エネルギー政策について政府との意見交換会質疑要旨
先日行われた
『エネルギー政策”国民的議論” 政府との意見交換会』について
質疑の部分の議事要旨が完成しました。
以下に本文を記載します。
Word版でダウンロードしたい方はこちらから
http://sayogenkobe.web.fc2.com/20120818_digest.doc
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国家戦略室職員と話そう
エネルギー政策“国民的議論”政府との意見交換会
2012年8月18日(土)午後1:30-4:30
於:兵庫県中央労働センター大ホール
注:
以下は発言の概略であり、順序も一部はテーマ毎に整理するなど当日発言どおりではありません。
正確な記録を参照したい方はIWJ録画、主催者記録DVDなどを参照してください。
■第1部 政府によるエネルギー選択肢の説明と国民的議論のあり方、進め方を中心とする質疑
◆選択肢及び国民的議論についての説明(別途資料参照)
内閣官房国家戦略室参事官補佐(環境省地球環境局総務課低炭素社会推進室併任)
加藤聖さん
◆質疑
Q)戦略室の説明資料に「多面的なエネルギー・環境の国際貢献」とあるが、原発輸出は国際貢献か
A)原発輸出をするのかどうかは、シナリオによる。ゼロシナリオの場合は日本が原発を止めるのに海外へ輸出するということはないのではないか。15、20-25シナリオならありうる。
Q)8月末までに検証委員会で検討して政府方針を決定するというが、今後、パブコメ、討論型世論調査、意見聴取会の結果がどう扱われるのか、公開性は。
検証委員会委員はどう選ばれたのか。
A)検証会議の委員は、原発についての専門家ではなく、パブコメの専門家が、中立的立場で集約方法などを判断すると聞いている。検証委員会は来週に第1回目の会合が開かれ、それは公開されると聞いている。
司会)東京の意見交換会で、パブコメの内容を生で公開するようにとの要望、エネルギー・環境会議を公開でとの要望が出され、検討する、相談すると答えているがどうなったか。
A)パブコメについては個人情報や誹謗中傷等公開にふさわしくない部分をチェックした上で公開する。すでに国家戦略室のエネルギー・環境会議のホームページで一部公開を始めている(http://www.npu.go.jp/policy/policy09/archive11.html)。現在は、意見聴取会の終了後にいただいた意見、約1万件を公開。残りは順次作業を進めて公開する。FAXや郵送のものは解読作業中で、これも公開する。
エネルギー環境会議の公開については引き続き検討するが、まずは検証会議を公開するのでそれを見てほしい。
Q)第2選択肢については、40年廃炉を守り2030年には15%、40年頃にはゼロになるという堅実なシナリオと理解していたが、国会質疑で2040年頃にはゼロかという質問に首相が2030年に15%と決めただけで先はわからないと答えた。一般国民は大部分が着実にゼロにするシナリオと思っており、第2を選んだ人はだまされたことになる。
司会)3つの選択肢については、資源エネルギー庁総合エネルギー調査会基本問題小委員会でも、原発慎重派の委員から、事務局のまとめはおかしいと言う異議が出されている。議論経過を含めて回答を。
A)基本問題委員会では、発電施設は計画決定から稼働までは10年近くかかるので20年先までの計画を作り3年ごとに見直していくという考え方できた。311前のままの考えでいいのかということはあろうが、そういうことで2030年時点という議論をした。
15%シナリオについては、委員会でも最新の泊を40年で廃炉とすれば2050年でゼロになり、そういうゼロにする途中段階としての15%を意味しているという意見や15%を維持していくという意見、2030年以降はゼロにすることも維持することもありうるという意見があり、シナリオはそれらをを含んだもの。
ゼロシナリオは、いつかは別としてゼロにすることは決まっているが、他はそうではない。2030年以降については「不断の検証」となっており、3年ごとに見直していくことになる。
Q)原発からグリーンへと書いているが、政府は本当にその姿勢があるのか。
A)政府として昨年12月に「脱原発依存」の方針を決定しており、その方向だ。
Q)電力需要が2010年で1.1兆kWh、2030年に省エネ10%で1兆kWhとしているが、現実はすでにそれ以上の節電をしている。省エネはもっと進む。供給も日経新聞によるとPPSが原発20基分、自家消費はその半分で残りは供給できるとあった。
A)需要については一般電気事業者の自家消費を含むかどうかでちがうが、1.1兆kWhは含む数字。
