全く未知の会計の世界。とりあえず薄い簿記 3 級の本を 1 冊読んだので、理解しにくかったところをまとめていくことに。今は書いたことが正しいのかどうなのか判断できるほどの知識を持ちあわせていない。 (+_+)
前置きはさておき、最初は「繰延」という耳馴れない言葉から探っていく。
「繰延」という言葉の意味
「繰延」という言葉は日常では使わない。だから意味が想像しにくい。「繰延」の反対は「見越」というらしいが、これは日常で使うことがある。例えば、
年末ジャンボ宝くじで、前後賞 3 億円当たることを見越してマイホームを購入する。
いや、そういえば「予定を繰延べる」とは言うか。Yahoo!辞書 によると、
日時や期限を先へ延ばす。延期する。「返済予定を―・べる」
なるほど、「先へ延ばす」という意味。
では、簿記の仕訳において何をどう先へ延ばすことを「繰延」と呼ぶのだろうか?
例題
次の例について考えてみる。
- 2009.10.1 に 1 年分の保険料 100 万を現金で支払った。
- 2009.12.31 の決算において、上記 1 年分の保険料について繰り延べる。
最初の取引の仕訳
まずは、2009.10.1 における仕訳。
2009.10.1 に 1 年分の保険料 100 万を現金で支払った。
図で示すと、
これは素直に次のように仕訳できる。
保険料 | 100万 | 現金 | 100万 |
問題は、2009.12.31 の決算のときの処理。
なぜ繰延べるのか?
ところで、そもそも何で「繰延」なんて処理をしなければらないのだろうか?お金が出たときに出ただけ帳簿に記録すればいいのでは? しかし、もし繰延をせずにこのまま決算日に試算表を作ったとする。できた試算表を見ると、単純に費用として
「今年は保険料で現金が 100 万も出ていったのか...」
という見方がされてしまう。実際には保険料は 1年分支払っているので、決算の翌年の分も同時に支払っている。言うなれば、決算の時点では 10月 ~ 12月の 3ヶ月分、つまり、全体の 1/4 の保険料を消化したに過ぎない。来年分の保険料が 3/4 も残っている。
会計ではその会社の状態が今はどうなの?をできるだけ正確に把握したいという動機があるはずだから、試算表にこの情報を加え、今年丸々 100 万円の費用を使ったわけではないことを示したいはずだ。その方法として「繰延」という処理があるということ。
繰延の方法
方法としては、使った分だけ費用として示し、残りは資産として計上しておく。言い替えると、
「お金は使ったけれど、来年の分も含んでいるから、そういう金額になるんです!」
ということを表現できる。
この例では、今年 100 万の保険料の内、1/4 の 25 万円分使ったと見なして考える。つまり、翌年の保険料 75 万円分が残っている。決算のとき、「まだ残りがあるよ」ということを示すために「前払保険料」という科目を使ってこれを表現する。前払いとは、「チケットを前払いで購入する」と言ったときの「前払」と同じ意味。お金は既に支払っているけれど、楽しむのは後。つまり、前払いしたお金の代わりに得たチケットは、「資産」ということになる。
例題に戻り、2009.12.31 の決算のときの仕訳は、残っている分の 75 万円を借方に資産として計上する。貸方は「保険料 75 万」とし、来年の保険料を差し引く。
前払保険料 | 75 万円 | 保険料 | 75 万 |
これで決算の時点で保険料は 100万 - 75 万 = 25 万 となる。保険料を相殺した状態で、これを表で示すと、
保険料 | 25万 | 現金 | 100万 |
前払保険料 | 75万 | | |
「出ていった現金は 100万円だけれど、その内今期の費用は 25 万で、75 万円は来期の分です」
ということを伝えるこができる。前払保険料を使わなかったときの、「どかんと 100 万円を今期使った」のとは意味合いが違う。
念のため、合計残高試算表でも示しておく。
借方残高 | 借方合計 | 勘定科目 | 貸方合計 | 貸方残高 |
| | 現金 | 100万 | 100万 |
25万 | 100万 | 保険料 | 75万 | |
75万 | 75万 | 前払保険料 | | |
100万 | 175万 | | 175万 | 100万 |
翌年までの仕訳を最初から示すと、
保険料 | 100万 | 現金 | 100万 |
前払保険料 | 75万 | 保険料 | 75万 |
保険料 | 75万 | 前払保険料 | 75万 |
となり、前年の前払保険料と保険料を相殺して辻褄を合わせる。
何をどう繰延べたか?
最初に戻り、「繰延べる」の意味とは何か?
... 1年分の保険料について繰り延べる
結局、上記で示したように「繰延べる」とは、2009.12.31 の決算において今年お金を使った保険料、つまり、「費用」の発生を翌年へ先延ばしたと言える。なぜそうするかと言えば、あたかもその年の分に相当する額だけを支払ったと見せかけることによって、決算の時点での金の使い方を、より長いスパンで見たときの平均的な値で評価できるようにするため。
繰延に類似した処理
ところで「繰延」は、建物などの でかい 買物をしたときに、使う期間で分割して費用として計上する「減価償却」の考え方に似ている。また「消耗品」のように使った分だけ費用として計上するということにも類似している。
こういう考え方をして数字を導くところを見ると、決算とは、取引として実際には発生してないことも仮想的に発生させ、「今はこういう風に会社の状態を見るのが妥当なんじゃない?」という落し所を探る作業のように思えた。