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「大飯原発3、4号機運転差し止め訴訟」の福井地裁判決

日記
05 /22 2014
 すでに多くのメディアで報じられているように、昨日、大飯原発3、4号機の運転再開差し止めという画期的な判決が、福井地裁より出された。

 以下の原子力資料情報室のサイトに、判決文の謄本が公開されているので、是非ご覧いただきたい。

 http://www.cnic.jp/5851

 判決文は、差し止めの判断に至った最も重要な論点である安全性について、科学的・技術的に詳細な議論を展開した上で、関電の地震に対する想定や安全性に対する考え方の甘さを「国民の生存を基礎とする人格権を放射性物質の危険から守るという観点からみると、本件原発に係る安全技術及び設備は、万全ではないのではないかという疑いが残るというにとどまらず、むしろ、確たる根拠のない楽観的な見通しのもとに初めて成り立ち得る脆弱なものであると認めざるを得ない」と厳しく指摘している。(上記の資料の後半、64ページ、「7 本件原発の現在の安全性と差し止めの必要性について」)

 今回、判決文を読んで、この安全性に対する徹底した議論にも感銘を受けたが、私が今回の判決で特に深い感銘を受けたのは、福井地裁が示した高い「司法倫理」である。

 「当裁判所は、極めて多数の人の生存そのものに関わる権利と電気代の高い低いの問題等を並べて論じるような議論に加わったり、その議論の当否を判断すること自体、法的には許されないことであると考えている。・・・このコストの問題に関連して国富の流出や喪失の議論があるが、たとえ本件原発の運転停止によって多額の貿易赤字が出るとしても、これを国富の流出や喪失というべきではなく、豊かな国土とそこに国民が根をおろして生活していることが国富であり、これを取り戻すことができなくなることが国富の喪失であると当裁判所は考えている。」(上記の資料の後半、66ページ、「9 被告のその他の主張について」)

 あらためて、素晴らしい判決だと思う。原告の「関電は控訴しないで欲しい」という強い要望にも関わらず、本日、関電は控訴したが、上級審においても、これだけ徹底した安全性に関する議論を覆すのは相当な困難があると思う。それを「無理押し」で覆そうとするならば、まさに「司法の良心」が問われることになるだろう。

(2014-5-22 by 山猫軒)

「たちかぜ裁判」原告完全勝訴!!

日記
05 /09 2014
・海上自衛隊いじめ自殺事件 原告勝訴!
 護衛艦「たちかぜ」の乗組員(当時21才)が自殺したのはいじめが原因だったとして、東京高裁は4月23日、国と加害者である元二曹に約七千三百万円の支払いを命じた。一審判決では「自殺を予測できなかった」と死亡に対する賠償責任は認められなかったが、二審では「重要な証拠となる内部アンケートなどを隠した」と海自の隠蔽を認定し、「上司が元二曹に適切な指導をしていれば自殺する事態は回避できた可能性がある」と死亡に対する自衛隊の責任を認め、賠償額を増額した。

・たちかぜ裁判とは
 21才の「たちかぜ」乗組員が上官である元二曹から度重なる暴行・恐喝を受け続けたために絶望し2004年10月27日に自殺した。遺書には元二曹への怒りの言葉が綴られており、海自は暴行・恐喝の実態把握のために乗組員にアンケートを実施していたが、一審ではアンケートを「破棄した」と隠していた。しかし、現役自衛官が「証拠隠しは不正なことである」と内部告発したことによってアンケートの存在が明るみに出て、海自は「探したら見つかった」と、やっと証拠を裁判所に提出し、一審では隠されていた被害の実態があきらかになった。この裁判は自衛隊の隠蔽体質を断じ、自衛隊に被害者の死亡の責任を認めさせ、被害者の名誉の回復を勝ち取るたたかいだった。

