敢えて問うなら答えもしよう 望む事はささやかなりし この腕にかき抱けるだけの夢でいい。 この胸に収まるだけの真実でいい 例えて言うなら、その名は神楽ひかり 神楽ひかり こそ我が命 神楽ひかり こそ我が宿命 劇場版 少女☆歌劇 レヴュースタァライト あぁ、まさにその名の如くに by.愛城華恋 そんな感じで見てきた。
今年観た映画の中で一番面白かったと思う。
神楽とは「神の宿るところ」の意味。
華恋にとっての自分を舞台の道に誘ってくれた神と言ってもいい存在である、ひかり。
そういう意味で神楽ひかりと言う名前の意味を考えると……
とても業が深い。
ひかりは普通の少女でしかない描写もあるから余計に。
非日常と部活アニメ要素的な日常を混ぜたスタァライトの、これはもう完結編と言ってもいい。
テレビ版でやり残したことを全て描き切ると同時にテレビ版でやることを全て終えた愛城華恋に送る花道と言ったところかね。
だから、正直、もうこれでスタァライトって作品は綺麗に描き終えてしまった分、スタリラの物語はあくまでも蛇足的な外伝に近い物語になり、彼女達の「少女」としての物語は、これで見事に描き切ってしまった感じがあって、テレビ版で成長しつつも彼女達の中に残る悔い、それを全て解消する物語でもある。
進路、卒業、夢と言う全ての要素を「成長」と「決別」と言う要素を混ぜ合わせ彼女達の変わらぬ絆を描きつつ、愛城華恋の物語に蹴りを付けて次の物語に「少女」から「女」になった物語に移行する話は思春期の生み出す残酷でありつつも美しい物語として描かれていく。
ある種、全ての舞台少女の手向けの物語。
ワイルドスクリーンバロックの名のもとに、卒業前の穏やかだった雰囲気をぶち壊して……行われる最後のレヴュー。
それは香子自身の、あのレヴューで得た向上心はくすぶったまま発散することは、あの場所だけだった行き場……そこから始まる全員のくすぶった、聖翔音楽学園でやり残したことが再熱する。
仲間であれ、舞台少女としての野生の本能、既に舞台における高揚から得られる高揚感には抗えない彼女達の行き場の解消……
双葉と香子は互い の決意の再確認 まひるとひかりのレビューは舞台少女として、 そして愛城華恋を求めた女同士のプライドのぶつかり合い。 ななと純那は一種の毒親から巣立つ子供の決意。 自分の愛する人が成長しないことへの苛立ち。 真矢とクロディーヌはライバルとして 絶対的な存在であると刻み込むための。 そして、ひかりと華恋は……
ひかりは常に二人で輝くと決めたのに華恋に魅入られてしまう自分に対する恐れであり……
華恋は夢が叶ってしまったことにより零になってしまった己への恐怖。
常に互いを見つつ、特に華恋は、ひかりを追い求めてきたからこそ気付かなかった孤独でもあるという。
本来、華恋と言う存在は凄い引っ込み思案で実は幼稚園時代は友人すらいなかったし、寧ろ、幼いころは、ひかりが今の華恋のような性格で、華恋がひかりのような性格でもあったという事実。
そして今の二人を見ていると「あぁ、運命の交換って……」ってなる華恋のルーツを描くことでより見えてくる。
華恋と言う存在は過去から空っぽだったからこそ、ひかりに満たされて、それを本能で理解したからこそテレビでは常にひかりを追っかけていたんだろう。
実は皆、自分と舞台少女としてのアイデンティティを確立していながら、
華恋のアイデンティティは神楽ひかりそのもの でもある。だからこそオーバーチュアでも、実は彼女が主役の物語は彼女の内面を描くものではなく、実は、物語のスタートとしての舞台装置としての出番だった。こういう視点で、ロンド・ロンド・ロンドや、テレビ版、舞台版を見るとかなり印象が変わってくるのではなかろうか?