省エネは、経済成長の影響とか、例えば電気自動車のように、全体として省エネでも電気の方へシフトするものとか、住宅の断熱化=高気密化で燃焼型暖房から電気へシフトする等の要因もあり、節電をしない場合は1.2兆kWhになると見込まれるものを、節電により1.0兆kWhにするというのが現在の政府の見通し。
PPSではなく自家発電の埋蔵電力のことだと思うが、その活用は盛り込んでいる。
■第2部 ISEPからの提起とエネルギー政策に関する質疑
◆ISEP 『エネルギー・環境のシナリオに関する選択肢の問題点と改善点』
松原主席研究員
◆質疑・意見
司会)「福島事故を原点として考える」という意味から、今日の会場に避難者の方がおられれば、まずその方の声を聴きたい。
自主避難者1) 東京小平市から自主避難してきた。子供は事故後もずっと普通に登校した。17日には黄色い雨が降った。雨の後、地面に黄色い粉が残り、子供が触ろうとしたが直感的に止めた。友人の勧めもあり20日の朝関西へ避難した。
当時から解決しない疑問がある。あの時どうすればよかったのか?今度同じことがあればヨーソ剤は配布されるのか、どこでもらえばいいのか、屋内退避の指示は出されるのか、謝罪や補償はどうなるのか。
木下黄太氏のブログにある千葉の人の話を紹介する。==子供が神経芽腫に。夫婦とも外出を控えるなど注意していたのに。原発事故が原因とは特定できないが、稀な病気。子供の癌がこれから増えるのではないか、できるだけ子どもが避難できるように==
多くの親が尿検査だとか汚染のない食材だとか走りまわっている。それぞれ事情があって避難できず、水はペットボトル、関西の食材を探すとか、疲れ切っている人が沢山いる。そんな状況の中でこの選択肢が出てくるのが理解できない。無神経だ。
自主避難者2) 3月に東京江東区から神戸へ避難。昨年9月、近く公園の土を友人が検査に出したら1200ベクレル。チェルノブイリでは管理区域になるレベル。検査費用15000円、放射能検査や安全な食材を選んだり、引っ越し費用も自腹、子どもの栄養補助食品とか家計は火の車。当初は母子避難だったが夫も家族と一緒の暮らしのために退職して神戸へ。50代で就職先は厳しい。こうした補償は誰がしてくれるのか。東京も汚染されていることは間違いない事実だが、除染対象でもなく全く補償される状況ではない、勝手に引っ越した形だが、好きで引っ越したわけではない。
原発は、むなしくする。外で遊べない、健康で育つ保証もない、誰が病気になるかはわからない。食品の基準、100ベクレルは放射性廃棄物並み。本当は子どもには皆と楽しく給食食べさせたいが、放射能を食べさせたくないので給食を拒否して弁当を持たせている。私の生活をどうしてくれるのか。そんななかでなぜ3つのシナリオなのか。ゼロを目指して、いつまでにゼロにするかだ。ゼロしかない。
自主避難者3) 昨年、東京世田谷から避難。神戸の人は震災経験があるからやさしいが、それでも放射能被害は経験がない。関心のない人と話すと東と西の温度差を感じる。自主避難者のコミュニティーは全くない。政府の支援もない。
安全委などは東大卒のエライ人ばかりだが、事故後も安全だと繰り返した。パブコメ出しても結局そういう人たちが勝手に決めるのではないか。多数意見がゼロでも政府が違う決定をしても、国民が選んだ政府で、変えるには皆さんが選挙で・・というようなことを言われたが、そんな話ではない。「ヒロシマ、ナガサキ、フクシマ」になってしまった。もう十分。国のトップが変わるべき。チェルノブイリから学ぶべき。ドイツにできて日本にできないわけはない。優秀な頭も原子力予算も再生エネルギーのために使ってほしい。
司会)重い発言をいただいた。チェルノブイリの後全国で「まだ間に合うのなら」を合言葉に運動をしてきたが、間に合わなかった。痛恨の思いだ。
選択肢自体がどうかという問題が出された。そもそも原子力を利用するとはどういうことなのか、事故があれば勿論、事故がなくても将来世代に解決不可能な負担を残し、ウラン採掘から利用、後始末までヒバクシャを生む。そんなエネルギーを使うことが許されるのか。ドイツは倫理委員会で脱原発を決めた。そういう議論が抜けているのではないか。
また、今、国民的議論のまとめすら出来ていないのに8月末までに結論を出すと言うのはどうなのかという点も合わせて回答を。
A:加藤)避難されている方からの疑問、意見は正確に持ち帰って伝えたい。
なぜゼロ以外の選択肢か、については、国民すべてがゼロ支持ではない。政府としては少数意見は聞かなくていいとはならない。
8月末が拙速ではないかという点は、野田首相も古川大臣も8月末という期限ありきが絶対ではないとおっしゃっているが、他方で、方向性を早く出すということも重要なので8月末をめどに革新的エネルギー環境戦略会議で決定する方向となっている。
