この剣で・・・ぶった切らなきゃ・・・意味のないことくらい、解ってる・・・!!」
その合図と共に、ラグナディオンとヤハウェはは超光速に達しUFOのような物理法則上はありえない動きを取りながら、ぶつかり合った。
何も無い空間で、神であるからか、その光の筋を創り出しながら、一つ一つ、何かが、出来上がり始めていった。
超光速と言う枠さえも突き破り、更なる速さの壁をも超え、ぶつかり、そして、傷つく。
しかし、それでも、正面で両の手を重ねあわせる。
そして、ゆっくり、開くのと同時に強大な力が生まれ始めた。
巨大なエネルギーの創世と、それと同時に、ラグナディオンの胸部の中心にある神玉が反応し、蒼世の光を生み出しながら、前へ・・・前へと、力強く、そして、速く放出する。
それを防ぐ事が、間に合わないと踏んだ、ヤハウェは天使を生み出し、デコイとして、それを活用しながら、かすかに、恐れていた。
ラグナディオンを・・・
「まだ・・・!!」
あらゆる、全ての世界法則など、無視して動き出す、この二体の神はただ、己の存続を賭けて、戦う。そこから、新たに、世界を創り出している事も関わらず。
いや、一度、作り出した世界が、再生していたのだ。紀元前から、おぞましい時間の速さで、新たに、世界は、創り出され、そして、壊される。
神の戦いによって・・・
「うぉぉぉぉおぉぉぉおぉぉ!!!!!!!!!!!!」
刃は、お互いを切り裂き、全てが無視され、ただ、傷つく。
そこに、単なる技など、意味は無い。
この場合は、普通の人間である場合は、斬る事以上に最大の攻撃を持つ技など、存在しないのだ。
こういう、斬り合いは・・・
その、斬る瞬間の刹那に、技を出せばある種の、勝利は喫するが。
ヤハウェが、速い。
一瞬の判断で、悠介の心臓の鼓動は、敗北を喫するのかと考えた瞬間に、次の手を打ち、位賭けたのと同時に、ヤハウェの刃を砕いた。
さらに、ヤハウェはフィニッシュのためのコクピット目掛けてブローを叩き込もうとしたが、至近距離で、ラグナディオンは眼球から光を撃ち放った。
さらに、両腕にエネルギーをためて、瞬時に撃ち放つと同時に、ヤハウェの顔半分は、消滅する。
さらに、胸部は打ち付けられ、全体に、再度創り出され、崩壊しかける世界に、強大な衝撃を与えるのと同時に、世界が消滅する。
翼は、その、強大な刃に姿を変えて・・・
一つの刃と合体し、さらに、強化された二刀の刃が生み出された。
「桜花爛漫・・・」
悠介の技と言う技を全て詰め込んだ、一つの技が全てに注ぎ込まれる。
発せられていない技という技の斬激が繰り返される
「鬼!!」
破壊
「神!!」
破壊
「無!!」
破壊
「冥!!」
破壊
「零!!」
破壊
「破!!」
破壊
「斬!!」
破壊・・・
鬼神無冥零破斬・・・
そして、最後に、
「無限斬・・・!!!!!」
破壊と創造が繰り返される。
世界は創られ、破壊される。
これを、何度、繰り返したことだろう。
「強さか・・・此れが。」
最後の無限斬を、喰らいそのまま、消滅するヤハウェ・・・
そして、今までのダメージが、今になって、ラグナディオンに全て、廻って来る。
消滅するのを見届けた瞬間に、体全体が軋む音がし、顔を包んでいたマスクが割れ、ラグナディオンの素顔が露になった。
全ての身体は傷ついているものの、まだ、五体満足であるが故に、生きられる。
しかし、悠介の体が傷つき、体のありとあらゆる部分から鮮血が吹き出た。
「悠・・・!!」
「大丈夫・・・まだ・・・」
しかし、動く事は、辛うじてできる。
それに、
「奴は・・・まだ・・・」
「馬鹿な・・・」
「いや、事実だよ・・・燈也さん・・・」
それで、消滅する筈だった。
しかし、
「流石は・・・もう一人の私よ・・・ラグナディオン・・・そして、それを意のままに操る、浦島悠介・・・」
「まさか・・・」
しかし、ヤハウェもボロボロの状態だった。
それでも、ヤハウェは、
「強さか・・・私自身が、生きたいと願う。」
そして、
「私が・・・蘇る。」
より、強く。
より、力強く、ある種の神というイメージからより、神秘さから重装甲の無骨さを感じさせる、ヤハウェが爆誕した。
「ヤハウェ・・・!!!」
「ラグナディオン・・・」
マッシブさから、来る一発、一発の拳から放たれる、超激破が動けないラグナディオンの体を破壊していく。
「此処までか・・・!?」
重装甲であるが故に、しかも、超光速の拳がラグナディオンに休ませる暇を与えない。
しかし、それでも、
「ウォォォォオォォォオォォォォオ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
荒鬼神咆哮・・・悠介の咆哮が、送られる超光速の拳を全て、消滅させて、まだ、戦えると・・・叫ぶ。
「ウォォォォオォォオォォォオォ!!!!!!!!!!」
マッシブなヤハウェは、追加装甲のような物から姿を変化させ始めた。
一瞬のうちに、闘士のような姿から、また、神秘という言葉が相応しい外見となり、悠介は刃を振るいながら、敵を殺そうと再び動き出そうとしたが、目の前にいる、ヤハウェは斬った。
しかし、そこに、ヤハウェはいない。
それどころか、ヤハウェは増殖し始めていた。
「ウォォォォォォォォォォォ!!!!!!!!!!!」
二本の刃の柄を繋げ、上空で超光速に回し斬激の刃がヤハウェの全てを切り壊した時、
「がっっっっっ!!!!!!」
何かにつかまれた感覚。
ふと、視線を向けた先には
「ヤハウェ・・・!!」
異常に巨大なヤハウェがラグナディオンを掴み、自らの中に取り入れようとした。
ヤハウェに握られるたびに、ヤハウェに吸収されていく感覚を覚える。
此処で、終わりか?
