■Kids 衝撃の授業、青山小学校。
創立135年を誇る東京港区立青山小学校。伊藤忠やホンダ、CSKなど名だたる企業の本社に囲まれる超一等地とは思えぬ静けさに、子どもたちの歓声が響きます。運動場は上質の人工芝で覆われ、飛び跳ねたり寝転んだり、尻をついて本を読んだりしています。いいね、ここ。
曽根節子校長「1、2年生はPCの使い方を習いますが、3年生になるとタブレットPCを使って授業をします。つまり、PCを習うのではなくて、PC「で」理科や社会を学ぶのです。」なるほど、正しい。以前住んでいたボストンの小学校ではスペイン語で理科を教えていました。ぼくらも英語を習うんじゃなくて英語で何かを習っていたら、いまごろもっとラクだったかも。
なんて思いながら、6年生の授業を参観しました。各学年1クラス20名の少人数編成。それを2つの教室に分けての授業です。生徒それぞれがタブレットPCを抱えて教室に入ってきました。先生が電子黒板を使って課題を説明します。
「立方体の展開図を作ろう。」展開図じたいは5年生で学んでいる。だからできるよね?でも今日はPCを使ってグループで作ってみよう。
9〜10名が4チームに分かれて、つまり2−3人がチームを組んで、画面上に現れた正方形のブロックを組み合わせ展開図を作る、というものです。
PCは無線LANでつながっていて、他のチーム員と画面を共有するのですが、チーム員が誰なのかはヒミツ。しゃべっちゃダメ。画面上でメッセージを書き込みながら、見えない仲間と協力して作業。
算数だけでなく、コミュニケーション力を高める授業でもあるのですね、総合的な学習、というやつですね。
ところが。
だんだん空気が怪しくなってきました。
「ぼくの作ったブロックが壊された」「あっ取られた」という声が挙がり始めました。
協働して作るつもりが、逆に足を引っ張り合い、うまく行かない。
「こわすな!」「やめてくれ!」「おら」という書き込みも目立ち始めました。
教室が分かれていることもあり、誰がチーム員かもつかめず、疑心暗鬼も募ります。
しゃべっちゃダメだよ〜。先生は悠然としています。
そうは言っても生徒たちは熱くなり、「なにすんだよ!」「オレが作ったのにー」と大声をあげ、べそをかきそうな子もいます。
結局どのチームもうまく展開図シリーズを作れないままタイムアップ。
おやおや。
ところが。それから一つの教室に集まって、先生が最初に発した言葉が衝撃的でした。
「みんな、先週、戦争のこと勉強したよね。で、今日、なぜ戦争が起こるのか、わかったよね。」
えっ。
「相手が誰かわからないと、こういうケンカが起きる。ふだん仲のいい、クラスのみんなでも、こうなるんだよね。」
なんと。
算数とみせかけて実は、これが授業の狙いだったのですね。
聞けば前の週に被爆された女性のお話をみんなで聞いて、戦争のことを語り合ったというのです。
生徒のひとり、女の子がつぶやきました。「メールや掲示板の書き込みでも、そういうこと起きるんだよね。」
一緒に参観した曽根校長も「なるほど、やられた」とうなるリテラシー授業。
ぼくたちはデジタル教科書や電子黒板などの機材の整備に努めているところですが、それよりも、デジタル時代の授業を開発したり現場の力量を磨いたりすることの大事さを目の当たりにしました。
そして、こういう授業が現場の先生方に共有されればよいのですが、現状では、これを記録し、公表し、共有するしくみがうまくできていません。これもぼくたちの課題だと認識した授業でした。
どうもありがとうございました。
新鮮な驚きでした。blogでご紹介くださって、どうもありがとうございました。
返信削除優れた授業の動画アーカイブが必要と。児童の姿をぼかさないと公開は難しいだろうから、かなり手間が掛かりそうだけど、実現して欲しい話。優れた教育(番組)にはっとすることは、NHK教育でも放送している日本賞で何度も経験しました。ありがとうございました。
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