Q)40年で廃炉というのは、どういうプロセス、根拠で決まったのか。地熱発電の研究開発費はいくらか。原子力と再生可能エネルギーの予算はどれくらいか。
A:加藤) 40年廃炉は、政府が原子力規制法案で提案し、自公民3党合意で決定。
地熱発電の予算は、3/11以前に事業仕分でゼロになったが、3/11後に復活。自然エネルギー関連予算は数百~1千億くらい。
A:松原)規制法で40年となっているが場合によっては20年延長の規定もあり問題。40年の根拠・経緯はいろんな話があるが、元々30年で審査して10年延長してきたが、関電の美浜など古い原発を止めないために40年にしたのだろう。ドイツは32年で止めており、40年は長い。今後規制委員会の新しい基準の中で30年超は危ないということで規制するのが望ましい。
原子力予算の政策経費は1兆円、自然エネルギー予算は1千億程度だが、買取り制度で当面3000億ほど、普及に応じて徐々に増えていく。税金ではないが確実に再生エネルギーに使われる。
Q)第2、第3は選択肢に値しない。今後、倫理の選択肢を入れて議論をやり直す気はあるか
A:加藤)倫理の選択肢については、ドイツは1990年代から議論をし、2000年から再生可能エネルギーを始め、2011年で20%、2012年上半期で25%まで来たという実績、20年間の議論の積み重ねがある。日本は今ドイツの2000年段階と考えれば2030年ゼロというのは倫理面も含むシナリオと考える。ゼロシナリオを選んだ内、多くの方が即時を求めていることからもこの選択肢の中に倫理面も含まれていると考える。
Q)ドイツと比較されたが、ドイツは事故を起こしていない。日本はフクシマも終息していないし、地震大国だ。悠長なことは言っていられない。
A:加藤)原発があって地震があるのは日本とアメリカ西海岸だけ。それを踏まえてもっと早く進めるべきとのご意見をいただいたと受け止める。
Q)国家戦略として議論しているが今のシステムのままでは実施段階では地方が決めてしまう。自然エネルギーというが風力等不安定だしそうはならない。電力市場改革がシナリオのどこにあるのか見えない。先進国で例のない東西の周波数の違い。ドイツはいざとなればフランスから買えるという保険があるが日本にはないなど市場改革がどうなるのか。
A:加藤)太陽光や風力等は個々に見れば不安定だが全体として調整すればならされるので需給バランスをとることは可能。電力改革は重要だが、まず方向性や方針を決めて、そこに向けての手段としての改革を行うことが重要。経産省の有識者会合では、発送電分離、小売自由化の方向で議論は進んでいる。
A:松原)発送電分離、電力自由化の方向は決まっているが詳細は今後決まるので注意が必要。電力料金も東電については今回内訳が分かったが、他の電力会社についても同じように精査していくことが必要。
Q)消費者としては、電源開発促進税と再エネ買取り費用の両方を取られる。電促税は使途が不透明で、地域へのばら撒きや天下り法人に流れているとも言う。当初は太陽光発電の助成金も電促税の電源多様化勘定で出ていた。世界的にも高いと言われる電力料金が上がるのは消費者も中小企業も困る。電促税を見直して再エネの買取り費と融合できないか。
A:加藤)電促税はkwh当たり0.275円、買取り(FIT)は0.3円。FITは政府には入らず再エネ電力普及に必ず使われる。税と合わせるのはあまりよくない。エネルギー関連では別に石油石炭税からも再生エネルギー関連の補助金等に充てられている。電促税と石油石炭は合わせてエネルギー特別会計となっており、それをどう使っていくか、今後廃炉などにも使っていかないといけない。こうしたことについても意見を伺っていきたい。
A:松原)買取り費用は確実に再エネに使われてわかりやすいが、電促税などは複雑でわかりにくい。買取り費用は再エネが増えれば上がっていくが、情報公開でその内容をしっかり見ていくことが必要。化石燃料費も上昇するのでその見合いでは再エネ費用値上がり分は大きくない。電促税などは脱原発を進めるうえで今後必要になる費用に充てていくべき。
Q)ベトナムの国民は原発について正確な情報を与えられない状況。福島も終わっていないのに輸出しようとするのを日本側で止めていくべき。
Q)使用済み燃料を今後どうするのか方針を聞きたい。
A:加藤)使用済み核燃料の計画は今後のことで、今具体的計画があるとは聞いていないが、福島第一で一部ドライキャスク(乾式貯蔵)にしていたものは津波をかぶっても大丈夫だったという実績もあるので、ドライキャスクは費用はプールで貯蔵するよりもかかるが安全性の面で有力な方法だと個人的には思っている。