いや、
「死にたくない・・・!!」
ヤハウェに捕らえられ、ヤハウェの体の中に入り全ての絶望を、人の醜さを再び、その身に受け始めた。
入り込んでくる、人、人、人の黒いもの・・・
異様なり。
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」
ヤハウェの見せる、悠介への地獄。
地獄が、此処に、存在している。
自分の中に人が入り、人の醜いヴィジョンを映し、そして、発狂させる。
何度も何度も、人の黒色部分、最も、邪悪な部分を・・・数ある邪悪な部分を全て、植え付けられる。
精神が、崩壊しそうになる中で、何とか・・・
自我を保とうとする。
自我を・・・
崩れる事無く、自我を。
口から、直接、黒い液体をぶち込まれるように・・・
自らの皮膚が醜く、黒く歪み、そして、自由が聞かなくなる。
阿鼻叫喚、一種の地獄と見てもいいだろう。
精神が脆い悠介には、これ以上にきつい地獄は存在しない。
体の中に、徐々に、人の黒いものが入り込み、悠介にヴィジョンを見せる。
人の犯してきた、過ち、人の醜さ、そして、人の最も、邪悪な部分。
心が、汚れていく。
「はははは・・・」
死ね・・・死ね・・・死ね・・・死ね・・・人間の邪悪さが悠介の頭の中で渦を巻き、破裂しそうになる。
心が、怪我されていく。
悠介の心が蝕まれる。
その世界で、悠介は嘔吐しながら、眼球を見開き、異様な頭痛に、心臓麻痺に陥りそうなほどの衝撃が来る。
蝕まれるな。しかし、悠介の言葉とは裏腹に、望まぬ形で、全てが侵食される。しね・・・
しね・・・
しね・・・
黒い何かに、そう、言われる。
侵食されながら、黒くなった、自分の体に、侵食されて、そう、言われる。
何も出来ない。
完全に、自分の空間は乗っ取られている。
スサノオ形態にすら、なることも出来ずに、人の黒さを、その身に押し付けられ、侵食され、そして、精神を欠き殺すという地獄・・・
その、地獄の中でも、まだ、生気は失っていなかった。
超高層ビルから、何度も、落とされたかのような痛みが精神を襲うというのに、まだ、生きる。
それでも、まだ、死なない、死ねないと、悪あがきをする。
まだ・・・
まだだと、悠介の生きたいと言う願いは生き続ける。
辛うじて、言う事の聞かない手を伸ばした先には、何も無い。
誰もいない。
それでも、求める。
人を・・・
大事な、愛する人を。
手に纏わりつく、黒いものを、体全身が覆おうと仕様とも、それでも、眼球だけは、大切な人を求める。
その姿は、痛々しく重いながらも、それでも、希望だけを、願いを見据えている。
「知世・・・知世・・・知世・・・!!!!!!!!」
呼ぶが、人はでてこない。
神の慈悲たる演出の終わり。
この空間の中で、悠介を支えているのは、人という枠を越えた、仲間という存在の絆が、あるだろう。
それにつけ込み、ヤハウェは仲間が自分を殺すヴィジョンを送り出した。
燈也に、アルフに、悠矢に、陽子に、
「やめろぉぉおぉぉぉぉ!!!!!!」
ティアナに、瑠璃に殺される。
そして、目の前にいるのは、
「知世・・・!?」
お前まで、俺を殺すのか。
歪み、悠介だったものは、鬼となり、周りにいる仲間を殺した。かつての仲間を殺す。
砕く。
そして、食う。
鬼と化す。
既に、人としての理性を崩す。
全てを殺し、喰らいつくし、殺す・・・
殺す・・・
殺す・・・
かつて、愛したものでさえ、殺した。
なぜ、望んでいるのか。
悠介が、その愛するものを手にかけた瞬間、一瞬、動きが止まった。
何を、している。
腕を止め、貫いた愛する人の体を見る。
「ウォォォォオォォオォォォオォォオォォ!!!!!!!!!!!!!!!」
哀しみの雄叫びからか、鬼は咆哮を上げ、全てを破壊する。
何故、このようなことをした。
誰が・・・誰が・・・何故・・・殺した瞬間、全てが、元に戻る。
黒かった皮膚も、元の人間のものに戻り、完全な、人間の姿に戻ってしまう。
そして、死んだ知世を見て、ただ、笑うしかなかった。
何を、しているのだと。
涙が流れる。
絶望・・・与えられた、絶望が、悠介を自分の殻へと追い込んでいく。
もう、嫌だ。
どうして・・・
ここまで・・・
絶望。
目の前にあるのは、絶望だ。
絶望に染まり、
「そんな・・・そんな・・・そんな・・・」
ヤハウェの中に、ヤハウェに取り込まれようとした瞬間、知世の体から金色の魂のようなものが出現し、悠介に触れた。
「っ・・・!?」
「大丈夫・・・まだ・・・」
愛しているから。
生きている。
「幻影だもの。」
キス・・・
知世が悠介に口付けを交わした瞬間、ラグナディオンのコクピットに戻る。
「・・・・・・・・・!?」
「愛の力の前では・・・ね?」
「あぁ・・・・・・」
そこが、どこか、確認した。
完全に、取り込まれてはいない。
しかし、知世と悠介以外の周りの人間は、悠介と同じ地獄を見ていた。
