どんな大学がビッグデータ活用ツールを使うのか?
世の中の変化は速い。ビッグデータを活用して大学経営の進化を促進するツールは、もう提供されつつある。問題は、どんな大学が導入を決めるかである。課題は、提供されるツールを、真に使えるものにしていくために、経営と現場の双方が積極的に反応できるかである。こういうものは、先に行く大学が優位に立つとは分かっていても、費用対効果に不安を感じて判断停止に陥るかもしれない。また、現場に既存の手法へ拘りが強く危機感がない場合、経営に構想力がなく様子見を決め込む場合は、導入に至らない。先送りして、先に行った大学で成果が確認された時点で、マネをしたがるが、そのときには、周回遅れになっている恐れが強い。当然、負け組にならざるを得ない。まったく、データビジネスで日本の政府や企業が後手を踏んできたのと同じ図式である。
ビッグデータの活用については、経営にも現場にも、想像力が必要であろう。私立大学のビジネスモデルは、志願者という顧客の創造がポイントになっている。志願者を獲得するための広報宣伝のための人件費・物件費が効率的に使われているのか、疑問を持たない経営者はいないだろう。しかし、これまではデータが取れなかったので、手法の重点化には躊躇せざるを得なかった。また、入試部の活動自体がブラックボックスに入っていて、カイゼンのサイクルが回っているのかさえ、全く見えなかった。多くは、恐らく広告宣伝業界に良いように商売されてきたものだろう。経営者として、こうした状況を放置しているようでは、一般企業からは馬鹿にされても仕方がない。学者出身の経営者は、マーケティングについて何もご存知ないというわけである。
他方、現場サイドには、多くの場合、志願者の大幅な減少や要員の削減などの危機的な状況にでもならない限り、業務の効率化を率先して進めることは期待できない。しかも、他部署からは、入試部が何を考えて、何をして、どんな成果を上げているのか、全く見えない。これが見えるようになれば、仮説・実行・検証で業務の効率化のサイクルを回すことが可能になる。広報宣伝の実務がデータ活用により効率化されれば、入試部のマンパワーをより有効に活用することも可能になる。入試部のみならず、大学全体の職員数を業務改善で抑制することにもつながる。
私学経営が人口減少期に厳しさを増すのは確実である。結局、質の高い志願者を囲い込むことなくして、道は開けない。ブランド力を高めるには、入学者数だけ確保すれば済むわけではない。ビッグデータの活用を真っ先に考えるべきは、定員充足はしているが、中退率が相対的に高い中堅の大学であろう。志願者募集ばかりではなく、在学中の学業データ管理から個人・保護者への教育的助言・指導まで、ビッグデータの活用で個々の学修・就職効果を高めることも期待できる。このあたりの成果を得るには、サービス提供してくれる企業との二人三脚でシステムを使いこなす能力をいかに高められるかが問われる。AIの教育利用で、学納金以上の価値のあるサービスを、受益者に対してどのように還元できるか、まだ十分に見えていない段階だが、先に行く大学の経験値が高まることで、競争環境が劇的に変化することだろう。上昇気流に乗る大学には、学生も資源も教育人材も集まり、停滞する大学は人口減少の影響をもろにかぶることになる。この1~2年、決断を先送りする大学には、悲しい未来しかない残されないに違いない。せめて、心ある大学職員は、新しい手法・サービスについて勉強しておくべきだろう。たとえ、今は大半の役職員が関心を持たない状況だとしても・・・。
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