「P2!」兄の夢を叶える為に。川末兄妹の過去と現在
何だかんだで最近のジャンプを買う動機となっている漫画なだけに、10週分のストックが尽きた後はどうなるのか気になります。また休載…?
さて、僕が今のジャンプで一番応援している漫画は「P2!」です。
あの第2次アキラ祭りの後、今度は第1次アキラ祭りを髣髴とさせるシャワールームデビューを果たした新キャラ「お嬢」ことエリスが登場し、また祭りになりました。
もちろん本編の方も、乙女ちゃんとヒロムの過去が描かれ、ヒロムの初勝利、そして対秀鳳戦と、ますます盛り上がってきていました。
辛くも勝利した遊部、そして惜しくも敗北した川末涼。
そして今週の「P2!」では、ネット上ではおそらく人気No.1キャラであろうアキラがらみの最大の伏線、川末兄妹の過去が描かれました。
伏線も色々と回収されているので、駆け足ではありますが、川末兄妹の過去について軽く触れてみたいと思います。
アキラは涼に褒められたいとの思いから卓球に打ち込んできた。
その幼き日のアキラにとって、兄は憧れで、世界一の選手だった。
ある小さな大会の決勝戦でで、アキラと涼は戦っていた。
当時の涼は王華を目指しており、そして王華の監督が見に来ているという。
涼は、きっとこのチャンスをモノにしたかったに違いありません。
けれど、その試合を実際に押していたのはアキラだった。
涼はカットマンには勝てない。
それでも、兄の方が技術は圧倒的に上なのだ。
アキラは、自分より上手いはずの兄に勝ちそうな自分に困惑します。
お兄ちゃんは調子が悪いだけだ。
だから私が勝つなんて、タチの悪い嘘なんだ。
嘘は嘘のままであるべきなんだ、真実にしてはいけないんだ、と。
この試合の結果ははっきりとは描写されていませんが、ラケットをわざと動かしているような描写があることから、試合に勝ったのはおそらく兄・涼。
アキラは兄を勝たせるため、わざと手加減をし、結果涼は優勝するも、王華監督にはそれを見抜かれていた…という流れではないかと。
仮にアキラが手加減をしていたと考えると、1巻での遊部の川末兄に対する台詞「いやまー、あいつ手加減て言葉を夕陽の海に棄ててきたクチでなぁ」も納得できます。
手加減をするということが、相手を傷つけると知っているから。
そして涼は認めます。アキラのほうがずっと素質は上なのだと。
今思えば、その素質は幼きアキラにも既に見え隠れしていたのでしょうね。
幼き頃、アキラが兄から1点取ったこと。
その1点をほめられた事は、アキラが卓球をする動機になった。
けれどそれは、アキラが兄を上回る前触れでもあったのかもしれない。
卓球にまぐれはないのだから。
1巻冒頭から出ている「卓球にまぐれはない」との言葉。
これは川末兄妹の球に対する考えなんでしょう。
以前の王華編ラストでのアキラの「警告」もこれで納得できます。
卓球部の入部テストで、全くの素人であるヒロムに1点取られた涼。
それは幼少時、アキラが涼から1点取ったのと同じ。
全くの素人だったヒロムが涼から1点取ったことを、自分の過去と照らし合わせ、ヒロムがいずれ涼を追い抜いていくだろうと警告した。
それを楽しみだと言った涼の心境はどのようなものだったでしょうか。
そして、涼はアキラを応援すると言った。
アキラは、涼の代わりに一番になると約束した。
だから、アキラは勝つことを何よりも求めた。
カットマンである兄に憧れて始めた卓球だったけど、「勝つ為に」戦型を変えた。
涼と決勝で争った大会の段階ではアキラはカットマンだったわけで、兄の代わりに自分が一番になると決めてからオールラウンダーになったんですね。
だから、やはりヒロムは幼き頃のアキラと重なっていたと。
アキラは順調に実力を伸ばし続けます。
「お嬢」エリスと出会ったのもその頃のことでしょう。
エリスは、今のアキラと涼の関係を知らない。
そのエリスに「ブラコン娘」と言わしめるほど、その頃のアキラは兄が好きだったことが伺えます。
兄は自分のせいで夢を諦めた。ならば自分が代わりに。
ちょっと極端な気もしますが、それほど仲の良い兄妹だったのでしょう。
それなのに、どうしてまた卓球を始めたのか、と。
涼の代わりに一番になるために頑張ってきたのに、涼がまた一番を目指し始めたら、私が一番を目指す意味は?
