政府が26日に閣議決定した安倍晋三元首相の国葬の費用は2億4940万円となり、過去の首相経験者の葬儀での負担額を上回った。海外の要人も含め多くの参列者が見込まれることなどを挙げて国民の理解を得たい考えだが、国葬そのものへの反対論は根強く、内閣支持率の急落の一因ともなった。政府は弔旗掲揚などを求める閣議了解は見送るなど世論の動向に神経をとがらせている。
政府、増額の正当性をアピール
2億4940万円となった国葬の費用は、弔意表明や法的根拠と並ぶ焦点の一つだった。国の儀式として執り行う国葬は全額国費で賄う。新型コロナウイルス禍や物価高が続く中で、税金投入には世論の厳しい視線が注がれている。どこまで理解が広がるかは見通せていない。
松野官房長官は26日の記者会見の冒頭、「2020年に行われた中曽根康弘元首相の内閣・自民党合同葬から約5700万円増となる」と言及した。式典参列者以外の一般向けの献花台の設置▽多数の海外要人に対応した同時通訳の確保▽複数の出入り口に設置する金属探知機などの警備体制▽参列者6000人規模に対応した移動用バスの手配やしおりの準備など――と増額理由を矢継ぎ早に説明。増額の正当性をアピールした。
費用を巡っては、岸田首相が7月14日の会見で、閣議決定を根拠に国葬を行う方針とともに、全額国費で賄うと説明した。ところが直後からツイッターなどで「国民の同意なしに税金を使うな」などと批判が相次いだ。野党も「税金を使うのだから、国会でちゃんと説明すべきだ」と政府追及を強めた。
こうした批判を踏まえ、政府は8月9日の野党合同ヒアリングで、中曽根氏の合同葬の費用2億円弱を「一つの指標として検討している」と説明した。ただ、中曽根氏の合同葬はコロナ禍の影響で参列者数が約600人にとどまっていた。今回の国葬とは規模が大きく異なるため、コストアップは必至とみられていた。
官邸幹部は…
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