・秘密保護法で真実は隠される
 防衛機密でもなんでもないアンケートを、自衛隊は裁判でわざわざ隠した。今回一審で国側代理人を務めた自衛官が明らかにしなければ、いじめの実態や被害者のその時の様子などは闇に葬られていたかもしれない。組織が「無い」としたものを正義に照らして判断して「有る」と言うのは、大変に勇気がいることだったと想像できる。しかし秘密保護法が制定された現在、機密情報がなんであるかも秘密であるために、機密でない情報の告発もしにくくなると懸念される。今回の裁判にあてはめて考えると、アンケートが機密情報であるのかないのかがわからず、もし機密情報であれば、漏えいすると最高懲役10年になる刑罰が加えられる可能性がある秘密保護法の適用を恐れて、内部告発をためらうというような事態になるかもしれない。正義の内部告発者が逮捕されることを恐れなければならないような社会は本当に恐ろしい。秘密保護法は、この裁判によって欠陥悪法であることが鮮明になった。廃止するしかない。

・自衛隊は悲劇を繰りかえすな!
 自衛隊は訓練中の重大事故が多く、死亡事故の実態も明らかにされていない。自殺も他の職場に比べて格段に多い。秘密主義であり、内部で暴行や恐喝があっても周囲は見て見ぬふりをする。事実この裁判でも自衛隊は真実を隠し平気でうそをつき続けた。隠蔽することが組織を守ることになると思っている幹部が自衛隊を掌握し、真実の内部告発をした自衛官を懲戒にかけようとしている。一方で自衛隊は就職活動をする若者をターゲットにして、就職が困難で不安な気持ちになっているのにつけこんで、甘い言葉でリクルート活動を行っている。組織の真実を隠して勧誘しているのである。こんな組織ではいつ次の被害者がでてしまってもおかしくないが、二度と悲劇を繰り返してはならない。この判決を機に亡くなった乗組員に心から謝り、二度とこのような事件がおきないように組織を密室にしないこと、いじめを見て見ぬふりしないことが自衛隊組織に求められるのではないか。私たちも自衛隊の存在を考え続け、根本からの改善を行動をもって求め続けなければならない。

(2014-5-9 by ガラ)

国際社会で尽くすべきは武力に頼らない、ねばり強い平和外交

日記
05 /05 2014
 武器輸出より、平和憲法の輸出を!

 武器を作り続け、利益を得る。武器の消費を促すには、常に紛争を持続させなければならない。生れる負の連鎖、これに日本も加担することを是とするか否か。経済成長の名のもとに、日本が大きくリスクを背負う泥沼に突き進む道を選ぶのか。安倍政権の積極的平和主義と言う美名のもと、集団的自衛権の行使へと向かう動きが現実味を帯びつつある。閣内の異論さえも無視し、安倍総理の独断専行状態が続いている。

 暴走する安倍総理、日本はどこに向かうのか。差し迫った危機的状況にいかに歯止めをかけていくか。これまで試みてきた手法、街頭宣伝、チラシ配布、講演会・集会など。これだけでは、より多く人々の心を掴むことはむつかしい。こうしたアクションや理論、地道な訴えが必要なことは当然だが、それ以上に「国民や人々の共感を得るとはどういうことか、何が不足しているのか」を考えていくことが、私にも求められている。正論を吐いているから大丈夫、と自己満足してはいなかったか。人々の心に届く言葉になっていたか。とはいえ、得手不得手がある。技術論を言っているのではない。人々の暮らし共にあるという意識と目線を忘れない。そこに勘違いはないかという反省と、実際の行動が求められている。

 サッカーのバナナ事件に対しては、人種差別に抗議する行動が世界中に、瞬く間に広がった。差別を許さない、差別をされる側に共感する力を、世界の多くの人たちが持っていたからだろう。深く考えさせられる。

 先日、横浜弁護士会が開催した「高橋哲也さんと考える集団的自衛権の何が問題か」の講演で、最後の提言は刺激的だ。
 戦争絶滅法(案)「国家元首は戦時には砲弾飛び交う最前線に行くべし、その家族も。同じく官僚、集団的自衛権行使に賛成した国会議員、宗教者も」といった具合、リアルだ。今後の街頭宣伝では、この高橋教授の提案を使おうと考えている。

 集団的自衛権を声高に叫ぶ人たちは、自衛隊員を命令ひとつで有無を言わさず戦時の前線に送りだし、自らは血を流す前線に行く事はない、「自分たちは将棋の駒を動かす立場」と思いあがった、非情な指導者たちなのだ。

 集団的自衛権について、いかようにも解釈改憲できる事態を許せば、憲法の全条文が時々の政権によって都合よく解釈できる前例となり、立憲主義の崩壊、国民主権をないがしろにする方向に突き進むだろう。