A:松原)プール貯蔵の危険性はフクシマで明らかであり乾式貯蔵は有力だが無差別にやると原発推進になる。どこでどう貯蔵するか、国民全体の議論、合意の下で進めるべき。最終的には直接処分となるがこれも国民的議論が必要。
司会)使用済み燃料について補足。このままだと近い将来プールが一杯になり原発はとまる。現状は危険なので乾式貯蔵を受け入れると原発を動かし続けることになる。今原発立地でも痛し痒しで悩んでいる問題。
Q)ISEPのシナリオでも即時停止となっていないのはなぜか。
A:松原)ISEPの提案は2020年までのできるだけ早くということ。ゼロにするにはさまざまな試算、検討が必要、しくみ、法制度、費用などの問題を詰めて、もっと早くできるなら早くすべきでタイムリミットとして2020年を提案。
司会)多くの人の思いは今動いている大飯も止めて、そのままゼロにだと思うが、脱原発を求めるISEPとして、その最大の障害は何だと思われるか。
松)検討中だが、一番大きいのは電力会社の経営問題。電力会社を全部つぶすというのは国民にとっても望ましくない。温存ではないが、特に東電はいかに解体を進めて電力安定供給を維持しながら廃炉にしていくか、他の電力会社についても同じように倒産を避けつつ脱原発を進める法制度やしくみが必要。
Q)現在20ミリシーベルトまで居住可能とされている基準は他の地域にも適用されるのか。高線量地域の避難費用は当然東電、国が負担すべき。
A:加藤)居住可能基準は、今他の地域にも適用すると決めているわけではない。新たな規制庁で議論して決める、避難費用は東電が基準にそって賠償する。
Q)学徒動員の経験者だが、太平洋戦争も石油を求めて南方へ進出した。
巨大地震や津波など、優れた学者がいるのだからその意見を反映すべき。大飯の断層調査も三菱がやるのはおかしい。
A:加藤)地震学者の最新知見などを反映させることは、規制庁で最新の知見に基づいてバックフィットということになっている。
Q)国の将来の方向を決めずに狭い範囲での選択肢議論はおかしい。倫理的な選択肢を絶対採用すべき。
Q)加藤さんはよく頑張っておられると敬服。国民の声を聴くと言うが国家戦略室というなら海外の声も聴くべき。スイス原子力安全規制局が出した「福島の教訓」には「学習する組織を・・できない国だ」と書かれている。原発のような危険なものを動かす資格のない国と言われているのと同じだ。そのほかドイツ放射線防護協会等、海外の声も聴くべき。日本は世界から注目されており、まともな運営ができない国と思われている。(竹島、尖閣もそういうところを見透かされているからだ)
A:加藤)スイスと同様にアメリカからも指摘されており、組織のあり方については重要な問題と考えている。
Q)15、20-25シナリオも原発異存を下げるのだというが、2030年から先はゼロに向けていくのか。
使用済みの直接処分は素人には放置と見えるが、放射能を無害化するような技術開発はしているのか。
産業界は脱原発に抵抗が強いので家庭用と分けて議論し、家庭用の脱原発を先に進めたらどうか。
A:加藤)2030年以後は未定。
無害化技術は、量子力学的なコンセプトとしてはあるが世界中どこも実現していない。
家庭用と分けるという点、電力小売自由化されれば各家庭で再エネ由来の電力を選択するというかたちで実現していくと考えている。
Q)関電の経営問題というが、現に大飯以外止まっている。大飯止めても大丈夫とわかっている。
A:加藤)原発をやめると燃料費で年間3兆円、国民一人当たり30000円/年、3000円/月の負担増と見積もられており、その負担を受け入れるのかの覚悟が問われる。それが国民の声なら受け止めて判断することになる。
司会)最後にまとめと合わせて2点聞きたい。
核燃料サイクルの選択肢の表現が、原子力委員会での「併存」からパブコメの「どちらもありうる」へ変更、改ざんされたが、どこでだれが変えたのか。
原子力規制委員会人事案は誰が決めたのか。
A:加藤)私も東北出身であり、都会の人と違って代々土地に密着して暮らしている人の土地への思いの強さは理解できる。それを奪うことになったことは本当に申し訳ないと思っている。
再処理の選択肢は、大臣レベルで、直接処分がよいか再処理がよいかについても国民の意見を聞きたいということで決まったと聞いている。
人事案は、原発担当の細野大臣が中心となって野田総理はじめ政府として決めた。
松)今まさに重要な転換期。政府や各政党でも議論がされている。ここに国民の声を届けることが重要。量も重要だしタイミングも重要だが、ここ数か月、一人一人がどんどん意見を伝えることが重要だと感じている。
