黒岩知事の「あいちトリエンナーレ」に関する発言に強く抗議する。
日記
社民党神奈川県連合は9月10日、黒岩知事の「あいちトリエンナーレ」に関する抗議文を神奈川県庁に提出しました。以下に、その全文を掲載いたします。
2019年9月10日
神奈川県知事
黒岩祐治 殿
社会民主党神奈川県連合
代表 福島みずほ
黒岩祐治神奈川県知事の「あいちトリエンナーレ」に関する発言に強く抗議し、 発言の撤回と謝罪を求める。
黒岩祐治神奈川県知事は8月27日の定例記者会見で、国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」の「表現の不自由展・その後」について、「もし、同じようなことが神奈川県であったとしたら、私は認めません」、「慰安婦像」(「平和の少女像」)は「事実を歪曲したような形での政治的なメッセージ」であり、「表現の自由」から「逸脱している」ので、それに対して県の「公金を使って支援するということなんてあり得ない」、という趣旨の発言をした。
9月3日の定例記者会見でも黒岩知事は、「あいちトリエンナーレ」関連の発言について記者から質問をされると、「慰安婦像」の展示は「政治的メッセージ」だから「表現の自由の問題とは関係ない話」だと強弁した。また、そのような「知事個人の受け取り方」に基づいて「慰安婦像」を展示するしないを決めてはいけないのではないか、という記者の質問には答えをはぐらかしてはっきりとは答えなかった。
これら一連の黒岩知事の発言は、第一に、日本国憲法に規定された「表現の自由」、「言論の自由」を脅かすものであり、公権力を行使する地位にある県知事の発言として許されない。
黒岩知事の主張は、黒岩氏個人の思想信条及び感性に基づいて特定の作品の芸術作品としての価値を勝手に否定したうえ、その作品に「事実を歪曲したような政治的メッセージ」というレッテルを貼って攻撃し、県知事の権力を利用してそれを公共施設から排除することを宣言したものである。しかし、本来、芸術作品にいかなるメッセージを込めるのか、そして作品をどのように読み解くのかは個々人の自由でなければならず、公権力を行使する地位にある者が自らの好みに依ってある作品のメッセージを勝手に決めつけて敵視したり、特定の表現を規制したりすることはあってはならない。このような「表現の自由」の当然の原則を黒岩知事は何故蹂躙するのか。「公金を使う」公共施設においてこそ、「多数派」以外の多様な表現にもその発表の場を保障するべきだ。そのことが、社会の健全さを維持し、民主主義と人権の保障をさらに高めていくことにつながるはずだ。
第二に、このような黒岩知事の発言は、美術館の「活動の自由」に対する、「不当な干渉」を予告するものでもあり、美術館の活動を萎縮させ阻害し、市民の「表現の自由」「知る権利」「見る権利」を侵害するものでもある。
神奈川県立近代美術館など神奈川県内の公立美術館も会員である「全国美術館会議」が2017年5月に採択した「美術館の原則と美術館関係者の行動指針」には、美術館は「美術の作品・資料及びそれにかかわる環境の持つ多様な価値を尊重する」、「人々の表現の自由、知る自由を保障し支えるために、活動の自由を持つ」ことなどが「原則」として規定されている。また、その「行動指針」では、「美術館は、日本国憲法に定められた国民の表現の自由、知る権利を保障し支える」として、「美術は、人々のさまざまな価値観が出会いぶつかり合うなかで、表現活動と鑑賞活動を通じて、不断に新たな価値が生み出されていく分野である」。「日本国民は、日本国憲法によって、公共の福祉に反しない限りにおいて、また個人の諸権利を侵害しない限りにおいて、表現の自由及び知る権利(見る権利)を与えられている。美術館は、この自由と権利を保障し支援する」。「また、美術館はこの行動指針やさまざまな専門的基準によって自らを律し、その基本理念をつくる自由、それにもとづいて活動する自由を保持することができる。この自由を不当に制限しようとする外部からの介入、干渉に対し、美術館はこれに抵抗し、拒否する権利を有する」と述べている。
このような重要な意義を持つ美術館の「活動の自由」を軽視し、美術展への介入、干渉を公言する黒岩知事の発言を、容認することはできない。
第三に、記者会見における黒岩知事の一連の発言には、「慰安婦問題」などアジア太平洋戦争における加害の歴史を振り返ることを止め、それを忘却しようとするような発想もうかがわれることを憂慮せざるをえない。
アジア太平洋戦争の際、旧日本軍が大勢の女性を「慰安婦」としたことは否定のできない事実である。
過去の犯罪行為を将来二度と繰り返さないためにも、私たちは加害の歴史を忘却せずに直視し続ける必要がある。黒岩知事の発言からは、加害の歴史を直視し続ける決意を読み取ることができない。加害の歴史の忘却は、戦争責任を否定したり、当時の侵略戦争を正当化したり、軍国主義を美化したりする、極めて愚かで危険な社会状況を生み出すことにつながる。
さらに第四に、黒岩知事がその芸術作品としての価値を否定する「平和の少女像」(「慰安婦像」)は、女性への戦時性暴力が繰り返されることの無いようにという思いを持って作られた作品であると言われる。公権力を行使する地位にある県知事が、そうした作品だけを取り上げてその展示を拒絶する態度は、戦時性暴力の問題を軽視し、女性への暴力や構造的な抑圧の強化に加担することにもつながるものであり、決して看過することはできない。
私たちは黒岩知事の発言に強く抗議し、以下の対応を求める。
記
1.「あいちトリエンナーレ2019」に関する発言を撤回すること。
2.「あいちトリエンナーレ2019」に関する発言について、反省し謝罪を表明すること。
以上。
