参議院、平和安全法制特別委員会の議事録を公開
日記
9月17日の参議院平和安全法制特別委員会での採決は「存在せず、無効である」として、採決無効の確認と審議続行を求める署名活動について、先日のブログで紹介した。昨日、その委員会議事録の最終稿が、参議院ホームページに公開された。
第189回国会 我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別委員会 第21号
平成二十七年九月十七日(木曜日)
読みにくいかもしれないが、以下の箇所に注目していただきたい。
-------------------------------------------------------------------------------------
〔理事佐藤正久君退席、委員長着席〕
○委員長(鴻池祥肇君) ……(発言する者多く、議場騒然、聴取不能)
〔委員長退席〕
午後四時三十六分
────・────
本日の本委員会における委員長(鴻池祥肇君)復席の後の議事経過は、次のとおりである。
速記を開始し、
○我が国及び国際社会の平和及び安全の確保
に資するための自衛隊法等の一部を改正す
る法律案(閣法第七二号)
・・・・・
(中略 --- ここは、審議中の各法案の名称を羅列している箇所である)
・・・・・
右両案の質疑を終局した後、いずれも可
決すべきものと決定した。
なお、両案について附帯決議を行った。
─────・─────
-------------------------------------------------------------------------------------
他の部分を見るとわかるように、通常の議事録は議員や委員長などの発言内容を一字一句、正確に記述している。ところが、上記の────・────で囲まれた部分だけ、(発言を一字一句記録した)速記録が残っていないため、あとで「まとめた」文章になっている。これでは、いかようにも「でっち上げ」できるではないか、と批判されても仕方がなかろう。
要は、野党議員はもちろん(多分、与党議員のほとんども)、速記者も何が起こっているのか、何が発言されているのか聞こえず、記録も残せないまま、「採決がされた」ということにしてしまったのだ。
東京新聞は、本日の朝刊トップでこの問題を報じている。
安保法「聴取不能」の議事録 与党判断で「可決」追記
この記事によると、今月八日に参院事務局担当者がこの議事録を民主党の福山氏に示したが、福山氏は「委員長が追加部分を議事録に掲載するよう判断したとしても、理事会を開いて与野党で協議する話だ」と了承しなかった、という。
速記録が存在しない部分を補うとしても、理事会で与野党が協議して合意することが、正式の議事録決定のためには当然のことだろう。要は、与党側が勝手に存在しない部分を追記し、正式の議事録としてしまった、ということだ。
こんないい加減な議事の進め方が許されるはずがない。この決議過程の法的瑕疵については、先日も書いた通り、126人の弁護士有志が指摘し、声明を出している。
残念なのは、この議事録について報道したのが東京新聞一社だけ、ということだ。私は東京新聞と朝日新聞を購読しているが、残念ながら、朝日の方にはこれに関連する記事はなかった。ネットでも検索してみたが、毎日なども取り上げていないようだった。
この委員会での「偽りの『議決』」は民主主義のルールを真っ向から否定する暴挙として、決して看過できないものだ。こういうことを書くと、「そんな細かいことを、ああだこうだと言うな」という人がいる。それこそ、今の日本を蝕む「反知性主義」的態度だろう。このような重大なことは、それこそ細かく、しつこく客観的事実と「理性」によって検証すべきなのに、そういう「理屈」自体を否定するのだ。
佐藤優さんの「知性とは何か」によると、反知性主義とは「実証性や客観性を軽視もしくは無視して、自分が欲するように世界を理解する態度」だ。自分の思うように世界を動かしたい。理性的・客観的な議論を避け、批判者の声には一顧だにしない。まさに今のアベ政治そのものだ。
メディアは、そのような反知性主義に対してこそ、意図的に戦っていかなくてはならない。ナチスの教訓は、反知性主義がファシズムの温床であることを教えている。その意味で、東京新聞以外のメディアがこの問題を取り上げていないのはとても残念だ。
(2015-10-12)
(2015-10-13追記) 「東京新聞一社しかこの問題を取り上げていないのは残念」と書いたが、毎日新聞は本日のネット版でこの問題を取り上げている。毎日新聞に敬意を表明し、ここに追記してご紹介したい。