アキラに嘘つきと言われた涼は言います。
あの日僕はお前に夢を押し付けた。弱い自分の代わりにお前が僕の夢を叶えてくれと甘えた。だからもう、僕を理由に卓球をするな、と。
アキラは、一緒に卓球がしたかっただけだと涙を流す。
アキラが今どこで生活しているのかは定かではありませんが、少なくとも兄と一緒ではないでしょう。謎の黒服たちに追われたりもしていましたし。
アキラは、兄と離れ、兄と卓球が出来なくなってしまった事を嘆いていたんですね。
泣き崩れるアキラに近づき、頭をなでながらヒロムは言います。
川末さんは強くなって帰ってくるから、信じて待っていろと。
妹を見て口惜しいと思った川末さんが、もっと強くなるべく頑張っていると。
今の涼は技術に卓越している。
それは幼少時から体に染み込ませてきたテクニック。
だから、まだその技術に見合うだけの「それ」と巡り会えていないだけ。
川末兄も、いつか自分の才能(ギフト)に巡り会う日が、きっと来る。
対秀鳳戦、既に崖っぷちの状態で、ヒロムが戦う相手は高槻。
アキラはヒロムが1セットすら取れるとは思っていない。
けれど、もしヒロムが高槻から1セットでも取れたなら。
いつか、お兄ちゃんが強くなって帰ってくる事を信じて待てるかもしれない。
そして、ヒロムは戦いの場に赴く。
みんなの為に、みんなの思いを背負って。
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ここで終了となってしまった「P2!」。
一応最終話だというのに、ヒロムはほとんど活躍せず、アキラがヒロムに心揺れ動いたり、乙女ちゃんのブログの真実が明かされたり…結局最後までアキラにヒロインの座を奪われっぱなしだった乙女ちゃんが可哀想でなりません。
何だかんだで僕がP2!を応援し始めたのは、第1話で乙女ちゃんを見たからだったので、結構思い入れの深いキャラなんですよね。5巻が出たら何か書くから…!
で、ここからは残った伏線の話。
この記事を書くにあたり、これまでの話を読み返してみました。
その中から、未解決の事で気になる事をちょっと羅列してみます。
気になる事は他にもたくさんあるんですが、とりあえず主なものだけ。
・川末「僕は僕の…俺の卓球を貫く」(3巻)
ここで一人称が変わったのは何故なんだろう。
・六花学園コーチのスカウトが出した名刺は秀鳳学園のもの(4巻)
誤植かもしれないけど、一応挙げておきます。あと、何でましろんが六花に行かないと王華に勝てないのか、というのもありました。
・岩熊「中国から3人日本に選手が渡ったっちゅう話じゃ」(4巻)
2人は未登場のままです。
・謎の女性「まったく…困ったお姫様ね」(4巻)
何でアキラは追われていたんだろうか。今アキラはどこに住んでいて、どういう環境にいるのかはまだ分からないまま。心なしか、この女性は六花のスカウトの人に似ているような気がしないでもない。
・サシャ・クリングバイル(4巻)
結局こいつとの確執もそのまま。ちなみに中国ではなくドイツの人です。
・アキラがヒロムにささやいた言葉(4巻)
ものすごく気になるんですけど!
・「お嬢」エリスと草次郎
こんな素敵な登場の仕方をしておいて、このまま終わったら、何のために出てきたか分からない…!これからの活躍が期待されるキャラだというのに…。
・アキラの留学
サシャはともかくエリスとの出会いとか凄く気になるんですけど!
・水無瀬の運命はどう変わったのか
最終回の前の週にわざわざ書くからには、何かあるんでしょうし。
・何故涼はカットマンにこだわるのか
自身がカットマンに向かないと知っていたのに、再開後もカットマンである涼。10年書け骨身に染み込ませるほどの理由があったはず。4巻でアキラがヒロムに「キミにはキミの戦型を選んで欲しい」を薦めたのもこの辺と関係があるのかも。
他にも色々あるんですがね…。遊部やましろん絡みとか、打ち切り決定のせいか展開が加速し、ダブルスがサクっと終わってしまった梟宇の妹の「いーこと」とか…。
今週の話を読んでからだと、今までの川末兄弟がらみの台詞も色々と違って見えてくるので、凄く丁寧に描かれている漫画だと改めて実感。
ここで終わってしまうのが惜しすぎる。
ジャンプの打ち切りシステムに何度も泣かされた1年でした。
赤マルにつながるだけマシなんでしょうが、それでも悔しい。
来週から始まる「PSYREN」は、P2!同様人気投票直後に打ち切られた「みえるひと」の岩代先生の漫画。正直、自分が新連載陣で期待してるのは岩代先生くらいではあるのですが、何とも皮肉なタイミングです。
江尻先生の次回作にももちろん期待したいのですが、やはり今は「P2!」を読みたいです。6巻7巻同時発売といいなかなか異質なので、第1部完の可能性を信じたい。
望み薄くとも希望は捨てずに、まずは赤マルを楽しみにしましょう。
≪関連≫
□気付いたらP2!が最終回だったので、打ち切られた理由について考えてみた
□「P2!」が打ち切りになってしまいましたが… (ゴルゴ31経由)
集英社 (2007/12/04)
| 週刊少年ジャンプ | 22:02 | comments:6 | trackbacks:0 | EDIT
よく研究なさってますねw僕も卓球経験者ということもあり、p2を愛読していただけに残念です。。江尻先生はピンポンにも影響を受けたようで、才能と卓球の関係も非常によく分かっていらっしゃいます。
p2は魅せる表現が上手いし、絵がとても丁寧かつ綺麗なのでもう少し踏ん張れるとは思ったのですが…少し、実際の技術よりも感覚的表現に頼りすぎた感はあります。あと、ゼロバウンドはやり過ぎたかも;少しテニプリ的な匂いがしてました^^;ともあれ、惜しいマンガを失いました。。
続きは、まぁ幾年後とかの話ではないですかね。どちらにせよ、あの後、さすがに秀鳳には勝てないでしょう。。
| とーりすがり | 2007/11/28 00:49 | URL | ≫ EDIT