 「国民が戦争の加害者になることも、被害者になることも拒否する」運動を展開しよう。
 私は誰も殺さない、誰からも殺されない、平和が一番と。

(2014-5-5 by 湘南のおてもやん 木村えい子)

憲法についての世論調査

日記
05 /03 2014
 毎年、憲法記念日が近づくと、各社とも憲法に関連した世論調査を発表する。ネット上で見ることができる世論調査の例として、東京新聞とNHKのものを見てみよう。

 東京新聞の世論調査
 NHKの世論調査

 「憲法9条は変えない方が良い」は、東京新聞の調査での62%に対してNHKの調査では38%。これを見て、どうしてこんなに違うのか? そもそも世論調査なんて信頼できるのか? と思うかもしれない。

 「新聞やTVなど報道機関によって世論調査の結果が違うのは、それぞれのメディアの購読者や視聴者が元々偏っているからではないのか?」と考えたりする人がときどきいるが、少なくとも「まともな」世論調査はちゃんとした統計的な理論に基づいて実施されていて、もちろん調査の対象はそのメディアの購読者ではなく、全国の有権者をランダムにサンプリングして行われているはずである(RDDと呼ばれている、無作為に発生させた電話番号で調査対象を選ぶのは、そのランダムサンプリングの一手法である)。

 世論調査に詳しい専門家によると、こういう違いが出てくるのは多くの場合、設問の順番や組み合わせ方、質問そのものの文章の違いによるらしい。(統計調査の方法自体が間違っているわけではない。)

 「質問の仕方で異なる結果が出てくる」好例が、まさにNHKの世論調査の選択肢にある。NHKの調査では「どちらともいえない」という選択肢が常にあって、実はこれが「多数派」であることが多い。こういう選択肢を設ければ、結果が曖昧(要するに「最大多数の人たちは賛成でも反対でもない」ということだから。)になってしまうことは否めない。

 この「どちらともいえない」という選択肢は、何か「自分では(自主的に)判断できない」という人が多いことを前提としているようで、私などこんな質問をされたら「私を馬鹿にしているのか?」と腹を立てそうだが、これは余談。

 このような質問の選択肢を設定する場合、賛成なのか反対なのか分からない「どちらともいえない」ではなくて、「どちらかといえば賛成」「どちらかといえば反対」という選択肢を設け、「賛成」「反対」と合わせて4択にするのがより自然な質問方法だと考えられる。

 NHKの調査でこの「9条改正に賛成か反対か」の質問に対し、この「どちらでもない」という回答は32%だった。確率的に考えて、この半分が単純に「どちらかといえば反対」だったとしよう。そうすると「反対」と「どちらかといえば反対」を含めた「9条改正に反対」のパーセンテージは38+16=54%となり、東京新聞の調査結果とかなり近くなってくる。これが、「質問の設定方法などにより結果が変わる」カラクリの一端である。

 いずれにしろ、そういった事情があるので、絶対的な数字としては調査機関によって幅があるものと考えた方が良いのだが、ここで挙げた二つの調査の例で最も注目すべき重要なことは、「いずれの調査でも、以前の調査結果よりも『改正反対』が増えている」という事実だ。(NHKの方は説明の文章にそれが書かれておらず不親切なのだが、埋め込まれた動画を再生して見ていただくと分かると思う。)

 これこそ、我々市民や多くの学者たちが「自民党の憲法改正案はおかしい!」「集団的自衛権なんてとんでもない!」「安倍政権の解釈改憲は許さない!」「『戦争のできる国』にするな!」と声を上げ続けてきた成果ではないだろうか。

 自民党の憲法改正案の危険性(なかでも特に「立憲主義の破壊」という側面)を我々が訴え始めた頃は、「立憲主義」という言葉そのものや、「憲法は国民を縛るものではなく、権力を縛るもの」という考え方などは、現在ほど一般的に理解されてはいなかったように思う。世論調査に見られる変化は、多様な運動を通じて、この問題に対する多くの人の理解が深まった結果だろう。

 平和と民主主義を守ろうとする勢力は今、戦後最大の危機に立たされているが、あきらめずに声をあげ続ければ、世論も変えていくことができるのだ。これからも頑張ろう!

(2014-5-3 by 山猫軒)