<参院・安保法案>採決委員長発言「聴取不能」 議事録公表
第189回国会 我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別委員会 第21号
平成二十七年九月十七日(木曜日)
読みにくいかもしれないが、以下の箇所に注目していただきたい。
-------------------------------------------------------------------------------------
〔理事佐藤正久君退席、委員長着席〕
○委員長(鴻池祥肇君) ……(発言する者多く、議場騒然、聴取不能)
〔委員長退席〕
午後四時三十六分
────・────
本日の本委員会における委員長(鴻池祥肇君)復席の後の議事経過は、次のとおりである。
速記を開始し、
○我が国及び国際社会の平和及び安全の確保
に資するための自衛隊法等の一部を改正す
る法律案(閣法第七二号)
・・・・・
(中略 --- ここは、審議中の各法案の名称を羅列している箇所である)
・・・・・
右両案の質疑を終局した後、いずれも可
決すべきものと決定した。
なお、両案について附帯決議を行った。
─────・─────
-------------------------------------------------------------------------------------
他の部分を見るとわかるように、通常の議事録は議員や委員長などの発言内容を一字一句、正確に記述している。ところが、上記の────・────で囲まれた部分だけ、(発言を一字一句記録した)速記録が残っていないため、あとで「まとめた」文章になっている。これでは、いかようにも「でっち上げ」できるではないか、と批判されても仕方がなかろう。
要は、野党議員はもちろん(多分、与党議員のほとんども)、速記者も何が起こっているのか、何が発言されているのか聞こえず、記録も残せないまま、「採決がされた」ということにしてしまったのだ。
東京新聞は、本日の朝刊トップでこの問題を報じている。
安保法「聴取不能」の議事録 与党判断で「可決」追記
この記事によると、今月八日に参院事務局担当者がこの議事録を民主党の福山氏に示したが、福山氏は「委員長が追加部分を議事録に掲載するよう判断したとしても、理事会を開いて与野党で協議する話だ」と了承しなかった、という。
速記録が存在しない部分を補うとしても、理事会で与野党が協議して合意することが、正式の議事録決定のためには当然のことだろう。要は、与党側が勝手に存在しない部分を追記し、正式の議事録としてしまった、ということだ。
こんないい加減な議事の進め方が許されるはずがない。この決議過程の法的瑕疵については、先日も書いた通り、126人の弁護士有志が指摘し、声明を出している。
残念なのは、この議事録について報道したのが東京新聞一社だけ、ということだ。私は東京新聞と朝日新聞を購読しているが、残念ながら、朝日の方にはこれに関連する記事はなかった。ネットでも検索してみたが、毎日なども取り上げていないようだった。
この委員会での「偽りの『議決』」は民主主義のルールを真っ向から否定する暴挙として、決して看過できないものだ。こういうことを書くと、「そんな細かいことを、ああだこうだと言うな」という人がいる。それこそ、今の日本を蝕む「反知性主義」的態度だろう。このような重大なことは、それこそ細かく、しつこく客観的事実と「理性」によって検証すべきなのに、そういう「理屈」自体を否定するのだ。
佐藤優さんの「知性とは何か」によると、反知性主義とは「実証性や客観性を軽視もしくは無視して、自分が欲するように世界を理解する態度」だ。自分の思うように世界を動かしたい。理性的・客観的な議論を避け、批判者の声には一顧だにしない。まさに今のアベ政治そのものだ。
メディアは、そのような反知性主義に対してこそ、意図的に戦っていかなくてはならない。ナチスの教訓は、反知性主義がファシズムの温床であることを教えている。その意味で、東京新聞以外のメディアがこの問題を取り上げていないのはとても残念だ。
(2015-10-12)
(2015-10-13追記) 「東京新聞一社しかこの問題を取り上げていないのは残念」と書いたが、毎日新聞は本日のネット版でこの問題を取り上げている。毎日新聞に敬意を表明し、ここに追記してご紹介したい。
<参院・安保法案>採決委員長発言「聴取不能」 議事録公表