逝きし世の面影

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「2013年度グローバル年金指数ランキング」から見えてくる日本の姿

2014年04月23日 | 経済

(日本の年金は20ヵ国中では17位、持続性では50ヵ国中48位の最下位レベル)

『グローバル年金指数ランキング』(2013年度)

上記↑の表は米国マーサー(Mercer LLC)が、2013年10月7日に発表した2013年度グローバル年金指数ランキング(20ヶ国)です。十分性(Adequacy)、持続性(Sustainability)、健全性(Integrity)の平均評価値が指数化されランキングにしたもの。
年金指数ランキングは2009年に11カ国を対象として調査を開始。(日本は最下位の11位)
2010年に14カ国に増やしたが日本は最下位の中国に次ぐ13位。2011年は16カ国中で日本は最下位グループの14位(日本以下は中国とインド)
5年目の本年対象国は20ヶ国に拡大したが、日本は中国にも負けて先進国としては断トツの最下位の17位。
対象国の様々な年金制度への取り組みが指数として表される。調査では、対象国の年金制度に0から100までの評価が付けられる。

『年金の持続可能性は最下位ランクの日本は48位』

また、ドイツの保険・金融グループ(アリアンツ)傘下のアリアンツ・グローバル・インベスターズが、4月4日に2014年版年金持続可能性指数(pension sustainability index 2014)を発表しています。
2014年報告書(世界50ヶ国)で日本は、タイ(50位)、ブラジル(49位)に次ぐ最下位ランクの48位。長期的に持続不可能で、年金制度の改革は必須と評価されています。
世界的にも年金制度の改革は進んでいます。
トップ3は、オーストラリア、スウェーデン、ニュージーランド。デンマークは6位である。
先進国として唯一公的健康保険制度が無い極端な新自由主義的な弱肉強食の資本主義の権化、自助努力と自己責任を国是とするアメリカは、先進国最下位の48位の日本とは大きく違い、何と世界8位と高位置なのです。
人口減少と少子高齢化が進む日本、年金制度改革や少子高齢化対策など根本的な構造改革は待ったなしです。
アベノミクスの成長戦略(強制インフレとデフレを呼び込む消費税増税)による日本経済の崩壊で、『持続可能性』どころか、日本国の年金制度の崩壊は秒読み段階に入っているのです。

『(根本的な勘違い)「年金」についての基礎知識』

年金を歴史的に見れば欧州でドイツ統一を目指す破竹の勢いの軍事独裁国家だったプロイセンの鉄血宰相ビスマルクが世界で初めて『年金』を創設(発明)したのが『ものの初め』である。
国家がもしも『戦争をするために増税する』と真実を語ったのでは国民の不満が高まり、戦意が低下するので不都合、円滑に戦争が出来ないのである。
年金の目的はもちろん国民の福祉は二の次三の次(口実)であり、ずばり『戦費の調達』だったのである。
しかし、国家が将来必ず自分たち国民に還元するだろうと信じた善良な国民は、増税には文句を言うが『年金の支払い』には文句を言わなかったのである。
世界の初めての年金創設がビスマルクなら、日本国の初めての年金創設は1941年絶望的な対米戦争を開始した後の東条英機によって給与から天引きされる厚生年金が始められている。
もちろん年金の支払いは遠い遠い将来の話であり、戦費調達こそが本当の目的だった。
創設当時は、年金支給年齢よりも平均寿命の方が遥かに低くて、大多数の加入者は掛け金を払うだけで、年金を受け取れ無い仕組み(国家ぐるみの振り込め詐欺)だったのである。
当時の年金支給とは、宝籤並みに運よく生残った少数者だけが対象だった。ドイツや日本ではまったく別に見える戦争と年金が『中身』で繋がっていたのである。

『個人年金よりももっと不吉すぎる予兆、恐ろしい個人向け国債』

戦争とはとんでもない金食い虫なのである。
幾らつぎ込んでも金が足りなくなる。
これ等の国では個人年金名目での戦費調達でも金が足りなくなって、国家財政が破綻状態に陥った時に考え出された最後の『次の一手』が、個人向け国債だったが敗戦で全て紙切れになっている。
財政破綻の確実な予兆である不吉すぎる個人向け国債であるが、敗戦後の日本では11年前の2003年(平成15年)3月から始まっている。
個人国債も個人年金も同じで、勝てば出資者にも還元されるが逆に敗戦時には紙切れになる仕組みなのである。
(個人国債を売り出した10年ほど前ですが、今とは大違いで当時のマスコミ報道では、『年金の破綻』が大々的に取上げられていて連日報じていた)
しかし、今の日本では年金問題が以前よりも深刻化しているが、何故かマスコミは大きく扱わない。
戦費調達目的だった大昔の『年金』創設とは大きく違い、現在では無関係に見える『最低賃金』と『生活保護』と『年金問題』の三つが密接にリンクしていて『国民の生活保障』として切り離せない。

『三題噺、「年金」と「最低賃金」と「生活保護」の近すぎる関係』

財政的に崩壊寸前の基礎年金ですが、今大問題になっている生活保護費と最低賃金と連動しているのであるが、しかし困ったことに重大なこの事実を認めて、マスコミで語る有識者はほぼゼロなのです。
現実問題として、現状の基礎年金の支給額が低すぎて、最低の生活費を基準とする生活保護や最低賃金と比べられないのである。
我が日本国では、不十分な基礎年のために、法律的には存在する筈が無い生活保護基準の数分の一以下の超貧困の高齢者家庭が生まれている。(日本の生活保護の補足率は1割程度の低すぎる数値で、これは国家による未必の故意による犯罪に限りなく近い)
国家の経済が健全であるならフルタイムで働いた最低賃金が一番高くなる。(高く設定しないと国民の健全な勤労意欲が削がれる)
受け取る人が掛け金を払う年金と、掛け金を払う必要が無い生活保護では年金の方が高くなる。(これも高く設定しないと支払い意欲が削がれる)

