思わず口に出る無自覚の「差別」 マイクロアグレッションとは
「マイクロアグレッション」という言葉をご存じだろうか。人種や民族、ジェンダー、性的指向などのマイノリティーに対して思わず出てしまう侮辱的な言葉や見下した態度を指す概念だ。東京オリンピック・パラリンピック組織委員会会長の辞任を表明した森喜朗氏(83)の女性蔑視発言も、その一種ととらえることもできる。こうした言動は何も一部の人だけがするわけではなく、誰もが当事者になる可能性がある。マイクロアグレッションはなぜ起きるのか。どう対処すればいいのか。【金志尚/統合デジタル取材センター】
名刺交換で言われる「日本語上手ですね」
マイクロアグレッションは白人優位の社会で黒人がさらされる侮辱や見下しを表す概念として、1970年代に米国で生まれた。黒人に対する「感情的」「知的能力が低い」といった根拠のない言説が典型例だ。現在は人種や民族だけでなく、あらゆるマイノリティーに向けられることが明らかになっている。
ここで、私自身の経験を紹介したい。
在日コリアン3世の私(36)は韓国籍だが、生まれも育ちも日本である。家では日本語を使い、小学校から大学までごく一般的な学校(学校教育法第1条に基づくいわゆる「1条校」)に通ってきた。その一方、ルーツを大切にしてほしいという両親の思いから通名ではなく本名をずっと名乗っている。朝鮮半島にルーツを持つことを大事にしながら、日本社会に軸足を置く――これが私の選んだ生き方だが、社会に出ると周囲の認識とのギャップに直面してきた。
「日本語上手ですね」「いつから日本にいるんですか」。名刺交換の際にあいさつを交わすと、こんな反応が返ってくることがある。日本生まれであることを説明すると「じゃあ日本人と同じだ」。逆に私が韓国籍だと知って、韓国政府の立場について説明を求めてくる人もいた。そういうときは大抵、日韓関係がギクシャクしている。
初対面の人ばかりではない。「取材で韓国語が必要になったから通訳を頼めないか」。以前、職場の上司からこんな依頼をされた。私は前述の通り一貫して日本の学校に通っている。個人的に韓国語の勉強はしているが、仕事で使えるほど堪能ではない。そのことを伝えると、上司から返ってきたのは「アンニョンハセヨ(こんにちは)ぐらいか」という、嘲笑を含んだひと言だった。
善意で言う場合も…
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