甘利氏辞任と日銀初のマイナス金利
日記
28日の甘利元経済再生担当相の「電撃」辞任は相当なサプライズだったが(直前の各TV局のニュース番組でも、すべてのコメンテーターが「当面、続投」という予想だった)、その直後の日銀「マイナス金利」導入には、もっと驚かされた。
えっ!「マイナス金利」ってどういうこと?と、ほとんどの方は(私もそうだが)思われたのではないか。銀行に預金すれば、本来なら利子がもらえるはずなのに、逆に預けた方が利子を払わなくてはならないというのは、全く一般人の常識に反している。というわけで、本日の東京新聞は1面で、朝日新聞も2面で、「マイナス金利とは?」というQ&A形式の解説記事を掲載していた。
まず、「マイナス金利」というのは民間の銀行が日銀に預けている当座預金の利率の話で、一般の人が民間銀行に預ける預金では、そんなことはあり得ない(銀行にお金を預けて利息を払わなければならないなら「タンス預金」にした方が賢いし、今預けている預金についても、引出そうとする人々が銀行に殺到し、大騒ぎになるだろう)。
要するに、この金融政策の狙いは銀行が日銀に預けるお金を減らして(日銀に預ければ銀行は「損」をするわけだから)、その分を企業などの貸し出しに回すことによって、投資や消費を増加させる、ということにあるらしい。私も全く知らなかったのだが、少し調べてみると、ヨーロッパでは「デフレ傾向」への対策としてすでにマイナス金利を導入している国もあるようだ。
しかし、すでにマイナス金利を導入しているヨーロッパでもそうなのだが(期待した成果が上がっておらず、むしろ弊害が目立ってきている)、この政策が本当に効果があるかは、「きわめて不明確」というのが、(ネット上で見つけた)多くの専門家の意見だ。
東京・朝日の両新聞の解説もおおむね同様で、この「大胆」とも言える政策の効果は全くの未知数、というところだろう。(この方針を決めた金融政策決定会合での賛成5、反対4という数字がそれを象徴している。)
政策の効果に疑問を感じる最大の要因はやはり、少子化による国内需要の減少といった、日本経済の構造的な問題があるからだ。その条件下では、いくら銀行に資金貸し出しを促しても、肝心の企業が借入れを増やしてまで設備投資に意欲を燃やすとは考えにくい。
このブログでも何度か指摘したように、日本のデフレは構造的な「需要の縮小」によるものだ。それを改善するには、「金融政策」というトップダウンではなく、「所得の再分配」によるボトムアップの政策しかない。1%に儲けさせるのではなく、99%のフトコロを暖め(可処分所得を増大)、GDPの6割を占める個人消費を喚起させるのが最も「現場の状況(日本の構造的問題)」に即した解決策であるし、デフレに対する「根本療法」であるはずだ。
それにしても今回、多くの経済専門家も、まさか日銀がこの「マイナス金利」にまで踏み込むとは思っていなかったフシがある。ある意味、専門家の間でも「禁じ手」と考えられていたわけだ。それをあえて5対4というギリギリの選択をしたのは、政府・日銀によほどの危機感があったに違いない。
あるネット記事によると、甘利元大臣の辞任ショックで株価急落、という事態を防ぐためという意味もあるとのこと。実際、このマイナス金利発表後、株価は急上昇している。(もちろんこれは、いわば「ギャンブル的」な株価の動きなので、今後も乱高下するのは避けられないだろう。)
甘利元大臣の不正献金疑惑による辞任といい、この唐突な、日銀の「異次元の(という表現もこれで3回目だが)」金融政策といい、安倍政権も相当に危ない局面に来ているのかも知れない。
安倍首相は「アベノミクスは今が正念場だ」などと言っているが、アベノミクスの失敗は今や明らかだ。日本国内では、それが分かっていながら?いまだに擁護的な論調が目立つが、海外からは厳しい目がそそがれている。(以下の記事は、先ほど述べた人口減による構造的な問題や、またいわゆる「リフレ派」経済学者やその政策のいい加減さについても指摘されているので、是非お読みいただきたい。)
アベノミクスは終わった…海外主要メディアによる「死刑宣告」を比較
日本のメディアも、きちんとデータに基づいて、「政権よりでない」、「客観的な」報道をすべきだと思う。例えば、安倍政権が誕生してからの3年間の実質GDPの伸び率は2.4%で、民主党政権時代の実質GDP伸び率は5.7%。半分以下だ。
【驚愕】アベノミクスの「GDP伸び率」、民主党政権に敗北!民主党の実質GDPは5.7%増加!安倍政権は2.4%に・・・
どこが、「経済再生」なのだろう。こういうことを、メディアはもっときちんと分かりやすく伝えるべきだ。(さすが東京新聞は、「こちら特報部」で「アベノミクスを検証する」として、この数字を示していた。)
(追記: さきほどBBC Japanの、とても的確で簡潔な「マイナス金利」についてのコメントを見つけたので、以下に追記してご紹介したい。さすがBBC。)