だから、実はひかりは華恋に依存している部分があったけど、それ以上に、実は華恋は依存どころではなくアイデンティティそのものだったと思うとガラッと、彼女と言う印象が変わってくることが今回の物語を見ていて思う。
そういう存在の中で
華恋 が主人公であり、あのオーディションを駆け抜けたというのは、正に赫奕たる異端 であると言ってもいいだろう。
そして、思えば、7人の舞台少女達のコンプレックスは華恋の中にあるコンプレックスを偏らせたものであるとも思う。。
純那は己を矮小だと思い込み他者の言葉を使って自分を表すのは、華恋が己を語らずひかりとの夢を語る姿と実は同じ。 ななの持つ過去に対する狂気は、華恋のひかりとの約束を貪欲に求める姿。 真矢の傲慢さは、いずれひかりとトップスタァになれるという感情。まひるの持つ愛情は、華恋の中にあるひかりへの愛情。 クロディーヌのライバル意識は、ひかりと共に高め合うという華恋の誓い。 香子のずっとそばにいてほしいという双葉に対する思いは、華恋の中にあるひかりとずっと舞台の上で立っていたいという願望。 双葉にある誰よりも愛する人と対等でありたいというのは言うまでもなく、華恋とひかり、二人でトップスタァになりたいという存在だろう。 だから7人は華恋に惹かれながら、そのコンプレックスを刺激されて成長したんだわ。彼女らが華恋に惹かれたのは華恋の中に己を見たからこそ。
そして、華恋の中には常にひかりがいる。
そんな華恋が実はアイデンティティが空っぽから、アイデンティティが神楽ひかりそのものになった存在がトップスタァになる。言ってしまえば、それは美しくも見えるが、依存からの危険で歪な昇華とも見えてしまうのです。周りが成長する中、華恋は、全てが神楽ひかりとの思いで完成されているのです。だから、彼女は、成長したのではなく、実はひかりとの夢を成就させただけ。
華恋が彼女達に投げかけた言葉は、神の喪失によって消えかかっていた感情が、彼女がひかりの来訪によって覚醒した……と言うことなんですよね。
そして成就させて神を魅了したからこそオーディション後に逃げたひかりを前にして華恋はアイデンティティの喪失、いわば、テレビ版終盤に起きたことがまた起きてしまった。
今回は、華恋を中心に、そこから成長する存在として、ひかりが導き手となる物語。
しかし、テレビを見れば解るけど華恋と言うのは、ある種、なんにでもなれる才覚の持ち主で誰であろうとも魅了してしまう。
そういう猪突猛進でありつつも絶対的になれる、物語を引っ張れる存在、だからこそ先頭を常にいつの間に皆を引っ張っている少女であり、だからこそ、ひかりはそんな華恋に惹かれてしまう。
対等でありたいからこそ魅かれてしまえばファンになってしまうし、それは傍に立つことでも対等でもない。
だから逃げ出してしまう。
しかし、そうなると今度は全てが神楽ひかりと言う感情が礎となって動いてきた華恋は最高の力をどこに振るえば解らなくなってしまうし、当たり前の存在であったひかりがいなくなり彼女との夢を最高の舞台で叶えてしまった彼女は改めてひかりがいなくなることで解らなくなる。
ここでひかりがいなくなることでバックボーンが、ひかりとのことしか描かれなかった華恋の過去と繋がってくるのは面白いところよね。
テレビ版で誰もが成長する中で華恋は実は成長していなかった彼女は夢とひかりと言う感情に走っていただけで、それが周りの少女達の成長の礎になったという。
でも、これがある種、残酷なことで、ななの作中における怒りともいえる華恋との最後の対話シーンは、結局、自分達は華恋を成長させることが出来なかった、華恋に恩返しすることが出来なかったことに対する己への憤りのようにも思える。