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『エネルギー政策”国民的議論” 政府との意見交換会』について
質疑の部分の議事要旨が完成しました。
以下に本文を記載します。
Word版でダウンロードしたい方はこちらから
http://sayogenkobe.web.fc2.com/20120818_digest.doc
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国家戦略室職員と話そう
エネルギー政策“国民的議論”政府との意見交換会
2012年8月18日(土)午後1:30-4:30
於:兵庫県中央労働センター大ホール
注:
以下は発言の概略であり、順序も一部はテーマ毎に整理するなど当日発言どおりではありません。
正確な記録を参照したい方はIWJ録画、主催者記録DVDなどを参照してください。
■第1部 政府によるエネルギー選択肢の説明と国民的議論のあり方、進め方を中心とする質疑
◆選択肢及び国民的議論についての説明(別途資料参照)
内閣官房国家戦略室参事官補佐(環境省地球環境局総務課低炭素社会推進室併任)
加藤聖さん
◆質疑
Q)戦略室の説明資料に「多面的なエネルギー・環境の国際貢献」とあるが、原発輸出は国際貢献か
A)原発輸出をするのかどうかは、シナリオによる。ゼロシナリオの場合は日本が原発を止めるのに海外へ輸出するということはないのではないか。15、20-25シナリオならありうる。
Q)8月末までに検証委員会で検討して政府方針を決定するというが、今後、パブコメ、討論型世論調査、意見聴取会の結果がどう扱われるのか、公開性は。
検証委員会委員はどう選ばれたのか。
A)検証会議の委員は、原発についての専門家ではなく、パブコメの専門家が、中立的立場で集約方法などを判断すると聞いている。検証委員会は来週に第1回目の会合が開かれ、それは公開されると聞いている。
司会)東京の意見交換会で、パブコメの内容を生で公開するようにとの要望、エネルギー・環境会議を公開でとの要望が出され、検討する、相談すると答えているがどうなったか。
A)パブコメについては個人情報や誹謗中傷等公開にふさわしくない部分をチェックした上で公開する。すでに国家戦略室のエネルギー・環境会議のホームページで一部公開を始めている(http://www.npu.go.jp/policy/policy09/archive11.html)。現在は、意見聴取会の終了後にいただいた意見、約1万件を公開。残りは順次作業を進めて公開する。FAXや郵送のものは解読作業中で、これも公開する。
エネルギー環境会議の公開については引き続き検討するが、まずは検証会議を公開するのでそれを見てほしい。
Q)第2選択肢については、40年廃炉を守り2030年には15%、40年頃にはゼロになるという堅実なシナリオと理解していたが、国会質疑で2040年頃にはゼロかという質問に首相が2030年に15%と決めただけで先はわからないと答えた。一般国民は大部分が着実にゼロにするシナリオと思っており、第2を選んだ人はだまされたことになる。
司会)3つの選択肢については、資源エネルギー庁総合エネルギー調査会基本問題小委員会でも、原発慎重派の委員から、事務局のまとめはおかしいと言う異議が出されている。議論経過を含めて回答を。
A)基本問題委員会では、発電施設は計画決定から稼働までは10年近くかかるので20年先までの計画を作り3年ごとに見直していくという考え方できた。311前のままの考えでいいのかということはあろうが、そういうことで2030年時点という議論をした。
15%シナリオについては、委員会でも最新の泊を40年で廃炉とすれば2050年でゼロになり、そういうゼロにする途中段階としての15%を意味しているという意見や15%を維持していくという意見、2030年以降はゼロにすることも維持することもありうるという意見があり、シナリオはそれらをを含んだもの。
ゼロシナリオは、いつかは別としてゼロにすることは決まっているが、他はそうではない。2030年以降については「不断の検証」となっており、3年ごとに見直していくことになる。
Q)原発からグリーンへと書いているが、政府は本当にその姿勢があるのか。
A)政府として昨年12月に「脱原発依存」の方針を決定しており、その方向だ。
Q)電力需要が2010年で1.1兆kWh、2030年に省エネ10%で1兆kWhとしているが、現実はすでにそれ以上の節電をしている。省エネはもっと進む。供給も日経新聞によるとPPSが原発20基分、自家消費はその半分で残りは供給できるとあった。
A)需要については一般電気事業者の自家消費を含むかどうかでちがうが、1.1兆kWhは含む数字。