社会民主党神奈川県連合
〒231-0025 神奈川県横浜市中区松影町 2-7-21
Tel:045-681-2561
2019年9月10日
神奈川県知事
黒岩祐治 殿
社会民主党神奈川県連合
代表 福島みずほ
黒岩祐治神奈川県知事の「あいちトリエンナーレ」に関する発言に強く抗議し、 発言の撤回と謝罪を求める。
黒岩祐治神奈川県知事は8月27日の定例記者会見で、国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」の「表現の不自由展・その後」について、「もし、同じようなことが神奈川県であったとしたら、私は認めません」、「慰安婦像」(「平和の少女像」)は「事実を歪曲したような形での政治的なメッセージ」であり、「表現の自由」から「逸脱している」ので、それに対して県の「公金を使って支援するということなんてあり得ない」、という趣旨の発言をした。
9月3日の定例記者会見でも黒岩知事は、「あいちトリエンナーレ」関連の発言について記者から質問をされると、「慰安婦像」の展示は「政治的メッセージ」だから「表現の自由の問題とは関係ない話」だと強弁した。また、そのような「知事個人の受け取り方」に基づいて「慰安婦像」を展示するしないを決めてはいけないのではないか、という記者の質問には答えをはぐらかしてはっきりとは答えなかった。
これら一連の黒岩知事の発言は、第一に、日本国憲法に規定された「表現の自由」、「言論の自由」を脅かすものであり、公権力を行使する地位にある県知事の発言として許されない。
黒岩知事の主張は、黒岩氏個人の思想信条及び感性に基づいて特定の作品の芸術作品としての価値を勝手に否定したうえ、その作品に「事実を歪曲したような政治的メッセージ」というレッテルを貼って攻撃し、県知事の権力を利用してそれを公共施設から排除することを宣言したものである。しかし、本来、芸術作品にいかなるメッセージを込めるのか、そして作品をどのように読み解くのかは個々人の自由でなければならず、公権力を行使する地位にある者が自らの好みに依ってある作品のメッセージを勝手に決めつけて敵視したり、特定の表現を規制したりすることはあってはならない。このような「表現の自由」の当然の原則を黒岩知事は何故蹂躙するのか。「公金を使う」公共施設においてこそ、「多数派」以外の多様な表現にもその発表の場を保障するべきだ。そのことが、社会の健全さを維持し、民主主義と人権の保障をさらに高めていくことにつながるはずだ。
第二に、このような黒岩知事の発言は、美術館の「活動の自由」に対する、「不当な干渉」を予告するものでもあり、美術館の活動を萎縮させ阻害し、市民の「表現の自由」「知る権利」「見る権利」を侵害するものでもある。
神奈川県立近代美術館など神奈川県内の公立美術館も会員である「全国美術館会議」が2017年5月に採択した「美術館の原則と美術館関係者の行動指針」には、美術館は「美術の作品・資料及びそれにかかわる環境の持つ多様な価値を尊重する」、「人々の表現の自由、知る自由を保障し支えるために、活動の自由を持つ」ことなどが「原則」として規定されている。また、その「行動指針」では、「美術館は、日本国憲法に定められた国民の表現の自由、知る権利を保障し支える」として、「美術は、人々のさまざまな価値観が出会いぶつかり合うなかで、表現活動と鑑賞活動を通じて、不断に新たな価値が生み出されていく分野である」。「日本国民は、日本国憲法によって、公共の福祉に反しない限りにおいて、また個人の諸権利を侵害しない限りにおいて、表現の自由及び知る権利(見る権利)を与えられている。美術館は、この自由と権利を保障し支援する」。「また、美術館はこの行動指針やさまざまな専門的基準によって自らを律し、その基本理念をつくる自由、それにもとづいて活動する自由を保持することができる。この自由を不当に制限しようとする外部からの介入、干渉に対し、美術館はこれに抵抗し、拒否する権利を有する」と述べている。
このような重要な意義を持つ美術館の「活動の自由」を軽視し、美術展への介入、干渉を公言する黒岩知事の発言を、容認することはできない。
第三に、記者会見における黒岩知事の一連の発言には、「慰安婦問題」などアジア太平洋戦争における加害の歴史を振り返ることを止め、それを忘却しようとするような発想もうかがわれることを憂慮せざるをえない。
アジア太平洋戦争の際、旧日本軍が大勢の女性を「慰安婦」としたことは否定のできない事実である。
過去の犯罪行為を将来二度と繰り返さないためにも、私たちは加害の歴史を忘却せずに直視し続ける必要がある。黒岩知事の発言からは、加害の歴史を直視し続ける決意を読み取ることができない。加害の歴史の忘却は、戦争責任を否定したり、当時の侵略戦争を正当化したり、軍国主義を美化したりする、極めて愚かで危険な社会状況を生み出すことにつながる。
さらに第四に、黒岩知事がその芸術作品としての価値を否定する「平和の少女像」(「慰安婦像」)は、女性への戦時性暴力が繰り返されることの無いようにという思いを持って作られた作品であると言われる。公権力を行使する地位にある県知事が、そうした作品だけを取り上げてその展示を拒絶する態度は、戦時性暴力の問題を軽視し、女性への暴力や構造的な抑圧の強化に加担することにもつながるものであり、決して看過することはできない。
私たちは黒岩知事の発言に強く抗議し、以下の対応を求める。
記
1.「あいちトリエンナーレ2019」に関する発言を撤回すること。
2.「あいちトリエンナーレ2019」に関する発言について、反省し謝罪を表明すること。
以上。
社会民主党神奈川県連合
〒231-0025 神奈川県横浜市中区松影町 2-7-21
Tel:045-681-2561