「生きてる・・・」
「まだ、完全に侵食はされていないわ・・・」
「うん・・・」
まだ・・・
「此処から、出る・・・」
違和感のようなものに気づく。
必要以上に、自分に甘えているからだ。
ふるえている。
今まで以上に、恐怖を感じているようにも見える。
自分以上に、何かを見た。
ある程度の力を出せば、忘れることができる。
戻ってくれば・・・
しかし、悠介は、未だに知世を求めているように震えている
「悠・・・?」
「大丈夫・・・」
「大丈夫じゃないよ・・・悠・・・」
まだ、囚われている仲間たちの顔を見れば、落ち着くが、それ以上に、視界から自分が消えることで、恐怖を感じ取る。
体の震えが止まらない。
知世はただ、優しく、悠を抱きしめることしかできなかった。
何を言えば、良いのかわからない状態。
見てきた地獄は、自分のみたものより、恐ろしかったのか。
しかし、このままだと・・・
本当に・・・
自滅する。
自滅してしまう。
「どうすればいい?私は、悠に対して、なにが出来るの?」
「後ろから・・・後ろ・・・から・・・抱きしめていれば・・・良い・・・」
「それで良いのね?」
「うん・・・」
「私が、ずっと、あなたを抱きしめているわ・・・」
「僕たちも、いる・・・・・・」
「大丈夫よ・・・・・・」
「あなたたち・・・・・・」
地獄から、解放された。
いや、
「解放してくれたわ・・・・・・悠介の・・・・・・」
「おにいさまの、昔の仲間が・・・・・・」
「正義さん達・・・・・・が・・・か・・・・・・」
嘘だ。
演出だ・・・
敵など関係無い。
人よりも神人
そう思いながら、ただ、求めていたのは愛する人と仲間
ただ、求めているのは愛する者と・・・
「悠介くん・・・?」
燈也が、その異変に気づく。
精神面が、歪んで、いや、かなり、乱れている悠介がそこにいる。
「乱れているの・・・この子は・・・」
身体全体が、全てを、震えが悠介自身を拘束する。
辺りが、血のようにどす黒い空間・・・
「動けないのか・・・・・・?」
しかし、責めることなど、できない。
「大丈夫・・・・・・です・・・・・・」
地獄から、解放はされた。
しかし、それは、後遺症として、未だに悠介を蝕んでいる。
「後、少しだけ・・・時間を・・・」
「うん・・・」
「知世・・・」
「なぁに?」
「絶対に・・・離れないで・・・」
「うん・・・」
共有できる。
安らぎ・・・
今は、ただ、愛する人に抱かれるままに、全てを忘れよ。
「やれるの・・・?悠介・・・」
「あぁ・・・アルフ・・・出来る・・・今は・・・」
ただ、やれると、暗示をかけて、今、せめて、愛するものに抱かれる事が、今、一番落ち着ける場所。
そこで、ゆっくりと、自分に暗示をかけることができると・・・
「ずっといて・・・」
「うん・・・」
「いないと・・・怖いんだ・・・」
「大丈夫だ・・・」
自分に、そっと言い聞かせるだけで良い。
一種の、無の境地まで、自分を追い詰め、今、此処に・・・
「行く・・・!!」
巨大な破邪神天殺を振るうが、上手く、振れない。振るのが怖くなっているのだ。
此れでも、たりないというのかと、叫ぶかのように、絶望に陥っていた。
「ダメ・・・だったのか・・・?」
「受けた絶望の塊が違いすぎる・・・・・・」
「たりないのか・・・?」
そう・・・
「足りないな。浦島悠介・・・」
「ヤハウェ・・・!?」
声だけが、聞こえる。
与えたのは、
「絶対的な恐怖だ。勝ては、しないよ。」
超えることも・・・
ヤハウェと人間の恐怖に取り付かれた悠介には為す術も無い。
そして
「消えるといい・・・もう、終わりだ・・・お前達で・・・」
全て、消した。
光の巨人も何もかも。
「私は消えない・・・」
「何・・・?」
「愛してる悠介と、悠介があんたに立ち向かう勇気がある限り・・・!!」
それでも、そんな言葉でも、悠介はただ、震えるだけだった。
「何故、そこまで信じられる。」
「悠を、誰よりも愛してるから!!」
知世は、恥ずかしげも無く、真剣に、ヤハウェに告げる。
誰よりも、愛しているからこそ、そう、告げることができる。
「私が、ずっと、傍にいる!!二人で、一人・・・はじめて・・・私たちは、強くなれる・・・!」
その言葉に、何かを、悠介は何かを思い出した。
「強く・・・?」
「なれるわ・・・ずっと、私と一緒にいるのだから・・・」
いつも、
依存させておいて良かった。
誰が裏切ろうとも誰に裏切られようとも、自分がそばにいる。
自分だけ・・・
自分だけ・・・
自分だけという想い。
自分が一番、誰以上にもお前を愛していると言う行為、思想、表現・・・
すべてを思いのままに悠介にぶつけてきたもの。
此処にいる人間の誰よりも与えつけた愛情が悠介を包み込み、愛しだす。
その思いが悠介の行動理由の全て。
生きていく理由の全て。