省エネは、経済成長の影響とか、例えば電気自動車のように、全体として省エネでも電気の方へシフトするものとか、住宅の断熱化=高気密化で燃焼型暖房から電気へシフトする等の要因もあり、節電をしない場合は1.2兆kWhになると見込まれるものを、節電により1.0兆kWhにするというのが現在の政府の見通し。
PPSではなく自家発電の埋蔵電力のことだと思うが、その活用は盛り込んでいる。
■第2部 ISEPからの提起とエネルギー政策に関する質疑
◆ISEP 『エネルギー・環境のシナリオに関する選択肢の問題点と改善点』
松原主席研究員
◆質疑・意見
司会)「福島事故を原点として考える」という意味から、今日の会場に避難者の方がおられれば、まずその方の声を聴きたい。
自主避難者1) 東京小平市から自主避難してきた。子供は事故後もずっと普通に登校した。17日には黄色い雨が降った。雨の後、地面に黄色い粉が残り、子供が触ろうとしたが直感的に止めた。友人の勧めもあり20日の朝関西へ避難した。
当時から解決しない疑問がある。あの時どうすればよかったのか?今度同じことがあればヨーソ剤は配布されるのか、どこでもらえばいいのか、屋内退避の指示は出されるのか、謝罪や補償はどうなるのか。
木下黄太氏のブログにある千葉の人の話を紹介する。==子供が神経芽腫に。夫婦とも外出を控えるなど注意していたのに。原発事故が原因とは特定できないが、稀な病気。子供の癌がこれから増えるのではないか、できるだけ子どもが避難できるように==
多くの親が尿検査だとか汚染のない食材だとか走りまわっている。それぞれ事情があって避難できず、水はペットボトル、関西の食材を探すとか、疲れ切っている人が沢山いる。そんな状況の中でこの選択肢が出てくるのが理解できない。無神経だ。
自主避難者2) 3月に東京江東区から神戸へ避難。昨年9月、近く公園の土を友人が検査に出したら1200ベクレル。チェルノブイリでは管理区域になるレベル。検査費用15000円、放射能検査や安全な食材を選んだり、引っ越し費用も自腹、子どもの栄養補助食品とか家計は火の車。当初は母子避難だったが夫も家族と一緒の暮らしのために退職して神戸へ。50代で就職先は厳しい。こうした補償は誰がしてくれるのか。東京も汚染されていることは間違いない事実だが、除染対象でもなく全く補償される状況ではない、勝手に引っ越した形だが、好きで引っ越したわけではない。
原発は、むなしくする。外で遊べない、健康で育つ保証もない、誰が病気になるかはわからない。食品の基準、100ベクレルは放射性廃棄物並み。本当は子どもには皆と楽しく給食食べさせたいが、放射能を食べさせたくないので給食を拒否して弁当を持たせている。私の生活をどうしてくれるのか。そんななかでなぜ3つのシナリオなのか。ゼロを目指して、いつまでにゼロにするかだ。ゼロしかない。
自主避難者3) 昨年、東京世田谷から避難。神戸の人は震災経験があるからやさしいが、それでも放射能被害は経験がない。関心のない人と話すと東と西の温度差を感じる。自主避難者のコミュニティーは全くない。政府の支援もない。
安全委などは東大卒のエライ人ばかりだが、事故後も安全だと繰り返した。パブコメ出しても結局そういう人たちが勝手に決めるのではないか。多数意見がゼロでも政府が違う決定をしても、国民が選んだ政府で、変えるには皆さんが選挙で・・というようなことを言われたが、そんな話ではない。「ヒロシマ、ナガサキ、フクシマ」になってしまった。もう十分。国のトップが変わるべき。チェルノブイリから学ぶべき。ドイツにできて日本にできないわけはない。優秀な頭も原子力予算も再生エネルギーのために使ってほしい。
司会)重い発言をいただいた。チェルノブイリの後全国で「まだ間に合うのなら」を合言葉に運動をしてきたが、間に合わなかった。痛恨の思いだ。
選択肢自体がどうかという問題が出された。そもそも原子力を利用するとはどういうことなのか、事故があれば勿論、事故がなくても将来世代に解決不可能な負担を残し、ウラン採掘から利用、後始末までヒバクシャを生む。そんなエネルギーを使うことが許されるのか。ドイツは倫理委員会で脱原発を決めた。そういう議論が抜けているのではないか。
また、今、国民的議論のまとめすら出来ていないのに8月末までに結論を出すと言うのはどうなのかという点も合わせて回答を。
A:加藤)避難されている方からの疑問、意見は正確に持ち帰って伝えたい。
なぜゼロ以外の選択肢か、については、国民すべてがゼロ支持ではない。政府としては少数意見は聞かなくていいとはならない。
8月末が拙速ではないかという点は、野田首相も古川大臣も8月末という期限ありきが絶対ではないとおっしゃっているが、他方で、方向性を早く出すということも重要なので8月末をめどに革新的エネルギー環境戦略会議で決定する方向となっている。
