金剛山を登っていると愛犬を連れた人をよく見かける。
自分は現在は犬を飼ってはいないが、小さい頃からかならず家には犬がいた。
いつもどこかの誰かから親がもらってきたか、あるいは拾ってきたりした雑種である。
ちゃんと面倒を見ないんだったら捨てると叱られ、
家に帰ってきたら、親に保健所に持って行かれてしまって泣き明かしたこともある。
いままで飼った犬は大きく成長した試しがない。
雑種だからか?とか、たまたま大きくならない種類の犬なのか?など
あれこれ考えてみたこともあったが、とにかくでっかく育ったことがない。
そんなわけで、セントバーナードとまでは言わないが、
でっかい犬にはつねにあこがれがあった。
いつも犬が居なくなるのは突然だった。
一日中、クサリでつなぎっぱなしで、学校等から帰ってきた夕方に小一時間ほど
しか散歩してやれない事がかわいそうで、現代ならあってはならないことだが、
夜はよく放し飼いにしていた。
飼ってきた犬はどの犬もいつもおとなしく、夜になってクサリをはずしてやっても
喜んで走り回るのはせいぜい庭の中だけで、どこかへ出かけていくことはほとんど無かった。
夜中にどこかで用を足して戻ってきて、たいがい庭のどこかに居る。
朝には必ず自分の犬小屋で寝ているので、クサリをつないで学校に行くという繰り返し。
そんな飼い方ばかりを続けてきた。
自宅の周りには自然が多く、迷惑かけるほどの人の往来もなければ車もほとんど無い、
そんな環境だった。(今では道路は拡幅され、民家が立ち並び一変してしまった)
これまで飼ってきた犬のことは今でも覚えている。
初代「コロ」、二代目「コロ」、三代目「コロ」(これは保健所送りに)
四代目「チャオ」、五代目「メリー」。
いつも犬との別れは、ある日突然、朝に犬の姿がないという形でやってきた。
夜、どこかをほっつき歩いて、どこかで車にでもはねられたのだろうかと思う。
そうかと思えば、一週間ほどして戻ってきたりしたこともあった。
犬が半年~一年ほども戻ってこなくなったらあきらめがついて、
また次の犬をもらうなり拾うなどして新しい犬を飼うのだった。
そんな分れ方をしてきたので、年老いて亡くなる最後を看取ったことがなかったし、
残ったのは悲しみというより寂しさだけだった。
最後の犬は五代目「メリー」。初めてのメス犬だった。
その犬もやはり大きくなることがないながらも大事に飼っていたが、
いつの頃からかしんどそうにするようになって、食事もほとんど食べなくなり、
日ごとにどんどん痩せていって、偶然にも家族全員が見守る中のある日の夜に、
寿命を全うすることもなく息を引き取った。
それがあまりにもかわいそうで、ショックで、立ち直れなくなり、
以来、もう決して犬を飼わないことを決意した。
しかし、犬は今でも大好きであることには変わりはない。
金剛山と愛犬というキーワードではほとんど記事は見つかりませんでした。
せっかくなのでこんな記事を紹介します。
(ああ夫婦 ええ夫婦)富岡廣志さん・節子さん 病も楽しめ、まだまだ登るぞ2007/12/25 朝日新聞 夕刊 3ページより引用 大阪府河内長野市の富岡廣志さん(73)、節子さん(74)は毎日、大阪、奈良の府
県境にある金剛山(標高1125メートル)に登っています。その回数は2人でなんと8
千回。数年前から節子さんに認知症の症状が出始めてからは、山登りはますますかけがえ
のないものになっています。(向井大輔)
12月上旬、早朝の登山に同行させてもらった。2人は
愛犬「ジャロ」とともに、白い
息を吐きながら、枯れ葉が積もる登山道を軽快に進んでいく。飛び石しかない小川、ロー
プだけが垂らされている岩の道……。31歳の記者は追いつくのがやっとだ。2人はすれ
違う人たちにニコニコしながら声をかける。「今日は冷えるね」「最近見なかったけど、
元気だった?」。相手も笑顔で返す。「山に来るといろいろな人に会える。元気がもらえ
る」と口をそろえる。
2時間半ほどで頂上に着くと、2人は広場にあった鉄のつり輪にぶら下がり、逆立ちを
始めた。「数年前から始めたヨガのおかげで、お茶の子さいさい」なのだそうだ。そして
下りは駆け足。すごい体力だ。
金剛登山を最初に始めたのは廣志さん。42歳の時に腎臓炎や肝炎を患い、健康のため
にマラソンを始めた。その訓練で思いついたのが登山だった。半ば強引に誘われた節子さ
んは、「しんどいだけで、嫌で嫌で仕方がなかった」が、1年ほどたつと景色が楽しめる
ようになったという。何より、友だちがたくさんできたのがうれしかった。
廣志さんは市の社会福祉協議会の役員を務め、福祉活動にも積極的だ。最近では、情緒
不安定な子どもや女性らを山に連れていくようにもなった。登山前は表情が硬かった子ど
もらが、体を動かし、自然に触れるうちに笑顔を見せるようになる。廣志さんは「登山で
新しい目標ができた。女房が子どもたちにいろいろ話しかけてくれるので安心」。節子さ
んも「新しい孫ができたみたい」と笑う。
2人は全国の山々を登り、マラソン大会にも参加してきた。自宅にはマラソン大会での
入賞トロフィーがずらりと並ぶ。俳句も共通の趣味だ。
結婚して47年。節子さんに5、6年前から軽い認知症の症状がみられるようになっ
た。当初は「なんでこんなことになるんや」と悩んだ。しかし、「山では悪天候の時も急
峻(きゅうしゅん)な道もある。それを楽しんでこそ、頂上での喜びは大きいんだ」と二
人で思い直した。
現在、認知症はほとんど進行しておらず、医師も驚くほどだ。「雨の日も雪の日も登山
をしたい。それが2人の癒やしにもなる。目標は1万回。まだまだ7合目だね」
◇ふたりの採点表
●私の妻は88点
とにかくやさしい。おとなしいからもう少し積極的になってほしい。まあ、そこがいい
ところやけどね。
●私の夫は99点
何事にも前向きで、ねばり強く、てきぱきしているすごい人。でも、下山のスピードが
少し速いのよ。
◇あなたと歩んだ日々
1959年 歌声喫茶でプロポーズ
60年 結婚
61年 長男誕生
63年 次男誕生
65年 長女誕生
76年 廣志さんマラソンを始め、その後、登山も始める
*
紙面を飾ってくれるステキなご夫婦を探しています。自薦・他薦を問いません。情報は
「ああ夫婦 ええ夫婦」係のファクス(06・6231・9145)まで。ご連絡できな
い場合もあります。
【写真説明】
愛犬「ジャロ」とともに、金剛山の山頂に着いた富岡廣志さん、節子さん夫妻。20年
以上ともに見てきた風景だ=奈良県御所市で
85年、旅行先の那覇市で
※写真は省略します。