知世だけが悠介の全て。
「一緒だったでしょ?」
「そうだった・・・」
何があろうとも、隣には必ず、知世がいてくれたことを思い出す。
ずっと、一緒にいてくれる。
そして、今も、また、仲間がいた。
「悠は私がいないとだめね・・・?」
「にいさま・・・」
「そうだよ・・・浦島悠介は、いつも、知世を中心に仲間がいてくれたから。」
だから、
「強くもなれて、知世が完全な弱点になってた・・・」
傍にいる強さと弱さを兼ね備えた、二人が、此処にいる。
だから・・・
「また・・・強くなれる・・・!!」
これ以上に・・・
そして、また・・・
「一秒前の自分より・・・!!」
ゆっくりと、顔をあげて、ヤハウェを見た。
改めて、確認する。
知世が自分を抱きしめてくれている。
どす黒い空間の中で、一歩、動き出す。
「突き放されて・・・改めて、俺は、自分が弱い人間と思い知らされた・・・」
ただ、それでも・・・
「今は、知世がいる・・・!!」
迷宮の中に閉じ込められた気分だった。
しかし、今は、それが・・・
違う。
解放された気分だった。
強く熱く駆けろ響け・・・
自分の願い・・・!!
この願いよ、届け・・・!!
フィールドを打ち破り、全てを凌駕するために、動き出す。
破邪神天殺・・・
神を殺そうとも、
「生きる・・・・・・!!!」
切り裂く
「うぉぉぉおぉぉぉぉおぉぉぉぉ!!!!!!!!!」
刃は、これ以上に無い輝きを放ち、ヤハウェの創りだした、いや、ヤハウェの空間を全て破壊し、ヤハウェの体からラグナディオンが脱出した。
「変われ・・・!!今、奴と戦えるうちに・・・・・・!!」
届け・・・!!
「俺達の未来を、此処で、つなぐために・・・!!」
今、
「この、チャンスを逃さない・・・!!」
「悠介くん・・・!!持っていけ!!」
「託します!!」
「全てを!!」
「私のも!!」
「にいさま!!」
「悠介!!」
「あたしのも!!」
「兄さん・・・!!全てを・・・!!」
改めて悠介の思いに対して奮起した。
それで、それで良い。
改めて、全ての力をふるいだし、限界の底まで、弾きだし、悠介に力を与える。
「そんな、馬鹿なことが・・・!!!」
駆ける。
破壊神・・・
人を生かすための破壊神。
生きると言う名のオーラを、今までにない以上のオーラをその身に宿し、再び、今、こうして全ての傷は癒され、ラグナディオンはまた、姿を変える。
「インフィニティー・・・オメガ・・・ラグナディオン・・・!!」
その姿。
「無限の終焉を・・・貴様にぃぃぃぃいぃぃぃ・・・!!!!!」
ヤハウェが刃をふるい、全て、勝利したかと思われた、ガ。
ラグナディオンのマスクが破壊されただけだった。
その素顔が、露になる・・・
しかし、それが、どうしたと言うのか。
「願いよ・・・届け!!!」
光が、光が集まる。
崩壊された、無限の世界の中で。
光を帯びた、刃はより、巨大に・・・巨大な物へと。
「バカな・・・・・・!?いや、これが、生きたいと思う・・・あの子らの希望・・・!?私は・・・私は・・・!!」
「永遠の終焉を与えてやる・・・・・・」
その刃を、ヤハウェに向かって、振り下ろす。
「終・焉・斬!!!!!」
ヤハウェは真っ二つとなる。
その中で、ヤハウェは見た。
「あれが・・・希望・・・?生きようとする願い!?」
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
「しかし、後悔するだろう・・・そこまで・・・生きていても・・・君は・・・」
「あぁ・・・俺は・・・・・・俺は、此処にいる・・・・・・俺たちだけで・・・・・・」
「しかし、それは・・・君が思う形にはならないだろう・・・あいつは、優しいから・・・。」
「あいつ・・・?」
「信じられることができなくなったら・・・いや・・・すまなかった・・・」
「何を・・・!?」
刃を振り下ろした時に、ヤハウェは全て消えた。
そこに、何も無いように。
「ここには、何も無い・・・」
静かな宇宙が、そこにある。
「失われたわけではない・・・」
だから、
「戻そう・・・」
「イエス?」
ヤハウェの残骸とも呼べるコアのようなもの。
その光に、全員が目を閉じた時、目の前に広がっているのは、
「ミッド・・・チルダ・・・?」
「何故・・・・・・」
「そうか・・・これが、あいつの言ってた力か・・・」
「奇跡が・・・起きた。」
「奇跡・・・?望まぬ未来だろ・・・?」
「あの時の謝罪は・・・・・・」
そういうことか。
全員、生きていた。
「ははは・・・何故・・・」
マルチバース・・・全ての世界の復活。
それと同時に、イエスが姿を現した。
ラグナディオンを封印し、泡状に包まれた全ての世界を見て、そこに、イエスがおり、さらに、何人かの人間が、存在していた。
「全ての行い・・・これは、私のおける今の力が行ったもの・・・しかし、私の父が消した生命の核で、全ての人間はまた、姿を消す・・・」