Q)40年で廃炉というのは、どういうプロセス、根拠で決まったのか。地熱発電の研究開発費はいくらか。原子力と再生可能エネルギーの予算はどれくらいか。
A:加藤) 40年廃炉は、政府が原子力規制法案で提案し、自公民3党合意で決定。
地熱発電の予算は、3/11以前に事業仕分でゼロになったが、3/11後に復活。自然エネルギー関連予算は数百~1千億くらい。
A:松原)規制法で40年となっているが場合によっては20年延長の規定もあり問題。40年の根拠・経緯はいろんな話があるが、元々30年で審査して10年延長してきたが、関電の美浜など古い原発を止めないために40年にしたのだろう。ドイツは32年で止めており、40年は長い。今後規制委員会の新しい基準の中で30年超は危ないということで規制するのが望ましい。
原子力予算の政策経費は1兆円、自然エネルギー予算は1千億程度だが、買取り制度で当面3000億ほど、普及に応じて徐々に増えていく。税金ではないが確実に再生エネルギーに使われる。
Q)第2、第3は選択肢に値しない。今後、倫理の選択肢を入れて議論をやり直す気はあるか
A:加藤)倫理の選択肢については、ドイツは1990年代から議論をし、2000年から再生可能エネルギーを始め、2011年で20%、2012年上半期で25%まで来たという実績、20年間の議論の積み重ねがある。日本は今ドイツの2000年段階と考えれば2030年ゼロというのは倫理面も含むシナリオと考える。ゼロシナリオを選んだ内、多くの方が即時を求めていることからもこの選択肢の中に倫理面も含まれていると考える。
Q)ドイツと比較されたが、ドイツは事故を起こしていない。日本はフクシマも終息していないし、地震大国だ。悠長なことは言っていられない。
A:加藤)原発があって地震があるのは日本とアメリカ西海岸だけ。それを踏まえてもっと早く進めるべきとのご意見をいただいたと受け止める。
Q)国家戦略として議論しているが今のシステムのままでは実施段階では地方が決めてしまう。自然エネルギーというが風力等不安定だしそうはならない。電力市場改革がシナリオのどこにあるのか見えない。先進国で例のない東西の周波数の違い。ドイツはいざとなればフランスから買えるという保険があるが日本にはないなど市場改革がどうなるのか。
A:加藤)太陽光や風力等は個々に見れば不安定だが全体として調整すればならされるので需給バランスをとることは可能。電力改革は重要だが、まず方向性や方針を決めて、そこに向けての手段としての改革を行うことが重要。経産省の有識者会合では、発送電分離、小売自由化の方向で議論は進んでいる。
A:松原)発送電分離、電力自由化の方向は決まっているが詳細は今後決まるので注意が必要。電力料金も東電については今回内訳が分かったが、他の電力会社についても同じように精査していくことが必要。
Q)消費者としては、電源開発促進税と再エネ買取り費用の両方を取られる。電促税は使途が不透明で、地域へのばら撒きや天下り法人に流れているとも言う。当初は太陽光発電の助成金も電促税の電源多様化勘定で出ていた。世界的にも高いと言われる電力料金が上がるのは消費者も中小企業も困る。電促税を見直して再エネの買取り費と融合できないか。
A:加藤)電促税はkwh当たり0.275円、買取り(FIT)は0.3円。FITは政府には入らず再エネ電力普及に必ず使われる。税と合わせるのはあまりよくない。エネルギー関連では別に石油石炭税からも再生エネルギー関連の補助金等に充てられている。電促税と石油石炭は合わせてエネルギー特別会計となっており、それをどう使っていくか、今後廃炉などにも使っていかないといけない。こうしたことについても意見を伺っていきたい。
A:松原)買取り費用は確実に再エネに使われてわかりやすいが、電促税などは複雑でわかりにくい。買取り費用は再エネが増えれば上がっていくが、情報公開でその内容をしっかり見ていくことが必要。化石燃料費も上昇するのでその見合いでは再エネ費用値上がり分は大きくない。電促税などは脱原発を進めるうえで今後必要になる費用に充てていくべき。
Q)ベトナムの国民は原発について正確な情報を与えられない状況。福島も終わっていないのに輸出しようとするのを日本側で止めていくべき。
Q)使用済み燃料を今後どうするのか方針を聞きたい。
A:加藤)使用済み核燃料の計画は今後のことで、今具体的計画があるとは聞いていないが、福島第一で一部ドライキャスク(乾式貯蔵)にしていたものは津波をかぶっても大丈夫だったという実績もあるので、ドライキャスクは費用はプールで貯蔵するよりもかかるが安全性の面で有力な方法だと個人的には思っている。
