育てなくても構わない?(続き)
第2に、ロールモデルを意識することである。他方で、大学事務局において、若手・中堅のロールモデルとなる人を作っていくことも必要になる。若手リーダーシップ研修、種々の表彰制度、プロジェクトチームによる企画提案などの機会は、ロールモデルとなる人を作ることにも役に立つ。さらに、他大学等との交流で、大学の枠を超えてより高次元のロールモデルを持つことも、大学職員としての成長には欠かせない。先に行く意欲のある人は極力応援して、続く人のロールモデルになってもらえばよい。そうした人が出てきているのは頼もしい。
第3に、問題意識を持ち、自分で調べられることである。私の印象では、これができる人が非常に少ないことが、大学事務局の弱点であると感じる。この点が、教員から事務職員の能力が不十分だから法人としてのポテンシャルが生かされていないと批判される最大の要因ではないかと思う。もちろん、経営に関しては事務職員だけの責任ではないが、このことが解決すべき課題であるのは事実だと思う。公知の事実を収集してまとめることは誰でも努力すればできる。公知でない情報は、個人的なネットワークを日ごろから作っておくことで時とともに入手するチャンスを拡大すればよい。組織なのだから、1人ですべてを把握する必要はない。NPO法人大学プロスタッフ・ネットワークの設立趣旨の一つは、情報のネットワーク作りである。個人の自由な立場を使って、組織としては壁ができてしまうところを乗り越えられれば社会の役に立つと思う。
酒井氏によれば、このほかに、失敗は自分のせい成功は運のおかげと考えるクセがあること、人を見る目を持ち他人の力を活用すること、明るく社交的であること、孤独に耐えられることなどが挙げられているが、私自身に照らし合わせても、この中で一つでも取り柄があればよいとするならばともかく、すべてを求めたら育成すべき人材がいなくなりそうな気がする。ただ、非常に優れた能力に恵まれた人は、他人にツッコミを入れてもらえる能力(つっこまびりてい)を大事にすべきだという指摘は、人生訓としてなかなかの至言である。普通の人は完璧すぎる人(おそらく同性の場合)を好ましいとは思わないものだからである。凡人としては、こんなことに注意を払うべき人物に一度くらいなってみたいものである。
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