「何をするつもりだ・・・」
「私は、また、人間を信じてみようと思う・・・」
フッと、優しく笑って、イエスは再び世界に目を移した。
「何で!?何が、あった!!」
「生きようと思う、力と願いを見た。」
「それだけで・・・?」
「あぁ。だから。」
じゃぁ、あんたが・・・
「あんたが、世界を導いてくれよ・・・!!また、選ばれた世界のように!!」
「君達が、輝けるのなら・・・全ての人はまた、輝ける。その可能性を・・・」
「そんなことはっ・・・!!あんたが、導く世界で、生きようって・・・」
こんなときに聖書のような聖人のような性格になったイエスを悠介は呪った。
「すまない。私が・・・」
止めることが出来ればと。
「しかし、もう一度、あの輝きを信じたいと思ったのだ。」
中にある慈悲を取り戻したイエスの行うこと。
これは、ヤハウェの仕掛けた罠でもあった。
全てにおいて何もかもを取り戻したかのごとく。
ヤハウェの悠介へのささやかな復讐・・・ある種の、第二の自分とするための行動か。
「何で・・・・・・」
俺は・・・
俺は・・・
「人が、恐い・・・」
人が・・・
それが、ヤハウェの詫びた理由。
人に仲間と呼べる人間以外の・・・
「人間を・・・」
何故、そうなったのか。
取り込んだときに見せた人間の黒さ。
「それが、原因か・・・」
人間のおぞましさを見た結果・・・
悠介は、仲間以外の人間を信じられなくなった・・・
「そんな・・・・・・」
「悠は・・・・・・」
与えられてしまった。
絶対的な不信感。
一つ、一つ、絶対的な不振と言う物はあるものの、完全なる対人恐怖症に近い。
一部の人間しか信じられない。
虐めを受けた子供のような。
「何で・・・」
ある種、望んでいない結末か。
「空しいな・・・!!」
「そんな世界に・・・そんな世界に・・・」
「やってくれたな・・・」
「今更、その意味を知っても遅い・・・。」
「いらないヤハウェの・・・」
「置き土産か・・・」
「父のしたことか・・・」
こればかりは、ぬぐえるものではなかった。
「それは、人が越えなければならないものか・・・」
「父の与えた恐怖は、私が消そう・・・」
触れるだけ。
かつて、皮膚病の女性を直したように、黒い恐怖は消える。
しかし、植えつけられた恐怖は・・・
自分で、なんとかするしかない・・・
見せられた不信感は、あまりにも大きかった。
「すまない・・・としか、言えない・・・」
「もう・・・良い・・・」
「もう・・・」
「それで良い・・・」
「それで・・・・・・」
「本当に?」
「うん・・・」
虚構の顔を浮かべながら、悠介はイエスに告げた。
「くそ・・・」
「どうしようか・・・」
「生きてやるさ・・・今回も。」
「すまないとしか・・・言いようがない・・・」
悠介の何とも言えない表情に、イエスは、何もできなかった。
そして、知世がまた、悠介を抱きしめる。
優しく・・・
優しく・・・
こうするだけで・・・
「一緒にいるよ・・・。」
「あぁ・・・」
「ずっと・・・」
生きている実感。
ただ、今は、それを実感するだけで良い。
「それで良い・・・」
「もう、未来のことは・・・」
「考えるだけで怖い。」
そうね。
イエスは、ただ、二人を見ていた。
「さて・・・時間が無い・・・」
再び、全ての人は・・・
消えてしまうから。
消滅させようと。
もう、それは、無意味な物となる。
「どうせ・・・」
「また・・・」
「そうなると・・・」
「解っているさ・・・」
「逃れられないころくらい・・・」
「受け入れる・・・」
「知世と・・・一緒に・・・」
向かう・・・
「時間は無い・・・」
「そう・・・」
「私の前にいる諸君等に・・・送る物がある・・・」
それは・・・
ある種の、世界の監視者になるための物であると言っても良い。
ティーダ、アリシア、燈也、アルフ、ティアナ、瑠璃、知世。
そして、悠介は持っている。
しかし、此処にいる8人以外は、もっていない物。
「テスタメントの力・・・」
ティアナは、それを思った。
「世界の監視者か・・・」
「かつての、自分のように・・・」
此処にいる、数千人の人間に・・・
「数千人か・・・」
テスタメントと化した全ての人間。
彼らは、元ある世界に戻る。
この無限に広がるアナザースペースに。
一人ひとりが、テスタメントと化し、元の世界へと送られる。
「ティア。」
「瑠璃・・・」
イエスが認めた、優しい人たち。
今後は、その世界に、監視するだけの存在となるのか。
「統治するそんざいになるか・・・・・・」
「全ては、人次第・・・」
「ある種の、危険防止装置か・・・」
「そう言うことになるな・・・」
人が、これ以上、無意識に何かを破壊すれば。
また、残酷なことを行えば。
今回の意味を理解できなかった物は、ある意味で、自分がもう一人のヤハウェとなる。
