日銀、マイナス金利導入 追加緩和策で

Yen notes

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日本銀行は29日に開いた金融政策決定合で、追加的な金融緩和策としてマイナス金利の導入を決めた。

日銀は金融機関から預かる当座預金の一部に0.1%のマイナス金利を適用する。主に影響を受けるのは銀行間取引で、預金者の預金金利などには直接影響しない。

日銀は追加緩和によって、物価上昇率および経済成長率の引き上げを狙っている。当座預金へのマイナス金利導入で、金融機関が余剰資金を滞留させる動機が少なくなり、企業などへの貸し出しが増えることを期待している。

29日に発表された12月の消費者物価指数は、変動の大きい生鮮食品を除いたコア指数が前年同月比0.1%の上昇だったが、日銀が目標とするインフレ率2%には遠く及ばない水準となっている。

同日発表された12月の鉱工業生産指数は前月比1.4%低下し、予想を下回った。低下は2カ月連続で、外需と内需ともに弱い状況が浮き彫りになった。

29日午後に記者会見した黒田東彦日銀総裁は、追加策を決めた理由に世界経済の先行き不透明性を挙げた。

黒田総裁は、日本経済は緩やかな回復を続けており、物価の基調は着実に改善しているとしながらも、原油価格のさらなる下落や、中国を含む新興国経済の見通しの不透明性、世界的な市場の不安定化が企業心理を弱め、デフレマインドが払拭される時期を遅らせる可能性があると述べた。

日銀の決定を受けて、アジア株式市場は軒並み上昇し、円の為替レートは下落した。一方、日本の銀行株は、さらなる利ざやの縮小見通しから売られた。

最後の手段

しかし、追加策の効果については疑問視する声も出ている。

富士通総研のマルティン・シュルツ上席主任研究員は、「マイナス金利は日銀が持つ手段の最後のひとつだ」としたものの、「インパクトはそれほど大きくないだろう」と語った。

同氏は、ユーロ圏がマイナス金利を導入したのは金融危機に対応するためで、日本の長引く低成長とは違うと指摘し、「日本で信用拡大が起きなかったのは、銀行が融資を渋ったのではなく、企業が借り入れが必要になる投資機会を見いだせなかったためだ。マイナス金利をもっても、状況は変わらないだろう」と語った。

同氏はさらに、「企業は資金を必要としていない。必要なのは投資機会だ。それは構造改革によって実現するもので、金融政策によってではない」と述べた。

今回の追加策の前に日銀はすでに大規模な量的緩和策を導入しているが、経済成長率を大幅に押し上げるには至っていない。

(英語記事 Japan adopts negative interest rate in surprise move)