特集
森五輪組織委会長辞任
東京オリ・パラ組織委員会の森喜朗会長が女性蔑視発言から辞任。五輪憲章にも背く発言に、国内外から批判が集まりました。
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東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長は2021年2月3日、東京都内で開かれた日本オリンピック委員会(JOC)の評議員会で、日本ラグビー協会を例に出しながら「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる。女性は優れており、競争意識が強い。誰か一人が手を挙げて言うと、自分も言わないといけないと思うんでしょうね。それでみんなが発言される」と女性を蔑視した発言をした。
JOCはスポーツ庁が定める競技団体の運営指針「ガバナンスコード」に沿って、女性理事を40%以上とする目標を掲げる。3日の議題にも上っていた
女性理事についての発言
(会議がオンラインで報道陣に公開されており)テレビがあるからやりにくいが、女性理事4割は、これは文科省がうるさくいうんでね(※スポーツ庁が示した競技団体が守るべき指針のガバナンスコードでは、女性理事40%以上が目標)。女性がたくさん入っている理事会は時間がかかります。(日本)ラグビー協会は(会議が)今までの倍、時間がかかる。女性が10人くらいいるのか、今、5人か。女性は優れており、競争意識が強い。誰か一人が手を挙げて言われると、自分も言わないといけないと思うんでしょうね。それでみんな発言される。あまり言うと新聞に漏れると大変だな。また悪口を言ったと言われる。女性を増やしていく場合は、「発言の時間をある程度、規制を促しておかないと、なかなか終わらないので困る」と言っておられた。誰が言ったかは言わないけど。私どもの組織委にも女性は何人いる? 7人くらいかな。みんなわきまえておられる。みんな競技団体からのご出身、また国際的に大きな場所を踏んでおられる方々ばかりです。お話もきちっと的を射ており、欠員があればすぐ女性を選ぼうとなる。
辞任否定も一転 後任の「指名」頓挫
森会長は4日、東京都内で記者会見し、「五輪・パラリンピックの精神に反する不適切な表現だった」として発言を撤回し、陳謝した。だが、会長職の辞任は否定した。
「(自ら)『五輪精神に反する』と認めている人が組織委会長として適任か」との質問に、森氏は「あなたはどう思うか」と聞き返し、記者が「適任ではない」と答えると「ではそういうふうに承っておきます」と回答。「そういう話はもう聞きたくない」「面白おかしくしたいから聞いているんだろう」と語気を強める場面も見られた。
森会長は12日、発言の責任を取って辞任を表明した。森氏から就任要請され、後任会長を受諾する考えを示していた元日本サッカー協会会長で組織委の評議員を務める川淵三郎氏(84)は、一転して要請を辞退した。
組織委幹部によると、11日に森氏と会談した川淵氏は、関係者の了承を条件に受諾する考えだった。しかし森氏による後継指名に「密室政治」と批判が高まり、川淵氏は一夜で就任要請を断った。
今夏の東京オリンピック・パラリンピックは、大会組織委員会の森喜朗前会長の女性を蔑視した発言で逆風が強まる。新型コロナウイルスの感染対策を徹底して開催を目指す菅政権にとっても機運醸成の思わぬブレーキとなった。大会が掲げる「多様性と調和」とも逆行している。
また、組織委員会は2021年2月8日、大会を支えるスポンサー企業を集めたオンライン会議を開き、発言を撤回した経緯を伝えた。会議では「五輪の理念から外れた発言で遺憾」など、組織委に対して苦言を呈する企業もあったという。
新型コロナの収束が見えない中、開催にこだわる政権・JOCと、開催を疑問視する世論の溝は深まるばかり。そこへ森会長の女性蔑視発言まで飛び出した。五輪をどうするのか。連載「#五輪をどうする」では、元オリンピアン、スポーツ経済学者、近現代史家、医師など、さまざまな立場の人と五輪を考える。
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