世界を作りかえる・・・
もう・・・それで、良いだろう・・・
ダメになれば、今後は自分たちが、また、ヤハウェになろうとしても・・・
「僕達に、人を裁く権利は無い・・・」
しかし・・・
「裁きたくはなるわね。」
「どう誓うか・・・それは、皆にゆだねる。」
「お父様・・・」
「そして、二度と、人間が愚かなことをしないように・・・この戦いの記憶を・・・」
全員に・・・
戦の愚かさと、そして、人間の傲慢さ。
ぽんっと、イエスは、アリシアの頭を撫でながら、優しい父親の笑みを浮かべながら、プレシアと燈也に頭を下げ、ここから消える。
「生命の核になったのか・・・」
結局は、勝利したけど・・・・
世界を救った形にはなったけど・・・
「また、滅ぼすかもしれないのね・・・今度は、人が・・・・・・」
「それを止めるための私達・・・なのかな・・・」
戦いが終わったから、しかし、まだ、戦いは完全に終わらない。
終わらせることができない。
「さて、悠矢・・・心配だわ・・・」
「そっか・・・アイナのこと、忘れてた・・・」
「そうそう・・・」
そう、言いながら、陽子は猫の王の姿に変化する
「待ってください・・・」
アリシアが未練がありそうな声をあげて、向かおうとする陽子を止める。
「なぁに?」
「私のお母さんを・・・連れて行ってくださいませんか?」
「お姉ちゃん?」
「・・・」
アリシア・テスタロッサとて、家族と一緒に暮らしたい。
ただ、今は燈也とアリシアは見極めるための存在
折角、全てが終わったのだから、一緒に・・・これから、一つになれるから…いつでもなれる。
だから、これから見るべきものを見届けた後に新たにそちらへと向かう。
「燈也・・・」
「解っている。最も危険な世界の監視が必要だ。」
「そう・・・ね。お父様のように、全てがそうなるわけではないのだから・・・」
それは、管理局が暴走するかもしれないと言う危険性の考慮と言うものの、今のところ、次元、マルチベースを唯一、時間制限があるとはいえ自在に通る技術がある世界。
それを見守るための、ミッドチルダにいるテスタメントとしての役割。
「燈也は、それをしたいの?」
「そうだね・・・ママ・・・僕は、そうなったときの抑止力が僕達だから。役目が終わったら・・・一緒に暮らして良いよね?」
「燈也は・・・バカみたいに、正義感を持ったわね・・・」
「力を持った人間の役割・・・」
「燈也がこないなら・・・私は・・・」
「姉さんと一緒に見極めたとき・・・・・・」
「私もただ、見極めるだけ。」
「ならば、それまで役割が終わるまでプレシア・テスタロッサは私の世界へご案内しましょう。」
「お願いします。猫の王よ・・・」
「ママを・・・頼みます。」
「当然よ。」
プレシアは、そっと、アリシアの方に触れて、燈也の自由意思に任せようと思った。
「あなたの我儘・・・と、思っていい?燈也、アリシア。」
「うん・・・ママ・・・」
「やることが、終わったら・・・皆と、一緒にそっちに行く。」
「解りました・・・」
「早く、おいで。」
「はい・・・」
プレシアは、陽子に促され、駆け足で寄った。
「ティーダ兄さんは、どうするの?」
「え、と・・・考えてなかった・・・」
ただ、ティーダは、ティアナの為に戦い、主の命に従い、そして、強大な力をふるってきただけではあるのだが、もう、それを行うことも無い。
ある種、無用の長物とでも言うべきだろうか。
「やること・・・無いなぁ・・・」
「一緒に来ないか?」
「燈也・・・?」
「そうするのが、楽ね・・・」
「まぁ、ある程度、身分を隠せば何とか・・・」
「ま、まぁ・・」
「それに、久しぶりに兄さんがいるんだし・・・」
「う、うん・・・?」
「妹孝行しなさい・・・迷惑をかけてきたんだから・・・」
「悪くは・・・ないか。」
利害の一致と言う訳ではないが、たんに、ティアナに弱い兄の姿と言うのが、目の前にあるのかもしれない。
その、少し、弱い部分は、ある種の本来の柵や、役目、命令、主と言う形から解放された、ティーダ・ランスターの姿であるのかもしれない。
絶対に、争いを起こさせない世界の中で、猫の妖精と化した、一人のイザナミだった者。
「悠介・・・私の力を持って行きなさい。」
「え・・・?」
「あ、僕のオルクスの力もね。」
「どうして・・・?」
「不要な物だから。もう、ね・・・」
「あぁ・・・」
悠介はその世界に行くことはできない。
向こうへと向かう、仲間の数が少ないから、もう、戦いには解放されても良いとは思うだろう。
ただ、それでも、まだ、全ての世界の人間を簡単に、信じられると言う訳でも無く、少しでも、仲間がたくさんいる世界にいたいと言う、自分でもよくわからない考え。
しかし、自分でもよくわからない考えと言う物が、ある種、今の悠介を支えていると言っても良い。