『受け取る「金」には色は付いていない』

年金として受け取っても生活保護費として受け取っても、最低賃金として受け取っても、受け取る側も支給する側も、『金』自体には何の色も付いていない。まったく『同じ』なのである。
ところが我が日本国では、根本的な順番が無茶苦茶、逆さまなのである。現状では国家が国民のモラルハザードを積極的に押し進めているのである。
グローバルスタンダードの普通の国なら、国家全体のモラルハザードの結果、とっくに崩壊しているのだが、絆社会の日本だけは世界基準とは別で奇跡的に国民意識が健全であり、未だに正常に機能しているのである。

『借金と貯金が同じだった日本』

日本国の資本主義ですが今見えている『年金問題』は氷山の一角に過ぎ無いのです。年金以前に基本的に制度として崩壊しているのです。
日本経済ですが、25年間も穏やかに死につつあった。
体力を極限まで消耗していた状態で、超劇薬であるアベノミクスに突入したのである。
国家の債務不履行(デフォルト)では企業の倒産と同じで、それまでの負債が帳消しとなるのですが、我々一般の国民の側から見れば個人年金とか個人国債が踏み倒されるのである。
今マスコミで大問題だとされているGDPの2倍に達している日本の債務(借金)であるが、事実は日本国の銀行など大企業が国債として保有している債権(貯金)なのである。
経済では日本が黒字になれば相手国が赤字になる貿易収支と同じで、全体を合計すれば、常に債務と債権とはコインの裏表の関係であり、まったく同一なのである。(全員が黒字になることは理論上不可能)

『ソ連崩壊とチェルノブイリ原発事故で年金問題を解決した旧ソ連』

ロシアの男性の平均寿命はチェルノブイリ原発事故後に5歳も劇的に低下して、年金支給年齢である60歳よりも低い59歳になってしまった。平均寿命よりも年金開始年齢が高ければ、年金財政は丸儲けなのである。
DNAを傷つける放射能被害ですが、『劇的な老化現象である』と理解すると誰にでも分かりやすい。
ソ連時代の物価は一度決定されると変化し無いのですが、ソ連崩壊でハイパーインフレが発生して今までの年金支給額が実質的に数十分の1に切り下げる効果があるので年金の財政負担など吹っ飛ぶのである。
今の日本が年金で苦しんでいる最大原因は少子化ではなくて、デフレ経済の逆ザヤなのである。他の国のようにインフレなら何ら大問題にはなっていない。(ところが今までのマスコミではデフレがタブーで有り絶対に語らないので説明が意味不明に陥っていた)

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3 コメント

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こりゃ老後が心配だ (十澄)
2014-04-20 14:51:28
確か戦後の年金制度を造った官僚の議事録にも
「とにかくカネを集められる、活用するのは我々ね」
「人口が増え続けるのは無理な前提?対策は後のヒトが考えるでしょw」
的な発言があった思います。
いったい、我々庶民はどこまでコケにされ、養分にされればいいのやら…。
故青木雄二氏は
「生保は生保会社の都合でやってるんやで」
「そんなもんより、その掛け金を現金で持ってたほうがなんぼかマシ」
と断言してましたが、年金についてもそうかもしれませんね。
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日本の年金制度は見込み違いの賜物 (海坊主)
2014-04-22 06:31:45
年金制度を造った時、日本がここまでの長寿国になるとは思っても見なかったでしょうね、当時の官僚たちは。医療制度がここまで充実したのは国民性に負う所が大だと思うのですが、それを見誤ったのは官僚達の無理解でしょう。だから無計画に使い込んでしまって、損失補填が間に合わず、破綻してしまっている。

それにしてもショッキングなデータですね。民衆が広く知るべき情報です。
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何の心配もない!(きっぱり) (宗純)
2014-04-22 14:18:31
十澄さん、海坊主さん、コメント有難うございます。

日本国の『年金が破綻しそうだ』ですが、これは年金を受け取る高齢者世代の増加が予想以上だったからですね。
日本国ですが、ギリシャなどデフォルト寸前の他所の国とは大違いとんでもない大金持ちなのですよ。
実は年金が、個人での積み立て制度の国でも、現役世代の年金の掛け金を支払いに当てている。
年金に支給額の算定方法が『積み立て方式』だと言う意味であり、その人の支払ったお金を何十年も備蓄していて定年後に支払う意味ではない。インチキですね。
年金の支給が積み立て方式ではない日本が、世界で一番積み立ている。
数年分の支払額の2百兆円から3百兆円の膨大な年金が厚生労働省の金庫に無駄に眠っているのですよ。毎年必ず現役世代からの入金があるので、当面は支払いの心配が無い。
金ですが、まったく無ければ困るが有りすぎても困るのですよ。
自分たちの能力を超えた大金が有れば金銭感覚が狂って来て当然だと思いませんか。
今までの日本の官僚が腐敗した無能な政治家と共に、二人三脚で無駄遣いを繰り返していたのは、余りにも当然な話なのです。
年金ですが『これから悪くなる』話ではなくて、現在が悪いのです。
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