A:松原)プール貯蔵の危険性はフクシマで明らかであり乾式貯蔵は有力だが無差別にやると原発推進になる。どこでどう貯蔵するか、国民全体の議論、合意の下で進めるべき。最終的には直接処分となるがこれも国民的議論が必要。
司会)使用済み燃料について補足。このままだと近い将来プールが一杯になり原発はとまる。現状は危険なので乾式貯蔵を受け入れると原発を動かし続けることになる。今原発立地でも痛し痒しで悩んでいる問題。
Q)ISEPのシナリオでも即時停止となっていないのはなぜか。
A:松原)ISEPの提案は2020年までのできるだけ早くということ。ゼロにするにはさまざまな試算、検討が必要、しくみ、法制度、費用などの問題を詰めて、もっと早くできるなら早くすべきでタイムリミットとして2020年を提案。
司会)多くの人の思いは今動いている大飯も止めて、そのままゼロにだと思うが、脱原発を求めるISEPとして、その最大の障害は何だと思われるか。
松)検討中だが、一番大きいのは電力会社の経営問題。電力会社を全部つぶすというのは国民にとっても望ましくない。温存ではないが、特に東電はいかに解体を進めて電力安定供給を維持しながら廃炉にしていくか、他の電力会社についても同じように倒産を避けつつ脱原発を進める法制度やしくみが必要。
Q)現在20ミリシーベルトまで居住可能とされている基準は他の地域にも適用されるのか。高線量地域の避難費用は当然東電、国が負担すべき。
A:加藤)居住可能基準は、今他の地域にも適用すると決めているわけではない。新たな規制庁で議論して決める、避難費用は東電が基準にそって賠償する。
Q)学徒動員の経験者だが、太平洋戦争も石油を求めて南方へ進出した。
巨大地震や津波など、優れた学者がいるのだからその意見を反映すべき。大飯の断層調査も三菱がやるのはおかしい。
A:加藤)地震学者の最新知見などを反映させることは、規制庁で最新の知見に基づいてバックフィットということになっている。
Q)国の将来の方向を決めずに狭い範囲での選択肢議論はおかしい。倫理的な選択肢を絶対採用すべき。
Q)加藤さんはよく頑張っておられると敬服。国民の声を聴くと言うが国家戦略室というなら海外の声も聴くべき。スイス原子力安全規制局が出した「福島の教訓」には「学習する組織を・・できない国だ」と書かれている。原発のような危険なものを動かす資格のない国と言われているのと同じだ。そのほかドイツ放射線防護協会等、海外の声も聴くべき。日本は世界から注目されており、まともな運営ができない国と思われている。(竹島、尖閣もそういうところを見透かされているからだ)
A:加藤)スイスと同様にアメリカからも指摘されており、組織のあり方については重要な問題と考えている。
Q)15、20-25シナリオも原発異存を下げるのだというが、2030年から先はゼロに向けていくのか。
使用済みの直接処分は素人には放置と見えるが、放射能を無害化するような技術開発はしているのか。
産業界は脱原発に抵抗が強いので家庭用と分けて議論し、家庭用の脱原発を先に進めたらどうか。
A:加藤)2030年以後は未定。
無害化技術は、量子力学的なコンセプトとしてはあるが世界中どこも実現していない。
家庭用と分けるという点、電力小売自由化されれば各家庭で再エネ由来の電力を選択するというかたちで実現していくと考えている。
Q)関電の経営問題というが、現に大飯以外止まっている。大飯止めても大丈夫とわかっている。
A:加藤)原発をやめると燃料費で年間3兆円、国民一人当たり30000円/年、3000円/月の負担増と見積もられており、その負担を受け入れるのかの覚悟が問われる。それが国民の声なら受け止めて判断することになる。
司会)最後にまとめと合わせて2点聞きたい。
核燃料サイクルの選択肢の表現が、原子力委員会での「併存」からパブコメの「どちらもありうる」へ変更、改ざんされたが、どこでだれが変えたのか。
原子力規制委員会人事案は誰が決めたのか。
A:加藤)私も東北出身であり、都会の人と違って代々土地に密着して暮らしている人の土地への思いの強さは理解できる。それを奪うことになったことは本当に申し訳ないと思っている。
再処理の選択肢は、大臣レベルで、直接処分がよいか再処理がよいかについても国民の意見を聞きたいということで決まったと聞いている。
人事案は、原発担当の細野大臣が中心となって野田総理はじめ政府として決めた。
松)今まさに重要な転換期。政府や各政党でも議論がされている。ここに国民の声を届けることが重要。量も重要だしタイミングも重要だが、ここ数か月、一人一人がどんどん意見を伝えることが重要だと感じている。
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