それが、彼のアイデンティティを保つためであるのなら何も言うまい。
ただ、悠介もやることが終わったら、向こうに向かう。
もとより、人の進化と言う物も、見届けられない物でもあるが。
戦いから、何を得た・・・
全てが終わり、一部、後味の悪いものとなった。
渡す物を渡、そして、連れていく者たちを連れて、陽子は悠矢を連れて、自分を作り出した世界へと向かい、姿を消し、そして、この世界から消えた。
悠介達が下りるべき世界は、ミッドチルダと言う時空管理局と言う、これからの世界、最も、恐れるべき力がある存在と言えるかもしれんない。
「降りてきた・・・そして・・・俺は・・・何をすればいい・・・」
ただ、終わった後は、どうすればよかったのかなど、考える余裕を作る暇など、無かった。
「管理局にいらっしゃい・・・」
「暴走する前の管理局を止めるための手段・・・としてですか?」
あるだろうが、暮らしていくには働くしか無い。
今は、それに従う事にした。
例え、その奥に、野心が有ろうと・・・無かろうと。
「貴方に、悪い思いはさせるつもりは無いわ・・・」
そして、
「勿論・・・此処にいる、私達全員にもね。」
テスタメント全員の保護のように聞こえるだろう。
いや、それが、一つのリンディの狙いであるのだが。
リンディの背中にくっついている、高町桃子と言う存在に関しては、対して気にする事はなかったが、テスタメントとしての力に関しては悠介はどこか、恐れているような、それほどに強大なものを感じていた。
「食わせてくれるか?あんたの世界で・・・?」
「えぇ。当然よ。」
どの道、行く世界など、無い。
故郷に変える気すらも・・・
ただ、知世といるためであるのなら。
何処の世界でも、同じではないのか。
如何せん、信じられるのはテスタメントと言う存在であると言えるだろう。
そして、仲間が、妹や身内もいるから。
悠介の中では仲間と言うのは、信じられない人間とは違う、それを超越した絆をもった存在なのだろう。
矛盾・・・
今、彼は、その自覚など、もってはいない。
矛盾など考えると、今の悠介は自己崩壊を起こしてしまうことだってあるかもしれない。
「しかし、それでも・・・生きられるなら・・・生きられるなら、文句はないか・・・」
「良いの・・・?」
「それしか・・・無いだろう・・・」
生きるために。
ただ、それだけのために、管理局に残る。
悠介は、人の中で生きる決意をする。
これから、如何なる世界になろうとも・・・
そうならなければならないと、思っていた。
「辛いと思うことはあると思うけど・・・」
「えェ・・・」
解ってます。
終章
改めて、ミッドチルダと言う世界に降り立つ。
調子良く、神人達を迎える民衆達を見て、ただ、調子のいい存在としか見ることが出来なかった。
記憶に残っているからとは言え、何れは、風化してしまう記憶となってしまうのだろう。
そうなれば、魔術師以上に強い力を持つ、神人はどう、見られるのだろうか。
降り立った大地に対して迎える民たちは、そのことを知っている。
しかし、一時の感情に流され、歓喜する連中に対して、不快の色を隠せない。
自分の視界から、消えろ・・・
消えて、いなくなれ。
次第に、自身の感情が、そういう負の思いに埋め尽くされていく。
「管理局・・・破壊したいな・・・」
ふと、呟く言葉には絶対的な不信感がある。
地上に降り立ち、改めて踏みしめる大地は、違和感があり、これが、人間のすむ大地なのかと絶望すら覚えるほどの感触の悪さだった。
改めて、あの土地が如何に人間に適していたのかを実感できた。
エデンの園と言う名の、楽園・・・
コンクリートで舗装された、この道、そして、並ぶ無機質の建築物に対して、破壊したい衝動に駆られる。
拘束される事は無かった。
その理由としては、英雄として扱う事ではあるが、英雄として祭り上げ、宣伝したいと言う、ある種、今回の事件で無能ともいえる醜態を見せつけたための、支持率の回復である事くらいは、見え透いている。
全てを戻して、そして、全ての人の記憶に止められた、それを悠介はただ、ただ、あるのは、こうして見せ付けられたのは、今、こうして生き返させられた人と言う生物の無神経さとでも言うべきだろうか。
何れ、自分達を危険分子として扱う日も近いのかもしれないと、うわ言のように、思っていた。
もし、そうなれば、このミッドチルダに反逆するくらいの破壊するくらいの個人戦力は持っているから。
いや、それを解っているから・・・
「それを分かっているから、祭り上げるのか?」
「どうだろうね。僕達をどうするかなんて・・・怖いんじゃないかな。」
見の状態。
ある程度、見極めれば、強く出ると判断した。
「触らぬ神に祟りなし・・・ですか。」
「そう言う事さ。」
ある種、神と同等の存在でもある。
神と人類の戦争になるのであれば、今、一番、人を殺すのは悠介であるかもしれない。