日銀、マイナス金利導入 追加緩和策で
(2016-1-30)
えっ!「マイナス金利」ってどういうこと?と、ほとんどの方は(私もそうだが)思われたのではないか。銀行に預金すれば、本来なら利子がもらえるはずなのに、逆に預けた方が利子を払わなくてはならないというのは、全く一般人の常識に反している。というわけで、本日の東京新聞は1面で、朝日新聞も2面で、「マイナス金利とは?」というQ&A形式の解説記事を掲載していた。
まず、「マイナス金利」というのは民間の銀行が日銀に預けている当座預金の利率の話で、一般の人が民間銀行に預ける預金では、そんなことはあり得ない(銀行にお金を預けて利息を払わなければならないなら「タンス預金」にした方が賢いし、今預けている預金についても、引出そうとする人々が銀行に殺到し、大騒ぎになるだろう)。
要するに、この金融政策の狙いは銀行が日銀に預けるお金を減らして(日銀に預ければ銀行は「損」をするわけだから)、その分を企業などの貸し出しに回すことによって、投資や消費を増加させる、ということにあるらしい。私も全く知らなかったのだが、少し調べてみると、ヨーロッパでは「デフレ傾向」への対策としてすでにマイナス金利を導入している国もあるようだ。
しかし、すでにマイナス金利を導入しているヨーロッパでもそうなのだが(期待した成果が上がっておらず、むしろ弊害が目立ってきている)、この政策が本当に効果があるかは、「きわめて不明確」というのが、(ネット上で見つけた)多くの専門家の意見だ。
東京・朝日の両新聞の解説もおおむね同様で、この「大胆」とも言える政策の効果は全くの未知数、というところだろう。(この方針を決めた金融政策決定会合での賛成5、反対4という数字がそれを象徴している。)
政策の効果に疑問を感じる最大の要因はやはり、少子化による国内需要の減少といった、日本経済の構造的な問題があるからだ。その条件下では、いくら銀行に資金貸し出しを促しても、肝心の企業が借入れを増やしてまで設備投資に意欲を燃やすとは考えにくい。
このブログでも何度か指摘したように、日本のデフレは構造的な「需要の縮小」によるものだ。それを改善するには、「金融政策」というトップダウンではなく、「所得の再分配」によるボトムアップの政策しかない。1%に儲けさせるのではなく、99%のフトコロを暖め(可処分所得を増大)、GDPの6割を占める個人消費を喚起させるのが最も「現場の状況(日本の構造的問題)」に即した解決策であるし、デフレに対する「根本療法」であるはずだ。
それにしても今回、多くの経済専門家も、まさか日銀がこの「マイナス金利」にまで踏み込むとは思っていなかったフシがある。ある意味、専門家の間でも「禁じ手」と考えられていたわけだ。それをあえて5対4というギリギリの選択をしたのは、政府・日銀によほどの危機感があったに違いない。
あるネット記事によると、甘利元大臣の辞任ショックで株価急落、という事態を防ぐためという意味もあるとのこと。実際、このマイナス金利発表後、株価は急上昇している。(もちろんこれは、いわば「ギャンブル的」な株価の動きなので、今後も乱高下するのは避けられないだろう。)
甘利元大臣の不正献金疑惑による辞任といい、この唐突な、日銀の「異次元の(という表現もこれで3回目だが)」金融政策といい、安倍政権も相当に危ない局面に来ているのかも知れない。
安倍首相は「アベノミクスは今が正念場だ」などと言っているが、アベノミクスの失敗は今や明らかだ。日本国内では、それが分かっていながら?いまだに擁護的な論調が目立つが、海外からは厳しい目がそそがれている。(以下の記事は、先ほど述べた人口減による構造的な問題や、またいわゆる「リフレ派」経済学者やその政策のいい加減さについても指摘されているので、是非お読みいただきたい。)
アベノミクスは終わった…海外主要メディアによる「死刑宣告」を比較
日本のメディアも、きちんとデータに基づいて、「政権よりでない」、「客観的な」報道をすべきだと思う。例えば、安倍政権が誕生してからの3年間の実質GDPの伸び率は2.4%で、民主党政権時代の実質GDP伸び率は5.7%。半分以下だ。
【驚愕】アベノミクスの「GDP伸び率」、民主党政権に敗北!民主党の実質GDPは5.7%増加!安倍政権は2.4%に・・・
どこが、「経済再生」なのだろう。こういうことを、メディアはもっときちんと分かりやすく伝えるべきだ。(さすが東京新聞は、「こちら特報部」で「アベノミクスを検証する」として、この数字を示していた。)
(追記: さきほどBBC Japanの、とても的確で簡潔な「マイナス金利」についてのコメントを見つけたので、以下に追記してご紹介したい。さすがBBC。)
日銀、マイナス金利導入 追加緩和策で
(2016-1-30)