だからこそ彼女達は華恋に与えられた己の成長の証を見せるように今回のレヴューを行ったのだろう。あれはまやかしではないと思うように、華恋が見ていないところできちんと自分の成長したアイデンティティを見せるように。だからこそ、彼女達は卒業後の進路と言うのがちゃんと描かれている。
実は幼少期は友達もいなくて幼稚園の先生に助けを乞うようにくっついていた誰よりも引っ込み思案で、何もないからこそ、将来の夢も解らない華恋は、ここへきてひかりから「光」を与えられて、それによって彼女は何にでもなれる才能を持っていることが明らかになったのはスタリラでも解ることだろうし、それを一途に磨いてきたからこそ愛城華恋は愛城華恋であり続けたんだろうと思うの。
そして、今回は、「光」が毒になって彼女を翻弄する。
でも、その与えられたものは、それこそ、自分に舞台の素晴らしさと夢を与えてくれた、ある種、華恋にとっては神のような存在である、ひかりと言う存在を魅了してしまうほどに。
自分の信仰する神がいる前では、正に神の代行者の如く力を振るうことのできる華恋だからこそ華恋は神を失ってしまうと無力になる。
誰よりもすごい力を持っていながら実は誰かに依存しないと輝くことが出来ないからこそ、やっぱり、この物語は、所謂、けじめとして、ひかりが、ひかり自身で、華恋から神楽ひかりを卒業させなければならない物語だったわけですわ。
既に舞台で一人、誰もが魅了する力を持っているからこそ。
たぶん、バンドリの世界であろうともD4DJの世界であろうとも、レズ風俗の世界でも、まどマギの世界だろうと、アイドルマスターの世界であろうともガンダムの世界であろうとも、その世界に華恋が存在すれば、華恋は誰かに腕を引っ張ってもらえばトップクラスの存在になれる存在なんだろうなーって思う。
輝き方が解らないから、きっかけとなる誰かがいないと普通の少女のまま終わってしまうという、そういう女なんだろうと。
でも一度、輝けば全ての人を魅了する、己の中にある力に無自覚だからこそ、華恋に魅入られた、ひかりは、華恋から自分と言う存在を解き放つ為に物語に参加したんだろうと。
それは、ひかりから「すでに、貴女は一人で輝けるんだよ。大丈夫だよ。」と遠回しに言っているように思える。それが「貫いてみなさいよ。あんたのキラメキで。」と、この一言に全てがあるのは、実に、今のひかりらしいではないですか。
実は華恋のキラメキは絢爛たる虚無であり、それが華恋の絶対的な絢爛たるキラメキであると、ひかりという呪縛から解放されて昇華された姿。
それがいつも美しいんだ。
レヴューとかが無ければ真っ当な青春ドラマ、所謂、「少女歌劇スタァライト」と言う存在が女の感情の起伏で動く物語だからこそ、彼女達の卒業の物語は残酷で美しい物語になっていったのだろうと思いましたね。
ひかりが華恋の中にいる自分と言う名の呪縛を解き放つことで華恋を成長させたんだわな。
ひかりがいなければ本当は誰よりも弱い……だから舞台に立つ怖さを知ってより委縮してしまう。ひかりに舞台を教えてもらい、部たちに立つことを教えられ、とうとう、舞台少女として死を意味することまで華恋に襲い掛かる。
しかし、ひかりによって最高のお膳立てをされた華恋はもう弱くなくて、もう華恋は誰よりも強い。それを知っているのが華恋を除く、苦楽を共にした舞台少女達なんですよね。
華恋は毒と隣り合わせの危険な光でトップクラスにまで成長した。そのきっかけが神楽ひかりだった。だからこそ、その毒を正しいものにして、ひかりの、この物語で与えられた役目は華恋を焚きつけたけじめとして、華恋を導くこと。
舞台が終われば、舞台少女は次の舞台へ ……って言うのが、この作品のテーマの一つでもあると思うのでーひかりがいなくても輝けるようになったからこそエンディングの後の、あのラスト、別の何かの舞台のオーディションを受けることを描かれた華恋があるのだろうと思う。