過去に何人、人を殺したかなど覚えてもいない。
イエスの前に戦った存在はアダマから創られた楽園から追放された人間
同じ人間だと知ったとき悠介は人を殺した。
そして、ラグナディオンを駆ったときも人を殺した感覚が悠介にあった。
その記憶が神に見放された人間の中間接的にある。
その強大な力を恐れて、人は、ただ、その戦いに勝利した彼等を今は、賛美し、そして、英雄としての称号を送る。
しかし、今は、それで良い。
利用するだけ、利用できるのだから。
「終わらせたいですね・・・此れで・・・」
「人類は・・・愚かだから・・・どうだろうね。まぁ、やることは、一つでしょ。」
「人が戦い、奢り始めたら、俺たちが全部を滅ぼす・・・」
「それも、あるね・・・ま、出きれば、管理局側の正義って奴に従わないと。」
「給料、もらえませんからね。」
「そうだねぇ・・・食べていくためには、何とかしないと。」
管理局主催で行う神からの独立戦争を勝利に導いた英雄として、扱われた、彼等はその式に出ることを辞退した。
「神からの独立か・・・よく、言ったもんだ・・・」
「私達としては・・・後味が悪すぎてるけどね・・・」
しかし、生きる為に、謝礼金だけは受け取ったらしいが。
「そだね・・・金が無いと、何も出来ないし。」
「奴等の言う独立戦争に勝っておきながら、随分と安い賃金でしたけどね。」
「そうねー・・・」
俗に言う、神からの独立戦争が終わってから、数日が過ぎても、メディアはテスタメント達を英雄と捕らえていた。
この事件を美化しすぎて、絶対的な正義は此方にあると勝手に報道する、マスコミの悪い癖が表れていた。
こぞって、似非専門家達は、この戦争に対する正当性を視聴し、神を絶対的な悪として扱われた。
しかし、ヤハウェの心情を読み取れば。
「マスゴミ・・・」
人間を滅ぼしたくなるのも、解らなくは無いが。
自分勝手な正義の主張に、苛立ちを覚え、人間にたしする不信感が募るもの、無理は無かった。
数日経ってから、同じテスタメントである、美綴華鏡という人物に出会う。
その中で、悠介はかつて、異次元生物に支配されていた別の地球・・・
そこには、必死に生きる者達が数多くいながら、管理局が危険と判断しただけで、アルカンシェルを数発、撃ち込んだと言う実態を知る。
それによって、より環境が悪化し、生きていたものは死を迎え、終わりを迎えた。
侵略と捉えられても、間違いが無いがゆえに管理局と戦うための準備と言うものも、行っていた。
確かに、そのような実態は管理局に合ったが、
「上の人間は、ただの暴走だといってたようだね。」
「こんな世界だと、ぶっ壊したくなるね・・・」
「えぇ・・・本当に。」
人とは、何か。
「悠介・・・?」
それでも、人はなれる。
この現状に・・・
ただ、批判を家のテレビの前でしか言う事の出来ない、悠介は・・・
既に、この、世界になれていた。
それでも、人間不信は治らなかったが。
此処に、数ヶ月すんで解った。
この世界の仕組み、理。
そして、醜さというものすら。
慣れているにもかかわらず、いや、慣れている筈であったのに。
触れようとすると、内なる声のようなものが再生される。
それは、ある種の、被害妄想と同じようなものであった。
しかし、それでも、悠介の頭の中に響く声は、醜いと一周したくなるほどの、気持ち悪さ。
「鬱病・・・聞いてる・・・?悠介君・・・」
「あ、はい・・・・・・」
鬱病・・・
シャマルに、そう、診断結果を貰った、悠介はただ、自身の結果をそう、受け止めるくらいにしか出来なかった。
「大丈夫?」
「ごめん・・・」
「良いからさ。」
それも、妻としての役割であると、知世はそう自覚していた。
妻として、夫を支えるという仕事につき、そして、今を生きる。
圧し掛かりすぎた、人間の感情と言う醜さに押し潰されメンタル部分の弱さが諸に出た悠介にとって、自分の不甲斐無さに苛立つ事しかできなかった。
連日、変わらない報道をテレビで鑑賞しながら、知世の用意した食事を口に運び、ゆっくりしながら、凄し、そして、寝る。
求めた生活は、此れだったのかと、自分に問い掛ける。
此れで、良い筈が無いと解っていながらも、精神と身体は動かなかった。
「今は、何もしたくないのよ。」
「何も・・・したくない・・・?」
「何か、きっかけがあれば、悠も動きたくなるわ。何もしたくないと思うほど、もう、これ以上に無いほど、悠は戦った・・・」
だから、今は、休む時間であると。
そう言って、優しくしてくれる愛する人の肩を借りながら、眠りにつく。
それも、悠介の日常の一つ。
「大丈夫・・・私が、いるから。」
眠る、悠介の頭を撫でながら・・・
夢の中に眠りにつく悠介を見ながら・・・
今、この享受できる幸せを感じていた。
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