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毎年12月に京都市で開催される全国高校駅伝競走大会(都大路)を中心とした高校駅伝に関するニュースサイトです

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「多様性は分かるが…」苦渋の決定 高校駅伝留学生区間制限/上

2021年の大会で、先頭を走る留学生を追う洛南の佐藤圭汰選手(奥)=京都市で2021年12月26日、木葉健二撮影
2021年の大会で、先頭を走る留学生を追う洛南の佐藤圭汰選手(奥)=京都市で2021年12月26日、木葉健二撮影

 全国高校駅伝(22日・京都)は今回からルールが変わる。外国人留学生の起用が男女とも最短距離の3キロ区間のみに制限されることになった。判断の背景に何があったのか。

 ルール変更を決断したのは、大会実行委員会。全国高校体育連盟や毎日新聞社、日本陸上競技連盟などの関係者で構成する。

 ある委員は、留学生のルールを巡る判断の難しさについて、苦渋の表情を浮かべて語る。

 「どのようにルールを変えても、賛成、反対のどちらの意見も絶対に出る話。デリケートな問題だから……」

 全国高校駅伝の留学生区間制限に関するルール変更について2回に分けて配信します。
 上:「多様性は分かるが…」苦渋の決定
 下:現場の賛否さまざま「正解のない問い」

3度目の制限拡大

 留学生の出場制限は今回が最初ではない。

 都大路を留学生が走り始めたのは、1992年の仙台育英の男女のケニア出身選手から。翌93年には、仙台育英が男女とも留学生を2人ずつ起用し、そろって優勝した。

 すると、95年から「留学生の出場は1人まで」というルールに変わった。

 有力校の留学生はほぼ長距離大国のケニア出身だ。徐々に留学生を受け入れる学校が増え、エースの集う最長区間の1区(男子10キロ、女子6キロ)では、複数校の留学生が先頭集団を形成する展開が常態化した。

直近5大会の全国高校駅伝の男子3区、女子5区で区間賞の外国人留学生と日本人トップのタイム差
直近5大会の全国高校駅伝の男子3区、女子5区で区間賞の外国人留学生と日本人トップのタイム差

 「抜きつ抜かれつの駅伝の妙味が失われかねない」などの理由から、2008年には2度目の制限とし、1区は走れなくなった。

 しかし、以降も留学生が勝敗の鍵を握る流れは変わらなかった。

 男子は3区(8・1075キロ)、女子は最終5区(5キロ)という2番目に長い区間で、留学生を起用する学校が多かった。

 08~23年の16回の大会のうち、男子では11回、留学生を起用した学校が優勝した。大半は3区で区間賞を取り、トップに立っての逃げ切り勝ちだった。

 女子は、16回のうち、留学生を起用した学校の優勝は7回だったが、4回はアンカーでの逆転勝ち。7人抜きのようにインパクトのある走りが目立った。

 08年のルール変更から10年が経過した18年、全国高体連陸上専門部を中心にルールの再検討が始まった。翌19年には47都道府県の高体連陸上専門部を対象にアンケートを行った。

 すると、留学生について「(出場できる)区間の検討が望ましい」という選択肢を選んだ都道府県が7割を超えた。

直近5大会の全国高校駅伝の男子3区、女子5区で区間賞の外国人留学生と日本人トップのタイム差
直近5大会の全国高校駅伝の男子3区、女子5区で区間賞の外国人留学生と日本人トップのタイム差

 記述での回答には「留学生だけで勝敗が決まる。解消はぜひ」「08年以降も留学生の影響の大きさは変わっていない」「日本人選手と格が違いすぎる」などの言葉が並んだ。

 現役時代に留学生と同じ区間を走り、現在は指導者となった陸上関係者は「異次元で、すごいなという印象しかなかった。スタート前から諦める子もいるし、負けて心が折れてしまう子もいる」。自らの経験を踏まえ、力の差を語る。

 行き過ぎた勝利至上主義への懸念もあった。

 複数の関係者によると、指導者自らケニアへ選手のスカウトへ行き、「走れる選手」を探す学校もある。

 また、練習のために一定期間ケニアに帰国させる事例もあるという。

 アンケートでも「高校生として就学しているか疑問」「実際、留学生でなく、走るためだけの助っ人」など疑問の声が出ていた。

 留学生を受け入れる目的は「強化」だけではない。留学生は日本文化を学び、日本人選手は学校生活の中で異文化交流を図るという留学本来の趣旨で取り組む学校もある。

 留学生を抱えるある強豪校の監督は「高校生で外国人と接する教育効果は大きい。勉強の留学と同様にスポーツ留学も当然のこと」と強調する。

「駅伝らしいレースに」

 新型コロナウイルスの感染拡大の影響で検討は一時中断したが、22年に改めて、47都道府県の高体連陸上専門部にアンケートを取った。

2020年大会の最終5区で先頭争いをする世羅のテレシア・ムッソーニ選手(手前左)と神村学園のバイレ・シンシア選手(同右)=京都市内で2020年12月20日、藤井達也撮影
2020年大会の最終5区で先頭争いをする世羅のテレシア・ムッソーニ選手(手前左)と神村学園のバイレ・シンシア選手(同右)=京都市内で2020年12月20日、藤井達也撮影

 追加の制限が現実味を帯びてきたことで、慎重な意見も出た。

 「人権、差別に対する配慮の意見も一理あり。結論を出すのは時期尚早」「(留学生への)差別につながりかねないことは、すべきでない」

 国際化が進み、多様性が尊重されていることを踏まえた声だった。

 しかし、多くの都道府県は再び、留学生への区間制限に賛同した。

 ルール変更の議論に関わってきた大会関係者はこう強調する。

 「多様性の時代というのは分かる。しかし、勝利至上主義的ゆえに一定の制限をした方がいいのではないかとなった。決して、留学生を排除するわけでなく、一緒に盛り上がっていける方法を考えた。留学生だけで勝敗が決まらず、チームで争う駅伝らしいレースになってほしい」

 そもそも留学生の出場を全面的に禁止すべきだという意見はアンケートでもなかった。最終的に留学生への3度目の制限として、最短の3キロ区間の出場を認めるというルール変更に落ち着いた。

 全国高体連陸上専門部の中村拓也事務局長は「今回のルール変更が最終決定ではない。何年もかけて検討した結果として今回の区間制限に踏み切ったように、さらなる変更も生じるかもしれない」と説明する。

 運営側も悩んだ末に決まったルール変更だ。選手を指導する現場からもさまざまな声が出ている。【岩壁峻、皆川真仁、荻野公一】

【時系列で見る】

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