年金運用から個人に役立つヒントを探そう

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2011年5月15日(日)の日経新聞朝刊13面に、「プロの年金運用 個人に役立つヒント探そう」という特集がありました。

個人投資家にとって参考になる記事でした。要点は、以下のとおり。

1. 国内外の株や債券に幅広く分散
2. 「高金利だから有利」と思い込まない
3. 資産配分比率を定期的に元に戻す
4. 基本は低コストの指数連動型投信
5. 新興国への投資を大きくしすぎない

いずれも、国際分散投資の基本ポイントです。
もう耳にタコができるほど聞いたことかもしれませんが、大切なことなので何度でも取り上げたいと思います。
今回の日経新聞の特集では、上記基本ポイントについて、結論部分が有識者のコメントでまとめられていました。
そのコメント部分を引用したいと思います。

「年金は成績が悪い時だけ国会で批判されたりするので、運用が下手なイメージがある。しかし実際には着実に資産を増やしている」
(みずほ証券の瀬川剛エクイティストラテジスト)

「株式はリスクも高い一方、長期的には高い上昇が見込める」
(投資評論家の岡本和久氏)

「為替は2つの国の通貨の交換価値なので、長期的には高金利=高インフレ国の通貨は下落するのがセオリー」
(龍谷大学の竹中正治教授)

「長期的な成績の見通しは、国内債券も外国債券と同じと考えるのが基本」
(企業年金にコンサルタントをしている格付投資情報センターの川村孝之フェロー)

「短期金利の差は、長期では外貨の為替下落で相殺されると想定している」
(GPIFの陣場隆調査室副室長)

(07~08年度の金融危機の株価暴落時について)「きちんとリバランスを実施して株の比率を戻した」
(PFAの浜口大輔理事)

(GPIFの運用資産の約8割がインデックス運用であることについて)
「アクティブ運用で継続的に市場平均を上回ることは容易ではない」
(GPIF)

「個人が買えるアクティブ投信の手数料はかなり割高。個人はインデックス投信主体の方がいい」
(経済評論家の山崎元氏)

「成長期待が大きい銘柄は既に割高になっていることが多く、高いリターンを得られるとは限らない」
(前出の岡本和久氏)

(新興国株の組み入れに対して)
「世界の時価総額に占める比率と同じ15%程度に抑えるのが一般的」
(前出の川村孝之氏)


投資本でよく見聞きしている国際分散投資のポイントですが、これだけ錚々たる顔ぶれの方々のコメントとして見ると、なかなか壮観です。
全て重要ですが、個人的には、以前山崎元氏が主張していた「国内債券と外国債券の期待リターンは同じ」という説に対して、GPIFや格付投資情報センターでも同じように考えているというのが、新しい発見で興味深かったです。

また、竹中正治氏の「為替は2つの国の通貨の交換価値なので、長期的には高金利=高インフレ国の通貨は下落するのがセオリー」という意見については、世の中で誤解している人が多いという点で、重要だと思われます。
特に、「高金利通貨でのスワップ狙いのFX」が安定的な運用だと信じて疑わない人たちには、よくかみ締めてもらいたいと思います。

個人と年金では、投資期間の長さや運用コストなどの点で違いがあるので、年金の運用をすべてそのまま個人が真似するというのは、少し無理があると思います。また、全ての年金が同じ運用方針というわけでもありません。

しかし、元々年金は資金の公共性が高く、無難な運用を求められる(損失を出すとマスコミや国会で大騒ぎされる)運用なので、無難な運用をしたい個人投資家にとって、参考になることは多いはずです。
運用方針とその根拠、年度ごとの運用実績、前提データなどがネットで公開されていることが多いというのも、ありがたいところです。

私は年金運用(とその動向)をかなり参考にさせてもらっています。
せっかくの公開情報、うまく活用していきたいものです。
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