英国に「米国の核」再配備の動き ロシアの脅しが呼び戻す核の時代

冷戦終結後の90年代、強まっていた核軍縮の流れが逆転を始めている。ロシアはウクライナ侵攻後、その巨大な核戦力を「威嚇」に使うことをためらわなくなった。中国は核戦力強化に走り、北朝鮮は高度な核・ミサイル実験を繰り返している。これに対して欧州や東アジアで対抗する動きも目につき始めた。核を巡る国際秩序の現状を取材した。【レイクンヒース(英南部)で篠田航一】
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雲の切れ目から、ふと黒い点が見えた。徐々に降下し、翼のある戦闘機だと分かった頃には、もう耳をふさぎたくなるほどの轟音(ごうおん)が周囲一帯に響いていた。そして驚くほどのスピードで滑走路に着陸した。
英国の首都ロンドンから約100キロ北東にあるレイクンヒース空軍基地。今、目の前に着陸したのは米国の最新鋭ステルス戦闘機「F35」だ。英国の戦略上の要衝であるこの基地には、近く米国が「核兵器を持ち込む計画が進行中」(英BBC放送)と報じられている。日本の横田基地(東京都)や嘉手納基地(沖縄県)と同様に、ここも地元の国ではなく主に米軍が使用している。
もちろん英国自身も核保有国だ。英国唯一の核戦力である核弾道ミサイル「トライデント」を搭載する原子力潜水艦は、北部スコットランドに配備されている。だが首都からも近いレイクンヒース基地は特別だ。「滑走路も長く、F35も駐機する重要基地です。核の有無にかかわらず、ここは常にロシアによる標的となり得ます」。北大西洋条約機構(NATO)で核軍縮・軍備管理を担当してきた元高官で、英シンクタンク・国際戦略研究所(IISS)のウィリアム・アルバーク氏(53)はそう分析する。
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