華恋は、ひかりから巣立ち、新たな舞台に舞台少女として羽ばたくことが出来たんだろうと。
やっぱ、かれひかなんだよなーってなるね。
そんな華恋から逃げた、ひかりだからこそ自分では華恋を導くことが出来なかった、まひるから呪詛を言われまくるわな。
ひかりと、まひるの、あのぶつかり合いの中に常に華恋の傍にいた彼女の支えになりたかった、まひるからすれば自分にできないことが出来る、ひかりのことを「大嫌い」って言うのは当然のことだと思えてしまう。
あのレビューの中に、まひるのなかには、まだ華恋への変わらぬ愛情はあるんだよなー
自分が華恋にしてあげたかったことが出来ずに、ひかりには出来る。そりゃ嫉妬する。
でも華恋に対して思う女同士の感情だから解ってしまうし、逃げても戻ってきた彼女に華恋のもとに行く資格があると認めたから送り出すときは最高の笑顔を見せるのは良い女に見えるし怖い女に見えるかはー、まぁ、うん
ついでに公式が華恋はスパダリであると言うことを認めているし、そこからどうやって彼女を成長させるか四苦八苦させたのがスタッフのインタビューを見てよくわかった。
それが今回の話であるのなら納得だし、依存からの脱却と言う物語ではスタァライトらしいやり方だと思うし大成功だと思う。
エンディングを見る限り、彼女達9人の関係は変わってないし、彼女達が再会した時は誰よりも美しい女になっているし、そして、彼女達は誰よりも美しい百合カプになっていることだろうと、改めて、そういうことを感じました。
ただ、この物語以降のスタァライトは見たくない。綺麗に終わったからw
だから、今後、新たにスタァライトの物語を描くなら、この物語に入る前までの物語だけであってほしい。
大人になった彼女達の物語は、正直、華恋はひかりまひると結婚していてほしいし百合妊娠して楽しい家庭を築いているものしか見たくはないからねー(つ=ω=)つ
なんとなく、まひるが真矢と同じ進路を選んだのも、彼女が、華恋と同じ舞台に立って対等な存在になるための試練であるとも思うしね。
本当に最終章として素敵な物語だった。
だからこそ、今度の舞台版#3は、どういう物語になるのか……怖いが知りたい気持ちになった。
やることをやってしまったスタァライトがこれからどうなるかは、まぁ、舞台やテレビアニメの二期をやるならスタリラしかないんだろうね(つ=ω=)つ
ここまで綺麗にやってしまったら、アニメの最終回から卒業までの物語しかないから。それ以降は何度も言うけど蛇足になってしまう。
でも、終わらせるのが惜しいからなー。だからシークフェルト主演の舞台が来年は公演するし。
そういえば、なんで、やたら自分の中でスタァライトと言う物語を出すとき、ボトムズの予告を出すんだろう?って自分の趣味ってのもあるし、文学的な感情の物語ってのも思ったけど、そう、華恋とひかりの関係って言うのはキリコとフィアナの関係に良く似てるんだよな。
華恋とひかりって言うのは神無月の巫女の姫子と千歌音でもあるんだけど、ある種、戦争と言うものが無い装甲騎兵ボトムズの世界に生まれたキリコとフィアナでもあるような、今回の物語は、そういうものを思わせました。
キリコはフィアナと出会ったことによって人間性、己のアイデンティティをフィアナと言う存在から人間性を得て、バニラ、ココナ、ゴウトと言った人間に心を開き、そして最終的に神をも殺す存在になり、そして華恋はひかりを得て人間性を得て最終的に神をも魅了する存在になった。
なんとなく、そういうのを感じたんだろうなー
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